蒼空と茜空   作:tieck321

13 / 29
体の節々が痛いです。咳も止まりません。自分の体が大丈夫か不安になります。

第12局です。今回は他校の登場です。しかも二校も。正直大変でした。


阿知賀編 第12局 「雀荘にて」

-日曜日・とある雀荘-

 

 

「いらっしゃいませ~」

 

 

店員の元気な声が私達を出迎える。バイトの人だろうか、店員は私達より少し歳上の女性で、高校生、もしかしたら大学生といった感じだ。

店の中には女子高生が二十人ほどいて、その中に交じるように、ちらほらと中学生らしき人が数人いた。

 

 

「ここが雀荘か~。私、初めてくるんだよね」

「実は私も初めてなんだ~。どんなところだろ?」

 

 

茜ちゃんと玄ちゃんは珍しそうにじっくりと店の隅々まで観察している。何を話しているか正確には聞き取れなかったが、「お~」とか「フムフム」と聞こえるあたり、存分に楽しんでるようだ。

そんな中、和はキョロキョロと店の中を見渡していた。

 

 

「和、誰か探してるの?」

「はい。知り合いがいるのではないかと思ったのですけど、どうやらそれらしき人はいないようですね」

 

 

その知り合いが誰だか分からないが、ここを知っているということは、近くに住んでいるのかもしれない。和の知り合いなら女子中学生ということか。

そういえば、確か「のどっち」も奈良在住のはずだ。意外とこの場にいる可能性も…。

 

 

 

 

「ロン!これで俺の勝ちや!」

 

 

店内に響き渡るほど大きな声が聞こえてきた。そのしゃべり方は所謂あの大阪弁というやつで、生で聞くのは初めてだった。

 

 

「あちゃ~、またセーラの勝ちか」

「ホンマセーラは強いな~」

 

 

後に聞こえてきた声も大阪弁。どうやら大阪から来ている人達がいるようだ。

 

 

「ねえねえ、ソラ、向こうの方に行ってみようよ!」

 

 

茜ちゃんが私の手を引く。どうやら大阪弁をもっと近くで聴いてみたいらしい。

 

 

「別に良いけど…。皆少し外すけど良い?」

 

 

一応確認のために皆に聞いてみる。返事は全てOKだったので、他の皆には先に場所とりをしてもらうことにした。

そして私は、茜ちゃんと一緒に大阪弁のする方へ近づいていった。

 

 

特徴のあるしゃべり方なので、見つけるのには苦労しなかった。少し店内を歩いてたどり着いた所にいたのは、三人の同い年くらいの女の子二人と男の子一人だった。

一人は黒髪でロングヘアー。もう一人も同じく黒髪でショートヘアー。最後の一人は橙髪で立てた短髪。全員が学校の制服を着ており、最初の二人はセーラー服を。最後の一人は学ランに短パンという服装だった。

ちなみに、私達は一応部の活動として来ているので全員制服だ。

 

 

「大阪人ってやっぱりノリが良いのかな?」

「いや、私に聞かれても…」

 

 

「なら、確かめてみるしかないね…あー!あんな所にたこ焼きがー!」

 

 

茜ちゃんがいきなり窓際を指して叫んだ。棒読みで。しかもその先にあるのはどうみても観賞用のサボテンにしか見えない。

 

 

「おっ、ホンマや。店員が気ぃきかせてくれたんか。では早速いただきます…って食えるか!」

 

 

盛大なノリツッコミだ。それを見た茜ちゃんは「お~」と言って拍手していた。

 

 

「いきなりなんやアンタら。思わずノリツッコミしてもうたわ」

 

 

学ランの彼が立ち上がる。ちょっとふざけ過ぎたかもしれない。

 

 

「ご、ごめんなさい。うちの部員が失礼なことを…」

 

 

大阪の人は怒らすと恐いと聞く。ここは怒らせないように慎重に謝ろう。

 

 

「ええよええよ。セーラは別に怒っとるわけやないから」

「せやせや、見た目は恐いかもせえへんけど、中身はええやつやで」

 

 

まずショートヘアーの人、その次にロングヘアーの人が続いた。臆面なく誉めるあたり、二人とも彼と仲が良いのだろう。彼の方も誉められて少し顔を赤らめていた。

 

 

「そ、そや、部員ゆーてたけど、麻雀部か何かなんか?」

 

 

誉められるのに恥ずかしくなったのか、彼は急いで話題を変えた。

 

 

「あっ、はい。阿知賀女子って学校の麻雀部です」

 

 

学校の名前を言ってみる。もしかしたら少しくらいなら知っているかもしれない。

 

 

「阿知賀女子?竜華(りゅうか)達は知っとる?」

「知らんなあ」

「私も知らんわ。ごめん、ウチら大阪から来たから分からへんわ」

 

 

それもそうだ。阿知賀は奈良の中ですら知名度は低い。大阪の人が知っているわけがなかった。

 

 

「ねえ、ちょっと気になってること聞いていい?」

 

 

茜ちゃんが三人を交互に見ながら言った。

 

 

「さっきから気になってるんだけど、そっちはどういう関係なの?男一人に女二人って…。

はっ、もしや昼ドラ的な関係だったりして…!」

 

 

「なっ!」

「ぷっ!」

「ふふっ」

 

 

茜ちゃんの発言に女の子達がお腹を抱えて笑いを堪えていた。そして男の子の方はさっきよりも顔が赤くなっていた。

 

 

「いや~、おもろいなアンタ。ふふっ、セーラが男て。確かに学ラン着てて男っぽいけども、それでも男て」

「笑うなや!なんか恥ずかしいやろ!」

 

 

セーラと呼ばれたその人は、まだ笑い続ける二人をポカポカと叩いていた。

 

 

「あの~、もしかして、女性の方でしたか!?」

 

 

おそるおそる尋ねる。

 

 

「そうや。俺は江口(えぐち)セーラ。こんな格好しとるけど女や」

 

 

少し拗ねたようにそっぽ向いてしまった。どうやら私達は、とんでもない勘違いをしてしまったようだ。先ほどまで男性だと思っていた江口さんは実は女性だったのだ。

 

 

「ご、ごめんなさい!」

「ええよ…。間違えられるんはなれとるし…」

 

 

その言葉には悲しみが込もっていた。

 

 

「セーラも自己紹介したみたいやし、私も自己紹介するわ。私は清水谷(しみずだに)竜華。千里山麻雀部の部長やで。で、こっちは…」

 

園城寺(おんじょうじ)(とき)や。体弱いから膝枕とかしてくれると嬉しいわ」

「その病弱アピールやめ!」

 

 

ショートヘアーの人は園城寺怜さん。ロングヘアーの人は清水谷竜華さん。三人とも千里山中学の三年生だそうだ。

三人に自己紹介をしてもらったので、次は私達が自己紹介をする番だ。

 

 

「羽暗蒼空です。阿知賀女子麻雀部の部長してます」

「落合茜、部員その一で~す!」

 

 

「羽暗蒼空ちゃんに落合茜ちゃんか。よろしく」

 

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 

清水谷さんと握手を交わす。その後、残りの二人とも握手を交わした。

 

 

 

 

「そういや、アンタらって二人だけなん?」

 

 

「いえ、他にも五人がここに来てますが、それがどうかしましたか?」

 

 

「えーっとな、団体戦の練習するためにここに来たんやけど、思ったより団体客が少なくて困っとったんや。しかもあまりに少ないから、他のメンバーの二人も帰ってしもたし。

で、そんな時にや、あんたらが来てくれて、もしかするとって思ったけど、そっちを合わせても全員で十人か…。あと二人は欲しいな…」

 

 

清水谷さんが腕を組み何やら考え事をしている。さっきとは一転して真面目な顔だ。江口さんも一緒に腕を組んで考えている。そして園城寺さんは…茜ちゃんに膝枕をしてもらっていた。何してるんだ二人とも…。

 

 

「蒼空さん、茜さん、まだですか?」

「皆待ってますよ」

 

 

うちの一年二人組がお迎えにやって来た。二人とも心配そうな顔をしている。時計を見ると、皆と別れてから15分程経過していた。

 

 

「ごめん、今行くから。ほら、茜ちゃん、行くよ!園城寺さんもどいてください」

 

 

二人は仲良く「え~」と言い、その場から動こうとしなかった。仕方ないので無理やり茜ちゃんの腕を引っ張ろうとした時のことだった。

 

 

「あーーーっ!」

 

 

隣のテーブルから一人の少女が飛び出てきた。ツーサイドアップの髪型をした制服姿の少女。彼女の顔は知らなかったが、その制服は知っていた。

 

 

(あれって、確か阿太峯の制服?)

 

 

引っ越し前に近くの中学は調べていた上に、通う学校を選ぶ時に阿知賀と最後まで候補に残っていたので、よく覚えている。

結局、制服の可愛い阿知賀になったのだが。

 

 

「「あ、(あこ)!?」」

 

 

和と穏乃の二人が驚きの声をあげる。この反応からして、知り合いなのだろうか…。

 

 

「久し振りじゃんシズに和!まさかこんなとこで会うなんてね」

「ホント久し振り!」

「久し振りですね、憧」

 

 

三人は久しぶりの再会が嬉しすぎるのか、思い出話や今はどうしてるかなどを話し始めた。

 

 

「えっ!阿知賀に麻雀部!?」

「うん。玄さん達が声をかけて、麻雀クラブの皆がまた集まったんだ!」

「……そう。…よ、良かったじゃん!」

 

 

憧さんが一瞬悲しそうな顔をする。穏乃はそのことに気づいてないのか、麻雀部の話を続けている。

 

 

「憧…」

「何、和?」

「もしかして…いえ、何でもありません」

 

 

和は何かを言いかけて黙った。何を言いたかったのかは和にしか分からない。しかし、子供麻雀クラブのメンバーだったことから、だいたいは予想できる。和の言葉は恐らくこう続いたのだろう、「阿太峯に行ったことを後悔してるのではありませんか」と。

 

 

「憧、そろそろ…」

「あっ、ごめん初瀬(はつせ)

 

 

隣のテーブルから別の阿太峯の少女が顔を出した。何やら気まずそうな顔をしている。話を切ってしまったことを申し訳なく思ってるようだ。

二人が自分のテーブルに戻ろうとすると、二人の肩を掴む者が。

 

 

「ちょい待ち二人とも…」

 

 

清水谷さんが二人の肩をがっちりと掴んでいた。

 

 

「あんたらこれから暇か?」

「まあ、暇といえば暇ですけど…」

「なら、ちょーっと付き合うてくれへん?」

 

 

清水谷さんは不気味なくらい笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

-数分後-

 

 

「と、いうわけで、今から三校合同プチ団体戦を始めます!」

 

 

パチパチと園城寺さんと江口さん、それと茜ちゃんが手を叩いた。しかし他の皆はまだ状況を飲み込めていないようだ。

 

 

「三校で三人四組に分かれて団体戦をするということで良いですか?」

 

 

状況の分からない皆のために手を挙げて質問する。

 

 

「せや。先鋒、中堅、大将戦で半荘一回ずつ。各チーム持ち点は50000点や」

「メンバーはくじ引きで決めるで~」

 

 

江口さんが割りばしを四本持ってきた。割りばしの先には色が塗られており、赤、青、黄、緑といった具合だ。

 

 

「各チーム各学年が一人ずつ。先鋒、中堅、大将の順番で、赤チームは一年、二年、三年。青チームは三年、一年、二年。黄チームは二年、三年、一年。緑チームは二年、一年、三年の順番や」

 

 

清水谷さんが詳しい説明をする。いつも同じ相手と戦うのは良くないから、各学年ができるだけバラバラになるようにしたのだとか。こちらとしても、色んな人と対局できる方が嬉しい。

 

 

「じゃあ引くで~」

 

 

 

 

 

 

-赤チーム-

 

 

「あちゃ~、阿知賀のメンバーだけになっちゃったか~」

「いつもとあまり変わらないですけど、ここは阿知賀パワーを見せつけてやりましょう!」

「穏乃ちゃん、茜ちゃん、頑張ろうね」

 

 

「よしっ、頑張るぞ~!」

 

 

赤チーム 先鋒 穏乃 中堅 茜 大将 宥

 

 

 

 

 

-青チーム-

 

 

「まさか部長二人が揃うとはな~」

「くじ引きですし仕方ないですよ」

「足を引っ張らないよう頑張ります…」

 

 

「青チーム、勝つで!」

 

 

青チーム 先鋒 竜華 中堅 憧 大将 蒼空

 

 

 

 

 

 

-黄チーム-

 

 

「行くで~黄チーム!」

「お、お~?」

「おー…」

 

 

「い、行くで、黄チーム…」

 

 

黄チーム 先鋒 灼 中堅 セーラ 大将 初瀬

 

 

 

 

 

 

-緑チーム-

 

 

「おお~ええ膝しとるな~」

「いやいや、それほどでも…」

「玄さんに園城寺さん、膝枕なんかしてないで真面目に作戦考えて下さい」

 

 

「え~、じゃあ考える代わりに、次は原村さんが膝枕してな?」

 

 

緑チーム 先鋒 玄 中堅 和 大将 怜

 

 

 

 

四つのチームが、今激突する!

 

 

 

 

 

 

インターミドル県予選まで後48日




次回から団体戦スタートです。チーム分けのくじ引きは実際にやりました。多少の偏りはあるものの、結構面白いチームができたと思います。


本当に申し訳ないのですが、また更新には間が空きそうです。今度は二週間ほど。
ですが、前と同じく絶対に更新は続けますので、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。