蒼空と茜空   作:tieck321

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第18局です。今回は玄の能力についての話です。

うろ覚えで書いたところがあるので、間違っていたらごめんなさい。


阿知賀編 第18局 「弱さを乗り越えて」

-土曜日・松実館-

 

 

ゴールデンウィークを終えた最初の休み、やっと麻雀部の皆で揃うことが出来た。平日の部活では普通に集まるのだが、休日ではなかなかそうはいかない。特に玄ちゃんに宥さんに灼ちゃんは店のことがあるので休日に暇を作りにくい。そんな貴重な休みで、私達はインターミドルに向けて本格的に動き出していた。

具体的に何をするかと言うと、実はいつもの部活と同じで麻雀を打つだけだ。ただ今回は、近くの顔見知りとではなく、遠くの見知らぬ人とだ。

その方法は、私がよくするネット麻雀である。

 

 

「うぎゃーーーー!!!また負けた~」

 

 

穏乃がパソコンのある机から体を離し、後ろの畳に倒れこむ。その上で唸りながら、頭を抱えてゴロゴロと転がっていた。その姿を見かねた和が穏乃の代わりにパソコンの前に座る。

 

 

「穏乃。途中で対局を放棄するのはマナー違反ですよ」

 

 

カチカチと流れるように続きを打ち始める和。ネット麻雀での腕前はどうだろうと画面を覗こうとしたが、私よりも先に穏乃と茜ちゃんが和の後ろに入り込んだので、画面が見えなくなってしまった。

 

 

「蒼空ちゃ~ん!」

 

 

そんな時、別のパソコンでネット麻雀を打っていた宥さん達に呼ばれる。そこでは玄ちゃんがパソコンの前でにらめっこしていた。

 

 

「どうしたんですか、宥さん?」

 

 

「玄ちゃんがドラを切れなくて困ってるの…」

 

 

それを聞いて画面を覗き込む。すると、宥さんの言う通り、手牌には不自然にドラが2枚あった。そして捨牌にはドラが1枚もない。本当にドラを切れていないようだ。

玄ちゃんはドラを捨てると、しばらくドラが集まらなくなる。ドラを切らないのはそれを恐れてのことだろうが、それはネット麻雀にもあるのだろうか。能力が発動していれば別だが、手牌にドラが2枚しかないあたり玄ちゃんの能力はネット麻雀では使えていないように思える。

 

 

「玄ちゃん?ドラを切るのはやっぱりダメ?」

 

 

「う~ん。まだダメかな」

 

 

能力の問題でないとするなら、ドラが切れないのは精神的問題だろう。玄ちゃんのお母さんとの思い出である、ドラを切れないという玄ちゃんの気持ちによるものだと私は思う。

 

 

玄ちゃんと玄ちゃんのお母さんのことを知ったのは、つい数日前のことだ。

 

 

 

 

 

 

-数日前・部室-

 

 

「お母さんの言葉?」

 

 

部活も終わりかけで麻雀の話をしているうちに、玄ちゃんのドラの集まる能力の話になった。玄ちゃんの能力のペナルティ、というか弱点みたいなものはてっきり先天的なものだと思っていたが、後天的なものだったらしい。そしてその話で出たのは玄ちゃん達の亡くなったお母さんのことだ。

 

 

「うん。私がドラを切れないのはお母さんの言葉があるからなんだ」

 

「『ドラは大事にしなさい』ってね」

 

 

(だから、頑なにドラを切らなかったんだ…)

 

 

 

 

 

 

-土曜日・松実館-

 

 

あれ以来、玄ちゃんのためにもドラを切らずに打つ方法を考えてみた。しかし、どれだけ考えてもドラに頼るしか方法が思い付かない。だが、ドラに頼ると必然的に手が読まれてしまう。そうなると、団体戦での痛い失点に繋がってしまう。だから付け焼き刃だけれども、ネット麻雀で基礎雀力を上げ、弱点を少しでもカバーすることにしたのだ。

 

 

「やっぱり、ドラが切れないと練習にならないかな…」

 

 

玄ちゃんは玄ちゃんなりに、このままで良いのかと葛藤しているようだ。

 

 

「玄ちゃん…」

 

 

宥さんは心配そうに玄ちゃんの後ろから見守っている。

対局が終わるまで私も見守っていたが、結局玄ちゃんはドラが切れなかった。そのため手が窮屈になり、結果は4位だった。

 

 

 

 

 

 

「流石に、玄のこれはどうにかした方が良いと思う」

 

 

対局が終わり、休憩する私達に灼ちゃんが言った。私もそれを考えていたが、どうにも良い方法が思い付かない。仮に玄ちゃんにドラを切るようにしてもらっても、ドラが全く来なくなるのは相当困る。打点が大幅に下がる上に、敵の打点が上がってしまうからだ。しかも、お世辞にも玄ちゃんの雀力はものすごく高いとは言えない。そもそも、亡くなったお母さんの言葉を無視しろと言うのはどうしても気が引けてしまう。

 

 

「ごめんね、私がドラを切れないから…」

 

 

「だ、大丈夫だよ玄ちゃん!きっと良い方法があるから、皆で考えよ?」

 

 

玄ちゃんには大丈夫と言ったが、これは非常に不味い状況だ。インターミドルの県予選レベルなら、まだ玄ちゃんのことは知られていないだろうからなんとかなるだろうが、インターミドル本選とまでなると、全国の猛者には玄ちゃんの弱点は直ぐに見破られる。エースの集まる先鋒戦なら尚更だ。

これは私の采配ミス、と言いたいところだが、私達のチームで一番先鋒に適任なのは玄ちゃんなのだ。他のメンバーだと、コンスタントに点は取ってくれるだろうが、どこか派手さにかけるところがある。チームの先陣を切る先鋒では、やはり大量得点が期待出来る玄ちゃんが好ましい。

 

 

「だけど、どうするの?インターミドルまで時間ないよ?」

 

 

「とりあえず、基礎雀力を上げたいし、玄ちゃんにはドラを切ってもらうしか…」

 

 

チラッと玄ちゃんを見る。私の顔を見た玄ちゃんは、決心したように頷いた。

 

 

「私、頑張ってみる」

 

 

 

 

その日、玄ちゃんはネット麻雀ではあるけれども、ドラを切った。私の予想通り、ネット麻雀ではドラが来なくなることはなかった。しかし、ドラのない玄ちゃんはいつも以上に窮屈そうだった。

 

 

 

 

 

 

-月曜日・部室-

 

 

「さて、今日はいつものように麻雀をするんじゃなくて、玄ちゃんの能力について話し合おうと思います」

 

 

私だけで考えても良い案は浮かばなかったので、ここは皆で考えることにした。今、私は座っている皆の前で立って話をしている。

 

 

「すいませんが蒼空さん。玄さんの能力というのは、麻雀を打つ能力、ということでよろしいですか?」

 

 

和が手を挙げて質問する。いつものように玄ちゃんの能力、もちろん私や茜ちゃんのもだが、何回説明しても、和は納得してくれない。いや、説明といっても感覚的な説明なので、説明と言えるか微妙ではあるが…

 

 

「和ちゃんはドラを切れない縛りルールでやっていると考えてくれて良いよ」

 

 

「…少し引っ掛かる言い方ですが、それで良しとしておきます」

 

 

投げやり気味に私が言ったことが納得出来ないのか、むすっとした顔をしている。だが、こうでもしないと話が進まない。

 

 

「それじゃ、玄ちゃんがドラを切れないことについて話すね。まず、現状として玄ちゃんはドラを切れない。だからドラを切らずに如何に闘うかが重要になると思うの」

 

「そこで皆に質問だけど、どうやってドラを切らずに打てば良いと思う?」

 

 

「はいはい、は~い!」

 

 

真っ先に茜ちゃんが身を乗り出して手を挙げる。

 

 

「ドラで手が窮屈なら、ドラを増やせば良いんだよ!」

 

 

「カンをするってこと?」

 

 

確かにカンをすればカンドラは増える。玄ちゃんの能力はカンドラでも範囲内だ。

 

 

「そうそう!そうすれば、ドラが増えて選択肢が増えるじゃん!」

 

 

「でも、それってドラが切れないと余計に手が窮屈なんじゃ…」

 

 

「………あっ…」

 

 

灼ちゃんに指摘されて間違いに気づいた茜ちゃん。そう。例えドラが増えたとしても、それを切ることが出来なければ選択肢が増えたとは言えない。むしろドラがもっと集まって、より手が窮屈になる。

 

 

「じゃあ、ドラで待つというのはどうでしょう!これならドラの集まる玄さんの能力を活かせます」

 

 

「それだと、ドラが集まる前にテンパイしなきゃダメだよ…」

 

 

意見を出してくれた穏乃だったが、それも宥さんによってボツにされる。宥さんの言う通り、ドラが集まる前にテンパイしなければならず、かつその和了牌がドラでなければならない。配牌にドラが4枚なんてざらにある玄ちゃんにそれは厳しい。

 

 

「さっきからドラが集まるとか、そんなオカルトあり得ません!ドラは自分で集まったりしませんし、そう思うのは玄さんが無意識の内にドラを集めているだけです」

 

 

「ドラを集める…?そうだ!それだよノドカ!」

 

 

茜ちゃんが何かを閃いたのか、ポンっと手を叩く。

 

 

「茜ちゃん、何か思い付いたの?」

 

 

「ふっふっふっ…!私の脳が閃いたよ!」

 

 

席から立ち上がり私の隣に来る。そして一度咳払いしてから、思い付いたことを話し始めた。

 

 

「そもそも、ドラが勝手に集まるから困るんだよ!もしドラを自由に集めることが出来たら、ドラを切れないのは問題にならないよね!?これってどうかな?」

 

 

(なるほど…それなら…)

 

 

茜ちゃんの言ったように玄ちゃんが自分でドラを集めることが出来れば、ドラが切れないのは多少の問題にしかならない。さっき言っていたカンドラも有効な戦法になるし、玄ちゃんがドラ切りを恐れて出来なかったリーチもかけることが出来るようになる。ドラ待ちに至ってはリーチと一発を付けることも可能になりそうだ。そうなると、麻雀界最強のドラ使いと言っても過言ではない。

ただ、それはあくまでもドラを集めることが出来たらの話だ。

 

 

「う~ん、やっぱりそれは無理なんじゃ…」

 

 

「蒼空ちゃん…私やってみるよ…!」

 

 

茜ちゃんの案を却下しようとした時、玄ちゃんがその案をやってみると言い出した。意外な返事で思わず玄ちゃんの方を見る。

 

 

「玄ちゃん、出来るの?」

 

 

自分の能力、それを変えることなんて出来るのだろうか。そしてもしそれが出来ないと分かってしまった時、玄ちゃんはいったいどうするつもりなのだろうか。きつい言い方だが、出来ないことに時間をかけるぐらいなら、基礎を固めて行く方が良い。

玄ちゃんは弱点があると言っても、それは玄ちゃんを知っている人にしか分からない。初見の人は、まず勝てないだろう。決して弱いわけではないのだ。ならば、今すぐ変えようとしなくても良いのではなかろうか。

 

 

「出来るかどうかは分からないけど、やらないとダメなんじゃないかなって思うんだ」

 

「『待ってるだけじゃ何も変わらない』ってね…」

 

 

「えっ…?」

 

 

玄ちゃんが最後に呟いた言葉。どこかで聞いたことのあるセリフだった。だが、どこで聞いたか思い出せない。

 

 

「茜ちゃん。今のセリフって聞いたことある?」

 

 

いつも一緒の茜ちゃんに聞いてみる。

 

 

「さぁね~」

 

 

知らないと言っているが、絶対に何かを知っている風な茜ちゃん。教えてと頼んでも、「知らないよ~」の一点張り。どれだけ聞いても教えてくれなかった。

 

 

それから玄ちゃんは何度も何度も打ち続けた。打ち方が大きく変わったということは無かったが、どことなく雰囲気は変わって見えた。

 

 

 

 

 

 

-夜・松実館・玄サイド-

 

 

「そういえば玄ちゃん、今日の『待ってるだけじゃ何も変わらない』って言葉は何だったの?」

 

 

部屋でまったりしていたお姉ちゃんが夕方のことを聞いてくる。私はあの時を思い出しながらそれに答えた。

 

 

「えーっと。あれはね、蒼空ちゃん達に初めて出会った時に、蒼空ちゃんに言われた言葉だよ」

 

 

「蒼空ちゃんに?」

 

 

あれから1ヶ月ちょっとしか経っていないが、まるですごい昔のことのように思える。それだけ、濃い時間を過ごしたということか。

 

 

「私がまだ一人で部室の掃除をしてた頃、二人の女の子が部室に来たんだ。それが蒼空ちゃんと茜ちゃん。その時、皆が帰ってくるのを待ち続けるって言った私に、蒼空ちゃんにそう言われたの」

 

「『待ってるだけじゃ何も変わらない。だから…待つのはやめにして、その人達に会いに行きませんか?』ってね」

 

 

あの言葉を言われた時、後ろから背中を押してくれるような感じがした。こども麻雀クラブにいた時のような、周りに誰かいる安心感があった。だからこそ私は踏み出せた。一人で掃除をする木曜日から抜け出せたのだ。

 

 

二人が来てから、私の周りはどんどん変わっていった。穏乃ちゃんにも和ちゃんにも、それに憧ちゃんとも再会出来た。灼ちゃんとはまた麻雀をするようになったし、お姉ちゃんとはもっと同じ時間を過ごせるようになった。

 

 

「そうだったんだ。あの言葉にはそんな意味が…お姉ちゃんちょっと感動しちゃった」

 

 

お姉ちゃんが炬燵に入りながら微笑む。

 

 

「蒼空ちゃん達は玄ちゃんの救世主みたいなものなんだね」

 

 

「うん!こうやって皆と麻雀出来るのも、二人のおかげだよ!」

 

 

本当に二人には感謝してもしきれない。あの二人がいなければ、私は今でも部室の掃除を続けていただろう。下手をしたら、引っ越す和ちゃんと二度と会えなかったかもしれない。そう考えると二人は私の救世主であり、出会いの神様というわけだ。

その二人が作ってくれたあの場所を、私達は失うわけにはいかない。例えそれが、お母さんの言うことを破ることになっても。

 

 

(阿知賀の皆との楽しい未来のためにも、絶対にドラを使いこなせるようになる!!)

 

 

 

 

 

 

インターミドル県予選まで後26日




玄の能力強化の予感…!一応強すぎにはならないようにします。
ただ、それでも原作よりかは強くなる予定です。
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