蒼空と茜空   作:tieck321

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約3ヶ月ぶりの投稿です!
お待たせしてしまって申し訳ございません。

第22局です。やっとまともに麻雀します。と言ってもカットは多めですが…


阿知賀編 第22局 「第2シード」

-玄サイド-

 

 

 

 

先鋒戦 前半戦 東家 真澄(椿川) 南家 玄(阿知賀) 西家 美幸(剱谷) 北家 薫(東栄)

 

 

東1局 親 真澄 ドラ{三索}

 

 

玄 手牌{二萬四萬六萬三索三索六索九索一筒赤五筒八筒赤五索西白發}

 

 

(良しっ!ドラ4!今日も皆のために稼ぐよ~!)

 

 

{赤五萬}スッ

 

 

{一筒}トンッ

 

 

(緊張するけど、頑張らなきゃ!!)

 

 

 

 

 

 

-8巡目-

 

 

{三索}スッ

{白}トンッ

 

 

玄 手牌{二萬三萬四萬四萬赤五萬六萬四筒赤五筒六筒三索三索四索赤五索}

 

 

{三萬}をツモり、取っておいた安牌の{白}を切る。この状況でも相変わらずリーチはかけられないが、手牌は{三索}{六索}の両面待ち。{三索}ならタンヤオピンフドラ5で跳満。{六索}なら三色も付いて倍満で、火力には申し分ないだろう。しかも{三索}はドラなので次のツモで和了れるかもしれない。期せずしてドラで待つ、という最高の形を作れた。

 

 

{西}トンッ

{一萬}トンッ

{白}トンッ

 

 

誰かが{六索}を切ってくれるかもと思ったが、当たり牌は来ないまま私のツモに回ってきた。なんとなくだが全員にテンパイの気配がするので、皆慎重になっているのかもしれない。

 

 

{南}スッ

 

 

(違った…)

 

 

{南}トンッ

「ロン」

 

 

{六萬六萬七萬七萬八萬八萬七筒七筒七筒四索五索六索南} {南}

 

 

「1300!」

 

 

(け、剱谷さん!?)

 

 

私の牌で和了ったのは右の剱谷の椿野さん。流石強豪剱谷のエース。油断ならない。

 

 

 

 

一位 剱谷 101300

二位 椿川 100000

三位 東栄 100000

四位 阿知賀 98700

 

 

 

 

-阿知賀女子控室・蒼空サイド-

 

 

「あちゃ~、和了られちゃったか~。せっかくドラ待ちだったのに…はいソラ、お茶だよ」

 

 

「ありがとう、茜ちゃん」

 

 

じゃんけんに負けて買い出しに行っていた茜ちゃんが戻って来て、私の隣のスペースに座る。

 

 

「ま、それでもクロなら心配ないかな」

 

 

ウチのエースの玄ちゃんでも、序盤に振り込んでしまうというのはよくある事だ。しかし、玄ちゃんはいつもここから巻き返して来た。まだまだこれから…のはずなのだが、今回はどこか奇妙な違和感が対局室を覆っている気がした。

 

 

「…あの{南}の単騎待ち…不可解ですね」

 

 

和が画面に映る椿野さんの手牌のハイライトシーンを見て呟いた。

 

 

「確かに。剱谷は一巡前に{南}をツモって{七索}を切ってる。あの場面でならダマで通すにしても{四索}{七索}の両面待ちの方が、タンヤオも付いて良いはずなのに…」

 

 

その声に反応して灼ちゃんも画面を見て考え込んでいる。二人とも剱谷の椿野さんの打ち方に疑問があるようだ。

確かに、剱谷は全国への常連校。そんな学校の、しかもエースが凡ミスをするとは思えない。きっとあそこで{八索}を切ったのには何か理由が何かあるはずだ。そして違和感の正体は恐らくそれ。ここでそれが何かが分かれば玄ちゃんの手助けになるのだが、今は情報が少なすぎる。

 

 

 

 

 

 

「ツモ!1000、2000」

 

 

(また剱谷の人!どうしよう…親流されちゃったよ…)

 

 

一位 剱谷 105300

二位 椿川 99000

三位 東栄 99000

四位 阿知賀 96700

 

 

 

 

-実況放送室-

 

 

「ここで剱谷が二連続和了です!流石はシード校といったところでしょうか、三尋木プロ?」

 

 

「これまでの牌譜を見た感じ、剱谷の先鋒の子はかなりのやり手っぽいからね~知らんけど」

 

 

「ですが、一度目の和了は彼女らしくないミスがありましたね。緊張でもしているのでしょうか?」

 

 

「{七索}のことかい?ありゃ多分わざとだ」

 

 

「わざと、と言いますと、阿知賀女子が{南}を切ると分かっていたということですか?」

 

 

「いんや。{南}は阿知賀の自風でツモ切りな上に、場に一枚も見えてないんだから、誰かが抱えてるとしか思わないっしょ。それを切んのを予測すんなんて無理無理」

 

 

「では、どうして?」

 

 

「あの娘はきっと、{南}を切ることが分かってたんじゃなくて、誰も{四索}と{七索}を切らないことが分かってたんじゃね?」

 

 

「いや、私に聞かれても困ります…」

 

 

 

 

 

 

 

 

-玄サイド-

 

 

「ロン!3900!」

 

 

(また剱谷…)

 

 

一位 剱谷 109200

二位 椿川 99000

三位 東栄 99000

四位 阿知賀 92800

 

 

 

(ど、どうしよ~!どんどん差が開いちゃってる…)

 

 

 

 

東3局1本場 親 美幸 ドラ{中}

 

 

玄 手牌{一萬二萬九萬九萬一筒赤五筒赤五筒赤五索東西白中中}

 

 

(うう~ドラが多いけど嬉しくない…)

 

 

 

 

 

 

-阿知賀女子控室-

 

 

(今回はちょっと厳しいかな…)

 

 

画面の玄ちゃんの配牌を見ると既にドラ5。ドラだけで見るとこれ程嬉しいことはないのだが、一つ問題がある。ドラと繋がる牌が一枚もないのだ。

玄ちゃんがどんな時でも常に呼び寄せる{赤五萬}{赤五筒}{赤五索}の三枚は、面子になるために、三~七の数牌を二枚必要とする。その組み合わせは三四五、四五六、五六七、五五五の四種類。

そんなこと言われなくても当たり前だ、と思うかもしれないが、玄ちゃん、そして私達にとってはそれが意外に重要なのである。

 

 

知っての通り玄ちゃんはドラが切れない。それはつまり、手牌にドラを抱えるということ。すると、和了るためには赤ドラを含めた頭や面子を揃える必要がある。ここで先ほど述べた数牌だ。頭のことを考えないとすると、赤ドラ一枚を面子にするには数牌が二枚必要。そしてその組み合わせはさっきの4通り。もし赤ドラに縛られていないなら、自由な面子の揃え方は全部で55通り。他の人は55通りで、玄ちゃんはたった4通りになる。これを見れば赤ドラの面子を揃えることがいかに難しいか一目瞭然だろう。こういう点で見ると玄ちゃんは大分不利だと分かる。

しかも、今のように手牌に赤ドラが三種類来て、三~七の数牌が一枚も無ければ、面子を揃えるには最低でも6巡必要で、テンパイまでに時間を要する。さらに玄ちゃんは通常のドラも呼び寄せてしまうので、ドラが三~七でない限り、そのドラの処理にも時間が掛かってしまう。

 

 

(それでも…玄ちゃんなら…!)

 

 

「きっとやってくれる」画面越しに考察しか出来ない私は、そう信じるぐらいしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

-玄サイド-

 

 

「ツモです!30符2飜500、1000の一本場は600、1100」

 

 

「親被りだよも~」

 

 

(椿野さんを止めたのは、椿川の川添さん。でも、椿野さんは余裕そう…)

 

 

一位 劔谷 108100

二位 椿川 101300

三位 東栄 98400

四位 阿知賀 92200

 

 

 

 

 

 

-実況放送室-

 

 

「椿川の川添選手。親の連荘を阻止しました。しかし、依然トップは劔谷中学。順位に変動はありません」

 

 

「いや~予想はしてたけど、結構点差開いたねぇ~」

 

 

「そうですね。トップの剱谷と最下位の阿知賀女子の点差は約16000点。ですが、松実選手の火力を考えれば、一度和了れば一気に点差は縮むでしょう」

 

 

「確かに和了れられればね。和了れられれば…」

 

 

 

 

 

 

-前半戦終了・阿知賀女子控室-

 

 

『前半戦終了!一位はやはり劔谷中学。それに椿川、東栄と続きます。阿知賀女子はこの半荘一度も和了れず、大きく点を減らしました』

 

 

一位 劔谷 118900

二位 椿川 106500

三位 東栄 92300

四位 阿知賀 82300

 

 

「…」

 

 

テレビから流れる実況の声に対して、控室は静まりかえっていた。玄ちゃんの弱点がバレてしまい、いずれはこうなってしまうだろうと皆心の中では覚悟していたが、いざ現実になると言葉が出ない。

 

 

「は、早く玄ちゃんの所に行かないと!!」

 

 

沈黙を破り、宥さんが控室を飛び出た。私達もお互いに顔を見合わせ、その後に続くように玄ちゃんの下へと駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

-対局室前-

 

 

「玄ちゃん…!」

 

 

私達が対局室前に着くと同時に玄ちゃんも対局室から出てきた。俯いたその顔は言わずともエースとしての責任を感じていることが分かった。

 

 

「み、皆………ゴメン!点棒…いっぱい」

 

 

玄ちゃんは、体を震わしながら声を振り絞るように謝罪した。

 

 

「まだ前半戦です!これからですよ、これから!」

 

 

穏乃が懸命に励ますも、玄ちゃんの表情は変わらない。重い空気が流れる中、宥さんがゆっくりと近づき、玄ちゃんをぎゅっと抱きしめた。

 

 

「玄ちゃん…安心して。玄ちゃんの後ろには皆がいる。玄ちゃんが点を取られちゃっても、私達が取り返す。だから今は点のことよりも、自分が楽しむことを優先して」

 

 

私まで安心するような優しい声だった。

 

 

「そうだよ玄。私達はこれまで一杯玄に得点してもらったんだから、今度は私達が返す番だよ」

 

 

灼ちゃんも玄ちゃんに近づき微笑んだ。この三人の中には私ではまだまだ越えられない絆が存在するのだと実感した。

 

 

「それで言うと、私は皆から凄い借金をしてるね」

 

 

「そうだぞ、ソラ。ちゃんとその分私に何か奢ってよね!」

 

 

「茜ちゃんは出場してないでしょ!?」

 

 

「ハハハ」と皆の笑い声が響く。いつもの麻雀部だ。

 

 

「皆……!うん…私、頑張る!思いっきり楽しむ!」

 

 

皆のおかげで、完全とはいかないまでも玄ちゃんの顔に明るさが戻った。

 

 

「玄ちゃん、気づいているとは思うけど、剱谷の椿野さんには気をつけて。どこか違和感があるの」

 

 

元気を取り戻したタイミングを見計らい、私なりのアドバイスをする。

 

 

「うん、分かった!」

 

 

 

 

 

 

-美幸サイド-

 

 

後半戦 東家 美幸 南家 薫 西家 玄 北家 真澄

 

 

東1局 親 美幸 ドラ{二筒}

 

 

美幸 配牌{一萬一萬七萬九萬一筒三筒六筒九筒九筒北北發發中}

 

 

(ふむふむ…この配牌だったら{一筒}は早めに切らないとだね…)

 

 

{一筒}トンッ

 

 

配牌を見てある程度の道筋を立てる。今から狙うはチャンタや役牌といった所だ。

チャンタを狙うのに、なぜ{一筒}を切るのか。その答えは私の対面にいる松実玄だ。

 

彼女のチームの牌譜を地区予選から確認して、彼女にはある特別な能力が複数あることが分かった。その能力とは、"ドラが集まりやすい"、"他家にドラが来ない"それと、確証はないが"ドラを切ると何かしらのマイナスがある"の三つだ。それらの能力によって、今回ドラである{二筒}は彼女の下に集まり、私達は{二筒}を引けなくなる。つまり、{一筒}は刻子や国士無双でもない限り使えなくなる。したがってチャンタには使いにくい。

 

更にそれだけではない。{一筒}は彼女の当たり牌になる可能性も大きい。彼女の手元に{二筒}が集まるのなら、それを使い和了るために{一筒}と{三筒}を使う可能性が高い。後半になればなる程その危険性は高くなり、振り込んでしまうものなら、満貫以上の直撃を浴びることとなる。

 

 

{一筒}トンッ

 

 

(どうやら東栄も{一筒}を切ったみたい…)

 

 

前半戦を見る限り椿川も東栄も松実玄の能力とその防御方には気づいているようだ。だが、それを逆手にとって攻撃するとまではいっていない。防御主体のウチらのチームが稼ぐなら今しかない。

 

 

{九萬}トンッ

 

 

{八萬}トンッ

「チー!」 {七萬横八萬九萬}

 

 

美幸 手牌{一萬一萬三筒六筒九筒九筒北北發發中} {七萬横八萬九萬}

 

 

{三筒}トンッ

 

 

({三筒}も早めに処理しとかないとね)

 

 

{三筒}トンッ

 

 

(私のを見て合わせた感じかな…?)

 

 

{北}トンッ

 

 

(鳴けるけど、ここは見逃し)

 

 

{四索}トンッ

 

 

{發}スッ

 

 

美幸 手牌{一萬一萬六筒九筒九筒北北發發中} {發} {七萬横八萬九萬}

 

 

{中}トンッ

 

 

{一萬}トンッ

「ポンっ!」 {一萬一萬横一萬}

 

 

美幸 手牌{六筒九筒九筒北北發發發} {一萬一萬横一萬}{七萬横八萬九萬}

 

 

{六筒}トンッ

 

 

(さあ…どう出る?)

 

 

 

 

 

-実況放送室-

 

 

「剱谷の椿野選手、一足早くテンパイ!椿野選手の勢いは後半になっても止まりません」

 

「しかしながら、三尋木プロ、椿野選手は少々手を晒し過ぎかと思うのですが…」

 

 

「少々どころの話じゃないよ。あれじゃ、チャンタか純チャン、混一か清一って言ってるようなもんっしょ。実際に、{九筒}と{北}のチャンタ待ちだし」

 

 

「そうですよね。あれでは流石に…」

 

 

「流石にバレる。って普通ならそうなんだけどね~でも、剱谷は和了るぜ?」

 

 

「この状況でですか?一体どうやって…」

 

 

「まあ、見てなって。いつも通り普通に和了るからさ」

 

 

 

 

 

 

-対局室・美幸サイド-

 

 

「ロン!3900!」

 

 

{九筒九筒北北發發發} {北} {七萬横八萬九萬} {一萬一萬横一萬}

 

 

 

 

一位 剱谷 122800

二位 椿川 102600

三位 東栄 92300

四位 阿知賀 82300

 

 

 

 

(予想通り…)

 

 

私がわざわざチャンタを匂わせてまで鳴いたのには理由がある。それはもちろん手を早めるというのが一番の理由なのだが、他家を誘導するためというのも理由の一つだ。

私がチャンタだと分かれば、他家は一~三、七~九の牌と字牌を切りにくくなる。けれど、残りの四~六の牌も松実玄のせいで切りにくい。けど、どっちかは確実に切らなければならない。となると、松実玄の満貫と私の二翻、どっちに振り込むのがマシかは言わずもがなだろう。後はそれを狙って和了るだけ。

 

 

今回の場合はそれに加えて、松実玄が切った{北}を見逃すことで、{北}が安牌だと錯覚させた。松実玄が居なければ、エースである彼女達がこんな簡単な罠に引っ掛かることも無かったに違いない。失点を恐れる余り松実玄にだけ目がいってしまっている。だが、どんな状況だろうと冷静さを欠いてしまってはならない。周りを冷静に判断することが麻雀において重要でありエースの責任というやつだ。

 

 

(ノルマにしてた二位との20000点差は達成出来たし、後はこれをどこまで広げられるか…)

 

 

チラッと面子の顔を見る。三人とも自分のことで手一杯で周りを気にする余裕はなさそうだ。

 

 

(この程度のレベルなら、30000、いや35000ぐらいならいけそうだね)

 

 

各校のエースと言えども、所詮はノーシード。東栄はまだしも椿川と阿知賀とは踏んだ場数が圧倒的に違う。新人の力では名門の剱谷には遠く及ばない。

 

 

(じっくり、稼がせてもらうよ~)

 

 

 

 

 

 

-後半戦終了-

 

 

 

 

一位 剱谷 136700

二位 東栄 100300

三位 椿川 87900

四位 阿知賀 75100

 

 

 

 

-実況放送室-

 

 

「先鋒戦終了です!一位は剱谷で136700。二位との点差を36000近くまで広げました」

 

「二位の東栄は前半戦の三位から浮上。収支もプラスで終わらせました」

 

「三位の椿川はオーラスでの振り込みで三位に後退。ただ、収支は-12000程でまだまだ挽回の余地はあります」

 

「最後に四位の阿知賀女子。収支は-25000近く。他の三校に比べて大きく出遅れました」

 

 

 

 

 

 

-阿知賀女子控室-

 

 

『次鋒戦に出場する選手は対局室に集合して下さい』

 

 

「じゃあ、行ってくるね…」

 

 

場内アナウンスの放送で宥さんが立ち上がる。

 

 

「はい、宥さん、頑張って来て下さい!玄ちゃんのこともよろしくお願いします」

 

 

「うん。玄ちゃんのことは私に任せて」

 

 

先鋒戦に出場した玄ちゃんはまだ控室に帰ってきていない。本来なら次鋒戦の宥さんと入れ替わりで戻ってくるはずなのだが、まだ来てないということは、もしかしたら対局室にまだ残っているのかもしれない。

 

 

「じゃあ、改めて行ってきます!」

 

 

 

 

 

 

次鋒戦開始!




先鋒戦終了です。玄にはボコボコにされてもらいました。それでもまだマシと思える点数ですが…
次回は次鋒戦。宥の勇姿をとくとご覧あれ。
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