それと皆さん覚えてますでしょうか?第21局で登場したオリキャラの球飛ちゃんと銀花ちゃんのことを。今回球飛ちゃんが出てきます。お忘れの方は見直すことをオススメします。
さらに新たなオリキャラが一応登場します。と言っても名前のあるモブキャラみたいになる予定です。
-阿知賀女子控室-
『ロン!トイトイドラ1、3900』
一位 剱谷 131900
二位 東栄 96200
三位 阿知賀 94300
四位 椿川 77600
『剱谷の
『阿知賀は見事な追い上げだねぇ。次鋒戦で+19200。対して椿川は-10300とちょい厳しい結果かな~』
『ですがまだ次鋒戦。まだまだどうなるかは分かりません』
次鋒戦終了が告げられると共に、控室内の重苦しい空気は一気に解き放たれた。全員が体の力を抜き、心なしかぐったりしている。
対局中は全員がテレビに釘付けだった。その証拠に前半戦が終わるまで、誰も手元のお茶に全く手をつけていない。そのせいで喉はカラカラだ。
これまではある程度の余裕のある試合展開だったので、控室内がこれ程の緊張感に包まれることもなかった。しかし、やはり一度でも四位にまで落ちてしまうと、当然のことながらチーム内に今までの余裕の空気は生まれない。そんな中、特に玄ちゃんは終始落ち着きがないように見えた。先鋒戦の結果を考えれば無理もない。
「皆ただいま~」
前半戦後の休憩と同じく、宥さんが控室に戻ってくる。緊張でそわそわしていた私達に対して、宥さんは随分とリラックスしていた。
「宥さん、はい、これ」
宥さんが玄ちゃんの隣に座ると、すかさず灼ちゃんが湯飲みを手渡す。中身はお茶。もちろんホット。
「ありがとう、灼ちゃん」
宥さんはそれを両手で受け取り、冷まさずにそのまま口をつけた。湯気が顔に直撃しており、見たところまだまだ熱そうなのだが、さすがは宥さん、それでも平然とお茶を飲み続ける。
「あったか~い。でも、もっと熱い方が良いかな」
「…これでも結構熱めにしたんだけど…」
いつか宥さんの口から『熱いから冷ます』という言葉は聞けるのだろうか…
「昼食持って来たわよ!皆、テーブルを空けて」
「売店で美味しそうなの買って来ました!あっ、宥さんお疲れ様です!!」
佐々木先生と穏乃が会場の売店に昼食を買って戻って来た。本来なら次鋒戦中に買いに行く予定だったのだが、試合に余りにも集中し過ぎたため、次鋒戦が終わるまで、全員が買いに行くのを忘れていたのだ。そこで比較的暇な二人が宥さんと入れ違いで買いに出たのだ。
「…穏乃…何ですかこのお弁当…」
和が怪訝そうにレジ袋から一つのお弁当を持ち上げる。そこには大きく"王牌弁当!"と書かれていた。明らかに怪しげな弁当。味は絶対に保証されていないだろう。しかもそれは一つではなく、レジ袋の中には謎弁当らしき物がいくつか重なっていた。
これを見て何があったのかと穏乃に事情を尋ねると、どうやらインターミドルの期間中だからか、一風変わったお弁当が多かったそうで、どうせならと記念にそれを買ってきたらしい。
「"国士弁当"に"赤ドラ弁当"…これは"白弁当"…って、これ、お米しかないじゃないですか!」
次々とレジ袋からお弁当を取り出す和。取り出されたお弁当は全て麻雀関係。穏乃本人は良かれと思って買ったのだろうが、名前が名前だけにお弁当の中身に嫌な予感しかしない。
「あーゴメンゴメン!名前見て面白そうなの買ったから中身見てなかったや」
「はあ…あなたはいつも…もう良いです。買ってしまったものは仕方ありません…食べましょう」
和は四つのお弁当を一先ずテーブルに並べた。机には真っ白なお弁当に真っ赤なお弁当。更に13種類のおかずの入ったお弁当にオレンジ色の容器で何が入っているか分からないお弁当。本当に名前通りの内容でむしろ感心してしまう。
「先生の買ったお弁当はどんなのですか?」
そんな中、玄ちゃんがテーブルの側で棒立ちしている先生の持っているレジ袋を覗きこんだ。
「べ、別に私のは普通のお弁当よ!?」
先生が反射的にレジ袋を自分の後ろに隠す。その後皆に注目されながら、おそるおそるお弁当を四つ取り出してテーブルに並べた。並べられたお弁当はこれまで何度も見てきた定番のお弁当だった。
「えーっと、鮭弁当に日の丸弁当。海苔弁当に…これはハンバーグ弁当かな?…普通だね…」
茜ちゃんが順番に取りだしながら残念そうに呟く。恐らく、茜ちゃん的には穏乃の買った麻雀弁当のようなものを買って来て欲しかったのだろう。
「普通が嫌ならそっちの白弁当でも食べてなさい!」
先生は茜ちゃんの持っていたお弁当をひょいと取り上げて代わりにお米一色の"白弁当"を渡した。
「あ~!ウソウソ、先生!普通が一番だから!」
「「「あはは…」」」
食べ物のことになると一瞬で掌を反す茜ちゃんに思わず苦笑するメンバーであった。
「そういえば、蒼空さん。お弁当を買った時に不思議な人がいたんですよ!」
結局、お弁当は少しずつ皆で分けることにした。色々な味を楽しんでいると、穏乃がお弁当を買いに行った時のことを話し始めた。私は箸を止めて話に耳を傾ける。
穏乃の話によると、あの麻雀弁当を買い終わった際に制服姿でスマホ片手に絶叫する女の子がいたらしい。先生も心当たりがあるのか『ああ、あの娘ね。』と頷いていた。
「その人は何て絶叫してたの?」
一足先に食後のお茶を楽しんでいた宥さんが尋ねた。
「えーっと、確か『ちゃんと見極めや~!あ~!!何振っとんねん!』とか何とか…」
「それなら、口調からして大阪の人…なのかな?」
あまり確かなことは分からないが、典型的な大阪弁なので恐らく大阪の人だろう。奈良に来てから、関西の中での口調の違いが少し理解出来るようになった。
長野にいた頃ならきっと関西の人で一纏めにしていたので、口調の判別が出来たということは、それだけ奈良に馴染んできたという証だろう。そう思うとちょっとだけ嬉しかった。
「それにしても、『振る』って何のことだろう?」
玄ちゃんが首を傾げながら、そう疑問を口にした。それを聞いて皆が考え込む。すると数秒の内に和がその答えを導き出した。
「ここはインターミドルの会場ですし、『振る』と言えば"振り込み"では?」
「確かにそれなら…」
ああなるほど、と納得した。"振り込み"なら『何振っとんねん』が"どうして振り込んだんだ"と解釈出来なくはなく意味も通じる。『見極める』も当たり牌を見極めると考えればどこもおかしくない。
(でも、どこか違和感が…まあいっか…)
どうせその本当の答えを知ることはないだろう。そう皆が思ったのか、この話題は終わり、次の話題へと移った。
-千里山控室・竜華サイド-
「ああ~!!何であそこで振るかなあ…!!」
昼食を食べ終わり、怜とセーラと銀花がお手洗いに行っている間、球飛がスマホを見ながら唸っていた。
「なんや、どうしたん球飛?」
どうせ大したことではないのだが、一応部長として声をかける。
「聞いて下さいよ竜華先輩。この2番バッターが明らかなボール球振って三振になったんですよ」
球飛がスマホの画面を見せてくる。そこには高校野球の試合の映像が映し出されていた。今はちょうど3番バッターに回ったところだった。
「やっぱ野球関連かいな…ていうか、この2番バッターって打つの下手やけどバントが綺麗やて前言うとったやん。なら責めたらんときいや」
「でもでも1アウト2塁の場面で凡退はダメですやん!2ストライクやけど、打てへんのやったらここはアウト覚悟でもバントすればええのに!」
そう言ってまた唸り始める。私は野球のことがそこまでよくは分からないが、きっと球飛的に気に入らないプレーだったのだろう。派手好きな球飛にとって凡退は一番おもしろくないと思っているに違いない。
「あ~はいはい。野球の話はここまでや。今はこのウチら自身の試合に集中やで」
野球の話を続けると面倒くさいことになるのは分かっているので、早々に話題を切り替えた。しかし、話題を切り替えても、それはそれで面倒くさいことになった。
「え~『試合に集中』言われても、ウチらもうすぐコールド勝ちですよ?集中せんでも勝てますて~」
完全に球飛のやる気がない。その理由は球飛の言った通り、対戦相手の一つがもうすぐトビそうだからだ。原因は主にウチの1番と3番のせい。2人は思う存分暴れ回り、2人の収支の合計は+125600。シード校を差し置いて圧倒的1位だった。
さらに本人自身もとてつもない高火力プレイヤーで、大阪…いや全国一の高火力と言っても過言ではないプレイヤーなのだ。なので、やる気がなくなるというのも仕方ないものなのかもしれない。
「それでもや。ほら、アナウンスも丁度鳴ったし、ウチの4番やねんから行ってき!」
十中八九勝てる試合でやる気のない球飛の背中を両手で押し、部屋の扉に向かわせる。
「は~い…分かりました~」
渋々球飛は控室を出て対局室へと向かった。
「…ふう。ホンマ有利な状況やとやる気ないな球飛は…」
なかなか世話のやける後輩である。
-白糸台附属中学校宿泊ホテル・??サイド-
「ふむ…」
調査班から手渡された他校の牌譜を机に並べて眺める。その中には特徴のある打ち方をしている牌譜や、明らかに特別な力を持っていると分かる牌譜もある。
「どこか注目の中学ってあるの?」
牌譜を手渡した調査班の同級生が、適当な牌譜を手に取りまじまじと牌譜を見つめながら尋ねてきた。聞き方からしても半分ほどしか興味はなさそうだ。それもそのはず。彼女の本職は新聞部であり、その情報収集能力を買われて麻雀部との掛け持ちをしているだけなのだから。
「この中だと千里山中学だな…」
だが一応答えないわけにはいかないので、牌譜の山から千里山の名前を見つけて抜き取る。彼女からも要注意と言われた中学だ。
先鋒の江口セーラはバランスのとれた高火力プレイヤー。安い手を嫌い大物を狙う。そして和了る。単純に強い。
次鋒の園城寺怜。特になし。
中堅の立金銀花は…「
「ああ!今行く!」
私は牌譜の中から生立ヶ里の資料をまとめて、報告に来たウチの二年副将と部屋から退室した。
そしてその去り際に、調査班の同級生、
「そうだ七海、阿知賀の大将のデータが抜けてたぞ」
「えっ?あっ、いやそれは……行っちゃった…」
-阿知賀女子控室-
「じゃ、行ってくる」
「頑張ってね、灼ちゃん」
いつものように灼ちゃんを送り出す。現在の順位は三位でこのままだと二回戦敗退だが、彼女の顔に焦りはなく落ち着いているようだった。
しかし、試合に向かう人間が緊張しないわけはなく、表情にこそ表れていないが身だしなみにはしっかり表れていた。
「ふふっ。灼ちゃん、ネクタイ曲がってるよ?」
「えっ!?」
灼ちゃんは自分の首もとを確認して顔を赤く染める。急いでネクタイを絞め直そうとするも、慌ててうまく結べていない。
「私がやろうか?」
見かねて私がネクタイを絞め直そうと提案する。しかし灼ちゃんは『自分でやるから大丈夫!』と言ってそのまま続ける。意地でも自分でやるつもりなのだろうが、絞められる気配が全くない。
「灼ちゃん…遅れちゃうよ?」
「うっ…」
試合開始まであと10分を切っている。時間に余裕がないと分かり遂に堪忍したのか、灼ちゃんは綺麗に気をつけをして顎を少し上げた。
私は灼ちゃんの目の前まで歩き、少し屈みながらネクタイを一度緩めた。そして丁寧に整えながら、結び目を首もとまで引き上げた。
「これで良し!大丈夫?苦しくない?」
「だ、大丈夫…」
大丈夫と言うものの、俯きがちに答える灼ちゃん。少し心配になり、私が下から顔をのぞき込むと彼女と目が合った。だが、すぐに目線を逸らして私と目を合わせようとしない。
「じゃ、じゃあ、行ってくるね…」
「い、行ってらっしゃい」
そしてそのまま、そそくさと部屋を出て行ってしまった。怒っているような様子ではないと思うのだが、如何せん目を合せてくれないので正確な表情が読み取れない。
「わ、私何かしちゃったかな?」
「したね~。怖いね~無意識って」
やれやれとため息をつく茜ちゃん。周りの皆も小さくながらため息をついている。
「まあ、アラタは怒ってるわけじゃないから安心して」
「怒ってないなら良いけど…良いのかな?」
結局、私が何をしたかは、その後も分からなかった。
次回は中堅戦です。多分直ぐに終わります。というか、準決勝までこんな感じで行きます。
新キャラ七海ちゃん。七海は名字ではないので注意。
彼女は麻雀をしません。高校編でちょっと使いたいと思っています。使用確定ではないので登場なしになるかもしれません。