アフリカの夜が明けた。どんなに暗い時代でも、この戦場でさえも平等に明るい朝は訪れるのを誰もが知っている。先輩、と呼ばれている男が夜明けを見つめながら、タバコの煙をくゆらせていた。
若い方の男はまだコックピットで夢を見ていた。砂だらけのブランケットを被って。
『おい、起きろ。移動命令だ』
「...ん...おはようございます...」
若い兵士はゆっくりと伸びをしながらあくびをした。
『本隊からの連絡がきた。観測ポイントを変更しろということだ。準備しとけよ』
「そうですか...どこで待ったって一緒なのに...」
『さあな、だが命令だ』
「先輩、顔洗ってからでいいですか?」
『構わんが、早くしろ』
アフリカの荒野を2機のモビルスーツが行く。
何もない、植物すらろくに生えない土地。
ジムの足裏が地面を踏みしめる度に砂埃が舞う。
空は、相変わらず晴れている。嫌になるくらい青い雲一つない空だ。
「先輩、俺、思ったんです」
『なんだ』
「昨日の話、あったじゃないですか、スフィンクスのやつ」
『ああ、』
「人間はたしかに2本足なんです」
『当たり前だ。だがそれがどうした?』
「それは旧世紀も宇宙世紀も変わりません。でも今や、年をとって足腰が悪くなっても杖をつく必要なんてないんです。ただ浮いてればいいんです。宇宙にでてしまえば」
『ふん...』
「何が言いたいかっていうと、常識なんて簡単に変わっちゃうんだなって」
『よくわからんな』
「僕はニュータイプなんてもの、未だに信じられませんよ。でも、それがいつか常識になる時代が来るんでしょ?」
『お前の話を聞いてると頭が痛くなる』
「...ただの独り言です、気にしないでください」
『まあこんなに暑くちゃあ、頭がおかしくなるのも仕方ない』
「暑いですね、とにかく。コクピットハッチ開けているというのに。」
移動中ずっと若い兵士はスフィンクスについて考えていた。もう一人の兵士といえば、今日二箱目のタバコを吸いながら、若い女性のピンナップを眺めていた。
『まいったな、移動したはいいが、景色が何も変わらないじゃねえか』
「指定された座標はここで合ってるんですよね?」
『そうだ。間違いはない』
「困りましたね」
『...飯にするか。今日も缶詰だがな』
「先輩、今日は人工肉開けちゃいましょうよ!」
『勝手にしろ』
「やったあ!久しぶりの肉だな!」
『呑気だなお前は。飯の前に定期報告しろよ』
「言われなくてもやりますよ。報告はどうしますか?」
『いつものでいいだろ』
「《アフリカ戦線異常なし》、と」