今日も今日とて、何も変わらぬ一日だ。中年の兵士は何十回目かになる漫画雑誌のページをペラペラと捲っていた。若い兵士は退屈そうに空を眺めている。ときたま上空を通過するのはジオンの偵察機だ。
「今日も暇ですね、先輩」
『そうだな』
「今頃なにしてんだろーな...みんな...」
『お前、どこの出身だ?』
「7バンチです、サイド1の」
『そうか、サイド1も戦争で派手にやられたみたいだしな...』
「先輩のご家族は?」
『嫁と俺のガキは、サイド6に住んでる。多分な。戦争が始まる前に別れちまったからよくわからんが』
「へえ...なんかすみません」
『まあ、生きてりゃいいけどな』
「なんかかわいそうですね、先輩」
『どういうつもりだ』
「...」
『それにしても...あちいな』
「先輩、音楽かけてもいいですか?」
『いいが、一応無線はつけとけよ』
若い兵士は、ジオニック社のロゴの入った古いラジカセにスイッチを
いれた。
《Stairway To Heaven /Led Zeppelin》
「天国って...あるんですかね...」
『さあな』
「僕は...あると思います。理由はないんですけど、とにかく。あると思います」
『まあそんなものあったとしても、俺もお前も行けやしないんだがな』
「そうですね、」
『戦争が起きて、たくさん殺しすぎてしまったんだ。皆そうだ』
「悲しいですね...」
『それが戦争だ』
「はあ...」
中年兵士はコックピットから降りて、吸い殻を地面に捨てた。それから、何もすることもないので、モビルスーツを眺めていた。
『おい、お前のジム、膝関節に砂が詰まっちまってるぞ!ちゃんと整備しとけっていったろ?』
「はいはい、後でやっときますよ」
『おい!聞こえてんのか!?』
「そんなデカイ声出さなくたっていいのに...無駄にデケえ声なんだから、もう...」
『今なんか言ったか!?』
「わかりましたよ!今やればいいんでしょう?」
『いつ敵が来るか分かんねえんだぞ!?分かってんのか!?』
「どうせ来やしませんよ...少なくとも今日は...」
『それ終わったら、定期報告もやっとけよ』
「へいへい...」
若い兵士はいかにも面倒くさいという表情で地面に降りた。
「あちゃー...こりゃあ面倒なところに砂が...」
「先輩、手伝ってくださいよ!どうせ暇なんでしょ?」
『嫌だな、お前がやれ。自分の機体は自分で面倒見る、これパイロットの鉄則だぞ。習わなかったのか?』
それからしばらくして、中年の兵士は独り言のように呟いた。
『雨が来るな』