アフリカの大地に雨が降る。雨は大地に潤いを与え、新たな生命の源となる。しかし、今日の雨はそうではないことを二人は兵士の勘として気づいていた。
中年の兵士は、いつになく真剣な面持ちで無線に耳を傾けていた。
『...はっ...了解した』
「敵ですか?」
『そうだ、敵はあと20分でこの地帯に接近する。俺たちは指定されたポイントに移動して敵を待つ。』
「了解です」
『敵は、ザクが1機だ。しかし、おかしいと思わないか?《たったの》1機だぞ』
「...そうですか?ただの偵察ではないのでしょうか?」
『だといいが、な』
「...雨だと少し冷えますね..」
『そうだな、』
小雨の中をモビルスーツが進む。湿った土を無機質で大きな足で踏みしめる。ペトリコールが鼻をつく。
『あそこに、小さい丘が見えるだろ?そこで待機する。10時の方向だ。』
「了解、」
『お前は、180mmを用意しておけ。あと10分もない』
第05MS小隊、通称「スナトカゲ隊」に配備された陸戦型ジムには背部バックパックの代わりにウェポンコンテナが搭載されている。装備の補充のために基地に帰投する手間を省くため。ウェポンコンテナには作戦に必要な各種装備が収納されている。それは、この隊が敵の長期間の追跡と排除を目的に設立されているからである。
180mmキャノンは、後方支援用の長距離兵器である。非常に大型であるため、運搬時には4つに分解する必要がある。
「組み立て完了しました、待機でいいですか?」
『よし、索敵怠るな。敵が来たら、俺が仕掛ける。支援を頼む』
「はい」
「...すごく静かですね...敵がいるだなんて信じられない...」
『...』
空気が張り詰めている。若い兵士は自分の手が震えているのに気がついた。久しぶりの戦闘だ。
どれだけの時間が経っただろうか。いや、実際は数分の間だ。中年の兵士は耐えきれずに、胸ポケットのタバコの箱に手をつけようとしていたときだった。
わずかな振動がモビルスーツの機体を通して、操縦桿を握る手に伝わってきた。
『...来たぞ!...』
「う...撃ちますか?」
若い兵士が照準を覗いた先に小さな機影が見えた。それはこちらに近づいてくる。
『まだ撃つな、引きつけてからだ。』
敵の、ザクはかなりの速度でこちらに向かってくる。
『俺が...行くっ!!』
中年の兵士のジムは丘から身を乗り出し、90mmマシンガンを放った。敵は、不意をつかれたようにも見えたが、ひるまずに反撃を始めた。
「先輩、危ない!」
若い兵士はすぐさま引き金を引いた。一発目は当たらなかった。
「軌道修正...2度...!」
2発目はザクの肩アーマーに直撃した。
「よし...!」
しかし、次の瞬間、ザクとは違う方向からの攻撃が彼のモビルスーツを襲った。
右脚をやられたらしい。
「どこからだ...!?」
彼があたりを見渡すと、右前方の、かなり近いところにトラックが一台見える。よく見ると、敵の兵士が4人、対戦車砲のようなものをこちらに向けている。
「なんだありゃ....!?」
「先輩!聞こえますか!?敵は、ザクだけじゃない!ザクに気を取られていて気づかなったが、対戦車砲が一台と兵士が別に4人いる!」
『なんだと!?まるで特攻じゃねえか...俺はまだ交戦中だ!お前は一人でやれ!』
「クソっ...!死ぬ気かよ」
彼は撃てなかった。今まで、沢山の兵士を殺してきたはずなのに。いや、モビルスーツ戦では相手の顔が見えないから撃てたのだ。
敵は、また撃ってきた。今度は左肩に当たった。
「...ちくしょう!もう...諦めてくれ、終わったんだよ...戦争は!」
『おい!何してる!お前がやられるぞ!だから、撃て!』
味方の声がする。どうやらザクはやったらしい。
「もう一発、もう一発撃ってきたら...撃つ!」
照準をもう一度覗く、4人一度に吹き飛ばせる距離だ。
『おい!撃て!聞こえてんのか!』
「...」
次の瞬間、メインカメラが落ちた。頭をやられた。
「もう...!!」
若い兵士は、引き金を引いた。何も見えないが、生身の人間なら爆風で殺せるだろう。
大きな爆発音と、悲鳴が聴こえた。思わず目を瞑る。
『...おい、おい!大丈夫か?!』
「はい...」
若い兵士はしばらく何も喋らなかった。
中年兵士は、無線で戦闘報告をしていた。
アフリカの大地に静けさが戻った。雨は、まだ止まなかった。