スカイダイバー   作:高田正人

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第23話:Sabotage campaign3

 

 

◆◆◆◆

 

 

 炎上するプラントの外壁と、消火活動を行うプラントの人造たち。

 

「この……」

 

 その二つを見つめながら、クマの旧人の運転手は地べたに座り込んだまま拳を振り上げ、怒声を張り上げた。

 

「このクソガキどもがぁぁぁっ!」

 

 隣にはピザの箱とノンアルコールのビールの缶がある。

 

「遊ぶなら勝手に自分たちだけで遊んでろぉ! 俺を巻き込むなぁっ!」

 

 先程まで操り人形にされていた運転手だったが、タンクローリーが外壁に衝突する直前にアシッドレインと一緒に脱出していた。もっとも、今彼ができることと言えば、企業間闘争のとばっちりを受けた我が身を呪いつつ悪態をつくのが関の山だ。彼を放置してプラントへと歩き出したアシッドレインが、その罵声を背に浴びて振り返る。

 

「ゴメンゴメン、後でバブルヘッドをあげるから許してよ。ね?」

 

 いたずらっぽくウインクするアシッドレイン。その可愛らしい仕草に、運転手は不服そうだが拳を降ろす。

 

「……レディ・レタスとミセス・コールスローのセットを揃ってよこすなら許してやる」

 

 精一杯の要求に、アシッドレインはにっこりと笑って見せた。

 

「了解。探しておくね♪」

 

 

 

 

 シェリス・フィアによって開けられたプラントの正門。そこから次々と突入してきたのは、思い思いの武装に身を固めた企業傭兵たちだった。ハッカーが数理を駆使して情報戦を仕掛けるなら、企業傭兵たちは数理を駆使して物理的な戦闘を担当する。迎撃するプラントの武装警備員たちとたちまち銃撃戦が始まった。だが、事態の趨勢は既に明らかだ。

 

「はいはい、パートの方々は向こうに退避して下さいね。危ないですよ」

 

 プラント内部。いつものことだと言わんばかりの顔で怠そうに避難していくパートたちを横目に、一人のエルフの男性が通路の真ん中に仁王立ちになる。エルフ特有の涼やかな容貌と長身、さらに穏やかな口調。

 

「今から――」

 

 しかし、彼が今まさにトリガーを引いたのは……。

 

「――コイツが文字通り火を噴いちゃいますからねぇっ!」

 

 違法な強化パーツを手当たり次第に搭載し、利便性や機能性など完全に捨て去った馬鹿でかい異形の火炎放射器だった。燃料とあらゆる発火と炎上と高熱の数理が滅茶苦茶に混ざり合い、問答無用の業火となって廊下を覆い尽くし、今まさに突撃してきた武装警備員たちの一団を丸ごと呑み込む。

 

「ビンゴォ! ほらほらどうしましたぁ? もっと焼けに来て下さいよぉ!」

 

 炎の数理に取り憑かれた放火魔の表情でエルフは叫ぶ。優美な顔が台無しだ。

 

「やり過ぎだ、ファイアアラーム」

 

 呆れた声を上げるのは、隣にいる彎曲した二振りのブレードを持つドワーフの女性だ。背格好と顔立ちは子供だが、香草をくわえた立ち姿は渋い成人のそれだ。

 

「閉所ならこの方法が最適でしょう!? 気取るのは無しですよソードフィッシュ!」

 

 異常に高まったテンションで抗議する相方に、ドワーフはため息をついた。火炎放射器の凄まじい高熱は廊下そのものを融解させ、直撃を受けた武装警備員たちの姿はどこにもない。

 

「お前の無差別すれすれの放火癖に付き合う身にもなれ。私は大いに迷惑だ」

 

 業火の放射が終わると同事に、片手に盾を、もう片手に拳銃を構えた武装警備員が突撃してくる。装填の合間を縫って強引に間合いを詰めてくるつもりだ。

 

「結局私が尻ぬぐいだ」

 

 即座にドワーフは走り出す。自らの矮躯を活かし、すれ違い様に体を回転させて武装警備員の足を斬る。倒れたその首筋に、さらに容赦なく彼女はブレードを振り下ろした。

 

 武装警備員の腕の汎用デバイスに表示されていた体力がゼロになるのと同時に、その体は無数の情報キューブとなって四散しつつ消えていく。これが転移。寿命以外の死を認めない公議によって組み込まれた数理だ。武装警備員の肉体と情報は別の場所に送られ、二十四時間かけて再生されるだろう。この都市での闘争はあたかもゲームである。

 

 

 

 

「どうかしら?」

 

 プラントの制御室に入った俺を出迎えたのは、一人のオーガのハッカーだった。

 

「ああ、コンフィズリー。目標達成だぜ。ほら」

 

 オーガは一枚の仮想スクリーンを指で弾いて俺によこした。

 

「あんたもどれか持って行けよ」

 

 そこに写っているのは、せっせとバブルヘッドの入った箱を開けて中身を掻き出すハッカーと企業傭兵たちだ。

 

「食品を運ぶトラックの方はどうなってるの?」

 

 なかなかに浅ましい光景から俺は目を逸らし、俺はさらにオーガに尋ねる。

 

「そっちは遅れてる。まずいな。いつまでも本社を欺くのは無理だ。何しろ依頼通り派手にやってるからな。そろそろ企業警察が本格的に動き出すはずだぜ」

 

 柱のように太い腕でオーガは腕組みし、俺を見る。

 

「撤収するか?」

 

 戦闘に長けた種族に似合わず冷静な判断をする奴だが、俺は首を左右に振る。

 

「いいえ。待つわ」

 

 そう言うと、オーガは牙を見せて獰猛に笑う。前言撤回。やはりこいつは戦闘に長けた種族だ。

 

「おいおい。企業警察に喧嘩を売るのかよ。相変わらずあんた、ぶっ飛んでるな」

 

 俺は澄まし顔でこう言ってやった。

 

「こう見えて私、あれが嫌いなの」

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

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