スカイダイバー   作:高田正人

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第27話:Tin god

 

 

◆◆◆◆

 

 

「お仕事の依頼かしら?」

 

 俺は男たちを上から下まで素早く確認する。見たところ、ハイエンド教会の武装宣教師に近い外見だ。だが、宗派が違うのかデザインが微妙に違うようだ。少なくとも二人は機体。全員が武装していることは間違いない。

 

「我々と一緒に来てもらおう」

「聞こえなかったのかしら? 私は仕事の依頼なのかどうかを聞いたの」

 

 俺は杖で地面を突く。

 

「君が余計なことを言う必要はない」

 

 苛立ちを態度で表しても、連中は傲慢に構えたままだ。

 

「我々は君の頭の中はいらない。その体だけが入り用だ」

 

 何者だ? 新手の誘拐犯かと思ったが、ボーダーラインの連中ならもっと面白い方法を取る。体――と聞けば思い出すのは一つ。あのエードルトのまじめくさった腹の立つ顔だ。

 

「まあ恐ろしい。どうか手荒なことはしないで下さい」

 

 俺はわざと怯えた態度で男たちに近寄る。男たちは顔を見合わせ、一人の明らかに機体の奴が俺の腕をつかんだ。

 

「――とでも言うと思ったかよ!」

 

 腕に這わせておいた有線を機体に接続。面倒臭いから破壊構文を一気に暴れさせる。そいつは感電したネコのように、悲鳴を上げて俺を離した。

 

「こ、こいつ何をする!?」

「大人しく捕まるかよ! お前ら阿呆か!?」

 

 居丈高に出れば、相手は何でも従うと思っている。間違いない、こいつらはエードルトと同類のクズどもだ。俺を捕まえていた奴は、怒りで顔を真っ赤にさせながら両腕を変形させる。中の銃身を俺に向けた瞬間、肩口付近のパーツが爆音と共に爆ぜた。破壊構文の効果だ。

 

 両腕を失ってあ然としたそいつの首筋に有線を突き立て、意識をセントラル銀行の防犯回廊に強制的に飛ばして無力化する。

 

「お前らを見ていると思い出すんだよ。俺をこんな体にした気に食わない奴のことをな」

 

 くずおれるそいつの後頭部を蹴ってやると、ほかの奴の顔色が変わった。一丁前に仲間意識はあるらしい。

 

「やれヴィディキンス!」

 

 上半身のアーマーを展開して突進してくる機体の巨漢に、俺は自分の人造をけしかける。

 

「相変わらずあなたは私を戦闘にしか用いませんね。我が愛しくも脳まで筋肉のマスター」

 

 馬鹿の一つ覚えのように下らないことを言いつつ、ヴィディキンスは正面からそいつを受け止め、見事な一本背負いで地面に叩きつけた。

 

 別の一人が、俺の前で腰のブレードを抜いた。俺も自分の杖を振るい、蛇腹の形状に変形させる。鞭として使うように見えて、実際は接触することで起動する攻勢整式が本命の武器だ。相手は俺の構えを見て、明らかに侮った顔になった。そりゃそうだろう。か弱い女の子が、大の大人に武器を構えているんだからな。だが、別にどうでもいい。

 

 そいつは俺に向かってブレードを振り上げ――そのまま絶叫を上げた。

 

「緊急事態! 緊急事態! 当社の権利が侵害されています! 訴訟! 訴訟!」

 

 キンキンとやかましい声が響く。そいつに高出力スタンガンの電流を浴びせたのは、先程俺につきまとっていたセールスのドローンだ。もちろん、俺がハッキングして操っているのだが。

 

 何かが足首に触れ、俺は視線を下に向けた。右脚にヘビのように黒いワイヤーが巻き付いてきている。その先端がポケットの教書に強引に接続する。ヘビならば尾のある方向に目をやると、法衣を着た一人が機体化した手首からワイヤーを伸ばしている。

 

(ハッカーか。面白いじゃないか)

 

 教書を通じて、俺の意識にハッキングが仕掛けられてきた。

 

 蛇毒のように放たれる論理病源。真っ先に俺の五感を封じようと、神経を経由して攻撃を仕掛けてくる。そのことごとくに迂回路を形成しつつスキャン。構成する構文を読み取り自動的に抗体を形成。その間にこちらから反撃する。帯電構文をこれ見よがしに教書のメモリーから引き出して読み込ませると、相手のハッカーが分かりやすく焦った。

 

 感電しないように専用防壁を構築していくが、それ自体が致命的な間違いだ。俺が帯電構文を捨て、代わりにアシッドレインからもらった汚染数理を流し込んでやると、ハッカーは上体をのけぞらせて白目をむいた。あっさりと気絶している。

 

(専用防壁では精神に作用する数理は防げないんだよ!)

 

 俺は力を失ったワイヤーを脚から振り払って笑う。

 

 残るは三人。内一人は最初に俺に話しかけてきた、恐らくはリーダーだ。二人は武装宣教師の法衣を硬質化させて装甲に変え、リーダーを守る姿勢に入っている。重い音がしてそちらを横目で見ると、ヴィディキンスが完全にノックアウトされた機体の巨漢を無造作に放り投げた音だった。両手両脚の関節が全部粉砕されている。

 

「綺麗になりました」

 

 なぜか嬉しそうな声でそう言うヴィディキンス。こいつ、何かおかしな情緒権利をインストールしているんじゃないだろうな。

 

「……ここまで乱暴な悪漢だとは思わなかったぞ」

 

 そのリーダーがいきなりとんでもないことを言ってきた。

 

「はあぁあ!? いきなり何を受信していらっしゃるんですか!? 今すぐ病院に入院されてはいかが!?」

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

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