木葉と雄一が幻想郷を見回って次の日
雄一「木葉さん」
木葉「ん?何?」
雄一「あの…木葉さんはどうして…いや、どうやって強くなったんですか?」
木葉「え?」
雄一「実は昨日この世界を見て回った時に思ったんです。この世界の人は外から来た僕を快く受け入れてくれた。このまま元の世界に帰ったとして、以前の生活に戻るだけで何も進展しないんじゃないかって思って」
木葉「…で?」
雄一「僕はこの世界に残りたいと思いました。でもそれだと意味が無いと思いました」
木葉「…」
雄一「僕はこの世界の人が好きです。それと同時に元いた世界の人は嫌いです。僕をいじめる人がいるので」
木葉「…」
雄一「僕はその人たちにいじめられるのは嫌です。舐められたくないです。僕はその人たちに勝ちたいです」
木葉「…勝つって?」
雄一「…え?」
木葉「勝つってどういう事?喧嘩して勝つの?」
雄一「…え…それは…」
木葉「いじめられるのが嫌。だから舐められないように強くなりたい。その人たちに勝ちたい。これだけ聞けばその人たちに喧嘩で勝ちたいって言ってるように聞こえるよ」
雄一「えっと…」
木葉「ん?」
雄一「間違いでは…ないです」
木葉「…君は」
雄一「…」
木葉「もっと賢く勝つ方法を導き出せるんじゃないかな」
雄一「!」
木葉「ひとつ聞くよ」
雄一「…何でしょうか」
木葉「仮にその人たちに喧嘩で勝ったとして、その後に残るものは何?」
雄一「その後に…残るもの…」
木葉「そう。その人たちが君をいじめる。だから僕はその人たちに暴力を振るって黙らせた。そうなったとしてその後はどうなるの?」
雄一「僕は…黙らせようとなんて…」
木葉「ううん。君がそう思ってなくてもそれを見ていた周りの人だったりそれを受けた人たちはそう思うよ」
雄一「…」
木葉「考えてみて。相手を殴ってスッキリするのは自分だけ。いや…自分もスッキリしないな。特に君のような人はね」
雄一「どういう…事でしょうか」
木葉「…君が仮に人を殴ったとして、その後に"殴った"という罪悪感が君を苦しめるんじゃないかな」
雄一「!!」
木葉「"行動"ってね、案外単純なんだよ。その人が起こす行動の原動力って何か知ってる?」
雄一「えっと…分かりません」
木葉「…"衝動"だよ」
雄一「衝…動…」
木葉「そう。衝動。先のことを考えずにただただ気持ちの動くままに行動すれば失敗するよ。それは何故か…答えは簡単。"目的がそこにしかないから"」
雄一「目的?」
木葉「うん。じゃあ聞くよ。君はその人たちに勝ってどうするの?」
雄一「え…えっと…」
雄一はしばらく考えた。
木葉「ね?答えが出ないでしょ?」
雄一「!!」
木葉「じゃあ何故答えが出ないか…この答えも簡単。君の目的は"その人たちに勝つ"しかないから」
雄一「…」
木葉「勝ったあとのことを考えた?」
雄一「いえ…」
木葉「そこが問題なんだよ。先のことを考えないと後で後悔するのは自分だよ。今僕はこれをやる!って思って取り組んでもそれが活かせない時だってあったと思う。なぜなら、"それしか取り組んでないから"。見るべき視野が狭い人にありがちだよ。でも君は賢い。君が行動を起こす前に誰かに相談した。これがあるとないとでは大きく差が出る。君は前者。人に相談するということは自分の選択を再確認することと同じ」
雄一「…じゃあ…僕はどうすれば…」
木葉「君の選択はその人たちに勝つことだけしかない?」
雄一「…はい。今自分で色々と考えましたが…それしか出ませんでした」
木葉「なら勝つことに焦点を置いてみよう。勝つにも色々あるよ。当然喧嘩で勝つというのもひとつ。他にも耐え抜く。誰かに相談する。とかね」
雄一「…でも…強くなりたいです」
木葉「…じゃあ聞くよ」
雄一「…はい」
木葉「強くなってどうするの?得た力をどういう風に振るの?」
雄一「…それは」
木葉「…答えは身近にあるよ」
雄一「…」
木葉「…いつも君を気にかけて、いつも君のことを思って、いつも君のそばにいる」
雄一「…」
木葉「そして現在、同じ屋根の下にいる人物」
雄一「!!」
木葉「…君は振るう力をどういう風に使うべきかを考えた方がいいよ」
雄一「…なっちゃん」
木葉「…そう。得た力をただ相手を傷つけるだけに使うのは良くない。傷つけたあとはどうなるのか。君なら分かるんじゃない?」
雄一「…なるほど」
木葉「でも今の君が元の世界に戻ったとしても生活は変わらない」
雄一「…」
木葉「君が変えたいなら…いいよ」
雄一「!!」
木葉「あの子を守れるだけの力を…つけてあげる」
雄一「本当ですか!?」
木葉「あぁ。ただし、力の使いすぎはダメ。分かった?」
雄一「あ、ありがとう…ございます…」
木葉「さて、いつやる?今からやる?」
雄一「お願いします!」
木葉「じゃあ早速やろうか」
雄一「はい!」
木葉と雄一は外へ出た。
会話を聞いていた二人は…
千夏「木葉さん…すごいですね」
霊夢「まぁあれが木葉のいい所でもあり悪いところでもあるわね」
千夏「え、どうしてですか?」
霊夢「優しいのはいいことよ。でも、ああいう人ほど何するか分からないものよ」
千夏「そ、そうなんですか?」
霊夢「…えぇ。そうよ」
千夏「でもそんな風には見えませんが…」
霊夢「…今はね。でも少し前にあったのよ」
千夏「その話…聞いてもいいですか?」
霊夢「んーここで起こったことならいいわよ」
千夏「じゃあ…お願いします」
霊夢「…そうね。あれは朝早い時間だったかしら。その日は木葉が怪我を治して次の日だったのよ。それでその日にレミリアっていう吸血鬼が来たのよ」
千夏「吸血鬼…そんなのがいるんですね…」
霊夢「ここじゃ珍しくないわ。他にも色々いるから」
千夏「そ、そうなんですね」
霊夢「それでね、そのレミリアが木葉が朝食を食べてる時に攻撃したのよ」
千夏「え…」
霊夢「不意打ちっていうのかしら。木葉が朝食を食べてる時にいきなり攻撃したらしいのよ」
千夏「こ、木葉さんは…」
霊夢「…当然怪我をしたわ。頭から血を流して少しの間目を覚まさなかったわ」
千夏「え…」
霊夢「でも一応目は覚ましたわ。でもその後、木葉は怒っちゃってレミリアを怪我させたのよ」
千夏「じゃあその…レミリアさんは…」
霊夢「永遠亭にいる医者に診てもらったわ」
千夏「永遠亭?病院みたいなところですか?」
霊夢「え?何それ。よく分からないけど怪我した人が行くところよ」
千夏 (病院だ)
霊夢「レミリアは吸血鬼だから回復も早かったのよ。だからその日の夕方に謝りに来たわ。その時の木葉はまだ少し怒ってる感じがしたわ。でもその後二人は和解して今に至るのよ」
千夏「そ、そんな事が…」
霊夢「えぇ。木葉は優しいわ。ずっといるから分かる。でもそんな人が怒ったら何するか分からないわ。自分をコントロールできないのね」
千夏「…」
霊夢「あなたはあの子に強くなって欲しいって思う?」
千夏「雄一くんですか?」
霊夢「そうよ」
千夏「…分かりません」
霊夢「…」
千夏「確かに雄一くんはいじめられてました。雄一くんはその度に泣いてました。でもそれは先生や家族の人には言ってないそうなんです。でも私にだけ言ってくれました。私が教室に戻った時に1人で泣いてたところを見たので。雄一くんは自分から言ってくれました。私はそんな雄一くんに負けてほしくないんです。雄一くんは強い人です。いじめる人が雄一くんより弱いんです。だがら…今のままでもいいと…思いました」
霊夢「…そう」
千夏「…はい。今の雄一くんの支えになりたいんです。雄一くんには喧嘩はしてほしくないです…」
霊夢「…あなたはあの子の事が好き?」
千夏「!?」
霊夢「あなたの話を聞いてるとそう思うの」
千夏「…そうですね。優しい雄一くんが…私は…好きです…ね」
霊夢「…そう。分かったわ」
千夏「…」
霊夢「ちょっと木葉と話してくるわ」
千夏「え…」
霊夢「大丈夫。あなたの事は言わないわ」
千夏「そ、そうですか」
スッ
スタスタスタ
霊夢は木葉のところに行った。
千夏 (雄一くん…)
霊夢「木葉」
木葉「ん?」
霊夢「ちょっといい?」
木葉「いいよ」
スタスタスタ
木葉と霊夢はその場をあとにした。
木葉「何?」
霊夢「ねぇ木葉」
木葉「ん?」
霊夢「あの子に何教えようとしてるの?」
木葉「…なんだと思う?」
霊夢「まさか…喧嘩させるんじゃ…」
木葉「させないよ。大丈夫」
霊夢「じゃあ何?」
木葉「…自分とあの子を守るための力と知識を教えてるんだよ」
霊夢「あの子って…千夏ちゃん?」
木葉「そう。彼はいじめられている。いじめた人に勝ちたいらしいんだ。でも勝つために力を得たとしてその後はどうするのかを彼なりに考えさせたよ」
霊夢「それで…」
木葉「…彼は答えを見つけたよ。今はそれを目標に頑張ってる」
霊夢「じゃあ…喧嘩は…」
木葉「大丈夫。俺がさせないから」
霊夢「そう…」
雄一「木葉さーん!」
遠くから雄一が木葉を呼ぶ。
木葉「霊夢。心配しないで。あの子にも伝えて。彼に暴力は振るわせないからって」
霊夢「え、えぇ…分かったわ」
スタスタスタ
木葉は雄一のところに行った。
霊夢 (木葉…)
〜物語メモ〜
霊夢の心配事
霊夢はこれまで色々な木葉の顔を見てきた。
その中には怒りの顔も含まれている。
だから霊夢は千夏に「優しい人は何をするか分からない」と言った。
実際木葉はレミリアに怒った。
他にも東方十二想で十二天星に対して怒りをあらわにしていた。
霊夢はその顔に対して恐怖を覚えている。