カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…
時は巻き戻されていく。
光「…」
カチンッ!
やがて時の巻き戻しは止まった。
光「…」
長津「あ…あれ…」
条乃「え、どうなってんだ…」
三室「さっきまで死にそうになってたのに…」
矢巾「平気ですね…」
双葉「…」
ジェミニ「…」
ライブラ「…」
光「みんな」
早乙女「光!」
立花「光。無事だったのか」
光「いや…すまん。無事じゃないな」
本庄「どういう事ですか?」
光「…ライブラなら…分かるんじゃないかな」
ライブラ「…」
ジェミニ「やはりそうでしたか」
双葉「どういう事ジェミニ」
ジェミニ「…逆進…時を戻したんですね?」
光「…正解」
ライブラ「…」
光「ごめんねライブラ。これしか救える方法がなかったんだ」
ライブラ「…私、主に言いましたよね。約束しましたよね。均衡を司ってる私たちが自分から均衡を崩そうとするのは禁忌だと。その禁忌には逆進も含まれていると」
光「…あぁ」
ライブラ「どうするんですか。傾いた分、誰が修復するんですか」
光「…」
アクエリアス「ライブラ。そうやって主を責めるのは良くないでしょ」
ピスケス「そうだよ…この人は助けるために使ったんですから」
ライブラ「…あなたたちはその代償を知らないからそう言えるんです」
レオ「代償…か…」
ピスケス「でも!」
ライブラ「ピスケス。この技の代償は能力の消失なんですよ」
ピスケス「え…」
星座たち「!?」
十二天星「!?」
その場の全員が驚いた。
光「…」
ライブラ「私は主に口酸っぱく言ってきました。ですが、今回はそれを無視して逆進を使った。責任はあるはずです」
光「…すまん」
本庄「光さん…」
長津「光…」
アリエス「だがライブラ。お前の主の能力は消失していない。だから別に問題ないだろ」
条乃「確かに。能力は消えてなさそうだな」
倉本「そうですよね」
ライブラ「問題の論点がズレてますよアリエス。私が言ってるのはなにも能力の代償のことではないんです。逆進を使ったことを言ってるんです」
ヴァルゴ「でもそうするしか無かったんじゃ仕方ないでしょ…」
ライブラ「じゃあ考えてください。あなたは人の命を取りますか?世界の均衡を取りますか?」
タウラス「人の命だろ」
ジェミニ「…」
サジタリウス「俺もそうだな」
ライブラ「じゃあお二人に聞きますよ。人を助けたとして、崩れていく世界にその人たちを帰した場合、その人たちはどうなりますか?」
タウラス「…」
サジタリウス「…」
ライブラ「世界とともに消えちゃうんじゃないですか?逆に世界の均衡を取ってください。世界が救われればその人たち以外は救われるじゃないですか」
スコーピオ「じゃあお前の言うその人たちはどうするんだ?」
ライブラ「どうにもできませんよ」
スコーピオ「…」
ライブラ「選択の重さが違うんです。人の命を選び、世界とともに消えるのか。それとも、世界を選び、残りの人を救うか」
カプリコーン「ねぇライブラ。どうしたのよ…いつものライブラじゃないわよ?」
ライブラ「いつもの私とはどういうものですか?」
カプリコーン「ちゃんと周りを見て行動したり、人に気遣えるじゃない。今はそれがない。現にライブラの主は傷ついてると思うよ。自分がした選択を全否定され、助けたつもりが感謝されないなんて」
ライブラ「…」
カプリコーン「ねぇライブラ。私たちがいるんだから私たちも頼って欲しいな。均衡が崩れても私たちが手伝うから…だから、主さんを責めないであげて」
ライブラ「…」
ライブラは光を見た。
カプリコーン「お願い…ライブラ」
ライブラ「…分かりました」
ライブラは光の所へ行った。
ライブラ「主、すみませんでした。助けてもらったのに…逆進の効果を知ってるが故に怖かったんです…自分の存在が消えてしまうのが…」
光「どういう事…」
ライブラ「逆進は使うと能力が消失してしまいます…そうなると十二天星と十二星座の共存関係が崩れてしまうんです…そうなってしまうと十二天星は力を失い、私たち星座は死んだも同然なんです」
光「…」
ライブラ「私が逆進を禁忌だと言っているのはそこなんです。逆進を使えば時間の巻き戻しは可能です。ですが、時間は常に前に進んでいます。それを妨害し、巻き戻すのは均衡を司る天秤座からすれば均衡を崩すものとして認識するんです」
光「それで…」
ライブラ「…過去に1度、逆進を発動させた人がいました」
光「!!」
ライブラ「彼は人一倍の正義感の持ち主で常に人を助ける道を考え、選びました。十二星座たちが離れ離れになるのを防ぐため、死ぬ直前に逆進を使いました。当然、時間は巻き戻り、死を回避することができました。ですが、その代償は大きかったんです。能力は消えてしまい、私も存在出来なくなりました」
光「…」
ライブラ「均衡を司る星座が消えるだけでなく、逆進の代償も受けたおかげで世界はとてつもなく傾きました。逆進を使ったあとの彼の言葉には"これで死なずに済む。俺が死んだら元も子もないからな。死んだやつはあとで生き返らせればいいだろ"とありました」
光「…」
ライブラ「今の世界があるのはあなたのお母さん…天野 沙耶がいたからですよ」
光「母さんが?」
ライブラ「はい。傾き続ける世界を見て、自分からその傾きを修復すると名乗りをあげたそうですよ」
光「母さん…」
ライブラ「そして彼女は有言実行しました。傾いた世界は元に戻り、平和な日常が訪れました」
光「…」
ライブラ「でも、それは"見えていた部分"なんです」
光「見えていた部分?」
ライブラ「はい。世界が修復された事実しか見られていなくて、その裏で沙耶がどれだけ頑張ったか誰も知らない。私以外は」
光「…」
ライブラ「沙耶がここまで頑張ったのにそれを感謝する人はいない。沙耶は言ってました。"知らない事実があるからこそ人は救われたことに気づかない。それに気づけるのはそばにいる人だけだよ"と」
光「…」
ライブラ「沙耶は顔には出てませんでしたが心の中では泣いてましたよ。気づいて欲しかったって」
光「…」
ライブラ「私はその時、心が痛みましたよ。それと同時に二度と繰り返さないよう沙耶と一緒に逆進は禁忌だと決めました」
光「逆進を使ったのは誰…」
ライブラ「あなたのお父さん…天野 真也(あまの しんや)ですよ。あなたの二つ前の十二天星 第七星座です」
光「!!」
ライブラ「ですが、彼はもう亡くなりましたよ。均衡を崩した罰として」
光「…そうか」
ライブラ「あなたが産まれる前の話です。沙耶はあなたに罪はないと言ってあなたを産みました。そして、あなたのお父さんのようには生きて欲しくないと願い、あなたを育てました」
光「…」
ライブラ「だから今回、逆進を使ったと分かった時は私は怒りました。あなたがあなたのお父さんと同じように見えていたからです。……見たところ能力は消えていませんね。世界の均衡も崩れていませんね。何故でしょうか」
光「…これだよ」
光はライブラに赤い勾玉を見せた。
ライブラ「…これは」
光「霊夢の勾玉。その中には霊夢の能力が封じ込まれているんだ。それを使って逆進を使ったから能力は消えず世界も傾いていない」
ライブラ「…そうですか」
ライブラは赤い勾玉を手に取って考えた。
ライブラ(もし霊夢さんが…主と一緒にいてくれるなら…)
光「…」
ライブラ「…主」
光「…なに?」
ライブラ「助けていただいて…ありがとうございました…」
光「…どういたしまして。こっちもすみませんでした。禁忌だと知らずに逆進を使ってしまって…」
ライブラ「…」
ジェミニ「話は済みましたか?ライブラ」
ライブラ「…はい」
ジェミニ「今回のはあなたの主が逆進を使ったって話だけどあなたの主だけが悪いわけじゃないからね?当然使ったあなたの主も悪いけど、それを今まで説明しなかったあなたにも落ち度はあるんじゃない?」
ライブラ「…はい。そうですね」
光「…」
ジェミニ「分かってるならよし。さて、ロンギヌスは消えたけどどうしますか?」
アリエス「そうだな。とりあえず大罪とかいうやつと話をするか?」
キャンサー「あぁ、そうだな」
タウラス「エクス・マキナの事もな」
ライブラ「…そうですね」
光「…ライブラ」
ライブラ「はい。何でしょうか」
光「…ありがとう」
ライブラ「…いいですよ」