ライブラ「昨日から天秤座の力が…反映されていません」
木葉「…え?」
木葉はこの時、嫌な予感がした。
木葉「え、待って…反映されてないって…」
ライブラ「…そのままの意味です。現在、この幻想郷は天秤座の力の影響を受けていません。なので少しずつ傾いています」
木葉「え、なんで…俺とライブラはまだ生きてるよね?」
ライブラ「はい。ですが、今の幻想郷は均衡を失いつつあります。おまけに少し傾いています。先程のお話にもあった亀裂が走っていたというのもそれが原因でしょう」
木葉「な…このままじゃ…何か手を打たないと…」
ライブラ「はい」
木葉「ライブラ。今すぐ天秤に繋いで。俺たちで何とかして天秤を直さないと…」
ライブラ「光。それも叶いません」
木葉「…え」
木葉は本格的に焦り始めた。
木葉は嘘だと思ったが、ライブラの顔はいつにもなく真剣な顔だった。
ライブラ「昨日から私は何度も天秤のところに行きましたが、異常はなく、いつも通りでした」
木葉「じゃあ今すぐ天秤を…」
ライブラは首を横に振った。
ライブラ「ダメです。現在、天秤が在る場所へは行けません」
木葉「なんで…」
ライブラ「天秤の周囲には結界が張られています。光は知っているでしょう?天秤が結界を展開する理由」
木葉「それって…」
ライブラ「はい。天秤が結界を展開するのは…」
ライブラは少し悲しげな表情を浮かべて言った。
ライブラ「星座の器である十二天星の中に不純物が混じっているのを確認したからです」
ライブラ「天秤はその不純物から身を守るために周囲に結界を展開し、おまけに探知されないよう機能を停止させます」
ライブラ「そうなれば最後、それが取り除かれるまでの間、天秤座の影響を受けていた世界は均衡を失い、傾きます」
木葉「…」
木葉は何もできないことを悟った。
木葉「…ライブラ」
ライブラ「…はい」
木葉「天秤が再起動するためには…どうすればいいの」
ライブラ「…」
ライブラは何も答えなかった。
木葉「そっか…やっぱり…言えないよな」
ライブラ「!」
木葉「再確認したかっただけだよ。言わなくても大丈夫。今のライブラの反応を見て察したよ」
ライブラ「…光」
木葉「でもねライブラ。俺は…もういいんじゃないかって思ったよ」
ライブラ「…」
木葉「他の十二天星たちや十二星座、ライブラ、三柱、六門九門…色んな人と出会った。それに、ここに来て霊夢にも会った」
ライブラ「…」
木葉「勝手だろうけど天秤が再起動しない以上、この世界は傾き続けるだろうね。この世界だけじゃなく、現代も」
ライブラ「…」
木葉「でも…こんな暗い時に人生を終えるのは…なんだか寂しいな」
ライブラ「!」
木葉「なぁ、ライブラ」
ライブラ「…はい」
木葉「残された時間…最後まで頑張るからさ、手伝ってくれないかな」
ライブラ「…」
ライブラは少し黙った。
木葉「…」
ライブラ「ダメです」
木葉「…」
ライブラ「光。あなたは生きるのを諦めてますが、私はそうではありませんよ」
木葉「?」
ライブラ「ここにいるのは均衡を保つ星座 天秤座のライブラですよ?私が強大な力を持っているのもご存知でしょう?こんな頼れるパートナーは他にいますか?」
木葉「…」
ライブラ「あなたは自分を弱く見すぎです。自分の力を見てくださいよ。自分の星座を見てくださいよ」
木葉「…俺は星座がいなかったら普通の人間と変わらないよ。他の十二天星のメンバーもそうだよ。みんな普通の人間。でも、十二星座という存在があるから普通の人間とは少し違う」
ライブラ「…」
木葉「俺たちはライブラたちのような星座がいないと何もできない種族なんだよ」
ライブラ「…」
ライブラは一通り話を聞いた。
ライブラ「だからじゃないですか」
木葉「?」
ライブラ「私たち星座はこの世界に存在するための器を求め、あなたたち人間…いや、十二天星たちはその器を提供して、その恩恵として力を得ているに過ぎません。十二星座と十二天星…互いが互いを必要とし、生きています。その中で、この世界の均衡を保つため生まれた星座を…あなたが器として生かしてくれました」
木葉「…」
ライブラ「そして今まで色々なものを見てきました。長い間寄り添ってる相手がここにいて助けを求めているのに…今まで人を助けていたあなたは見捨てるのですか?」
木葉「…でも」
ライブラ「私を置いてあなただけが死ぬなんて何考えてるんですか。この幻想郷と現代…二つの世界の面倒を私一人に見させるつもりですか?」
木葉「…」
ライブラ「あなたは絶対に死なせません。私が保証します。あなたは死のうとは考えず、生きようと考えてください。あなたが死んで悲しくなるのは私だけではないんですよ」
木葉「!」
ライブラ「…あなたの周りをよく見てください。あなたのそばに寄り添い、あなたの事を好いてくれて、あなたの事を優先的に考えてくれる人…いるじゃないですか。その人を悲しませるんですか?第七星座 天秤座の十二天星 天野 光」
木葉「…」
木葉はこの時、霊夢の存在に気づいた。
木葉「…それはダメだな」
ライブラ「…分かったならいいです。命を捨てるような考えはしないで下さい。そして…」
ギュッ…
木葉「!」
ライブラは木葉を抱き締めた。
ライブラ「…最後まで私を頼ってください。私は第七星座 天秤座 ライブラなんですから」
木葉「…はいはい。分かったよ」
スッ…
ライブラは木葉から離れた。
木葉「じゃあライブラ。俺たちが生きるために少し手伝ってくれないか?」
ライブラ「はい。喜んで」
そして木葉とライブラは神社を出た。
シヴ「…」
縁側から木葉たちを見ていた人が1人。
シヴ「…刹那…早く探さないと…」
場所…人里
木葉「とりあえず人里に来たはいいけど…」
ライブラ「亀裂…恐らくこれでしょうね」
木葉「…だね」
木葉とライブラは人里に来ていた。
紫が言ってた人里にあった亀裂が気になったからだ。
木葉「時間はまだ深夜…朝までなにか分かればいいが…」
ライブラ「ですね」
スッー…
木葉は指で亀裂の輪郭をなぞった。
ライブラ「…どうしましたか?」
木葉「いや、天秤の停止で起こったのなら何か魔力的なの感じないかなって」
ライブラ「で、どうでした?」
木葉「ううん…何も感じないよ」
ライブラ「そうですか」
ザッザッ…
木葉「!!」
ライブラ「!!」
近くで足音がした。
ザッザッ…
その足音は木葉とライブラの後ろから聞こえた。
そう思った木葉とライブラは後ろを振り返った。
木葉「!」
ライブラ「!」
シヴ「…やっぱりここにいた」
そこにいたのはシヴだった。
木葉「シヴ…何でここに…」
シヴ「私も探しに来たの」
木葉「探しにって…何を…」
シヴ「刹那を」
木葉「!!」
シヴ「でも全然見つからない。ここならいると思ったのに…」
ザッザッ…
シヴは木葉たちに近づく。
シヴ「ねぇ…刹那…どこにいるか知らない?」
シヴはじっと木葉の目を見た。
木葉「…知ってるよ」
シヴ「!!」
木葉「でもごめんね。今は呼び出せない」
シヴ「刹那を知ってるの!?なら呼んで!今すぐ呼んで!」
木葉「ダメ。呼べない」
シヴ「なんで!」
木葉「天秤が傾いている。今刹那を呼び出したらどうなるか…」
シヴ「そんなの知ったこっちゃないよ!今すぐ呼んで!早く!」
木葉 (ライブラ…呼んだ方がいいのか?)
ライブラ (呼びましょう。これ以上時間を無駄にはできません)
木葉 (分かった)
シヴ「早く!今すぐ呼んで!」
木葉「分かったよ」
シヴ「!!」
木葉「今呼ぶからじっとしてて」
シヴ「早く!」
木葉「天秤宮 幻力 六門九門…雷獄」
シュゥゥゥゥゥゥゥ…
すると、足元に魔法陣が展開され、刹那が姿を現した。
刹那「…」
シヴ「!!」
木葉「やぁ刹那」
刹那「主…何か用か」
木葉「ううん。用があるのは俺じゃないんだ」
刹那「?」
シヴ「刹那!」
刹那「?」
刹那は声のした方を見た。
シヴ「刹那!やっと会えた!どこにいたのよ!ずっと探してたんだよ!」
刹那「…」
シヴは刹那のところに行った。
シヴ「ねぇ!刹那!聞いてるの?」
刹那「…誰だよ。お前」
シヴ「え…」
シヴはいきなりの事で少し固まった。
刹那「名前も名乗らず…自分を明かせ。知らない奴とは話したくない」
シヴ「シヴだよシヴ!ほら!あなたと一緒にいたじゃない!」
刹那「そんなやつは知らん。誰だ」
シヴ「なんで…私だよ…私…ほら、一緒に暮らしてたじゃない…」
刹那「知らないと言っているだろ。いい加減にしろ」
シヴ「だったら…だったらこの名前…覚えてる?」
刹那「…」
シヴは刹那の顔を見て言った。
シヴ「 "事象の改変者 カタストロフ・シヴ" 」
シヴ「歴史の中に封印された改変者のうちの1人だよ」
木葉「!?」
ライブラ「!?」
刹那「…」
その名前を聞いた時、ライブラと木葉は戦慄した。
〜物語メモ〜
天秤
天秤とは、ライブラと天秤座の十二天星の力の源となるもの。
天秤はあらゆる世界の均衡を保ち、同時に均衡が崩れればライブラたちにそれを知らせてくれる。
天秤は現在、星天の間という場所にあり、十二門の鍵を使用しないと行くことができない。
天秤はライブラとその器の十二天星とリンクされており、十二天星もしくはライブラに不純物が混じればすぐに結界を展開し、誰も寄せつけないようにする。
それだけでなく、天秤座の機能も停止させるため、一時的に天秤座の力が発揮されなくなる。
天秤の警戒がここまで厳重なのは、天秤自体がとても脆いものだから。
天秤はとてつもない力を持っているものの、天秤自体はその場から動けず、おまけに天秤自体になにか攻撃手段がある訳でもない。
なので、一度星天の間に誰かが入れば天秤は何もできずにただ壊されてしまうだけ。
天秤の持つ強大な力は均衡を保つためだけに使われる。
そのため、星天の間という離れた場所にあり、十二門の鍵を使わないと入れない。
現在、十二門の鍵は現十二天星たちが所持していて、12本揃えないと星天の間の扉は開かれない。
天秤がここまで厳重に守られているのは、遥か昔、星天の間にある天秤に近づいた人物がいて、その人物によって天秤は崩壊寸前まで追い込まれたから。