場所…迷いの竹林
霊夢「…」
ザッザッザッザッ…
あれから霊夢は永遠亭に行くために迷いの竹林に入った。そこからは歩いて移動し、永遠亭にたどり着くことができた。
霊夢「…」
ガラッ!
霊夢はノックもせず永遠亭に入った。
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場所…永遠亭
スタスタスタスタ…
霊夢は永遠亭の中を歩く。怒りの表情を浮かべながら無言で。
鈴仙「大丈夫ですよ木葉さん。もう少しの辛抱ですよ」
突然鈴仙の声と聞き馴染みのある名前が聞こえた。霊夢はその声の方へ歩を進める。
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場所…木葉が寝ている部屋
ピシャン!!
霊夢は勢いよく襖を開けた。そこには音に驚いて振り向いている鈴仙と何人かのイナバ、永琳、そして部屋の隅で座っているフランがいた。木葉はベッドで眠っていて起きていない。
霊夢「…」
霊夢は怒りの表情を浮かべながら部屋を見渡した。すると、部屋の隅に座っているフランが目に入った。
霊夢「…」
鈴仙「あ、あの…霊夢さん…」
スタスタスタスタ
鈴仙は恐るおそる霊夢に声をかけた。しかし霊夢は鈴仙の言葉に耳を貸さず、フランの方へ歩いた。
鈴仙「霊夢さん!!」
スタスタスタスタ
鈴仙が大きい声を出したが霊夢の足は止まらなかった。
フラン「!」
霊夢「っ!」
ガシッ!!
霊夢はそのままフランの服を掴んだ。鈴仙の大きい声でフランが顔を起こすと同時に霊夢はフランを持ち上げた。
フラン「うっ…霊夢…」
霊夢「…」
ギリギリギリギリ…
霊夢の掴んでいる手にどんどん力が入る。フランはなんとか振りほどこうとした。だが霊夢の方が力が強かった。
霊夢「…」
鈴仙「霊夢さん!」
ギュッ!!
鈴仙が後ろから霊夢に抱きついた。だが霊夢はお構い無しにフランの服を掴み続けている。
永琳「…」
鈴仙「待ってください霊夢さん!ここには木葉さんもいるんですよ!!病人の近くはダメですって!!」
霊夢「…」
ドサッ!!
霊夢はフランの服から手を離した。その瞬間、フランは床に落ちた。
霊夢「っ…」
フラン「…ごめんなさい」
霊夢「…」
霊夢はさらに怒った表情を見せた。フランは俯いていて表情が見えない。だが声色から反省しているのは見て取れる。
鈴仙「ふぅ…危なかったです…」
永琳「博麗の巫女。暴れるなら他でして。ここには大事な患者がいるの。あなたにとっても大切な人でしょう?」
霊夢「…」
霊夢は頷きもせず、じっとフランを見つめていた。
永琳「…続きを」
鈴仙「はい!」
永琳の言葉で鈴仙と他のイナバたちが作業に取りかかった。
霊夢「…」
フラン「…」
霊夢は相当怒っているが、理性はある様子。
霊夢「…あとで話があるから」
フラン「…うん」
スタスタスタスタ
霊夢は部屋を出た。フランは俯いたままずっと座り続ける。
永琳 (…全く。この人の事になると周りが見えなくなるのかしら。でも言葉だけで止まってくれて助かったわ)
フラン「っ…」
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場所…永遠亭前
ザッザッザッザッ…
霊夢は部屋から出たあと、永遠亭の外まで出てきた。するとそこには咲夜とレミリアがいた。
レミリア「霊夢…木葉は…」
霊夢「…」
ザッザッザッザッ…
霊夢はそのままレミリアと咲夜に目もくれず立ち去った。
咲夜「…霊夢」
レミリア「…行くわよ。咲夜」
咲夜「はい」
ザッザッザッザッ…
咲夜とレミリアは永遠亭に入った。
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場所…木葉が寝ている部屋
スタスタスタスタ
レミリアと咲夜は木葉が寝ている部屋に着いた。相変わらず永琳たちは忙しくしている。
レミリア「木葉の部屋はここかしら」
永琳「…全く。次から次へと。あなたたちも暴れに来たの?」
レミリア「違うわよ。木葉の様子を見に来たの」
咲夜「あなたたちもってどういう事…」
永琳「さっき霊夢が来てここで暴れかけたのよ」
レミリア「!」
咲夜「!」
永琳「でもさすがにこの人の近くでは暴れられなかったらしいわ。すぐに出てってくれた」
レミリア (木葉…)
咲夜「妹様…」
フラン「…」
レミリア「…フラン」
フランは霊夢に服を掴まれてからじっとそこに座っている。なるべく永琳たちの邪魔にならないように部屋の隅に。
レミリア「あなた…木葉の血を吸ったの?」
フラン「…」
レミリア「…答えなさいフラン。血を吸ったの?」
フラン「…」
コクッ…
フランは小さく頷いた。
レミリア「…はぁ。ちょっと。木葉はどんな状況なの」
永琳「圧倒的に血が足りない。吸われすぎたのね。薬じゃなくて輸血が必要だわ」
レミリア「…そう」
ピッ!…ポタッ…ポタッ…
レミリアは自分の手首に切り傷を入れた。すると傷口から血が垂れ始めた。
永琳「ちょっとあなた…何して…」
レミリア「私の血を使いなさい」
永琳「えっ…?」
レミリア「輸血が必要なんでしょ?なら私の血を使いなさい」
永琳「…ダメよ」
レミリア「なんで」
永琳「彼は人間。吸血鬼の血は与えられない。与えるなら人間の血よ」
咲夜「であれば私の血を…」
永琳「それもダメ」
レミリア「なんでよ。咲夜は人間よ?」
永琳「…彼の血液型が分からない。このままじゃ輸血できない」
レミリア「何よ血液型って。分からないの?」
永琳「分からない。誰か知ってる人がいれば…」
レミリア「咲夜は分かる?」
咲夜「すみません…私では…」
レミリア「…フラン。あなたは」
フラン「…」
フランは何も答えなかった。
レミリア「フラン!答えなさい!」
フラン「…分かんない」
フランは小さく答えた。
レミリア「これじゃダメね…私たちじゃ分からない…どうすれば…」
咲夜「霊夢なら…」
レミリア「ダメよ。霊夢でも分からないと思うわ」
咲夜「なら…」
レミリア「他の人にも聞いてみましょう。魔理沙やパチェでも」
咲夜「分かりました。私が行きます!」
タッタッタッタッ!
咲夜はすぐに行動に移した。
レミリア「時間があれば血液型は分かる?」
永琳「いや、分からないわ」
レミリア「なんで」
永琳「何か特殊な結界みたいなもので守られてる。私じゃどうにもできないわ」
レミリア「結界?」
永琳「えぇ。かなり密度の高い結界よ。硬すぎる。この子が使う結界なのかしら?だとしたら強すぎるわ」
レミリア「なんで結界なのよ」
永琳「分からないわ。この結界みたいなもののせいでまともに治療できない。幸いまだ血は残ってるからそれで何とかできてるって感じね」
レミリア「どうすればいいのよ」
永琳「かなり特殊な結界よ。無理に突破しない方がいいと思うわ。誰か知ってる人に聞くしかない」
レミリア「なら木葉の友達に聞いてみるわ」
永琳「なるべく早くね。手遅れにならないように」
レミリア「分かってるわ」
スタスタスタスタ
レミリアはその場をあとにした。
フラン「…」
ザッ!
突然フランが立ち上がった。
永琳「!」
フラン「…」
タッタッタッタッ!
そしてフランは無言のままその場をあとにした。
永琳「あ!ちょっと!」
永琳が声をかけた頃にはフランの姿はなかった。
永琳「…責任…感じてるのかしら。全く話さなかったけど」
鈴仙「…」
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場所…博麗神社
ガサゴソ…ガサゴソ…
永遠亭を出た霊夢は神社に戻ってきており、何やら荷造りをしていた。
霊葉「えっと…お母さん…」
霊夢「…何」
霊葉「その…お父さんは…」
霊夢「…木葉はベッドで寝てる。少ししか見てないからよく分からないけど兎どもが慌ただしくしてた。…そんなに状態もよくないと思う」
霊葉「そ…そうなんだ…」
霊夢「しばらく家を空けるから、霊葉は魔理沙のところに行きなさい」
霊葉「えっ!?」
霊夢「霊葉を一人にするわけにはいかないわ。魔理沙にも言っとく」
霊葉「わ…分かった…」
ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…スタッ!
するとタイミングよく魔理沙が神社に来た。
魔理沙「霊夢。木葉はどうだった…」
霊夢「分からない。あとでちゃんと聞くつもり。木葉がよくなるまで家を空けるから霊葉のことよろしくね」
魔理沙「ま、まぁ…それくらいはいいが…」
霊夢「それじゃあ、あとは頼むわね」
霊葉「う、うん…」
スタスタスタスタ
霊夢は荷物を持って永遠亭に向かった。
魔理沙「…木葉」
霊葉「魔理沙さん」
魔理沙「ん?」
霊葉「えっと…しばらくよろしくお願いします」
魔理沙「…あぁ」
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場所…人里
咲夜「…ダメね。ここにはいない…」
咲夜は人里に出て木葉のことを知っている人を探していた。木葉は幻想郷の人との関わりは割りと少ない。よく知っているのは霊夢くらいだった。
咲夜「こんな時…あのスキマ妖怪がいれば…」
タッタッタッタッ!
咲夜は人里を出て色んな場所に向かった。
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場所…地底
フラン「…」
スタスタスタスタ
フランは地底にある地霊殿に向かった。
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場所…地霊殿
ザッザッザッザッ…
フランは地霊殿に着いた。紅魔館みたいに大きい。
フラン「…」
ザッザッザッザッ…
フランは無言のまま地霊殿に入った。
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場所…地霊殿の中
フラン「…」
お燐「おや、なんでここにあんたがいるんだい?吸血鬼」
フラン「…」
お燐「…何か用?」
フラン「…ここに木葉の知り合いがいるでしょ」
お燐「木葉?誰のことか分からないんだけど」
フラン「霊夢のところにいる外の人。その人の知り合いがいるでしょ」
お燐「あぁ、あの人…たしか矢巾さんの…」
フラン「その人…どこにいるの」
お燐「…あんた、矢巾さんに用なの?」
フラン「木葉が大変なことになってる。その人に木葉のことを聞きたい」
お燐「…ダメだよ。矢巾さんは今お休み中なんだ。今は部屋で寝てい…」
矢巾「お燐さん。どうかしましたか?」
お燐「!」
フラン「…」
矢巾 (あれ…あの人…見たことある…)
バサッ!
フランは空を飛んで矢巾に近づいた。
お燐「あっ!待って!」
フラン「あなた、木葉のこと知ってるでしょ」
矢巾「え、あ、はい。知ってますよ」
フラン「木葉が大変なことになってるの…助けて…」
矢巾「光さんが大変なこと…?一体何があったんですか」
フラン「…私が血を吸いすぎて起きてこない。医者は結界がなんとかって言ってた」
矢巾「!!」
フラン「木葉の知り合いに聞いた方がいいって言ってた」
矢巾「待ってください。光さんもしかして意識がないんじゃ…」
フラン「…うん」
矢巾「それは大変です!」
フラン「え…」
矢巾「光さんは天秤座の力で世界の均衡を保っています。実際にはライブラさんが均衡を司っていますが、僕たち十二天星と十二星座はリンクされてるので、僕たちに起きていることは星座たちにも同じことが起きているんです!」
フラン「…どういう事」
矢巾「つまり均衡を司っているライブラさんも大変なことになっています!」
フラン「…?」
矢巾「こうしちゃいられない…お燐さん!」
お燐「えっ、何だい?」
矢巾「今すぐここを出ます!光さんを助けに行きます!」
お燐「えっ、でもお休み中でしょ?」
矢巾「そうですけどそんなこと言ってられない状況なんです!今すぐ行かないと!」
お燐「分かった。さとり様にはあたいが言っとくから」
矢巾「ありがとうございますお燐さん!さ、行きましょう!」
タッタッタッタッ!
矢巾はすぐに木葉のところに向かった。
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場所…永遠亭(木葉が寝ている部屋)
矢巾とフランは永遠亭に着いた。矢巾はそのまま永遠亭に入り、すぐ木葉の部屋に向かった。
矢巾「光さん!!」
鈴仙「わっ!誰ですかあなた!!」
矢巾「光さん!」
スタスタスタスタ!
矢巾はすぐに木葉に近づいた。
鈴仙「待ってください!!」
ザッ!!
しかし鈴仙が矢巾の前に立ち塞がる。
矢巾「どいてください!光さんが!」
鈴仙「この人は木葉さんです!光さんという方ではないです!」
矢巾「違います!この人は光さんです!天野 光さんです!」
永琳「ちょっと、何騒いでるの。病人の前よ」
するとそこに永琳が部屋に入ってきた。矢巾は永琳を見るとすぐに永琳に近寄った。
矢巾「お医者さんですよね!?光さんはどんな状況なんですか!!」
永琳「落ち着いて。今はあの人は良くない状況よ。血が足らなさすぎる。でも血液型が分からないから輸血もできない。あなた、あの子の知り合い?」
矢巾「はい!」
永琳「ならあの子の血液型は?」
矢巾「血液型…えっと…」
矢巾は木葉の血液型を知らなかった。
矢巾「すみません…分かりません…」
永琳「…そう」
矢巾「でも僕の仲間なら知ってます!ちょっと待ってください!サジタリウス!!」
シュゥゥゥゥゥゥ…
サジタリウスが矢巾の声に反応して姿を現した。
サジタリウス「…どうした。光輝」
矢巾「サジタリウス!ライブラさんを呼べませんか!?」
サジタリウス「ライブラだと?」
矢巾「うん!」
サジタリウス「…」
サジタリウスは木葉の方を見た。サジタリウスはライブラを呼んでみたが、ライブラからの返答はない。それが分かるとサジタリウスの表情が暗くなった。
サジタリウス「…すまない光輝。ライブラからの返答がない」
矢巾「くっ…やっぱり…」
サジタリウス「それに今のライブラは完全拒絶状態になってる」
矢巾「何その完全拒絶状態って…」
サジタリウス「ライブラがあらゆるものからの干渉を受けないようにしているんだ。俺たち星座ではどうにもできない。できるなら三柱くらいだろう…」
矢巾「完全拒絶状態って治るの?」
サジタリウス「本来、ライブラが重篤な状態になっても天秤座としての機能を維持するために発動しているからライブラ自身がどうにかなれば元に戻る。だが俺たちには無理だ。結界が硬すぎる」
永琳 (…やっぱり)
サジタリウス「解除できるのは三柱くらいだろう。それにライブラとなると三柱 二刻神の太陽と月の力が必要だ。むしろ今ライブラとその主人に展開されている特殊な結界は太陽と月の結界とほぼ同じだからな。2人にしか解除できん」
矢巾「なら今すぐ戻って刻領宝殿に行かないと!」
サジタリウス「あぁ。早く行かないと手遅れになる」
矢巾「よしっ!行こう!」
タッタッタッタッ!
矢巾はその場をあとにした。
永琳「…これほどまでに強い結界があるのね」
フラン (…私のせいだ)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
場所…永遠亭の前
霊夢「…」
スタスタスタスタ
霊夢は木葉のところに行くための荷物を全てまとめて永遠亭に着いた。
ガラッ!
すると突然中から矢巾が出てきた。
霊夢「!」
矢巾「わっとと!すみません!」
タッタッタッタッ!
矢巾はなんとか霊夢を避けて少し進んだところで立ち止まった。
霊夢「あの人…確か木葉の…」
矢巾「このままじゃマズイ…世界の均衡が崩れるかもしれない…」
霊夢「ちょっとあんた!待ちなさい!!」
矢巾「!」
矢巾は霊夢の声を聞いて手を止めた。霊夢は矢巾の顔を見て少し安心した。
矢巾「あ…あなたは…」
霊夢「あんた…確か木葉の知り合いでしょ?」
矢巾「え、あ、はい」
霊夢「木葉は今どんな状況なの」
矢巾「サジタリウス曰く、とても良くない状況です」
霊夢「!」
矢巾「今の光さんには特殊な結界が展開されています。あの結界は三柱にしか解けません。星座ですら手を出せません。あれを解除して輸血してもらわないといけません」
霊夢「あんた、木葉の血液型分かるの?」
矢巾「…すみません…僕には分かりません…ですが他の方々なら分かります」
霊夢「だ、だったら…」
矢巾「今から僕があっちの世界に戻ってこの事を伝えます。少し時間がかかるかもしれませんが待っていただけたら…」
霊夢「…分かったわ。そっちのことは任せるわ」
矢巾「はい!では行ってきます!」
パキン!シュゥゥゥゥゥゥ!
矢巾は懐から結晶を取り出して元の世界に戻った。
霊夢「…木葉」
〜物語メモ〜
完全拒絶状態
ライブラ自身もしくはライブラの宿主が重篤な状態になった時、それを感知して自動的に発動する技。本来ライブラかその宿主が意識不明の状態になると、光たちの世界の均衡が崩れ、壊れていくようになっている。だが、完全拒絶状態を使うことでライブラやその宿主が重篤な状態になっても少しの間なら天秤座の力を行使し、世界を維持することができる。また、発動時に特殊な結界を展開する。この結界は三柱の太陽 サン・ソレイユと月 ルナ・ムーンによって作られた結界で、他者からの干渉は一切受けない。解くためにはサンとルナの力が必要。