木葉の幻想郷日記   作:バスタオル

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…あなた、慕われてるのね

 

場所…光たちの世界

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

矢巾は元の世界に戻ってきた。

 

矢巾「サジタリウス。他の星座たちにこの事を伝えて。僕はみなさんに」

 

サジタリウス「分かった」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

サジタリウスは姿を消した。矢巾は三柱たちに伝えるためにとある場所に向かった。

 

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場所…刻領宝殿

 

刻領宝殿とは、この世界の時間・領域・季節を司る三柱たちが住んでいる場所。元々この世界とは違う次元にあったが、二刻神 太陽 サン・ソレイユが身近にある方がいいと言ってこの世界に移転してきた。

 

ガチャ…ギィィィィィィィ…

刻領宝殿の扉はとても重い。防犯のためでもあるが、そもそも三柱たちは全員十二天星たち以上の力を保有しているため、普通の扉ではすぐ壊れてしまう。

 

矢巾 (相変わらず重いなぁ…)

 

ギィィィィィィィ…バタン…

矢巾は静かに扉を閉めてさらに奥の部屋に進んだ。

 

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場所…刻領宝殿 天文の間

 

ここは刻領宝殿にある一室。名前は天文の間。時間、領域、季節の全てが管理されている場所。三柱たちは大抵ここにいる。

 

コンコンコン

矢巾は部屋の扉をノックした。

 

矢巾「…失礼します」

 

ガチャ…ギィィィィィィィ…

矢巾は扉を開けた。この扉も酷く重い。矢巾はやっとの思いでその部屋に入ることができた。

 

矢巾「…」

 

スタスタスタスタ

矢巾は静かに歩を進める。中はとても静かで周囲は宇宙のように暗く、電気が点々と星々が輝いているように見える。

 

矢巾「…あの」

 

ギィィィィィィィ…バタン!!

突然扉が閉まった。矢巾は驚いて扉の方を見たが、既に光が閉ざされており、さっきまで電気で星々のように輝いていた天井も真っ暗になっている。完全な暗闇だった。

 

矢巾「っ…」

 

矢巾は周囲を見渡した。突然暗くなったことで驚きが隠せない。

 

サン「おや、ここに人が入ってくるなんて珍しいね」

 

矢巾「!!」

 

突然声が聞こえた。でも姿が見えない。

 

サン「やぁサジタリウスの主。何か用かな?」

 

声の主は三柱 二刻神 太陽 サン・ソレイユだった。

 

矢巾「突然申し訳ありません。幻想郷で光さん…いや、ライブラの主が大変な状況になっています。曰く、吸血鬼の子が血を吸いすぎて現在ライブラの主は意識不明。サジタリウスから完全拒絶状態になっていると報告を受けました。ここへの通信手段がない上、急ぐべき事例なので参上しました」

 

パッ!パッ!パッ!パッ!パッ!

すると一気に部屋が明るくなった。矢巾が急な点灯に目を細めた。目が慣れてくると少しずつ目を開き、周囲を確認した。

 

矢巾「っ…!!」

 

サン「…ありがとうサジタリウスの主。ここからでは幻想郷を見ることはできない。君のように事を知らせてくれるまで何が起こっているのか分からない。今回の事例はこの世界だけでなく幻想郷にも影響するだろう」

 

矢巾「!」

 

矢巾の前には三柱が全員揃っていた。三柱たちは十二天星たちの2倍くらいの背丈をしている。また持つ力も膨大すぎるため、大体の人はここで怖気付く。

 

サン「しかしサジタリウスの姿が見えないよ?どうしたの?」

 

矢巾「サジタリウスは他の十二天星と十二星座たちに呼びかけています」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

するとサジタリウスが現れた。

 

サジタリウス「光輝。全員に通達した。みんな幻想郷に向かってる」

 

矢巾「ありがとうサジタリウス」

 

サン「…ルナ」

 

ルナ「!」

 

サン「結界が展開されている以上、僕たちが向かう必要がある。他のみんなは僕たちがいない間、この世界の均衡を頼むよ」

 

メル「はい!」

ボーガン「あぁ」

ヒンメル「分かった」

エア「お任せ下さい!」

ラト「あぁ」

オータム「…うん」

ジマ「分かりました」

 

サン「サジタリウス、サジタリウスの主。今すぐ向かいます。2人は先に幻想郷に戻ってください。僕とルナは準備を整えて向かいます」

 

矢巾「はい!…では、失礼します」

 

タッタッタッタッ!

矢巾は三柱たちに一礼してその場をあとにした。

 

サン「ルナ、結界の解除が必要になるが、解除したら血が必要になる」

 

ルナ「えぇ。ライブラの主はA型。であるならヴァルゴの主に輸血を頼みましょう」

 

サン「他にもタウラスの主やピスケスの主もそうだな。この3人に輸血を頼もう」

 

ルナ「みなさん、少しの間、よろしくお願いしますね」

 

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場所…永遠亭

 

長津「くっ…光が意識不明なのはマズイ!」

 

早乙女「私!A型なので輸血できますよ!」

 

条乃「俺もだ!」

 

倉本「私もです!」

 

双葉「先生!今すぐ光に会わせて下さい!!」

 

永琳「…ダメよ」

 

本庄「何故ですか…」

 

永琳「彼には特殊な結界が展開されています。私たちではどうにもできません。あの結界を解除できる人がいないと…」

 

長津「ダメだ…世界の均衡が崩れ始める…」

 

矢巾「みなさん!!お待たせしました!!」

 

すると矢巾が永遠亭に着いた。みんなが矢巾の声に反応して矢巾の方を見た。しかしそこには矢巾1人だけで他には誰もいない。

 

矢巾「三柱の方々に救助を要請しました!サン様とルナ様が来てくださいます!」

 

条乃「あの二人が!?」

 

長津「なら安心だ。和人、早乙女さん、倉本さん。結界の解除後に輸血をお願いします」

 

条乃「おうよ!」

早乙女「はい!」

倉本「はい!」

 

永琳 (あの結界を解除できる人がいるの…?)

 

ブワッ!

するとサンとルナが姿を現した。

 

サン「お、みんな集まってるんだね」

 

長津「サン様…」

 

ルナ「今から結界を解除します」

 

ザッザッザッザッ

サンとルナが永遠亭の扉に歩いた。

 

永琳「待って」

 

ザッ…

そう言って永琳が2人の前に立ちはだかった。

 

サン「…何でしょうか」

 

永琳「あなたたち何者…ここの人たちじゃないわね」

 

サン「はい。僕たちは今寝込んでいるあの子が住む世界から来ました。あの子を助けるためです」

 

永琳はサンとルナの強大すぎる力に危機感を覚えていた。同時にこの人たちを通すべきではないと考えていた。

 

永琳「…あなたたちからは違う気配を感じる。通すわけにはいかないわ」

 

ルナ「通してください。時間が無いのです。あの子が死ねば私たちの世界だけでなくこの世界も壊れてしまいます」

 

永琳「ど…どういう事…」

 

ルナ「彼は二つの世界を保つために存在しています。それが今、崩壊しかけています」

 

サン「僕たちが結界を解除し、この子たちの血を与えればまだ命を繋ぐことができます」

 

永琳「あなたたち…あれを解除できるの…?」

 

サン「できる」

 

ルナ「元々あの結界は私たちが施したもの。人間は万能ではありません。風邪を引いたり怪我をすれば元の力を行使することはできません。そうなれば少なからず力が弱くなり、均衡が崩れる可能性があります。それを防ぐための結界です」

 

永琳「じゃあ…」

 

サン「通してください」

 

永琳「っ…」

 

永琳は2人のことを信じてはいないが、今あの結界を破壊することは不可能に近いことを知っている。サンとルナの力であれを解除し、治療ができるならそれでもいいと考えていた。

 

永琳「…あの子の体にある血はとても少ない。誰かあの子と同じ血液型の人はいない?」

 

長津「和人と早乙女さんと倉本さんが同じ血液型です」

 

永琳「分かったわ。なら3人は私についてきて。他の人はあの子に触れないこと。あなたたち2人は結界を解除して」

 

サン「あぁ」

ルナ「えぇ」

 

条乃「すげぇなあの人…三柱に命令してるぜ…」

 

三室「あぁ…俺たちなら首が飛びかねん…」

 

永琳「それじゃあ、急いで」

 

ザッザッザッザッ…

永琳たちは木葉の部屋に移動した。

 

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場所…永遠亭 木葉が寝ている部屋

 

永琳「ここよ。あの子が寝ている部屋は」

 

長津たちは部屋に入ると、光の異変にすぐに気づいた。

 

長津「なっ…」

 

早乙女「光…」

 

サン「ふむ。思ってたよりも深刻だ。ルナ、始めるよ」

 

ルナ「はい。みなさん、少し離れていてください」

 

永琳「さっきの3人はこっちに来て」

 

スタスタスタスタ

永琳、条乃、早乙女、倉本はその場をあとにした。

 

スタスタスタスタ

サンとルナは木葉の横に立った。

 

サン「…いくよ、ルナ」

 

ルナ「…えぇ」

 

スッ…

サンとルナは木葉に掌を向けた。

 

サン「…還れ」

ルナ「…還れ」

 

パリィン!!

すると木葉にかかっていた結界が粉々に破壊され、消えていった。

 

木葉「…」

 

サン「ライブラ。起きて」

ルナ「ライブラ。起きて」

 

ブワッ!

すると木葉の体からライブラが姿を現した。しかし、ライブラの状態は木葉同様、あまりよくない。

 

ライブラ「…」

 

ドサッ…

ライブラはそのまま床に倒れてしまった。

 

サン「星座たち。ライブラを頼むよ」

 

ブワッ!ブワッ!ブワッ!ブワッ!ブワッ!

すると各十二天星たちの体から星座たちが出てきた。

 

アリエス「ライブラ!」

ジェミニ「…」

レオ「ライブラ!」

キャンサー「ライブラ…」

スコーピオ「っ…」

サジタリウス「ライブラ…」

カプリコーン「ライブラ!!」

アクエリアス「ライブラ…」

 

他の星座たちが一斉にライブラのところに駆け寄る。

 

ルナ「子供たち。ライブラに魔力を」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

すると他の十二星座たちがライブラのために自分の魔力を与え始めた。

 

永琳「準備はいい?」

 

そのタイミングで永琳、条乃、早乙女、倉本が部屋に戻ってきた。

 

サン「あぁ。結界はすでに解除してあるよ。でもそのせいで崩壊が加速している。あとはお願いしますね」

 

永琳「任せて。3人とも」

 

スタスタスタスタ

条乃、早乙女、倉本は木葉の近くに椅子を持ってきて座った。永琳は3人の腕に管がついた針を刺した。

 

永琳「痛いけど我慢してね。3人いるからそんなに多く血は抜かないわ」

 

ズゾゾゾゾゾゾ…

すると条乃、早乙女、倉本の腕から血が出てきた。その血は管を通り、木葉の右腕に入っていった。

 

永琳「これであとは本人の気力次第よ」

 

ブゥゥゥゥゥゥン…

近くでサンとルナが木葉に向けて魔力を与えていた。

 

サン「…」

ルナ「…」

 

永琳 (この2人…なんという力…恐らく地位の高い人ね)

 

ズゾゾゾゾゾゾ…

すると条乃、早乙女、倉本の腕から血が出なくなった。

 

条乃「おい、止まったぞ」

 

早乙女「壊れたんでしょうか…」

 

永琳「大丈夫よ。もう血が足りたってことだから。3人はそのまま座ってて」

 

そう言うと永琳はすぐに針を抜き取り、3人の腕からこれ以上出血しないよう処置した。

 

永琳「ありがとう3人とも。あなたたちがいなかったらこの子はもう助かってなかった」

 

条乃「それで、光は治るのか」

 

永琳「えぇ。ひとまず山場は乗り越えたわ」

 

早乙女「光…」

 

倉本「どれくらいで目を覚ましますか」

 

永琳「分からないわ。数日かかるかもしれないしすぐかもしれない。もう本人次第よ」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

すると星座たちはライブラに魔力を与え終えた。しかしライブラは目を覚まさない。

 

ジェミニ「起きないわ。どうすればいいの。お父さん、お母さん」

 

ブワッ…

サンとルナも木葉に魔力を送るのを止めた。

 

サン「もうできることはないよ」

 

ジェミニ「!」

 

ルナ「ライブラ。主の体に戻りなさい」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

ライブラの姿が消えた。

 

ルナ「あとは目覚めを待つだけです。私たちができることはもうないです」

 

ジェミニ「…そう」

 

ルナ「ではお医者様。私たちはこのままここを去ります。その子が起きたら良くしてあげてください。…それでは」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

サンとルナは姿を消し、元の世界に戻った。

 

条乃「とりあえず光は無事なんだな」

 

永琳「えぇ。これで大丈夫よ」

 

長津「良かった。光輝」

 

矢巾「はい」

 

長津「光がちゃんと目覚めたらまた連絡してね」

 

矢巾「はい」

 

長津「では私たちもここで元の世界に戻るとしよう。あとはお医者さんに任せよう」

 

スッ…パキン!シュゥゥゥゥゥゥ!

長津は結晶を使って十二天星と十二星座たちを元の世界に戻した。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…

みんながいなくなった部屋に静寂が訪れた。

 

永琳「…あなた、慕われてるのね」

 

フラン「…」

 

フランは十二天星や十二星座たち、サンやルナが作業している間、ずっと部屋の隅に座っていた。

 

永琳「…安心しなさい。もう大丈夫よ。あとは目覚めるのを待つだけ」

 

フラン「…いつ…目覚めるの」

 

永琳「分からないわ。でもあの2人がこの子に力を与えていた。これでこの子は大丈夫よ」

 

フラン「…そうなんだ」

 

スッ…スタスタスタ…

フランは木葉の横に座った。

 

フラン「…」

 

ギュッ…

そして優しく手を握った。

 

フラン「…木葉…ごめんね」

 

永琳「…私、ここを空けるわ。近くにいるから何かあったら言って」

 

フラン「…うん」

 

スタスタスタスタ

永琳はその場をあとにした。

 

フラン「…」

 

フランは木葉の手を握って離さなかった。




〜物語メモ〜

刻領宝殿 天文の間
刻領宝殿にある一室。時間・領域・季節の全てが管理されている場所。三柱たちは大抵この部屋にいる。

ーお知らせー

ここでちょっとお知らせです。

今投稿している木葉の幻想郷日記を第1章から順番に東方茶番劇としてYouTubeに出してみようかなと考えています(まだ予定ですが)

現在は十二天星や十二星座の立ち絵を作っているところです。

もし動画投稿したら、そちらの方も見ていただけたらと思います。

お知らせは以上です。
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