場所…博麗神社
紫「さて、どうしたものか…なんの手がかりもないのはちょっと苦しいわね」
木葉「あぁ。それに、霊葉がなんで向こうの世界に現れたのかも分からん」
紫「何をしたかったのか…そもそもあれは霊葉ちゃんなの?」
木葉「…分からない。でも見た目や能力、特徴まで全て一緒。姿を変えて、しかもその特徴までも引き継いでいた…。俺にはあれが霊葉以外には見えなかった」
紫「…親のあなたですら見分けがつかないとなると、私じゃ難しそうね」
木葉「…でも、あの霊夢は違った」
紫「そうね。あの霊夢はさすがの私でも違うって分かったわ」
木葉「霊夢…霊葉…どこ行ったんだ…?」
紫は目の前に置かれた湯呑みを手に取ってお茶を啜った。そしてじっと木葉の方を見据えていた。
紫「…そういえば木葉」
木葉「ん?」
紫「…あなたの世界にいるサンとルナって人たちなんだけど」
木葉「うん」
紫「あの人たちが言ってたヒンメルって人はそんなに強いの?」
木葉「うん。大地と海以外の場所を司ってる方なんだ。ヒンメル様は三領保神と言って、大地、深海、天空の3つの領域を支配している方々のうちの1人で、俺たちの周囲の空間も全て意のままに操ることができる。空気だって操れるよ」
紫「とてつもない力ね…」
木葉「まぁね」
魔理沙「なぁ木葉」
スタスタスタスタ
魔理沙が廊下から顔を出してきた。
魔理沙「なんか変な感じしないか?」
木葉「え?変な感じ?」
魔理沙「うん。ほら、なんかお肌がピリピリしないか?」
木葉「お肌ピリピリ?」
木葉は自分の肌を見た。特にこれといって変化はなかった。
木葉「…特に感じないけど、紫はどう?」
紫「…感じるわよ。あなたは感じないの?木葉」
木葉「えっ!?紫は感じるの!?」
紫「感じるわよ。なんか、霊葉ちゃんの時とは少し違う…なんなのかしら、これ」
魔理沙と紫は説明に難儀していた。その間、木葉は特に何も感じない。
木葉「…?」
魔理沙「なぁ木葉、霊夢と霊葉は朝にはいなかったんだよな?」
木葉「あぁ」
魔理沙「じゃあさ、昨日、何か変わったことは無かったか?」
木葉は考える仕草をして昨日のことを思い出す。
木葉「うーん……特に無いなぁ……」
魔理沙「うーん…じゃあ本当に手がかりないなぁ…」
紫「結界も正常になりつつあるわ。ただ霊夢の結界だけはまだ揺らいでる…不安定ね」
木葉「こればかりは霊夢がいないとどうにもならないなぁ…」
紫「…」
魔理沙「私、幻想郷中見て回ってこようか?」
紫「無駄よ」
魔理沙「えっ」
紫「霊夢の気配がない。霊葉ちゃんもよ。2人に似た気配はあるけど」
魔理沙「どこにだ!?」
紫「…紅魔館近くね。ただこれは…霊夢の方かしら」
木葉「すげぇな紫…そんな遠くまで分かるのか」
紫「管理者だからね。なんでもありなのよ」
木葉「改めて紫がすげぇやつだって思ったわ」
紫「当たり前よ。これでもあなたくらいならボッコボコにできるわよ」
木葉「怖っ…味方だと思ってたのに…」
紫「安心しなさい。私があなたをボコボコにするのはあなたが原因で幻想郷が危険な状態になった時よ」
木葉「はい…分かりました…」
魔理沙「その霊夢に似たやつは倒さないのか?」
紫「…そうね。下手に手は出せないわ。あいつを倒してこの世界に影響が出るかもしれない。叩くなら、霊夢じゃなくて霊葉ちゃんの方かもね」
魔理沙「霊葉はいないんだよな?」
紫「…気配は無いわ。さっきの人が言ってたようにヒンメルって人が霊葉ちゃんを追い払ったんでしょうね」
木葉「三柱の人が本気出すって霊葉は相当力を使ったんだろうな…」
紫「…そうね。体への負担は大きいでしょうね」
木葉「…霊夢…霊葉…」
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場所…???
霊葉「…いったたた…あの人…相当強いなぁ…」
霊葉はヒンメルとの戦いで大きなダメージを受けた。今は傷を回復しているところ。
霊葉「あの人と全く同じ姿や能力で戦ったのに…本来なら互角でどっちも負傷するはずだったけど…あの人…一切ダメージを受けてなさそうだった。どうして…コピーできてないところがあったのかな…?」
霊葉が受けた傷は中々癒えない。どうしてかは分からないが、さっきからずっと回復しているけど、全く進展がない。
霊葉「…お母さん置いて来ちゃったけど…大丈夫かな…?言葉はなんとか普通くらいまで成長したけど、お父さんや紫さんが気がかりだなぁ…お母さんをやっつけなければいいけど…」
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場所…現実世界 刻領宝殿
サン「…」
サンは刻領宝殿にある一室に来ていた。そこはあらゆる傷を治してくれる部屋だった。
サン「…ヒンメル。傷はどうだい?」
この部屋にはヒンメルがいた。ヒンメルは霊葉との戦いで力を使い、消費した魔力と受けた傷を治していた。
ヒンメル「…あぁ。もう少しで治るかもな」
サン「君が本気で戦うって相当な事だけど、あの子はそんなに強かったのかい?」
ヒンメル「…あぁ。俺と全く同じだ。最初は驚いたが、戦ってるうちに相手がただのコピーで戦闘技術が全く無いことがわかった。あいつはただ俺の能力を無造作に使っているだけだった」
サン「ふむ。姿を変える程度の能力…特徴や能力まで全て変化させることができるが…」
ヒンメル「その能力…全部変えられるだろうけど、根本は自分だから戦闘技術は本人依存になるんじゃないのか?」
サン「…どうだろう…第七星座の主は全部変わるって言ってたし…」
ヒンメル「まぁ、次来た時に勝てるかどうかは相手の学習能力次第だ。同じ手が通じるとは思えん」
サン「そうだね。それに関しては気をつけないとね」
ヒンメル「…なぁサン。ルナはどうしたよ」
サン「ルナは他の三柱に話があるって言ってどこか行ったよ」
ヒンメル「…そうか」
サン「何かあるの?」
ヒンメル「…なぁ、サン」
サン「ん?」
ヒンメル「…俺が戦ったあいつの事なんだが…」
ヒンメルはサンに思っていることを話した。その言葉を聞いてサンは驚いたが、何か分かっているのか、やっぱりかという顔を見せていた。
サン「…君も気づいてたんだ。さすがだね。ヒンメル」
ヒンメル「…あくまで憶測だ。俺にはお前ほど見抜ける力はない。これはあいつと戦って分かったことや気づいたことだ」
サン「いや、それでも分かっただけすごいよ。さすが、二刻神の次に強いだけはあるね」
ヒンメル「…あぁ」
サン「…さて、ヒンメルはもう少しここで休んでて。僕はみんなと色々とやることがあるからね」
ヒンメル「…あぁ」
サン「それじゃあね」
スタスタスタスタ…ギィィィィィィ…バタン
サンはその場を後にした。ヒンメルはその背中を見ているだけだった。
ヒンメル「…なぁ、サン。お前はどこまで知っているんだ…お前は…どこまで見えているんだ…?」
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場所…博麗神社
木葉「しかし気配がないなんてもうこの世界に居ないと見ていいだろうね。ただ向こうの世界にもいないとなると…」
紫「そうね。あなたのお仲間から連絡は来ないのかしら?」
木葉「連絡は来てるよ。でも向こうも進展ないらしい。一応ドレインとか空間とかの修復はある程度完了してるみたいだけど」
紫「……困ったものね。まさか霊夢までいなくなるなんて…」
木葉「ほんとだぜ全く…」
紫「あっ…」
すると紫が突然変な声を上げた。
木葉「どうしたよ」
紫「…霊夢の気配が弱くなってる」
木葉「弱くなってる?消えてるってこと?」
紫「いや、消えてないわね。でも薄れてきている?って言った方がいいわね」
木葉「消えかかってるのか?」
紫「…分からないわ。行ってみないと」
木葉「分かった。魔理沙!一緒に来て!」
魔理沙「よっしゃ!箒に乗ってくれ!飛ばすぞ!」
ビュン!!
魔理沙は木葉を箒に乗せて霊夢がいる場所まで飛んだ。
紫「…飛ばなくても私のスキマを使えばいいのに…」
そう言って紫は霊夢がいる場所までスキマを通した。
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場所…紅魔館
美鈴「はぁっ!!」
ドゴッ!バゴォン!ズサァァァァァァァ!!
美鈴は霊夢に攻撃した。霊夢はガードしたけど、思いのほか強い攻撃に驚いていた。
霊夢「…」
美鈴 (…この人…なんかちょっと違う…見た目は一緒だけど…中身が無い感じ…)
霊夢「…」
ビュン!!
霊夢は一気に距離を詰めた。
美鈴「なっ!!」
霊夢「はぁっ!」
ドゴォン!!
霊夢は美鈴の懐に入り、拳を振るった。
美鈴「がはっ…!!」
ドォン!!
美鈴は壁に激突した。
霊夢「…この体にも慣れてきた。素晴らしい力だ」
美鈴はゆっくりと霊夢の方を見た。
美鈴「霊夢さん…やっぱり…違う…」
霊夢「いい実験体だ。こいつの力がどれほどなのか試させてもらうよ」
紫「止めなさい!!」
バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!
紫は霊夢の前に現れて一気に弾幕を展開した。
霊夢「っ…!?」
ズサァァァァァァァ!!
霊夢は突然現れた紫に驚いた。
霊夢「なんだこいつ…どこから現れた…」
紫「…」
美鈴「!」
霊夢「お前…誰だ…」
紫「…霊夢の姿をしていながら私のことが分からないのね。あなたこそ誰よ。相手に名前を聞く前に自分の名前を明かしなさいな」
霊夢「…名前はない」
紫「…あらそう。可哀想な子ね」
霊夢「!」
木葉「紫ー!」
スタッ!スタッ!
木葉と魔理沙も紅魔館前に着いた。
木葉「なっ…紫…」
紫「木葉…あれは霊夢じゃないわ」
木葉「えっ…?」
紫「あれは霊夢の姿をした別人よ」
木葉「マジか…」
魔理沙「どうするよ。倒すのか?」
紫「いや、倒さないわ。仮にあいつが霊夢の姿でいることでこの幻想郷が維持できているなら、倒すより拘束するほうがいいわ」
木葉「…なら、拘束するか」
紫「できるの?」
木葉「できねぇよ」
紫「じゃあ何しに来たのよ…」
木葉「拘束するのはそっちに任せるわ。俺たちであいつを止めるから」
紫「…なるほどね。ならそうさせてもらおうかしら」
木葉「魔理沙。一緒にあいつを止めるよ」
魔理沙「任せろ!私の魔法が輝く時だ!!」
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場所…刻領宝殿
ルナ「だからみんなにはヒンメルがいない間、この世界の維持に力を注いで欲しいの」
ボーガン「ヒンメルは無事なのか」
ルナ「無事です。ですが、大きく力を使ったので回復は少し時間がかかります」
メル「三領保神の中でいちばん強いヒンメルですら大怪我を負うほどなの?」
ルナ「ダメージは少ないです。ですが、力を使いすぎていました」
エア「なるほど…それほど強い相手だったのですね…」
ラト「三柱に影響を与えるとなると、こちらとしても気が抜けないな」
ジマ「大丈夫。私たち、強いから」
オータム「他に情報はない?」
ルナ「あの子は相手の能力や姿、特徴まで全てコピーしていました。私たちの姿に変えている時は私たちの能力が使われるでしょう」
ボーガン「ルナやサンに姿を変えたら俺たちじゃ対応できないだろ」
ルナ「はい。ですが、私たちには最後の切り札があります」
メル「待ってください!それって…」
ルナ「…はい。私たち三柱が暴走した時、一時的に機能を強制停止させる神器。草薙剣と八咫鏡、八尺瓊勾玉を使います」
ジマ「えっ、それ使ったら私たちは…」
エア「ルナ、考え直してください。あれを使ったら本当に機能停止しますよ」
ルナ「いえ、私たちに使うのではないのです」
ラト「あ、俺たちの姿に変わった敵に使うのか」
ルナ「その通りです。あの子は私たちの姿に変わります。特徴も全て変わるので、神器を使って無理矢理動きを止めます」
ガチャ…
するとサンが部屋に入ってきた。
サン「ルナ、どう?話は進んだ?」
ルナ「はい。次に会った時は草薙剣と八咫鏡、八尺瓊勾玉を使います」
サン「…さすがはルナだね。僕の考えを読んでるのかな」
ボーガン「ということはもしかして…サンも…」
サン「…あぁ。僕もヒンメルがあのレベルまで傷ついているとなると、機能停止をしないといけないと考えていた。ただ、僕たちに使うとこの世界は一瞬でさよならするから、僕たちに姿を変えたあの子に使うんだ」
メル「それでその子を止めることができる根拠は…」
サン「分からない。でも、僕たちが力を使うと本当に世界が壊れかねない。ヒンメルが力を使ったことで空間に歪みができたしドレインも出てきてしまった。みんなそれぞれ強い力を持ってるから他への影響も計り知れない」
ラト「確かに…」
サン「だから、せめて相手を止めるためだけにあの神器を使うんだ」
エア「怖いですね…本当に成功するのでしょうか…」
サン「何がなんでも成功させる。この世界と幻想郷の存亡をかけた戦いかもしれないからね」
エア「幻想郷…」
ルナ「ではこれより、世界の修復と侵入者の排除を同時進行します。侵入者が現れた場合、他の三柱へ信号を発してください。速やかに排除に向かいます」
サン「僕とルナは神器を持っておくから、何かあったらすぐ駆けつけるね」
ルナ「それでは解散。この世界を守るため、みなで力を合わせましょう」
〜物語メモ〜
三柱の最後の切り札
三柱には、自身が暴走した時に、一時的にその機能を停止させる措置がある。それが、草薙剣と八咫鏡、八尺瓊勾玉と呼ばれているもの。3つあるのはそれぞれ効果がある三柱が違うから。
草薙剣…二刻神の暴走を止めるための神器
八咫鏡…三領保神の暴走を止めるための神器
八尺瓊勾玉…四季宝神の暴走を止めるための神器
各三柱に合った神器を使わないと機能停止はできないようになっている。