条乃「沙耶様だと?てめぇ冗談も程々にしろよ?」
光陰「いや、冗談ではない」
条乃「じゃあ証拠はあるんだろうな?」
光陰「証拠はない」
条乃「は?ふざけんのも大概にしろよ」
光陰「俺はあの人に何としてでも伝えるよう言われた」
条乃「ならその証拠を出せよ!」
光陰「証拠はない」
条乃「なんやねんお前」
長津「和人。ちょっと待って」
条乃「…」
長津「まず話を進める前に自己紹介でもしてくれないかい?」
光陰「いいだろう。俺は光陰。天野 沙耶が作り出した唯一人の心を持つドレインだ」
長津「唯一…人の心を持つ…」
光陰「そうだ。沙耶は方界に幽閉された時に俺を作った。沙耶は俺を作った時にひとつだけ願いを込めたらしい。その願いは"人を守れるような子になって欲しい"だった。俺は少し前に自分のことについて聞いた。俺はどうして生まれたのかを」
長津「…」
条乃「おい。それを俺が信じるとでも?」
長津「和人。その話は光陰の話が終わってからね」
条乃「…」
長津「すまない。続けてくれ」
光陰「あぁ。その時沙耶はあなたにはあの子と同じようになって欲しくないと言った。正直意味がわからなかった。いきなり言われても理解が追いつかなかった。そして、俺は俺と同じドレインが殺されかけるところを目の当たりにした。その時俺の心にあったのは助けたいという気持ちだった」
長津「!?」
光陰「だが、足が動かなかった。助けたい気持ちはあったがそれが行動にでなかった。普通、ドレインには意思がない。体もない。液状のドロドロしたものばかりだった。そこで俺は疑問に思った。なぜ俺だけ体があるのか。なぜ俺だけ意思があるのかと」
長津「…」
光陰「沙耶は言った。あなたはある人の分身だと」
長津「分身…」
光陰「そうだ。俺はそいつについて聞いた。沙耶はこう言った。あなたは光の分身だと」
条乃「な!?」
倉本「光さんの…」
早乙女「分身…」
条乃「ふざけんな!お前が光の分身だと!?お前は光とは違う!全くと言っていいほど似つかねぇよ!」
光陰「いいや。外見こそ違うが俺が言ってるのはそこじゃない」
条乃「なんだと」
光陰「さっきも言っただろう。唯一人の心を持つドレイン。その心は慈悲の心だって」
条乃「…」
光陰「分からないのか?光が無くしている心はなんだ?」
倉本「…優しい気持ち」
光陰「そうだ。その心だ。光は二年前に起こした事件をきっかけに感情を失った。そうだろ?」
長津「確かに…」
光陰「何故無くなったのか、それは俺が光のその心を引き継いでいるからだ」
三室「仮にそうだとしてお前はなぜドレインとして生きている?ドレインは人を取り込み形を成す。ここに光がいるということはお前が形を成す理由が分からない」
光陰「すまん。それについては俺も分からない。だが考えてみろ。光が感情を失ったのは二年前のあの事件。そして俺が生まれたのは同じ二年前の事件。今の光に慈悲の心が無く、ドレインであるはずの俺にその心がある」
三室「確かにそうなるとお前が光の分身だって説明がつく」
光陰「やっと分かったのか」
長津「じゃあ沙耶様はなぜそんな事を…」
光陰「分からない。これで俺のことは喋った」
長津「あぁ。ありがとう」
条乃「じゃあさっさと光の体に戻れよ」
光陰「なに?」
条乃「お前があいつの一部だって言うんだったらお前があいつの体に戻りさえすれば本来のあいつに戻るわけだろ?」
光陰「恐らくな」
条乃「じゃあさっさと戻りな」
光陰「そうなると沙耶の言伝を伝えられないだろ。それに俺は戻り方を知らない」
条乃「なんやねんこいつ」
本庄「条乃さん…」
長津「とりあえず自己紹介も終わったことだし本題に入ってもいいよ」
光陰「あぁ。本題は今起きているドレインの発生についてだ。先に言っておく、今ドレインが出現しているのは全て沙耶が起こしたことだ」
長津「な!?」
佐野守「沙耶様が!?」
早乙女「沙耶様…」
条乃「は!?沙耶様がそんな事するわけないだろ!」
光陰「お前、いつも否定から入るな。まずは人の話を聞けよ」
条乃「クッ…」
光陰「あと、ひとつ忘れてないか?お前らここにいるのはいいけどよ、現実世界のことも視野に入れてたか?」
十二天星「!?」
早乙女「す…すっかり忘れてた…」
倉本「ここで生活していたからあっちの世界のことを考えていませんでした」
光陰「まぁ、それについては問題ない。今沙耶が現実世界に散らばっているドレインを集め、方界に閉じ込めている」
長津「そうか…それは良かった」
光陰「だがそれももたない。天秤の力が働いてない今は沙耶一人で抑え込んでいる」
長津「その後はどうなるの?」
光陰「沙耶がドレインを少しずつこの世界に送り込んでいるのは方界を徐々に崩していくためだと言っていた。一度に大量のドレインを送り込めば方界は形を保てなくなるが、それと同時にこの世界も崩れてしまう。だから被害が出ないように少しずつドレインを送り込んでいる」
長津「なるほど…」
光陰「そこで俺は沙耶に頼まれた。この方界を私ごと壊して欲しいと」
長津「な!?」
三室「なんだと」
矢巾「そんな事を…」
光陰「ただ、沙耶は方界を壊すのはドレインを生み出している存在を消すためだと言っていた。俺はそいつについては分からんが、今は眠っているらしい」
長津「そうか…」
光陰「だが、そいつは方界に変化があればすぐに目を覚ます。だから変化が起きないよう少しずつ崩していき、最後には方界ごと消してしまおうと言うことだ」
長津「それは沙耶様がそう言ったのかい?」
光陰「あぁ、そう言った。そして、十二天星と俺でその方界を消滅して欲しいとも言っていた」
長津「俺たちと君で?」
光陰「あぁ、俺は最初で最後の沙耶の願いだから受け入れたい。お前らはどうだ?やってくれるか?」
三室「その前に質問。方界が消えればそのあとはどうなる?」
光陰「おそらくドレインは消滅すると思う」
三室「それはお前もか?」
光陰「…恐らく」
三室「そうか」
光陰「今は沙耶ができるだけ方界を小さくしている。あとは俺たちが方界に行って方界ごと消滅させればいい」
長津「それはどうやって?方界は光が創り出したいわば異空間。そんなのをどうやって崩壊させるんだい?」
光陰「方界はさっき言ったドレインを生み出している存在が支えになっている。そいつを叩けばおそらく消滅させることが出来る」
長津「なるほど…」
光陰「だが、沙耶は日に日に心を失っている。それはドレインを生み出す存在が力をつけているからだ。沙耶は元々人間だがドレインの依代として今は生きている。心が失われるのも時間の問題だ」
長津「じゃあ早急に手を打たねば…」
光陰「あぁ、そうでもしないともし沙耶が抑えきれなくてドレインが大量に出現すればドレインを生み出す存在が目覚め、今いるこの世界は方界に飲み込まれる」
長津「君はそのドレインを生み出す存在が持つ能力を知っているのかい?」
光陰「あぁ、知っている。やつの能力は命を奪ったものを支配する能力だ」
長津「なるほど」
光陰「つまりはあいつに殺されなければ支配されることも無い」
長津「そうか」
光陰「俺が知っているのはここまでだ」
長津「そうか。ありがとう」
条乃「ちょっと待て。沙耶様はどうなるんだ?」
光陰「沙耶は方界とともに消えます」
条乃「!?」
光陰「沙耶はドレインを全て消したら沙耶とドレインを生み出す存在とともに方界に残り方界とともに消滅するつもりだ」
条乃「じゃあ…俺たちは方界と一緒に沙耶様も消滅させろと?」
光陰「…そうだ」
条乃「できるかよ…そんなこと」
光陰「だがこうしないとこの世界だけでなく現実世界にも被害が出る」
条乃「お前はそれでいいのかよ…自分を生み出してくれたやつをそう簡単に消滅させられるのかよ」
光陰「いや、できない。俺も最初は無理だと思った。だが、それが沙耶の最初で最後の願いだったからな。俺はその願いを叶えることにした」
条乃「じゃあ光はどうなるんだよ」
光陰「分からない。それはその時にならないと」
条乃「なんだよそれ…それで光がまた暴走したらどうなるんだよ」
光陰「…」
条乃「お前は責任取れんのか?」
光陰「…」
木葉「いいよ。それで」
条乃「!?」
木葉「俺は木葉だけど、お前らが言う光が俺ならそれでいいよ」
条乃「お前、何言って…」
木葉「正直言うと俺はこの世界の人を失いたくない」
条乃「お前…自分の母親だぞ!」
木葉「うん。分かってる。でもそうしないといけないこともまた理解してる」
条乃「なら…」
木葉「だが、俺はあくまでここの人のために動く。そのドレインを生み出す存在をどうするかはそっちで決めてくれ」
早乙女「私は…光の意見に賛成です」
三室「俺も賛成だ。確かに沙耶様に恩がある。だから俺はその恩返しをしたい」
矢巾「僕も」
倉本「私もそうしたいです」
佐野守「私も」
本庄「私も同じです」
双葉「俺も同じだな」
立花「俺もだ」
風和瀬「私も同じです」
長津「私も賛成だ。和人、あとはお前だけだ。お前はどうする?」
条乃「クッ…分かったよ!やればいいんだろやれば!」
光陰「お前ら…ありがとうな」
長津「とりあえずどうすればいいんだい?」
光陰「出現するドレインを倒せばいい。残りのドレインは全て液状だから簡単なはずだ」
長津「そうか、分かった。この事をレミリアさんたちにも伝えよう」
光陰「あぁ、そうしてくれ」
こうして一時間に及ぶ会議は終了した。
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木葉「そういえばお前、最初に会った時は我とか汝だとか言ってたけど今は俺とかお前なんだな」
光陰「あぁ、あれはただ言ってみたかっただけだ」
木葉「…そうか」