長津「あれは暗い夜の日でした。私はその時少し遠いところに行ってて家に帰る途中だったんです。その時に駅の近くである女の子が男性に腕を掴まれているのを見かけました。その子は助けを求めていたので私はその子を助けました。その子が今ここにいる小夜ちゃんです」
スッ…
そう言って長津は早乙女の横に座っている小夜を指した。
レミリア「へぇ、この子が」
長津「はい。その後私たちの家に案内して事情を聞きました。最初は警戒されてましたが今では溶け込めていると思いますよ」
レミリア「ふーん。それで?」
長津「それで大事なのはここからです。最近私たちの世界ではある事がニュースになってまして」
お空「ニュースってなに?」
さとり「ここで言う文さんの文々。新聞のことだと思いますよ」
お空「へぇー!そうなんだ!」
長津「まぁ、そんなところです」
レミリア「それで?そのニュースが何?」
長津「そのニュースは研究所から実験体が脱走したというものでした」
魔理沙「実験体…」
長津「はい。その実験体は三人いて小夜ちゃんがそのうちの一人なんです」
レミリア「な!?」
アリス「そうだったの…」
魔理沙「じゃあ残りの二人は!?」
長津「ここにいる美穂ちゃんと琴音ちゃんです」
スッ…
そう言って長津は風和瀬の横にいる美穂と本庄の横にいる琴音を指した。
レミリア「…」
うどんげ「そうだったんですね…」
長津「つまり、今私たちは三人の実験体を保護しているわけです」
妹紅「なぜ保護している」
長津「…それは渚さんからある事を聞いたからです」
妹紅「ある事だと?」
早乙女「はい。それについては私から。この子たちにはそれぞれ能力があります。この子たちはその研究所で能力を取り出す実験をされたらしいんです」
魔理沙「能力を…取り出す」
レミリア「そんなことができるのかしら?」
早乙女「いいえできません。小夜ちゃん曰く、その能力を所持している人が死なない限り能力は取り出せないらしいんです」
レミリア「じゃあその実験をやってる意味は」
早乙女「正直言うとないです。ただ、この子たちを傷つけるだけで終わってしまいます」
うどんげ「なんて酷いことを…」
早乙女「私はこんな未来ある子どもが傷つけられるのが我慢できなかったので三人とも助けることにしました。それも無事に成功し、今は三人ともここにいます」
うどんげ「それは良かったです」
長津「ですがその翌日の昼頃。琴音ちゃんがあることを伝えに来ました」
うどんげ「それは…」
長津「私たちが空から降ってくる何かによって傷つくというものでした」
霊夢 (!?)
うどんげ (!?)
霊夢 (木葉が言ってたやつね)
長津「それは実現し、私たちは傷を負いました」
妹紅「なるほど。だからあんなところで倒れてたのか」
長津「そうゆうことです」
慧音「そうゆうことだったのね」
長津「私たちはその時に傷を負うだけでなく、ここへ来るための水晶も壊れてしまいました。なので光が水晶を使って幻想郷に連れてってくれたんですが、なにせ光を含めて15人も一度に転送させたので光は途中で力を使い果たし、その結果みんなが色んなところに飛ばされたんです」
霊夢「そうだったのね」
長津「でもこうしてみんながまた集まることができたのでよかったです」
うどんげ「そうですね」
レミリア「…それで?あなたたちはこれからどうするわけ?」
長津「…」
レミリア「…考えてないのね」
長津「えぇ。正直言うとどうしたらいいか分かりません」
レミリア「…」
長津「あの研究所を壊してしまえばいいのか、それともこのままこの子たちを保護するのか」
早乙女「…」
長津「この子たちにとって幸せとはなんなのか。あの研究所を壊せば幸せになるのか。それとも私たちと一緒にいるのが幸せなのか」
レミリア「…」
長津「…私たちの世界では建物を壊すだけでも悪い印象を与えます。もし建物を壊せば私たちはあの世界にいられないでしょう」
三室「…確かに。仮に壊して元凶を絶ったとしてもその後の生活でこの子たちは建物を破壊した人たちと一緒にいる悪い子たちと見られるだろうな」
本庄「…それに建物を壊したとしてもその後どうするかなんて考えてませんし…」
レミリア「…なら、あなたたちに聞くわ」
そう言ってレミリアは小夜、美穂、琴音に質問した。
レミリア「あなたたちはどうして欲しいわけ?」
小夜「私…たち」
美穂「どうして欲しいか…」
琴音「…」
レミリア「あなたたちを守ろうと動いているこの人たちは今、何をするべきなのか迷っている。これでは話は進まない。解決しない。なら、あなたたちがこうしてほしい、ああしてほしいって言ってみるのもひとつの手助けになるんじゃないかしら?」
小夜「…私たちは早乙女さんと一緒にいたいです」
美穂「…私も」
琴音「…私も」
レミリア「なら、そうなりたいならどうしてほしいのよ」
小夜「…壊して欲しいです」
美穂「あの忌まわしいあいつを」
琴音「私たちを苦しめたあの人を」
レミリア「…あなたたち、聞いてたわね?」
長津「…えぇ」
レミリア「この子たちは研究所ではなく人を壊してほしいそうよ?」
長津「…それは」
三室「人殺しになるんじゃないか?」
レミリア「…」
木葉「…あぁ、人は壊すとは言わない。殺すと言う。そうなると俺たちは犯罪者。人殺しになる」
早乙女「…」
条乃「…」
長津「ここにいさせる訳にもいかない」
レミリア「…」
うどんげ「…難しいですね」
妹紅「…あぁ、これはな」
長津「この子たちの幸せは早乙女といること。もちろん叶えてあげたいが…」
矢巾「…事はそう上手くいきませんね」
倉本「…そうですね」
長津「ここの迷惑にもなるからこれは現実世界で解決したいと思っています」
レミリア「そうね」
風和瀬「向こうからすれば被害者になれるわけですからこっちが悪いように見えますよね」
佐野守「じゃあ何かあったらこの子たちが証言すれば…」
木葉「それは難しいんじゃないかな」
佐野守「どうしてですか?」
木葉「こっちにはこの子たちが何かされたっていう証拠はない」
佐野守「でも証言が…」
木葉「言葉じゃダメなんだ。実物がないと」
佐野守「そんな…」
木葉「研究所を破壊したという確固たる事実があり、その事実に勝てるほどの証拠を俺たちは持っていない。圧倒的にこっちが不利だ」
佐野守「でもこの子たちの傷は…」
木葉「それは本庄が治してくれただろ?」
本庄「…はい。すいません」
木葉「あっちが研究所を壊され自分は怪我をしたと言い張れば俺たちは確実に負ける。そうなればこの子たちを守れなくなる」
佐野守「…そうですね」
条乃「ならお前の能力で消滅させたらどうだ?光」
木葉「…それができたらこんな悩んでねぇだろ。俺の能力は均衡に影響が出る。無闇に使うとまた崩壊する」
条乃「…お手上げか」
立花「なら宗司の消滅の能力でどう?」
双葉「俺の能力…」
条乃「消滅か…いいと思うが?」
長津「あぁ、もしそれを消滅させることが出来れば」
本庄「そうですね。壊すのではなく消せばいいんですよね」
木葉「…」
佐野守「私はその案賛成ですね」
三室「あぁ、いいと思う」
倉本「…」
早乙女「…」
矢巾「僕も賛成です」
長津「なら、計画立ててから実行に移そう」
木葉「…待ってくれ」
木葉はみんなを静止させた。
木葉「話し合いで…どうにかならないか?」
条乃「あ?どうにもならねぇだろ。研究所を壊せば俺たちが不利になる。人を殺してもだ。だったら壊さず存在を消すのが手っ取り早いだろ」
木葉「まぁ、そうだろうな。実際そこの三人はそいつに傷つけられたっていう事実があるしな」
条乃「なら、お前もこっち側だろ」
木葉「…」
早乙女「光…」
倉本「光さん…」
木葉「俺はな、話も聞かずにこっちの勝手で消滅させるのは納得がいかないって言いたいんだ」
早乙女「!!」
木葉「俺は均衡を保つ役割を担っている。均衡を保つためならいる人いらない人を分別することだってできる。なのに何故今までそれをしなかったのか。そいつを消さなかったのか…分かるか?」
条乃「知るかよ」
木葉「…まだそいつを見定めることができるからだ。もしそいつがほんとにいらない存在なら俺はとっくに消している。天秤を傾けてな」
条乃「なら早く消せよ。お前はこの子たちを守りたくないのか?」
木葉「あぁ、守りたいさ。だがな、あっちにも意見があるはずだ。俺はな和人。双方の意見を聞かねぇと意味が無いと思っている」
条乃「だからなんだ?」
木葉「はぁ…和人。正義の反対は何だ?」
条乃「悪だろ」
木葉「違う。正義の反対はもうひとつの正義だ」
条乃「何言ってんだよ」
木葉「お前から見てそいつは悪と見える。だか逆も然り。そいつから見れば俺たちは悪だ。だが俺たちやそいつは自分の中にある正義とした意見を持っている」
条乃「何が言いたい」
木葉「分からないのか?そもそも悪ってのはそいつから見たいわば主観でしかない。もっと視野を広くしてみろ。お前はひとつの意見だけで物事を判断するのか?そいつが悪だとは限らんだろ」
条乃「いい加減にしろよ。どう見たって悪だろ。この子たちを傷つけてあげく牢屋にぶち込まれたとも言っていた。これのどこが正義だ?」
木葉「それを俺は聞きたいと言っている。本人に直接な」
条乃「話すこたぁねぇだろ。消せば問題は解決する。これ以上何も無いだろ」
木葉「…なるほど。お前の正義とはそういうものか…」
早乙女「…光」
倉本「…光さん」
木葉「…誤解してたじゃ済まないぞ」
条乃「…知るかよ」
木葉「…」
スタッ
木葉は立ち上がった。
霊夢「木葉?」
木葉「ちょっと風に当たってくる」
スタスタスタ…
木葉は部屋を出た。
条乃「なんやねんあいつ。どう見ても悪だろうが」
妹紅「あいつ、なかなか面白いやつだな」
慧音「えぇ、広い視野を持っていますね。悪を悪だと決めつけず、しっかり双方の意見を聞く…なかなか人にはできませんよ」
レミリア「それが木葉の良いところでもあるわね」
早乙女「確かに。光は昔からそうでしたよ」
妹紅「昔から?どんなやつだった?」
早乙女「私は昔、光に怖い大人から助けて貰ったことがあるんです。そのとき光は "あんな人でも帰る場所とそれを待つ人がいる" と言っていました。悪い人を悪く見ない…まさに今の光は昔の光そっくりなんです」
妹紅「なるほどな」
慧音「悪い人を悪く見ない…あの人ならどんな人とでも手を取り合って生きていけそうですね」
妹紅「あぁ、そうだな」
条乃「でもそれは甘えだろ。そうやって甘やかすとまた犯罪を犯す。あいつの慈悲は意味が無い。悪いやつは徹底的に思い知らせるべきだ」
妹紅「あぁ。悪いやつはな。それがあいつの言っていた事だろうな」
条乃「なんだと?」
妹紅「悪いやつは懲らしめるべき…だがあいつの場合それの分別がついてないから相手の話を聞こうとしてるんじゃないか?」
長津「…なるほど」
妹紅「もし仮にそいつが何も悪くなかったらお前たちは善人を殺すことになる。そうなればお前らの言う人殺しになるんじゃないか?」
本庄「…なるほど」
妹紅「だから、まずはあいつに任せてみるのはどうだ?」
佐野守「そうですね。その方が良さそうですね」
長津「じゃあそうしようか」
条乃「…」
これで数分に及ぶ会議は終了した。