木葉の幻想郷日記   作:バスタオル

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その後

霊葉がいなくなってから約9ヶ月が過ぎた。その間木葉と霊夢は胸に穴が空いた感覚に襲われていた。今は春の季節。舞い散る桜は美しく感じる。

 

霊夢「…ねぇ、木葉」

 

木葉「…ん?」

 

霊夢「あれから随分時間が経ったわね」

 

木葉「…あぁ」

 

霊夢「霊葉がここに来たのも桜が舞い散るこの季節よね」

 

木葉「…あぁ」

 

霊夢「確かみんなでお花見して、私たちに子供ができたって大騒ぎしてたわね」

 

木葉「…あぁ」

 

霊夢「…ねぇ、木葉」

 

木葉「…ん?」

 

霊夢「また…ひょっこり出てきてくれないかしら…」

 

木葉「…」

 

霊夢「私…霊葉と過ごした3ヶ月…とても楽しかったの…傲慢なのかもしれないけど…また…霊葉と一緒に過ごしたいわ」

 

木葉「あぁ…俺もだ」

 

霊夢「…自分の子供が死んじゃったら…こんな気持ちになるのね…」

 

木葉「…」

 

霊夢「とても…辛いわ…」

 

木葉「あぁ…俺もだ…」

   

霊夢と木葉は桜を見ると霊葉を思い出す。 桜を見る度悲しくなる。  

 

木葉「なぁ…霊夢」

 

霊夢「…何」

 

木葉「一緒に…出掛けないか?」

 

霊夢「…なんで」

 

木葉「少し歩いて気持ちを落ち着かせないか?」

 

霊夢「…えぇ…いいわよ」

 

木葉「さ、行こ…」

 

霊夢「うん…」

   

木葉は霊夢の手を引き神社を出た。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…人里 

 

ガヤガヤ…ガヤガヤ…

人里は賑わっていた。

 

木葉「今年も賑わってるな…人里は…」

 

霊夢「…えぇ。そうね」

 

木葉「…やっぱり…出掛けたくなかった?」

 

霊夢「ううん。今は木葉が手を握ってくれてるから…」

 

木葉「そっか…じゃあちょっと付き合ってくれる?」

 

霊夢「どこか行くの?」

 

木葉「あぁ…まぁな」

 

霊夢「分かったわ」

  

木葉は霊夢をある場所に連れていった。

 

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場所…人里近くの茂み

 

霊夢「…ここは?」

 

木葉「俺が霊葉に初めて会ったところ。霊葉はこの茂みに寝てたんだ」

 

霊夢「そう…」

 

木葉「ちょっと待ってて」

 

霊夢「…うん」 

 

ザザザ…

木葉は茂みに入って屈んだ。

  

木葉 (霊葉…もう一度…会えないかな…霊夢は霊葉に会いたがってる…俺もな…だからさ…また…会えないかな…)

   

ザッ 

木葉は立ち上がり霊夢の元に戻った。

 

霊夢「何したの?」

 

木葉「お祈り」

 

霊夢「お祈り?」

 

木葉「うん。お祈り」

 

霊夢「そう…」

 

木葉「さ、行こ」

 

霊夢「うん…」

  

木葉と霊夢は神社に戻ろうとした。

  

??? (桜が舞い散るその日まで…)

 

木葉「!!」

  

木葉は振り返った。だがそこには何も無かった。

 

霊夢「木葉?どうしたの?」

 

木葉「あ、あぁ、いや、なんでもないよ」

  

木葉は霊夢と一緒に神社に戻った。

 

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場所…博麗神社

 

木葉「どう?霊夢。気は紛れた?」

 

霊夢「少しだけね…」

 

木葉「そっか…」

 

木葉と霊夢は縁側に座った。

  

木葉「霊夢。桜、綺麗やね」

 

霊夢「えぇ、そうね…霊葉がいればもっと綺麗に見えるわ」

 

木葉「…」

 

??? (あらあら…あの時の私と同じね…)

 

霊夢「!!」 

 

霊夢はある人の声を聞いた。

 

木葉「霊夢?どうしたの?」

 

霊夢「い、いえ、なんでもないわ」

 

霊夢 (今の声って…)

 

??? (全く…仕方ないな…)

 

木葉「!!」

 

霊夢「木葉?」

 

木葉 (やっぱり…この声って…)

 

霊夢「木葉…もしかして…あんたも?」

 

木葉「てことは霊夢も?」

 

霊夢「…」コクッ

  

霊夢は小さく頷いた。

  

木葉「なぁ霊夢。ちょっと神社裏に行ってみないか?」

 

霊夢「!!」

 

木葉「あの時も神社裏だった気がする」

 

霊夢「そうね。行きましょ」

  

ザッザッ 

霊夢と木葉は神社裏に行った。

  

木葉「確かこの辺だったよな」

 

霊夢「えぇ…そうね」 

 

シュゥゥゥゥゥ!

木葉と霊夢が神社裏に行くと白い光が2つ現れた。しばらくするとその光は形を成した。

   

???「よっ、1年ぶりかな?」

 

木葉「!!」

 

???「変わらないわね…あなたたち」

 

霊夢「!!」

  

木葉と霊夢の前に現れた人物…それは未来の自分たちだった。

  

木葉「あの時…声を出したのって…」

 

木葉α「あぁ、俺だ」

 

霊夢「初めて見た…未来の木葉…」

 

霊夢α「まぁ、あの頃は1対1で話してたから顔を合わせなかったのよね」

 

木葉「でもどうして?」

 

木葉α「2人にいい事教えようと思ってな」

 

霊夢「いい事…」

 

霊夢α「少なくとも今のあなたたちにとってはいい事よ」

 

木葉「…」

 

霊夢α「木葉…」

 

木葉α「あぁ…俺たちも過去に君らと同じことを体験した」

 

霊夢「!!」

 

木葉α「霊葉がいなくなりこの約1年…ずっと胸にポッカリ穴が空いた感覚だけが残っていた…だがその時な…ある事が起きたんだ。俺たちはそのおかげで未来を生きることができた」

 

木葉「ある事…」

 

木葉α「あぁ…そのある事ってのは2つある。1つは真実もう1つは再会だ」

 

霊夢「!!」

 

木葉「そ、それって…」

 

木葉α「まず真実なんだが…あの刻の音のことだ。あれは鳴らせば過去に行くことが出来る代物だ。霊葉はそれを使い過去へ飛んだ。その効果は覚えてるか?」

 

木葉「あぁ、期間は3ヶ月…目的が達成されたら自動的に戻ることが出来る」

 

木葉α「達成されなければ?」

 

木葉「…消える」

 

木葉α「そこなんだよ」

 

木葉「?」

霊夢「?」

 

木葉α「俺は霊葉に刻の音を触らせないために誤解を生む言い方をした。刻の音を鳴らし、目的が達成されなかったらどうなるのか……その存在ごと消えてしまうって」

 

木葉「…」

 

木葉α「まぁ、確かに存在は消える」

 

霊夢「…」

 

木葉α「だがこれは人の解釈による……存在が消えるってのはそいつ自身が消える訳じゃなくてな…その時代からそいつの存在が消えるってことなんだよ」

 

木葉「?」

霊夢「?」

 

木葉α「つまりな、3ヶ月経っても達成されなかった場合、強制的に元の時代に連れ戻されるってことだ」

 

木葉「!!」

霊夢「!!」

 

木葉α「ここまで言えば分かるだろ?」

 

木葉「つまり…霊葉は今…未来にいるってことか?」

 

木葉α「…あぁ、そういうことだ」

 

霊夢「じゃ、じゃあ…霊葉が消えちゃったのって…」

 

霊夢α「あれはね…この時代から霊葉が消えたってだけで霊葉自体が消えたわけじゃないのよ」

 

霊夢「!!」

 

霊夢α「霊葉は消えたあと、ちゃんと私たちのところに帰ってきたわよ」

 

霊夢「!!」

 

木葉α「まぁ、なんだ…刻の音ってな…結構危ない上に使い切りだから1度使うと消えてしまうんだ。だからまた作らなきゃなんねぇ」

 

霊夢α「ほんとはいち早くこの事を伝えたかったんだけどね…」

 

木葉α「いかんせん作るのに時間がかかっちまった」

 

木葉「じゃ、じゃあ…」

 

霊夢「霊葉は…生きてるの…?」

 

木葉α「あぁ」

 

霊夢α「生きてるわよ」

  

その言葉を聞いて木葉と霊夢はその場に座り込んだ。

 

木葉「そっか…良かった…」

 

霊夢「良かった…霊葉…」

 

木葉α「おいおい。言いたいことはこれだけじゃないぞ?」

 

木葉「?」

霊夢「?」

 

霊夢α「あら?忘れたの?」

 

木葉「?」

霊夢「?」

 

霊夢α「もう1つあるでしょ」

 

霊葉「お父さん!お母さん!」

 

木葉「!!」

霊夢「!!」

  

突然後ろから声がした。その声は1年前…桜が舞い散る季節に出会ったある女の子の声だった。木葉と霊夢はその声に聞き覚えがあった。

  

木葉「霊…葉…」

 

霊夢「…霊葉…」

 

霊夢α (そう…もう1つ…それは…再会)

 

霊葉「お父さん!お母さん!」

  

タッタッタッ!

霊葉は木葉と霊夢の元に走ってきた。

  

木葉「霊葉!」

霊夢「霊葉!」

  

ギュッ 

木葉と霊夢は霊葉を抱きしめた。

  

木葉「霊葉!」

霊夢「霊葉!」

 

霊葉「お父さんお母さんお久しぶりです!」

  

木葉α「…なぁ…霊夢」

 

霊夢α「何?」

 

木葉α「思い出すなぁ…俺たちもこの時…とても満たされた感じしたよな」

 

霊夢α「えぇ…そうね。まさか私たちがこっちの立場に立つことになるなんてね」

 

木葉α「にしし…未来の俺もこんな気持ちだったのかな」

 

霊夢α「さぁ?そうだったんじゃない?」

 

木葉α「やっぱり…人の笑顔ってのは…良いもんだな」

 

霊夢α「えぇ…そうね」

 

霊葉「お父さん!お母さん!伝えたいことがあります!」

 

木葉「なに?」

 

霊夢「伝えたいこと?」

 

霊葉「はい!実はあの後…私はこの時代から消えちゃったんですが…その後に元の時代に戻ることが出来ました。その時、お父さんとお母さんとお話して年に一度、お父さんとお母さんに会いに来ていいことになりました!」

 

木葉「!!」

霊夢「!!」

 

霊葉「なのでこれからずっとこの季節にお父さんとお母さんに会いに来ますね!」

 

木葉「ど、どういう事…?」

 

霊夢「会いに…来てくれるの?」

 

霊葉「はい!」

 

木葉「これは…どういう事なんだ?」

 

木葉α「霊葉が言った通りだよ。俺たち3人で話し合って年に一度この季節にこの時代に来ることを許可したんだよ」

 

霊夢「じゃ…じゃあ…」

 

霊夢α「これからは毎年この季節に会えるってことよ」

 

霊夢「!!」

 

木葉α「ただし、ずっとって言っても制限があるんだ」

 

木葉「どういう事だ?」

 

木葉α「霊葉がこの時代に来れるのは君たち二人の間に新たな命が誕生するまでなんだ」

 

木葉「え…じゃあ…」

 

木葉α「新たな命が誕生した時、霊葉はこの時代に来れなくなる」

 

霊夢「な、なんで…」

 

霊夢α「忘れたの?この世界に存在できるのは1人だけよ?」

 

木葉「?」

霊夢「?」

 

木葉α「俺たちと君たちは同じ存在。ただ今の俺たちが今の君たちよりも少し前を歩いているだけ。俺たちが体験したことは過去である君たちも体験することになる」

 

霊夢α「未来で生きてる私たちの娘が霊葉ってことは、これからあなたたちの間に産まれてくる新たな命は誰?」

 

木葉「もしかして…」

 

霊夢「…霊葉」

 

霊夢α「そういう事よ」

 

木葉α「この世界に存在できるのはただ1人……俺たちと同じ存在である君たちの間に産まれてくるのは紛れもない博麗霊葉だよ」

 

木葉「そっか…」

 

木葉α「だから君たちの間に博麗霊葉が誕生した時、未来の霊葉はこの時代に存在できなくなる」

 

霊夢「でも待って!未来の私たちはここにいる!てことは霊葉はここに来れるはずでしょ!」

 

霊夢α「あなたそれも忘れたの?私たちはただの思念体。過去に意識を飛ばしているだけよ。だから厳密にはこの時代には存在してないわ」

 

木葉α「霊葉がこの時代にいるのはまだ君たちの間に霊葉の命が誕生してないからだよ」

 

霊夢「そういう事ね…」

 

木葉「つまり未来の霊葉がこの時代に来れるのはこの時代の霊葉がまだ誕生してないから…でも、誕生したら霊葉が2人存在することになるから未来の霊葉はここに来れなくなるってこと?」

 

木葉α「あぁ、そういう事だ」

 

霊夢「そう…なのね」

 

霊夢α「なにしょげた顔してんのよ。霊葉の願いは何?」

 

木葉「俺たちと一緒にいること…」

 

霊夢α「そうよ。この時代の霊葉が産まれるまで未来の霊葉があんたたちに会いに来る。この時代の霊葉が誕生すれば未来の霊葉はここに来れなくなるけど、その代わりに、この時代の霊葉があなたたちの元に来るじゃない」

 

霊夢「!!」

 

木葉「!!」

 

霊夢α「…霊葉の願いはあなたたちとずっと一緒にいること。その願いは叶うんじゃない?」

 

霊夢「…そうね」

 

木葉「確かに…霊葉は霊葉だもんな」

 

霊葉「?」

 

木葉α「じゃあ…また3ヶ月、霊葉のこと…頼んだぞ」

 

木葉「あぁ!任せてくれ!」

 

霊夢α「私たちはあまり来ることができないけど来た時はまたお話しましょうね」

 

霊夢「えぇ…分かったわ」

 

木葉α「…じゃあそろそろ行くか」

 

霊夢α「えぇ、そうね」

 

木葉「ありがとな。未来の俺」

 

霊夢「ありがとう。未来の私」

 

木葉α「あぁ」

 

霊夢α「元気でね」

 

シュゥゥゥゥゥ

白い光が木葉αと霊夢αを包んだ。

 

木葉α「桜が舞い散るその日まで…」

霊夢α「桜が舞い散るその日まで…」

 

シュッ…

木葉αと霊夢αは白い光とともに未来へ帰っていった。

 

木葉「桜が舞い散るその日まで…か」

 

霊葉「ねぇお父さんお母さん!また一緒に色んなことしようね!」

 

木葉「あぁ!そうだな!」

 

霊夢「悔いのないように過ごしましょ!」

 

霊葉「うん!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

木葉α「なぁ…霊夢」

 

霊夢α「何?」

 

木葉α「あの時の霊葉は元気にしてるだろうか」

 

霊夢α「そうね。でもそれはこれから分かるんじゃない?」

 

木葉α「ん?何でだ?」

 

霊夢α「今の私たちはあの時助けてくれた未来の私たちと同じなんだから」

 

木葉α「…確かにそうだな」

 

霊夢α「霊葉なら大丈夫よ。きっと幸せに暮らしてるわ」

 

木葉α「あぁ、そうだな」

 

木葉α (…霊葉を頼むぞ…博麗木葉)

 

霊夢α (…しっかりね…博麗霊夢)




これにて第三章『桜が舞い散るその日まで…』が終わりました。
次のリメイク投稿は第五章『東方神無想』になります。
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