Fate/STEEL BALL RUN【完結】   作:石田たつを

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#10 ウォーク・ディス・ウェイ(お説教)

悪夢のような世界で、ずっと…救いの手を差し伸べてくれる『誰か』を待ち望んでいた。

 

兄と出会ったのは、6歳の時…

初めて会った時はブスッとした顔をしていたのを覚えている。

 

何か気に障ったのか…?

恐ろしいことをされるのでは…?

 

そう思っていたけど、特に何もされなかった。

そして無関心でもなかったらしい。

唐突に、そして強引に『外の世界』に連れ出された。

お日様の下で、あまりにも堂々と…自信満々に歩くので、手を繋いでいる間は…わたしも不思議と外が怖くなかった。

 

薄暗い洋館の、大きな扉を開けて…

『この道を歩いて』色々なものを見た。

興味があったものも、なかったものも。

美しいものも、そうでないものも。

 

無理やり手を引っ張られたのに、どこも痛くなんかなかった。

後に、これが彼なりの優しさなのだと気がつくのに、そう時間はかからなかった。

 

兄は『()()()()()()()()

自分が何をされていて、この家が一体どれだけ恐ろしいモノなのか、何も知らない。

その証拠に、あの人の口から『魔術』なんて言葉は一言も出てこなかったし、乗馬クラブに通うために早寝早起きをしていたから、夜にはベットでグッスリだった。

 

それが羨ましかった。

ほんのちょっぴりだけ、憎くもあった。

あの人は苦しんでいないから。

痛い思いも…怖い思いもしていないから。

夜の暗闇に怯えない事が当然だったから。

 

だけどやっぱり……

こんな、とるにたらない…()()()()()()()()()()、『色とりどりの世界』に連れて行ってくれたから…

 

あの人を守りたかった。

わたしに『生きる意味』をくれたから。

わたしに『希望』をくれたから。

わたしの『兄さん』になってくれたから。

だから守ってあげたかった。

このまま『陽だまりの中』で生きていてくれるなら、わたしの汚れた身体も、いずれ食い潰される未来も、この苦しみも恐怖も痛みも…いつまでだって耐えることができた。

心の中の『秘密』を漏らさずに、死ぬまで口にしない覚悟があった。

そう思っていた筈だった。

結局、わたしはあの人を『裏切った』

 

少しづつ。

少しづつ。

『宿命』が、わたしをとり囲んで……

すぐに逃げられないように…ぐるぐると縛って…

そして…『希望』で一瞬だけ喜ばせておいて…

最後の最後で…

 

わたしはわるいこになった。

 

 

 

 

いつの間にか、眠ってしまっていた。

この武家屋敷には何度か泊まったことがある。

部屋の大体の位置は知っている。

着替えは持ってなかったが、汗でベトベトになって気持ち悪いので、風呂に入ることにした。

物干し竿にかかっているテキトーな服と下着をパクらせてもらう。

実はヤツとは身長(167cm)がピッタリ一緒なので、ぼくが着たってなんの問題もない。

それに『脚』が動かなかったって、1人で風呂くらい入れる。おかげさまで上半身だけはよく鍛えられた。

介護なんて必要ないし、プライドが許さない。

誰かにお世話されるなんてごめんだ。

自分ひとりでやってみせる。

もしあのすっとろい妹なんかに風呂や便所の世話までされてみろ…そうなったらぼくは自分で自分を縛り首にするね。

 

それにしても、衛宮の服…ダサいねェ〜〜〜

もっと星のマークついてるシャツとか、ニット帽とかお洒落なヤツないのかよ…

 

服のセンスに文句つけてやりたかったが、呑気している間に、クソッタレ女がアホに『お説教』かましてやがった。

 

残念でもなく当然。

いつから自殺が趣味になったワケ?

服のセンスなんかよりもそっちの方がはるかにムカっ腹が立ってきたが、こってり絞られているのを眺めたらスカッと爽やか気分になったので、そろそろ会話に混じってやることにしてやる。

 

「…それで?お説教は終わり?そろそろ建設的な話し合いをしようじゃあないか遠坂」

 

「それもそうね……というか間桐くん居たのね……バックれたかと思ったわ」

 

イヤミな女だ。

 

「俺の服を勝手に…」

 

そしてこいつ…やっぱズレてる。

 

どうやら風呂で呑気させてもらっている間に、昨日の話だとか、意味わからん生命力の原因についてだとか、色々と話していたそうだが、こっちにはカンケーない。

そんなことより重要なのはこれからどうすんの?ってことだ。

 

「一先ず、ここの三陣営は同盟ってのは?」

 

「ま、それが安牌ってところかしら……それで狂戦士(バーサーカー)以外を速攻で片付けてから、万全の体制に整えてから『3対1でヤツを始末』するってことね」

 

致し方ない…といった感じで不満気ではあるが、だからといってあのバケモンとタイマンなんてまっぴらごめんなのだろう。

渋々とため息をついている。

 

「……それじゃあやっぱり、ここの3人で、あの子と戦うってことになるんだよな?」

 

「そして殺すわよ?状況によるけどね」

 

かなり癪だが完全同意。

仮に…全ての運命が都合よく働いて狂戦士(バーサーカー)を倒せたとしても、『本体』を殺し損ねてしまえば、もう一度他の英霊(サーヴァント)と再契約されるかもしれない。

『試練』は克服して必ず殺す。

流石に3人がかりで袋にすれば、こっちにだって勝機はあるだろう。……きっと。

 

「……………」

 

おい、何ダンマリしてんだ…?

まさか……

オイオイオイオイオイ!

まさかだよな…?

 

「すまん、遠坂、慎二…事が事だから、そう簡単に方針を決めちゃいけない気がするんだ」

 

「そう…それじゃあここにいる意味なんてないから帰るわね……次会った時からは『敵同士』だから」

 

このッ…ダボ野郎ォ〜〜〜〜〜…

言ってる事がわからない……!

イカれてるのか!?この状況で!

 

「慎二…昨日はゴタゴタしてたけどお前もマス…」

 

ガバァァア

 

「いいか?『ゲーム』やってんじゃあないんだよ…全員が全員を()()()()()で動いているんだッ…!『魔術師』ってのはな…社会の法律が許さなくても『誰かを殺す』ことなんかどーでもいいんだよッ!このボケッ!」

 

…ハッ!

胸ぐらを掴んでしまっていた。

あまりにもバカげたことを言うので…

いや、実際バカな話だ……

用は英霊(サーヴァント)だけ倒して本体(マスター)は殺さないって事だろう…?

頭おかしいんじゃあないのか?

 

「慎二もなにか『願い』があるんだろ?誰かを殺してまで」

 

「ああそうさ!どうしても手に入れたいッ!

『生きる』とか『死ぬ』とか

 誰が『正義』で誰が『悪』だなんて

 どうでもいいッ!!」

 

「それは、俺や遠坂を殺してまでなのか?」

 

それは……

遠坂はともかくとして……

衛宮は……そう、コイツだけは……

 

()()()()()()()()()()()……

 

他のどんなヤツだって殺してやる。

男だろうが女だろうがガキだろうが老人だろうが…

その『覚悟』をしてきた。

だがこいつだけはダメだ…

 

ぼくの『目的』に反してしまう…!

 

クソォ〜〜〜〜……

それだったら最初から大人しく『降参(リタイヤ)』しとけッてんだ…なんて言っても聴く耳もつタチじゃあないし…

どうする…?

 

「おまえさんは『正当なる防衛』だけで、この戦いに参加するというのか…?」

 

いつの間に現れたのだろう…?

霊体化してライダーが姿を現す。

その表情は召喚した直後と同じく硬い。

 

「あんた…騎兵(ライダー)だっけ…?俺の命を助けてくれた」

 

「『納得』は全てに優先される…でなければ

『どこへ』も『未来』への道も探すことはできない

オレの言っている事が分かるか?」

 

しかしよく見ればそこに、冷徹さはない。

そしてやはり『懐かしそう』だ。

この男は時々、懐かしそうな顔をする。

 

「……『納得』…」

 

「おまえさんが『対応者』のまま()いいってんなら、そういうことなんだろうよ…だがな……ウチのシンジはそうじゃあないみたいだぜ」

 

チラリとこっちに視線を向けてくる。

『YES』だ。

正当なる防衛だとか対応者だとか…なんか謎の語彙を使ってくるが、意味は理解できる。

別に方針の馬が合わないってのは、この際どうでもいい。

だが、このバカをこのまま野放しにするのは論外だ。

 

「一回…考えさせてくれないか」

 

フンッ……ウスノロが。

だが昨日の影響で、こっちも肉体がかなりヤバい。

一度休もう……

言いたいことだけ言ってライダーは霊体化した。

自由人だ。羨ましいね。

 

「ちょっと頭冷やしてくる…シンジはどうする?」

 

「寝る。邪魔するんじゃあないぞ」

 

「分かった……部屋、どこでも使っていいからな」

 

クソ無駄にデカいだけあって、部屋くらい余りまくってるだろう。

平家なだけあって階段は殆どないから、移動がラクだ。

洋館にバリアフリーなんてないからな。

アホの癖に難しい顔しているが、知ったこっちゃない。

一度眠るとしよう。




この平行世界の間桐慎二は、他と比べてほんのちょっぴりだけ『魔術回路の名残り』が強いので、命を削る方法でギリギリ魔術師になれましたが、おそらく原作の慎二がこの方法を知っても、『リスキーすぎて論外』『成果が出る前に犬死にする可能性の方が高い』という理由で実行しないと思われます。
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