Fate/STEEL BALL RUN【完結】 作:石田たつを
凄まじい殺気を感じる…電気椅子に座らせて死刑用の高圧電流を浴びせられたのかと錯覚するほどだ。
視界がスローモーションになってきた。
そもそも槍兵は今ぼくの手を踏んでいる。
ぼくの指から産まれた3匹の銀甲蟲に纏わりつかれているが、そんなことなどお構いなしにこっちを見ている。
このままでは、ヤられる。
おざなりに槍をぷすっとするだけで、真紅の槍が持つ純然たる
視界がスローモーションになる。
槍兵が足をどけて、肩をすくめる。
そして、ヒュンヒュンと音を立てて、木の枝でも扱っているみたいにその必殺の槍を軽々と振り回して、3匹の銀甲蟲を刺し殺した。
腹…というか胸部?をブッ刺された拳大(孵化してからの一瞬でこの大きさに成長したのか…?)程の蟲が、ポトリと背を地面に向けて堕ちる。
ほんの数秒で、蟲が全滅した。
そして、ぼくにトドメを刺すために、握られた槍が、どんどん上に昇って……!
ズギャアアッ!
「なにィ!?」
バ…バカなッ!
ぼ…ぼくの体がッ!
歩けない……足が……!!
と、飛び上がった……そんな、まさか!!
「うぐおッ!痛ッ!!」
なんなんだよッ!
マジなんなんだってんだッ!?
クソ!クソ!クソ!クソ!
急にドンパチ始まってッ!
ライダーの足がブッ飛んでッ!
次はぼくが何故かブッ跳んだッ!勝手に!
ああもうッ
ますます『ムカッ腹』が立ってきた……!
なぜ元死人共のために…このぼくがビクビクして『市街地に出てきたゴキブリ』みたいに逃げ回らなくっちゃあいけないんだ?
どうして、ここから無事に帰れるのなら……
『下痢腹で便所探してる時のほうがズッと幸せ』って、願わなくっちゃならないんだァァァァ!!?
「シンジィ!」
そうだ…お、落ち着け……冷静になれ……
幸い
そうだ……まずは、己を知れ……
すると世界がスローモーションになっていく。
ぼくは『ゾーン』とやらに入門しているのか?
とにかく思考を回せ……頭を回せ…ッ!
考えろッ!!
やはり指が骨を軸に回転している……
ぼくが撃ったのは右手の人差し指、中指、薬指。
ぜんぶ第一関節から上が、もうない。
残りの指は未だ健在だ……
試しに右親指からもう一度産み出して、観察することにした。
少し遠くで、地を踏ん張る音が聴こえた。
もっと早く思考しなければならない。
やっぱり、何よりも奇妙なのが…放った指が銀色の甲蟲に不完全変態したということだ。
だから、ぼくはこれからこの蟲たちを……
『
蟲の種類は不明。当然…新種だろう。
見た目から推測するに、分類としてはカブトムシとかカナブンといった甲虫類。
カブトムシとかと違って
一つ気になる所は、この蟲を真上から見た時に、完璧な『円』になり、横から見ると『半球』になっているということ。
これは、つまり……そういうことなんだな!?
『
観える。
青い痩身…
感覚的に……『ゾーン』はもう終わる。
次にするべき…ぼくの『一手』は!…がむしゃらに撃ちまくる事
来る。来る。来るッ!!
「
祈るように手を合わせ、
胸部の
『
ドコォオアーーーーッ!!
「小僧……オマエも『回転使い』かッ!」
放ったのは両小指。
一瞬の間に『孵化して生長』した
メシャァア!
やはり当然……あの血みたいに赤い槍に阻まれる。
それは当然だ。必然だとも。
だがマジびっくりしてんのが……こんな、ぼく如きから産まれた使い魔(と今は仮定するが)が、あのクソ強い槍でブッ叩かれて……
異常すぎる。あまりにも異常すぎる。
これが時計塔とかで主席になったりしているエリート中のエリート様なら、
常識的に考えて
これで
『
「上出来だぜぇシンジ……にしてもキモいね〜〜〜この『鉄球』は」
なるほど。
高速でブッ飛んだ
片足を失ってもなお、コイツには闘志がある。
片膝立ちでも、まだまだやろうってワケか…!
それにしても、やはり…確信が持てた……
『
あれは使い魔なんかじゃあないッ!
「そしてもう1つ……シンジ、
えっ?
な、なんだ?
…?……花…?
花なんて咲いてたっけ……
いや、なんか可笑しいぞ……
う、美しい……綺麗な花だ……
どんな品種かは分からないけど……
「初手で『
ニョホホ…と、あのヘンな笑いが聴こえた瞬間に…
槍兵が瞬間移動のように一気に距離を詰めてきた。
ほんのちょっぴりだけ見えたその顔は、鷹揚に構えていた時でもなければ、屈辱を堪える悪鬼のように歪んだ表情でもない。
どこまでも無表情……つまり、真剣。
研ぎ澄まされた刃を連想させるほどの『スゴ味』
不敵な笑みで迎え撃つライダーとは対照的。
「『勝利』の感覚が見えて来たッ!」
そう言って、あの独特の
だがこれじゃあ、さっきと同じだッ!
『再び』か?『再び』かァァーーー!?
それだったら、競り負けるのはお前の方だぞ!?
ドガァアァッ!!!
うおおおおおおおおおおおおおお!!?
今度は普通にこの衝撃でブッ飛ばされるッ
うげェッ!
クソがァァ……痛でェェェ〜〜…ッ……
土食っちまったじゃあねぇかチクショォーッ!!
いやッ!そんなことなんざどうでもいいッ!
「ぐっ………貴様…手加減してたってワケでもねぇだろうし……『条件付き』って所か……ッ…」
「………」
う、打ち勝った……
ブッ飛んだのは
「
「ここから先は、もう後には引けないからか?」
「俺のマスターが臆病者じゃなければ、そうなっても良かったんだがな……」
溜め息をつくその姿に、さっきまでの殺気を感じさせない。
にも関わらず、一切の隙がない。
ここで無理に突っ込むのはマズい。
「じゃあな……先にくたばるんじゃねぇぞ」
紅い残光が天に昇る。
瞬きの間に、嵐が去った。
……死ぬかと思った。
急に、ケツに
これが……
………
ちっ!ケガしたか?でも痛みはない………
…というか、マジ?
クソッ!どうなってる!?
いつからビックリ人間になったんだぼくはッ!?
ズルゥウウ
なッ!!?
なんだあああああああ!?
なんなんだこれはッ!?
う………腕ッ!?
腕が……腕が裂けて……そこからまた腕が…!?
「シンジ、早く帰るぞ」
「待てッ!!待ってくれェェェーーッ!!」
「説明なら後でしてやる……早く出るぞ」
なんでそんなに焦ってんだァ!?
どーみてもッ!ぼくの腕からこのカピカピの気持ち悪りぃ腕が出てきた状況の方がヤバイだろォ!?
「いいから早く掴まれ……ここはもう既に……」
「はァ!?なにィ!?既に何だよッ!?」
「『悪魔の手のひら』だ」
だからなんなんだよそれはァァァァ!!!
◆
【シルヴァー・ビートルズ】
漢字表記は銀甲蟲。
間桐慎二が発現した群体型
全ての第一関節から上の指先を、骨を軸に『回転』させながら射出することができる。
指先は射出された瞬間から『卵』となり、すぐに孵化、空気中のマナを喰うことで、一瞬で成体に不完全変態する。
失った指は、『身体のどこかの肉』が肩代わりすることで再生する。
成体はカナブンのような、ツノが無い甲虫類のような姿をしている。
その形状は完全な半球であり、もう一匹と肢を絡ませる事で完全な一つの『真球』になる。
背の外骨格部分は大抵の
「チュミミィィ〜〜ン」と鳴く。
【ステータス】
破壊力 - E
スピード - E
射程距離 - D
持続力 - C
精密動作性 - E
成長性 - A
スタンド名の由来は『ザ・ビートルズ』の旧名
「ロング・ジョン&シルヴァー・ビートルズ」
スタンド名に『