Fate/STEEL BALL RUN【完結】 作:石田たつを
『魔術協会』
国籍、ジャンルを超えて魔術師達が立ち上げた、名目上は自衛の為の団体。
魔術を管理し、隠匿し、その発展を使命とする。
外敵(聖堂教会、自分たち以外の魔術団体、禁忌に触れる人間を罰する怪異)に対抗するための武力と、魔術の更なる発展(衰退ともいう)のための研究機関を持つ。
協会は大半の教本と、魔術の実践に適した歪みを抱えている『霊地』を取り押さえており…
『神秘の漏洩』を防いでいる。
そのため『世界の全て』はその裏の裏…そのまた裏まで探求され、凡ゆる霊地は『誰かが管理』するようになった。
しかし、くどいようだが…
もう一度言わせてもらおう。
『悪魔の手のひら』
それは、
あるはずの山が消え、無いはずの谷が現れる場所。
この霊地の性質は1日に何kmも、その土地ごと、『移動』するというもの。
先月あった場所に、今月にはもうなく…
何万年も何処かを彷徨っている、呪われた土地。
この性質が原因で『完全封鎖』さえ不可能。
西暦1500年…まだ時計塔アメリカ支部が設立されたばかりの頃、当時所属していた16名の魔術師によって先行調査が行われた結果……
調査隊は1人残らず全滅した。
その後に派遣された計8回の調査隊も結果は同様だった。
この事態を重く見た時計塔アメリカ支部は、かつてのプライドとしがらみと蟠りを捨て、聖堂教会第八秘蹟会との合同調査隊…計6名で構成された…
『
調査は完全に打ち切りになった。
有能かつ高度な連携さえ取れていた…封印指定執行者と代行者のチームですら踏破できなかった魔境。
特例中の特例さえ通じない……前人未到の霊地。
西暦1875年。
『悪魔の手のひら』は唯一の……
(勿論本来の『封印指定』という意味ではない)
◆
ケツの骨が痛い。
もう20分くらい馬で2ケツしている。
にも関わらず景色が永遠に変わらない。
遠くにあるビルとマンションの輪郭は、いつまで経ってもボヤけたまま。
ライダーは無言で手綱を握っている。
真夜中でもないのに人がいない。
そもそも『生命』がいない。
ぼくたちは真っ直ぐに進んでいる。
曲がったりして、グルグル同じ所を周っているワケじゃあない。
なるほど……通りでライダーが焦っている訳だ。
ちっぽけだった公園が異界化しているのだから。
流石に……だんだん不安になってきた。
「木に『印』をつけて走るのはどうだ?」
「舌噛むぜ?それにそんなことは『無駄』だ」
だが、このままだとこの場所で日が暮れてしまう。
今現在『イリヤスフィール』が、どの地点で何をしているか知らないが、今日の晩には衛宮をもう一度ミンチ肉にするかもしれない。
その可能性がある。
それだけは……絶対に!
いやだ………!!
「所で、その『左腕』の事なんだが……」
「!……やっぱりなんか知っているのか!?」
「おまえさんは、知ってっかな?『聖人』とは……
はァ?『聖人』?
なに言ってんだコイツ……急に……
『聖人』って、例えば聖書に出てきたりだとか、そーいう大昔のヨーロッパとかの偉いヤツのこと……そんな感じだよな…?
「いや…聖マルタとか…聖ゲオルギウスとか」
「それは完全な答えではない」
振り向いたライダーは、どこまでも真剣な表情をしている。
「『聖人』とは死んだ後に『奇跡』を起こす人物のことを指す!」
「いいか…くり返すぜ、死んだ後にだ!…生きてる時だけじゃあねえ。ヴァチカンの法王庁には『規定』があり、死後最低でも2度以上の奇跡の確認がなされた人物を『聖人』という!だから聖人認定までも数百年も待ったりするまさに偉大中の偉大な人物を指す。しかも聖人の遺体は何百年も腐らない」
……話が読めてきた。
ぼくの『
なんか………すごい話だ………
すごいリッパな話で………
かなり頭がイカレてる………
……でも待てよ、ここは日本ッ!
日本に渡った『聖人』なんているのか!?
しかも、なぜ冬木中央公園に?
「そして、これはオレの予測だが……『遺体』には『引力』がある……」
「『引力』……どーいうことだよライダー」
「
……そうか。なるほどね。
確かにずっと気になっていた……
西部開拓時代の馬乗りみてーな格好。
恐らく『門外不出』の回転の技術。
何かしらの『
「その『聖人の遺体』ってのは……つまり……」
「……ああ、
ヤバい。
気持ち悪りぃカピカピの腕とか言ってしまった。
明日には間桐邸に洪水が来るかもしれない。
それか硫黄と火が降ってくるかも。
「そして遺体を手にしようとする者は『試練』によって『選別』される。今現在『発生』しているそれを『悪魔の手のひら』と
おい、待て、もしかしてぼくって今、『聖杯』なんかよりも…よっぽどエゲツないモノを所有しているってこと?
オイオイオイオイオイ……
まるで抜き打ちテストだッ!
中学の時のハズレ教師かよこんちくしょォォォッ!
「おい、どうするんだよッ!?」
「落ち着けって!必ず『試練』がある筈だ…」
だからってこのままケツ骨が擦り下ろされるまで、馬に乗ってろってのかァァ!?
景色が変わらない…!
トータル40分も、しかも馬に乗って走ってるのにだ!
40分も経っているので、ライダーの足さえ
やはり
スゲー羨ましいね。全く………
「……?……『出口』だぜ、シンジ…!?」
えっ……なんで急に……
いや待て、なんだあの『小道』…!?
そもそも可笑しい……確かこの公園にはでっかい並木道があって、他の出口なんかないッ!
しかもかなり狭いぞ……馬じゃあ通れない。
「……これから先が、試練ってことか」
「
さて……
公園に車椅子は置いてきてしまったので、ライダーに背負ってもらうことになった。
こんな異常事態じゃあなければ、ぼくのプライドが許さなかったが、こんな抜き差しならない状況じゃあ仕方がない。
まずは観察してみることにする。
周りはコンクリの擁壁で囲まれていて、家とかコンビニとかの建物は無い。
少し先に『ポスト』が見える。
突き当たりまで行くと小道は左に続いている……
とりあえず『ポスト』を観察してみようとすると、そのすぐ近くの壁にこう刻まれていた。
『
ほう、これが『試練』という訳か。
結構カンタンなんじゃない?
「いいか?油断すんなよ……マジ死ぬ気でやれ」
おっと、そんなマジになるってことは、コイツが今まで乗り越えて来た『試練』ってのは相当なモンなのだろう。
それに、よく考えればこれは『見るなのタブー』といわれるヤツ。
世界各地の神話だとか民話とかにあって、これに叛けば大抵ヒドイ目にあう。
この試練はシンプルだ。
ゆっくりと左に曲がる。
小道は一本道。一方通行。誰もいない。ちと狭い。
結構遠いが、先に大通りが見える。
あそこまで行けば『クリア』ってことかな。
ライダーが無言で歩く。きっと無心で歩く。
すると、後ろから………
「ジャイロ…?…ジャイロなんだな……?」
若い(20代くらいか?)男の声が聴こえた。