Fate/STEEL BALL RUN【完結】   作:石田たつを

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#17 ミッドナイト その①

ラリってる藤村は、黒塗りの高級車に乗って迎えに来た筋モンによってドナドナされ、我々は無事平穏を取り戻した。

やっぱり2人並んで同棲したてのカップルみたいに皿洗ってんので、今のうちにブッ込んでやることにした。

 

「あぁ、後今日から桜もぼくらと一緒にここに泊まるからよろしく」

 

4()6()4()9()ゥゥゥ〜〜……ん〜〜〜!!………なかなかオモシロいんじゃあねーか?後でタイガに見せてやんねーとな」

 

ライダー、黙れ。

 

「兄さん……どうして急に…!?」

 

「そうだぞ。というかなんでお前が決めるんだ…」

 

「うるせぇバーーーカ!口ごたえするなんて生意気なんですけど!桜はここに泊まる!1週間くらい!これは『決定事項』!話は終わり!」

 

はい任務完了(ミッション・コンプリート)

間桐慎二はクールに去るぜ…

手をスイスイして謎のギャグを練習しているバカを連れて、さっさと居間に逃亡させてもらう。

 

「………………」

 

……ヤバい。

完全にコイツの存在を忘れていた。

セイバーが正座して鎮座している。

しかも無言で。

 

プレッシャアーーーッ

 

気まじィィィィ〜〜〜〜〜

そういえば、ぼくらとセイバーって全然会話したことないんですけど。

何話せばイイんだ?

金髪碧眼だし、たぶん西洋人だよな…?

じゃあアレか?聖書の話とか?いや待て、すげー信心深いヤツだとしたらぼくのニワカっぷりがバレてしまう。それは癪だ。

というか『宗教・政治・スポーツ』は初対面のヤツと会話してはならない『三大禁忌(タブー)』じゃん!

オイオイオイ、こんなことならもっと女の子の喜ばせ方とか勉強しとけばよかった。

生憎、馬に乗ってばっかりで女の子と遊んだりしてなかったもんでね。

 

「よぉセイバー…ついさっきギャグ考えたぜ………オリジナルギャグ考えたんだ………たった一度しかやらねーからよく見てろよ……一度っきりだ………指見てろよ、今、指何本に見える?」

 

正気か?こいつ。

 

「……………………………4本です」

 

え!

ノ、ノった…!?

嘘だろセイバー。

 

「どうぞ4()6()4()9()ゥゥゥ〜〜……」

 

スイッ

 

プルプルしている両手の指の数。←9本。

…………………

つまんねェェェ〜〜〜〜〜〜………

これ、令呪使ってもいいかな…?

『今すぐそのつまんねーギャグ辞めろ』って。

うーーーん、割と迷うな。

にしてもカワイソー……こんなカスみたいなギャグ見せられてさ。

なんてリアクションすんだろね。

 

「………ふふっ」

 

笑ったァァァァ!?

 

「どうだ?あとでもっとジワっと来んだよ」

 

マジかよ。ウケたんですけど。

なにこれ。可笑しいのってぼくの方なの?

付き合ってらんないよ。

 

 

 

 

皿を洗い終わった桜が風呂に入るってんで、衛宮はバスタオルの場所教えに行ったり、桜が泊まる客間のシーツとかを高級ホテルのボーイみたいに甲斐甲斐しく準備しに行った。

『お茶でも飲んで話でもしようや』ってことで、さりげなくキッチンに貯蓄しておいたカモミール・ティーをライダーに淹れさせ3人分持って来させた。

セイバーはズズズって啜らずにお上品に飲んでいるので、コイツの生前は割と位が高い人物だったのかもしれない。

そう思わせる『気品』がある。

 

「………慎二、貴方を見ているとなんだか、兄君を思い出しますね」

 

「はァ?なに急に…?」

 

「いえ、その皮肉っぽい所とか、なのに完全に情を捨て去っていない優しさとか…………貴方のそれは私の兄君にそっくりです」

 

へ〜〜〜〜〜〜〜〜………

 

「…別にアンタの真名なんかどーでもいいけどサ、そーいうの言っちゃうとバレちゃうんじゃない?」

 

「そういう所です」

 

くっ!ぼくコイツ苦手かも!

見透かした様な事言いやがってッ!

 

「ですが…例えシロウの友人であったとしても、『聖杯』を譲る気はありません…それだけはお忘れなきよう、お願いします」

 

うわァ〜〜〜〜……はいはい。

なんか、ザ・清廉潔白&謹厳実直ってな感じ?

苦手だわァ〜〜…あんまり会ったことないタイプ。

でも、ライダーはそうじゃあないみたいだ。

相性が良いのかもしれない。

……いや違うな、コイツは単に自分のギャグでウケてくれた人に懐いているだけだろう。

それにしても暇だな。

一応、衛宮たちと今後の方針について話し合いたかったんで、こーして待っているワケなんだけども。

 

「トランプしねーか?」ニョホホ

 

「…………いいでしょう」

 

「グッド!」

 

なんだかんだノリ良いな。

そんなこんなで、ポーカーすることになった。

結構、勝負が白熱してきたんで、途中から帰ってきた衛宮も混じって4人でもやることになったが意外や意外、セイバーがクソ強い。

さっきも5枚交換してたんで、こりゃイケるって思ってレイズしたら、まさかのコール。

衛宮とライダーは早々に降りた(フォールド)が、なんか癪だったので勝負すると………

 

ぼく:フルハウス

セイバー:ストレートフラッシュ

 

………マジの金賭けてなくてよかったァ〜〜〜

セイバーの圧倒的にブッちぎりの首位独走。

約1時間くらいやってるが、全員もう素寒貧。

単純な幸運もそうだけど、降りる(フォールド)判断力とか、弱い手札(ハンド)でも一切動揺せずに仕掛けてくるブラフとか、賭け事全般に必要な『勝負勘』がハンパない。

流石にムカついてくる程に負けが込んできた。

なんとなくチラリと横を見ると、トイレ我慢してるガキみたいにソワソワしているアホと目が合った。

 

「なぁ、桜って結構…長風呂するタイプか?」

 

「そんなに心配なら見てきなよ」

 

「……ちょっと行ってくる」

 

フンッ…お節介焼きがよ………

 

「オレはこのクマちゃん(女の子)を賭けるぜ……やっぱ大事なモン賭けねーとアンタには勝てない」

 

「!……騎士として、貴殿との勝負……受けさせていただく」

 

ボロクソに負けてつまんねーのでそこら辺にあった雑誌*1を読んでいる。

だがライダーは未だに勝負を挑んでいる。

……なんかセイバーの目が真剣(マジ)っぽいな。

ぬいぐるみ好きなのかな。

 

しばらくすると、汗かいた衛宮が帰ってきた。

どうやら桜が風呂場でブッ倒れていたらしい。

一瞬、客間まで顔出してやろうか迷ったが、どーせコイツが色々やったんだろうし、やっぱやめた。

 

というワケで、話し合いの時間だ。

一応、セイバー陣営とは正式に『同盟組みましょうね、よろしくっ』って言った訳じゃあないし、正直チャンスがあるなら『イリヤスフィール』をブッ殺すつもりだが、ここでそんな言い争いしてたって時間の無駄なんで、この際触れないことにした。

 

「お前がくたばったら、グズの妹が脱水症状で死ぬくらい泣くだろーからね……力貸してやるよ」

 

「じゃあ、『誰も殺さない』んだな?」

 

「ハァ〜〜〜〜〜……しょうがね〜なぁ〜〜」

 

クソデカ溜め息も出るわ甘ちゃんが。

それはともかく、この前学校で遠坂から教えて貰った情報…『柳洞寺』に外様の魔術師が縄張りを張ってるかもしれない、という話。

この陣営は前衛にセイバー、後衛にライダーとバランスが良いから、相手が単騎なら充分勝機はあるだろう。

……風邪っぴきの事がちょっぴり気になるが、ぼくたちの素性が知られて住所割られるほうがよっぽど危険だ。

ここはサッサと他の英霊(サーヴァント)をブチのめす方が、得策なんだと思う。

 

「では指揮系統を統一しましょう…戦闘か退却かの判断が割れた時にどちらに従うべきか」

 

「ぼくなんかより、よっぽどタフなのは衛宮なんだから、お前がやれよビックリ人間」

 

「戦闘経験なんて無いから上手く指示できないぞ」

 

「いえ……慎二の言うことは理にかなっています。戦場において指揮官が斃れるというのはかなりの痛手。その点シロウは慎二と違って頑丈ですから」

 

今さりげなく貶された気がする。

………気のせいか。顔に悪意ないもん。

じゃあコイツも天然だ。勘弁してよ。

 

「分かった…それじゃ、今回はあくまで『調査』をメインにしよう。流石に2人も英霊(サーヴァント)が居るなら、よっぽどの事がない限りは大丈夫だろうけど」

 

それ映画とかだと、よっぽどの事が起こる前の台詞なんですけど。

 

「ライダーもそれでいいよな?」

 

「概ね問題ねーが、本当の本当にヤバくなったら、『自己判断』させてもらう……それでもいいか?」

 

「無論です。寧ろ手遅れになるまでこちらに判断を委ねられるのは困りますし、貴殿の主君(マスター)はあくまで慎二ですから」

 

「よし、話はまとまったな……」

 

『行くぞ!』

 

なんて、無駄に気合い入った声で言われた。

そして4人で屋敷を出る。

セイバーはいつの間にか鎧を着ていた。

ライダーは馬を出さずに歩きで行くようだ。

 

月は高く、夜の闇はなお密度を増していく。

風があるのか、空を流れる雲が速い。

見え隠れする月明かりに照らされながら、ぼくたちは敵地に向かって歩き出した。

*1
藤村大河が置いていった『イタリアンヴォーグ』の今月号

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