Fate/STEEL BALL RUN【完結】 作:石田たつを
【衛宮士郎のファッション】
アウター:モッズコート(古着)
インナー:ラグランシャツ(ユニクロ)
パンツ:ストレートジーンズ(ノンブランド)
シューズ:スニーカー(ノンブランド)
靴下:スポーツソックス3足組(ダイソー)
下着:無地トランクス(GU)
アクセサリー:デジタル腕時計(セリア)
秋冬の普段着はこのコーデのみ。
これ以外の服のコーデはなし。
(後は制服とジャージと寝巻きのみ)
春夏の普段着はモッズコートを脱ぐだけ。
モッズコートは衛宮切嗣のお下がり。
インナーのラグランシャツは、セールの時にまとめ買いしていた為、何着も持っている。
スニーカーはアウトレットで
値段が値段なだけに、流石の彼でも履き始めた時は『すぐに穴が開くんじゃあないか』と、すごく不安だったらしい。
お洒落に対して頓着がないので、値段と機能性だけに意識を全振りしている。
衛宮士郎の人間味の無さの表れ……その一つ。
【間桐慎二のファッション】
アウター:テーラードジャケット(GUESS)
インナー:白のワイシャツ(HERMES)
Tシャツ:黒のロゴTシャツ(Emilio Pucci)
パンツ:リーヴァイス505(Levi's)
シューズ:スニーカー(BALLY)
靴下:レギュラーソックス(Mr.junko)
下着:ボクサーパンツ(Moschino)
アクセサリー:腕時計(TAG Heuer)
秋冬の普段着コーデの1つ。
全身をハイブランドで固めている。
まさに衛宮士郎とは真逆の金銭感覚。
バイトしていない高校生とは思えない。
金の出所は勿論、祖父のクレジットカードである。
意外にも(このコーデの)デザインはシンプル。
その為、結構ハイブランドと気付かれにくい。
まぁ…気付かれた所で、どうという事はないが…
ちなみに、他にも色々と服を蒐集しており、中には更にド派手なシャツやジャケットもある。
彼のファッションセンスは衛宮士郎だけでなく……妹である間桐桜にも大不評らしい。
理由は『流石に成金すぎるから』
◆
吐く息が白い。
雨はザーザー降りになってきた。
全身が雨で濡れて、服が重くなってきた。
そろそろ『冬木大橋』が見えてくる。
俺の左腕に侵入してきた『目玉』が、とうとう首筋にまで登ってきた。
そして、右頬を通って、更に上へ……
これは……本当に……何なんだ…?
横断歩道を渡り切ったその直後、俺の『右眼』に…強烈な痛みと違和感を感じた。
「うわああああああああッ!?」
なんだ……これはッ!?
単純な痛みとかじゃあない。
まるで、目の中に電動ドリルを突っ込まれた……
いや、それにしては痛みが控えめだ……
とにかく、奇妙な感覚。
人生で一度も味わった事がなく、きっと…これから2度と味わう事がないであろう感覚。
「あ……あ……?……」
そんな奇妙な感覚は唐突に終わりを告げた。
なんともない。痛くも痒くもない。
身体中を見て、
なんともない。ただビショビショなだけ。
いや、待て……『両手』…?
「な……俺の右腕が…ッ!?」
雨でメッキが剥がれていくように、俺の右腕は元の姿に……本来あるべき姿に戻っていく。
感覚は蘇り、当然…動かす事だって出来る。
身体中の『水ぶくれ』も完璧に治った。
これは……あの『目玉』の力なのか?
聞きたいことが多すぎる……
桜を見つけて連れ帰ったら、新聞記者みたいに色々と問い詰めてやる。
いよいよ『冬木大橋』に着いた。
そこと直結している公園に向かう。
この時、俺は…何故か直感的に…こう思った。
公園の入り口まで来た。
両手を地面につけ、精神を集中する。
この『公園』の構造を『
ただそれだけ。
それだけ考える。
「
一瞬だけ、右眼に痛みが走る。
たったの一度だけ。
集中は揺るがない。
どうってことはない。
「基本骨子、解明」
『
情報が濁流のように流れ込んでくる。
それを頭の中で整理して、順序立てて組み立てる。
集中は切らさない。
精神は揺らがない。
このくらい、どうってことはない。
寧ろ、簡単すぎるくらいだ。
よし、完成した。
噴水、ベンチ、木、花壇、柵、看板。
『何処』に『何』が『ある』のか……
その全てが手に取るように分かる。
「当該人物、観測」
完成された『
身長156cm。女性。黒髪。
公園で佇む『人物』の視覚的情報が、勝手に頭の中に流れ込んでくる。
それは『追加された情報』
それが瞼の裏に浮かび上がって、形を作っていく。
「桜だ…!」
俺が観測した情報によると、移動していない。
あそこで佇んでいる。
走っていけば、そう遠くはない距離で。
いよいよ以って疲れてきた。
今日一日だけで、何キロ走ったか。
だというのに、懲りずに走っている。
歩く気になれないからだ。
それは…まぁ……しょうがない事だ。
雨が弱まる気配はない。
走っていると時々…雨粒が目に入りそうになる。
ふと、こんな考えが過ぎった。
俺に『こんなこと』は出来やしない。
公園という大きな施設は、膨大な情報によって構成されている。
まだまだ半人前の俺では、一つの『モノ』の基本骨子や構成材質を解明するのでやっとだった。
例えばストーブとか、ガラクタとか……
たったのそれくらい。
一体、俺に何が起こっているのだろうか。
疑問が幾つも湧いてくる。
だがそれも、今は忘れよう。
何故なら…………
「ぇ…………せ……先輩……」
桜よりも『優先』される事なんて……
一つもないのだから。
◆
【ザ・ウォッチャー】
漢字表記は『観測者』
聖人の右眼を手に入れた事で開花した能力。
建造物や施設、器物の構造を読み取り、内部を視覚映像として捉える事が出来る。
さらに構造を把握した際に、頭の中に『設計図』が作成され、『リアルタイム』で更新され続けている内部の情報を観測できる。
建造物内の『人物』や『異常』を迅速に調査する事に長けている為、諜報や暗殺向きの能力と言える。
衛宮切嗣が『無駄』と称した『才能』の極致。
能力が発動している時のみ………
右眼の虹彩が金色に輝き、『SMITH』という文字が浮かび上がる。
【ステータス】
破壊力 - なし
スピード - なし
射程距離 - なし
持続力 - なし
精密動作性 - なし
成長性 - なし
名前の由来はアイルランド出身のギタリスト……
『ロリー・ギャラガー』の同名曲から。
この能力はどちらかと言うと……
『ジャイロ・ツェペリ』と同じく、本来の『力』が『チューン・アップ』されたもの…かもしれない。
◆
桜は俯いたまま、凍えた雨に晒されている。
かける言葉が見つからない。
だから、俺はもう一度だけ名前を呼んだ。
「桜」
「だめ、来ないでください……!」
それを。
今まで聞いた事のない必死さで、桜は拒絶した。
「…………」
足を止める。
桜は俯いたまま、スカートを握り締めている。
その姿は、己を恥じる罪人のようで辛かった。
「帰って…ください……わたし…何をするか…」
声は震えている。
雨の冷たさと罪悪感で震えている。
それを払拭するには、どうすればいいのか。
俺には分からない。
ただ………
「帰ろう、桜……慎二も待ってる」
手を差し伸べる必要がある。
それだけは分かっていた。
「先輩………」
濡れた黒髪が揺れる。
桜は、唇を血が出るまで噛み締めた後……
「帰れません……わたしに…帰る場所なんて……」
憎しみの混じった声を、吐き捨てた。
「桜」
「だって、もう知ってるんですよね?こんな…鈍いわたしでも、それくらいは分かります……兄さん…お喋りな人ですし……」
「それは……桜の身体の事か…?」
「はい…やっぱり、知ってたんですね…なら…」
これで終わりだ、と。
声にはならない言葉を、白い吐息が告げていた。
「馬鹿言うな、俺が聞いた事なんてどうでもいい、俺が知っている桜は今まで一緒にいた桜だけだ」
「だって……終わっちゃいます……わたし、先輩が思っているような女の子じゃないんですよ?」
桜は自らの肘に爪を立てる。
それは、身体に染み付いた汚いモノを罰するような、自虐的な行為だった。
「わたしは間桐の魔術師で、それをずっと先輩に隠してきました……先輩がセイバーさんを連れてきた時も、知らん顔して隠していたんです」
「桜」
「わたしは臆病で泣き虫で卑怯者なんです…お爺様に逆らう事も自分で終わらせる事もできなかった…痛いのがイヤで、怖いのもイヤで、みんなより自分が大切すぎて、死ぬ勇気も持てなかった…」
泣いている。
桜はただ泣いているだけだ。
どうしたらいいのか分からなくて……
よけい悲しくなって、泣いているだけ。
「……………」
それを感じ取って、後悔した。
俺は今まで、桜の泣き顔を見たことがなかった。
その意味を。
自分を責めるコトでしか泣けない意味を、どうしてもっと早く気がつけなかったのか。
「泣くな………桜」
「だから……全部、わたしが悪いんです」
泣きながら、諦めている。
桜は、全てを諦めている。
自分の『幸せ』すらも……
「わたしはお爺様の操り人形で、いつ…取り乱すか分からなくて、いつか、
桜は自らを追い詰める。
………誰も桜を責めていない。
だからこそ、自分で自分を責めるしかない。
自分が悪人だと。悪い人間なのだと。
罰を与えるしかない。
「………だから、泣くな」
「兄さんが下半身不随になったのは、
桜が語った…慎二の事故の真実。
肘に爪が食い込んで、血が流れていく。
桜が自分を悪人だと断じた理由。
何年も打ち明けられなかった真実。
それが、ずっと…ずっと……桜の心を蝕んでいた。
「なのに、わたしは…それを打ち明けられなくて…挙げ句の果てには、魔術の存在すら知られて………兄さんは、こんな……わたしの為に、わたし以上に身体を改造して何度も死にかけて、寿命を削って、戦ってくれてるんです……わたしは…一体、どんな顔をして兄さんの妹をやればいいんですか…いや…そもそもわたしなんて…いなければ…」
「桜」
俺が守りたいもの。
俺にとって大切なもの。
失うことさえ、思いつかなかったもの。
それをこれ以上泣かせたくないのなら。
俺が手を引いて、陽の当たる場所まで………
「ごめんなさい……騙していてごめんなさい………兄さん…夢を壊してしまって…ごめんなさい……」
桜は謝り続けている。
心の中で堰き止め続けた真実を吐露した事で……
ずっと、言えなかった謝罪の言葉を譫言のように…何度も何度も繰り返している。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
他の誰が許さなくても…例え、兄である慎二すら…許さなくても、俺が桜の代わりに桜を許し続ける。
「
桜が放ったその言葉。
たったの一言。
それだけで、俺はもう…限界だった。
「あ………」
冷え切った身体を抱きとめる。
触れただけで、折れてしまいそうな……
そんな桜の身体を…出来るだけ優しく……
「もう…泣くな……桜が悪いヤツだってコトは……もう、よく分かったから」
息を呑む音。
心臓の鼓動。
間近になって、色々な音が聞こえる。
「だから、俺が守る。どんな事になっても、桜自身が桜を殺そうとしても……俺が、桜を守るよ」
「せん、ぱい」
「約束する……俺は桜だけの正義の味方になる」
抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。
この誓いの証明の為に。
これが本当に『正しい道』なのか……
それは分からない。
ただ、1つだけ言える事は……
俺は、『桜だけの味方』になるという選択に……
『納得』しているという事。
◆
余談その①
間桐桜が本気で追跡を『拒絶』していた場合……
追跡者に対して…『ワンダー・オブ・U』以上の『厄災』が次々と降り注ぐ事になっていた。
例えば、雨粒は弾丸くらいの強度になるし……
鉄骨は自動追尾しながら落っこちてくる。
余談その②
『ここ』とは別の平行世界において間桐慎二は……
『2月8日』時点で死亡している。