Fate/STEEL BALL RUN【完結】   作:石田たつを

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#33 レイン(雨に唄えば…) 

【衛宮士郎のファッション】

アウター:モッズコート(古着)

インナー:ラグランシャツ(ユニクロ)

パンツ:ストレートジーンズ(ノンブランド)

シューズ:スニーカー(ノンブランド)

靴下:スポーツソックス3足組(ダイソー)

下着:無地トランクス(GU)

アクセサリー:デジタル腕時計(セリア)

 

秋冬の普段着はこのコーデのみ。

これ以外の服のコーデはなし。

(後は制服とジャージと寝巻きのみ)

春夏の普段着はモッズコートを脱ぐだけ。

モッズコートは衛宮切嗣のお下がり。

インナーのラグランシャツは、セールの時にまとめ買いしていた為、何着も持っている。

スニーカーはアウトレットで798円(ナナキュッパ)。

値段が値段なだけに、流石の彼でも履き始めた時は『すぐに穴が開くんじゃあないか』と、すごく不安だったらしい。

お洒落に対して頓着がないので、値段と機能性だけに意識を全振りしている。

衛宮士郎の人間味の無さの表れ……その一つ。

 

【間桐慎二のファッション】

アウター:テーラードジャケット(GUESS)

インナー:白のワイシャツ(HERMES)

Tシャツ:黒のロゴTシャツ(Emilio Pucci)

パンツ:リーヴァイス505(Levi's)

シューズ:スニーカー(BALLY)

靴下:レギュラーソックス(Mr.junko)

下着:ボクサーパンツ(Moschino)

アクセサリー:腕時計(TAG Heuer)

 

秋冬の普段着コーデの1つ。

全身をハイブランドで固めている。

まさに衛宮士郎とは真逆の金銭感覚。

バイトしていない高校生とは思えない。

金の出所は勿論、祖父のクレジットカードである。

意外にも(このコーデの)デザインはシンプル。

その為、結構ハイブランドと気付かれにくい。

まぁ…気付かれた所で、どうという事はないが…

ちなみに、他にも色々と服を蒐集しており、中には更にド派手なシャツやジャケットもある。

彼のファッションセンスは衛宮士郎だけでなく……妹である間桐桜にも大不評らしい。

理由は『流石に成金すぎるから』

 

 

◆

 

 

吐く息が白い。

雨はザーザー降りになってきた。

全身が雨で濡れて、服が重くなってきた。

そろそろ『冬木大橋』が見えてくる。

俺の左腕に侵入してきた『目玉』が、とうとう首筋にまで登ってきた。

そして、右頬を通って、更に上へ……

これは……本当に……何なんだ…?

横断歩道を渡り切ったその直後、俺の『右眼』に…強烈な痛みと違和感を感じた。

 

「うわああああああああッ!?」

 

なんだ……これはッ!?

単純な痛みとかじゃあない。

まるで、目の中に電動ドリルを突っ込まれた……

いや、それにしては痛みが控えめだ……

とにかく、奇妙な感覚。

人生で一度も味わった事がなく、きっと…これから2度と味わう事がないであろう感覚。

 

「あ……あ……?……」

 

そんな奇妙な感覚は唐突に終わりを告げた。

なんともない。痛くも痒くもない。

身体中を見て、両(・)手(・)で触って、確かめてみる。

なんともない。ただビショビショなだけ。

いや、待て……『両手』…?

 

「な……俺の右腕が…ッ!?」

 

元(・)に(・)戻(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。

雨でメッキが剥がれていくように、俺の右腕は元の姿に……本来あるべき姿に戻っていく。

感覚は蘇り、当然…動かす事だって出来る。

身体中の『水ぶくれ』も完璧に治った。

これは……あの『目玉』の力なのか?

聞きたいことが多すぎる……

桜を見つけて連れ帰ったら、新聞記者みたいに色々と問い詰めてやる。

 

いよいよ『冬木大橋』に着いた。

そこと直結している公園に向かう。

この時、俺は…何故か直感的に…こう思った。

 

こ(・)の(・)公(・)園(・)を(・)解(・)析(・)す(・)る(・)事(・)が(・)出(・)来(・)る(・)。

 

公園の入り口まで来た。

両手を地面につけ、精神を集中する。

この『公園』の構造を『図(マップ)』にする。

ただそれだけ。

それだけ考える。

 

「同調(トレース)、開始(オン)」

 

一瞬だけ、右眼に痛みが走る。

たったの一度だけ。

集中は揺るがない。

どうってことはない。

 

「基本骨子、解明」

 

『図(マップ)』は解析された。

情報が濁流のように流れ込んでくる。

それを頭の中で整理して、順序立てて組み立てる。

集中は切らさない。

精神は揺らがない。

このくらい、どうってことはない。

寧ろ、簡単すぎるくらいだ。

よし、完成した。

噴水、ベンチ、木、花壇、柵、看板。

『何処』に『何』が『ある』のか……

その全てが手に取るように分かる。

 

「当該人物、観測」

 

完成された『図(マップ)』の中に迷い込んだ『異物』

身長156cm。女性。黒髪。

公園で佇む『人物』の視覚的情報が、勝手に頭の中に流れ込んでくる。

それは『追加された情報』

それが瞼の裏に浮かび上がって、形を作っていく。

 

「桜だ…!」

 

俺が観測した情報によると、移動していない。

あそこで佇んでいる。

走っていけば、そう遠くはない距離で。

いよいよ以って疲れてきた。

今日一日だけで、何キロ走ったか。

だというのに、懲りずに走っている。

歩く気になれないからだ。

それは…まぁ……しょうがない事だ。

 

雨が弱まる気配はない。

走っていると時々…雨粒が目に入りそうになる。

ふと、こんな考えが過ぎった。

 

ど(・)う(・)し(・)て(・)出(・)来(・)た(・)の(・)だ(・)ろ(・)う(・)か(・)。

 

俺に『こんなこと』は出来やしない。

公園という大きな施設は、膨大な情報によって構成されている。

まだまだ半人前の俺では、一つの『モノ』の基本骨子や構成材質を解明するのでやっとだった。

例えばストーブとか、ガラクタとか……

たったのそれくらい。

一体、俺に何が起こっているのだろうか。

疑問が幾つも湧いてくる。

 

だがそれも、今は忘れよう。

何故なら…………

 

「ぇ…………せ……先輩……」

 

桜よりも『優先』される事なんて……

一つもないのだから。

 

 

◆

 

 

【ザ・ウォッチャー】

漢字表記は『観測者』

聖人の右眼を手に入れた事で開花した能力。

建造物や施設、器物の構造を読み取り、内部を視覚映像として捉える事が出来る。

さらに構造を把握した際に、頭の中に『設計図』が作成され、『リアルタイム』で更新され続けている内部の情報を観測できる。

建造物内の『人物』や『異常』を迅速に調査する事に長けている為、諜報や暗殺向きの能力と言える。

衛宮切嗣が『無駄』と称した『才能』の極致。

 

能力が発動している時のみ………

右眼の虹彩が金色に輝き、『SMITH』という文字が浮かび上がる。

 

【ステータス】

破壊力 - なし

スピード - なし

射程距離 - なし

持続力 - なし

精密動作性 - なし

成長性 - なし

 

名前の由来はアイルランド出身のギタリスト……

『ロリー・ギャラガー』の同名曲から。

 

この能力はどちらかと言うと……

『ジャイロ・ツェペリ』と同じく、本来の『力』が『チューン・アップ』されたもの…かもしれない。

 

 

◆

 

 

桜は俯いたまま、凍えた雨に晒されている。

かける言葉が見つからない。

だから、俺はもう一度だけ名前を呼んだ。

 

「桜」

 

「だめ、来ないでください……!」

 

それを。

今まで聞いた事のない必死さで、桜は拒絶した。

 

「…………」

 

足を止める。

桜は俯いたまま、スカートを握り締めている。

その姿は、己を恥じる罪人のようで辛かった。

 

「帰って…ください……わたし…何をするか…」

 

声は震えている。

雨の冷たさと罪悪感で震えている。

それを払拭するには、どうすればいいのか。

俺には分からない。

ただ………

 

「帰ろう、桜……慎二も待ってる」

 

手を差し伸べる必要がある。

それだけは分かっていた。

 

「先輩………」

 

濡れた黒髪が揺れる。

桜は、唇を血が出るまで噛み締めた後……

 

「帰れません……わたしに…帰る場所なんて……」

 

憎しみの混じった声を、吐き捨てた。

 

「桜」

 

「だって、もう知ってるんですよね?こんな…鈍いわたしでも、それくらいは分かります……兄さん…お喋りな人ですし……」

 

「それは……桜の身体の事か…?」

 

「はい…やっぱり、知ってたんですね…なら…」

 

これで終わりだ、と。

声にはならない言葉を、白い吐息が告げていた。

 

「馬鹿言うな、俺が聞いた事なんてどうでもいい、俺が知っている桜は今まで一緒にいた桜だけだ」

 

「だって……終わっちゃいます……わたし、先輩が思っているような女の子じゃないんですよ?」

 

桜は自らの肘に爪を立てる。

それは、身体に染み付いた汚いモノを罰するような、自虐的な行為だった。

 

「わたしは間桐の魔術師で、それをずっと先輩に隠してきました……先輩がセイバーさんを連れてきた時も、知らん顔して隠していたんです」

 

「桜」

 

「わたしは臆病で泣き虫で卑怯者なんです…お爺様に逆らう事も自分で終わらせる事もできなかった…痛いのがイヤで、怖いのもイヤで、みんなより自分が大切すぎて、死ぬ勇気も持てなかった…」

 

泣いている。

桜はただ泣いているだけだ。

どうしたらいいのか分からなくて……

よけい悲しくなって、泣いているだけ。

 

「……………」

 

それを感じ取って、後悔した。

俺は今まで、桜の泣き顔を見たことがなかった。

その意味を。

自分を責めるコトでしか泣けない意味を、どうしてもっと早く気がつけなかったのか。

 

「泣くな………桜」

 

「だから……全部、わたしが悪いんです」

 

泣きながら、諦めている。

桜は、全てを諦めている。

自分の『幸せ』すらも……

 

「わたしはお爺様の操り人形で、いつ…取り乱すか分からなくて、いつか、ま(・)た(・)取り返しのつかない事をします……そんなわたしが、何処に帰れるって言うんです、先輩……!」

 

桜は自らを追い詰める。

………誰も桜を責めていない。

だからこそ、自分で自分を責めるしかない。

自分が悪人だと。悪い人間なのだと。

罰を与えるしかない。

 

「………だから、泣くな」

 

「兄さんが下半身不随になったのは、わ(・)た(・)し(・)の(・)せ(・)い(・)な(・)ん(・)で(・)す(・)……お爺様に逆らえなくて、お馬さんに『暗示』をかけたんです……そしたらお馬さんが暴れて、兄さんの脚を……兄さんの『夢』すらも……メチャクチャにしちゃったんです」

 

桜が語った…慎二の事故の真実。

肘に爪が食い込んで、血が流れていく。

桜が自分を悪人だと断じた理由。

何年も打ち明けられなかった真実。

それが、ずっと…ずっと……桜の心を蝕んでいた。

 

「なのに、わたしは…それを打ち明けられなくて…挙げ句の果てには、魔術の存在すら知られて………兄さんは、こんな……わたしの為に、わたし以上に身体を改造して何度も死にかけて、寿命を削って、戦ってくれてるんです……わたしは…一体、どんな顔をして兄さんの妹をやればいいんですか…いや…そもそもわたしなんて…いなければ…」

 

「桜」

 

俺が守りたいもの。

俺にとって大切なもの。

失うことさえ、思いつかなかったもの。

それをこれ以上泣かせたくないのなら。

 

俺が手を引いて、陽の当たる場所まで………

 

「ごめんなさい……騙していてごめんなさい………兄さん…夢を壊してしまって…ごめんなさい……」

 

桜は謝り続けている。

心の中で堰き止め続けた真実を吐露した事で……

ずっと、言えなかった謝罪の言葉を譫言のように…何度も何度も繰り返している。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

他の誰が許さなくても…例え、兄である慎二すら…許さなくても、俺が桜の代わりに桜を許し続ける。

 

「生(・)ま(・)れ(・)て(・)き(・)て(・)ご(・)め(・)ん(・)な(・)さ(・)い(・)」

 

桜が放ったその言葉。

たったの一言。

それだけで、俺はもう…限界だった。

 

「あ………」

 

冷え切った身体を抱きとめる。

触れただけで、折れてしまいそうな……

そんな桜の身体を…出来るだけ優しく……

 

「もう…泣くな……桜が悪いヤツだってコトは……もう、よく分かったから」

 

息を呑む音。

心臓の鼓動。

間近になって、色々な音が聞こえる。

 

「だから、俺が守る。どんな事になっても、桜自身が桜を殺そうとしても……俺が、桜を守るよ」

 

「せん、ぱい」

 

「約束する……俺は桜だけの正義の味方になる」

 

抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。

この誓いの証明の為に。

 

これが本当に『正しい道』なのか……

それは分からない。

ただ、1つだけ言える事は……

俺は、『桜だけの味方』になるという選択に……

『納得』しているという事。

 

 

◆

 

 

余談その①

間桐桜が本気で追跡を『拒絶』していた場合……

追跡者に対して…『ワンダー・オブ・U』以上の『厄災』が次々と降り注ぐ事になっていた。

例えば、雨粒は弾丸くらいの強度になるし……

鉄骨は自動追尾しながら落っこちてくる。

 

余談その②

『ここ』とは別の平行世界において間桐慎二は……

『2月8日』時点で死亡している。

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