Fate/STEEL BALL RUN【完結】   作:石田たつを

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#42 パワー・ゲーム その③

【CLASS】ライダー

【マスター】間桐慎二

【真名】ユリウス・カエサル・ツェペリ

      (ジャイロ・ツェペリ)

【性別】男

【属性】秩序・中庸

【ステータス】筋力C

       耐久B

       敏捷C

       魔力E

       幸運B−

       宝具B(EX)

 

【クラス別スキル】

対魔力:E

魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

 

騎乗:C

騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

ただし召喚されてから一度でも女性と同乗すると、幸運が1ランクダウンする。

 

【固有スキル】

鉄球の回転:C

肉体を動かさずに掌にある物体に「回転」を加える特殊技術。鉄球を回転させてその振動であらゆる事象を引き起こす。

 

医療:C

回転の技術を用いたツェペリ家独自の家伝医術。治療行為の判定にボーナスを得る。

 

心眼(真):B

修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”

逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

 

【宝具】

『黄金長方形の回転』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人

自然界に存在する黄金長方形を見ることで、鉄球の回転の真の力を引き出す。レンジ内に完全な自然界の黄金長方形(葉や生物、雪の結晶など)が存在する間、『鉄球の回転』スキルのランクを2ランク上昇させる。

 

『次元を超える黄金長方形による無限の回転(ボール・ブレイカ―)』

ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:1人

黄金長方形の『走行形(フォーム)』を形作る馬の走行に、黄金長方形の無限の回転を加える技術。

そのエネルギーは人型のヴィジョンで形成され、このヴィジョンの攻撃は次元の壁さえも突き抜ける。

事実上防ぐ術はないが、鉄球は完全なる真球でなければならず、少しでも損傷した『楕円球』などでは十二分に力を発揮できない。

 

この宝具には幾つかの『発動条件』がある。

 

条件①:黄金長方形の『走行形(フォーム)』を形作る『馬(ヴァルキリー)』に騎乗しながら鉄球を投球する事。

 

条件②:マスターまたはライダーのどちらか、或いはその両方が『遺体』の一部を所有している事。

 

条件③:魔力が充分に供給されている事。

 

『聖人の右眼(スキャン)』

ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

とある聖人の遺体の右眼によって発現した純正の『奇跡』。遺体は互いに引き合う『引力』を持つ。

他者に譲渡しても『効力』は失われない。

 

【Weapon】

『無銘・鉄球』

鉄球の回転を発生させるのに必要不可欠な武器。普通の金属からでも作成可能。

 

『ヴァルキリー』

ライダーの愛馬。4歳のストックホース。呼べば何処からともなく現れる。8呼吸ごと一度、体を左にぶらしながら走るクセがある。

 

 

◆

 

 

枯れた木々の合間を縫う様に、騎兵(ライダー)が疾走する。

それは人馬一体とも言うべきか。

その速度はもはや神速と形容する他なく、四方八方から射出される『影の触手』を容易く躱しながら、速度を緩める事なく、むしろ次第に加速し始める。

 

騎兵の右眼には黄金の輝き。

出発前に衛(・)宮(・)士(・)郎(・)か(・)ら(・)返(・)却(・)さ(・)れ(・)た(・)『遺体の右眼』が放つ輝きが、薄暗い森の中で金色の軌跡を描く。

 

「恨むなよシロウ…お嬢ちゃん…オレはもう二度と『女』は乗せねえって決めてンだッ……!」

 

渦巻く漆黒の奔流と、大地で波打つ『影』の沼……枯れ木の陰には銀光。

まさしく修羅場。

気を抜けば、即ち『死』あるのみ。

 

しかし、騎兵の顔に翳りはない。

馬を駆りながら、双眸は『進むべき光のライン』を探し続ける。

それに対し黒い剣士は、腰を低く構え、光のない金色の眼差しのみが、軌跡を追跡する。

 

「大人しくシロウたちを、その馬に乗せて共に逃げていれば、ここで無駄死にしなかっただろうに…」

 

「別になんつーこたあねーぜ……テメェらをぶっ飛ばせばな……」

 

木々の合間に残る軌跡は、まさに稲妻。

騎兵を呑み込まんとする『影』は、残る黄金の軌跡を恐れ、ただただその場で蠢くばかり。

 

事態は膠着した。

それを良しとしない黒き剣士(セイバー)が、上段に構えを取る。

その周囲で弧を描くように、もはや閃光と化した騎兵の疾走が、益々加速していく。

 

「走っている間に馬の『走行形(フォーム)』は『黄金長方形』になってきている…ッ!」

 

そう呟いたライダーは、突如としてその『進路』を変更し、木々の合間を抜け、広場の縁に沿うように、馬(・)本(・)来(・)の(・)自(・)然(・)な(・)疾(・)走(・)が現れ始めた。

 

ルルバババ…ッ!

 

そこに飛来するは、銀光を放つ9本の『投擲剣(ダーク)』

未だ木陰に姿を隠し続ける暗殺者(アサシン)の攻撃。

 

ライダーは鉄球を投げ、自身の急所と馬(・)に(・)飛(・)来(・)す(・)る(・)攻(・)撃(・)のみ叩き落とし………

 

ズボサッ……ッ!……ズボサッ!!

 

頬や肩に被弾した『投擲剣(ダーク)』には目もくれず、手綱を強く握り続けていた。

 

馬の疾走は衰えない。

両者の距離が縮む。

もはや数メートル。

 

「来るか……ッ!」

 

セイバーは激突を予感する。

剣を握る力が増していく。

身体からは禍々しい魔力が溢れ、周囲の枯れ枝がバラバラに砕け散る。

 

セイバー。

その真名、アルトリア・ペンドラゴン。

かつて神話と史実の狭間で、アーサー王と呼ばれた騎士王。

騎士と竜の時代の中で、その両方と戦い続けた。

 

故に、彼女は騎兵を恐れない。

 

何度も何度も、彼女はこうして、相手がどんなに高名な騎士であろうとも、真っ向から迎え撃ってきたのだから。

 

「オラアアアァァァッ!!!」

 

馬上から放たれた『回転』する鉄球が、セイバーに直進する。

大きく腕を振りかぶったライダーは、すかさず『馬(ヴァルキリー)』の鐙(あぶみ)から両足を抜き、鞍を踏み台に後方へ大きく飛び跳ねた。

それと同時に『馬(ヴァルキリー)』は、その姿を霧の様に晦まし消えていった。

 

ギャルギャルギャルギャル…ッ!

 

鉄球が奏でる奇妙な音色。

それはまるで、『空(・)間(・)ご(・)と(・)削(・)り(・)取(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)』と錯覚させる程の迫力があった。

 

「ッ!?………こ、これはッ…?」

 

鉄球が着弾する。

その箇所は、セイバーを護るように展開された『影』の障壁。

本来であれば、それは魔術も、斬撃も、殴打も……もしかすれば、奇跡さえも呑み込む暴食の影。

だが、この『回転の力』は…………

 

『常(・)世(・)の(・)凡(・)ゆ(・)る(・)モ(・)ノ(・)さ(・)え(・)貫(・)通(・)す(・)る(・)』

 

それは、次元さえも貫通するのだから……

『心の影から生まれるモノ』相手であっても、例外ではない。

 

ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャル…ッ!

 

黄金の螺旋は止まらない。

周囲の漆黒を金色の衝撃波が吹き飛ばす。

黄金の回転は止まらない。

徐々に蒸発するように影は虚空に消えていく。

鉄球の回転は止まらない。

そして、いつの間に現れたのか……?

そのすぐ側には、『緑色の人型のヴィジョン』が、影の障壁にピッタリと張りついていて、セイバーに手を伸ばし始めていた。

 

「これが貴様の宝具……ッ!」

 

『ヴィジョン』がセイバーの前髪を掴む。

抵抗しようにも、その『力』の奔流は強烈な重力を生み出し、もはや眉一つ動かす事さえ叶わない。

 

純粋な力。そう形容するしかない。

どこまでも純粋な直進するエネルギー。

まさしく『切り札』と言う他ない。

 

「……………ッ!」

 

ズズズルゥゥゥ

 

『ヴィジョン』が拳を振り翳したその刹那、セイバーは足元で蠢く影の沼へ堕ちて行った。

 

堕ちて行く最中、彼女は驚愕の表情をしていた。

 

ライダーは考える。

これはつまり……………

彼(・)女(・)は(・)誰(・)か(・)に(・)操(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。

その背後の誰かに。

 

影の沼が消え、森は静寂を取り戻す。

そこに生命の鼓動はない。

誰もそこにいない。

セイバーが撤退した瞬間、アサシンも姿を消した。

誰の気配もない。

ライダーは倒れ伏す枯れ枝を見る。

 

それは、どこまでも歪な形をしていて、黄金長方形の形はなかった。 

 

 

◆

 

 

アーチャーは、終わっていた。

まだ息はあるし、出血は少ない。

体を貫かれようが、それが急所でないのならいくらでも再生は可能の筈だ。

……それでも、アーチャーはもう戦えないと判ってしまった。

アレは、サーヴァントを殺すもの。

いかに強力な英霊であろうと、その身がサーヴァントとして召喚された以上、あの『黒い影』には敵わない。

それを、理由もなく漠然と理解した。

遠坂の悲痛な声。

驚愕に染まる表情。

揺れる眼の先。

 

黒い影が躍動する。

森が死ぬ。

周囲にある全ての魔力があの影に吸われていく。

 

「ま…………ずい」

 

巻き込まれる。

ここにいては、呑み込まれる。

……アーチャーは体に突き刺さった触手を引き抜き、遠坂へと走り出す。

 

なら、俺は…………

イリヤを守る。

この場で二人に手を伸ばす事はできない。

遠坂にはアーチャーがいて、イリヤには誰もいない。

なら俺が、バーサーカーの代わりを果たさなければ……!

 

「イリヤ、伏せろッ!」

 

力ずくで、もはや殴るようにイリヤを倒す。

そのまま、覆い被さった瞬間。

視覚と知覚が黒一色に染め上げられた。

 

「ぁ………ぁ……?」

 

視界はまっくろ。

その後に、砂嵐。

何かを失ってしまったという喪失感。

それだけ。

たったのそれだけ。

この黒い世界の中には、何もない。

ただどこまでも虚空が広がっているだけ。

 

ならば、ならばだ。

だからこそ、右肩に抱いた、震える少女の為に、俺が立ち上がらないとダメだ。

ここにいてはいけないと、俺が手を差し伸べなくてはならないのだ。

そうしなければ、今まで取り零したモノたちに顔向けができない。

 

………消えていく。

今ので力を使い果たしたのか、黒い影は跡形もなく溶けていった。

イリヤは無事だった。

 

遠坂は……どうなったん、だろう。

アーチャーは………いた。

赤い外套を真っ赤にして、今にも消えそうなほど、弱っている。

 

………おかしいな。

やけに、身体がグラつく。

どうして、右に倒れそうになるのだろう。

視界もボヤけている。

頭痛がする。

吐き気もだ。

 

「シロウォーーーッ!!」

 

怒号が聴こえる。

それと遠くから、パカラッパカラッって聴こえる。

昔、よく聴いた音だ。

懐かしいな………また、昔みたいに慎二にバカにされながら、馬に乗るのも案外いいかもなって………そう思う。

 

それにしても静かだ。

鼓膜が破れたのだろうか?

何も聴こえない。

視界も、いよいよ暗くなってきた。

まるで高速で夜が来たみたいだ。

 

遠くで、誰かが話している。

アーチャーとライダーかな。

ライダーが叫んでいる。

怒っているようにも見える。

アーチャーは………ダメだ。背中しか見えない。

 

そういえば、イリヤはどうなった?

俺の左隣には………いないな。

うん、いない。

ついでに、俺の腕もない。

だから見やすかった。

不思議と落ち着いている。

寧ろ、これで俺の命もイリヤの命も助かったのだ…………後悔はない。

砂(・)漠(・)の(・)砂(・)粒(・)ひ(・)と(・)つ(・)ほ(・)ど(・)も(・)。

 

俺にはまだ右腕がある。

まだ、イリヤを守れる。

自分でもよく分からないが、やっぱり、何故こんなにもイリヤを守りたいと思ってしまうのか。

それは、彼女の悲痛な叫びと、涙を見たからかな。

だから、そう思えるのかもな。

 

「あっ」

 

切れた。

今、俺の中で決定的なナニかが。

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