Fate/STEEL BALL RUN【完結】   作:石田たつを

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#5 ハード・デイズ・ナイト その①

2002年2月2日。

ぼくは()()()()()の為に久々に登校していた。

勿論ライダーには霊体化して着いて来てもらっている。

冬の寒風によって悴む手で車椅子の車輪を回す。

腕時計を見ると時刻は午前六時……部活の朝練している連中がそろそろ来る頃合いだ。

これでもかなり早くに来たつもりだったが、久々の登校でちょいと時間をくってしまった。

…?…おい、なんか急に車椅子が…

 

「珍しいね慎二、こんな朝早くに」

 

「…どーも主将サン…悪いね看護婦してもらって」

 

「いいってことよ」

 

なんて自信タップリな感じでニヤニヤしているコイツは、『美綴綾子』…

一年の時のクラスメイトで、弓道部の主将。

性格は竹を割ったようなヤツで、友人も多く、周りから頼りにされるタイプ。ルックスもベッピンだ。

 

「アンタ、最近学校サボりまくってるだろ?ウチの顧問がカンカンだったよ」

 

呆れたように溜め息をつく、ババくせぇ女だ。

オマエはおせっかい母ちゃん(ぼくに母親はいないが…)か?花の女子高生の癖に…

だが、そんないらねぇ面倒見の良さが弓道部の連中にとっては嬉しいみたいで、桜や衛宮なんかも度々話題に出す。

余談だが、こいつの言っている顧問というのは、ウチの担任でもある藤村先生のことだ。

なんか衛宮とはだいぶ年の離れた幼馴染といったカンケーで、ぼくも高校に入学する前から関わりがある。

…ハァ、なんかぼくの周りってどいつもこいつも衛宮と縁がある奴ばっかだな。流石にウンザリだぜ。

 

「それに桜も寂しがってるみたいだったよ……登校するのがめんどくさいなら、アタシが毎朝車椅子押してやろうか?」

 

シンプルに気色悪ッ…

微塵もそんな気ない癖に…からかってるんだろう。

ハ……くだらない……

 

「お前に頼むくらいなら手の皮全部ズル剥けになった方がマシだね」

 

「はぁ?……アンタ本当に桜のアニキ?可愛げ無いねぇ…」

 

軽口を叩き合いながら、軽く車椅子を揺らしてくる。かなりウザイ。

だが道場を通り過ぎてエレベーターまで押してくれているので、甘んじて攻撃を受け入れることにしてやった。

 

「たまには可愛い妹の弓の様子でも見に行ったら?」

 

「気が向いたらな…ここまででいいぜ、さんきゅ」

 

振り返らずに手だけ振って返事をしながら、サッサと道場に向かっていく。

実はコイツとはなんだかんだで話す仲ではある。

キッカケは衛宮を通してだったが、可愛がっている後輩の兄貴、という存在に興味があったのだろう…こうしてたまに話しかけてくる。

ウザったい時もあるが……目くじら立てる程でもない。

そんな微妙な知人のおかげでちょっぴり楽できた。

 

さて………

 

 

 

 

昼休み。

アホの衛宮によって連れられて生徒会室にブチ込まれた。

この学校には結構デカい食堂があるってのに、ご苦労なことにわざわざ弁当持って来ているヤツらがいる。

 

それが衛宮とクソッタレ一成だ。

 

「む、今日は慎二も一緒か」

 

『柳洞一成』……この学校の生徒会長。

文武両道成績優秀、寺生まれの堅物で空手もやってるとか。ルックスもイケメンだ。

こいつも美綴と同じく1年生の頃からの知り合いで、またもや衛宮をキッカケに交流ができた。

 

ぼくは基本的にクラスメイトと全く交流なんてしないが、腐れ縁とコイツは適当にあしらってやっても懲りずに話しかけてくる。いちいち邪険にするのも飽きたので、こうして仕方なく付き合ってやってるわけだ。

 

「やや、ありがたく。これも托鉢の修行なり」

 

なんかやってるな。

見れば衛宮がその無駄に気合い入ってる弁当から、唐揚げを一成に渡している。

 

「フンッ!乞食かお前はよ…よかったなバクシーシ(チップ)貰って…」

 

「何故アラビア語で……それより慎二、俺は『お願い』したワケではない。あくまで衛宮の善意によって布施してもらったのだ」

 

「お前らのじゃれあい方はよくわからん」

 

アホと比べるとコイツはけっこう教養があるので、話していてもあんまり苦にならない。ぼくは頭がイイんでね…フツーに頭の悪い連中とは話が合わないのさ。

この後、一成が最近近所であった物騒な殺人事件の情報を話したり、こいつと同じく堅物の先公、葛木がやってきて一成を呼びに来たりと、なんやかんやあって昼休みは終わった。

 

ぼくとしてはとっくに()()()()()()は終わったので早退きしてもよかったが、久々に飼い主に会えた子犬みたいになっている藤村に、半ば無理やり引き止められたので、真面目に授業を受けてやった。

放課後、衛宮はわざわざ「一緒に帰るか?」とか抜かしてきたが、そういういい子ぶりが癪に障るのでお断りしてやった。

別にこいつの手を借りなくたって一人で帰れるのだ…

 

 

 

 

次の日、2月3日。

たぶん今日が勝負の日だ。

柄にもなく緊張したので、授業が全く頭に入らなかった。

別に構わない…授業で得た知識なんざ、どうせこの先使う機会ないンだ。

そんなことよりも、気配を悟られないように屋上に身を潜める。

『隠形』は数少ない使える魔術の一つだ。こんなショボくてシャバイ魔術でも、ぼくにとっては精一杯で、しかも身体中に激痛が走るオマケ付き。つくづくあのジジイは孫をイジメるのが好きらしい。ゲロ以下のタンカスが。

そうこうしているとお目当ての人物がご到着…しかしそいつは辺りをキョロキョロしてから、そのよく通る声を張り上げた。

 

「誰だか知らないけど……ここで隠れてコソコソ観ているわね?今大人しく出てくるんなら、問答無用でブッ殺さないであげるわよ」

 

フンッ……バレバレって訳か。

流石は『天才』魔術師様といったところかな……

 

「やぁ遠坂凛、ご機嫌如何かな?」

 

「間桐…慎二?……驚いた…『予想』が外れるなんてね…」

 

…なんか意味わからん事言ってるが無視しよう。

 

遠坂凛。

この冬木市で管理者(セカンドオーナー)をしている現役バリバリの魔術師。

普段の学校生活では猫かぶってるようで、あまりの優等生ぷりっから『ミス・パーフェクト』なんて恥ずかしいあだ名まで付けられている。

ちなみに言うと、ウチの家とは昔から関わりがあったそうだが、そのうち深く関わることを協約によって禁じられた。

この『身体』になって、改めて思い知ったが…こいつは正真正銘のバケモノだ。

魔術師として大成する事が約束されている程の『才能』……もし、こいつが今この瞬間に本気を出せば、ぼくはバラバラになってお陀仏ってところかな。

だからといってビクついてやるつもりはないが。

 

「所で…ぼくと『お喋り』しない?」

 

「ハァ……その前に、あのヘッタクソな『結界』について弁明はある?」

 

「あれはただの模擬餌(ルアー)だよ……キミとお話する為のね」

 

「ふーん、じゃ、目的は果たしたわね?早く消してちょうだい……あんなガッタガタでロクに効果のない『人払いの暗示』…目障りだし意味ないわよ」

 

あまりの上から目線に死ぬほどムカつくが、ぼくはコイツに『話がある』ので我慢してやることにした。本当はすぐにでもブッ飛ばしてやりたいがね。

ちなみに『用意』した『人払いの暗示』の結界は、試験前の受験生みたいに、必死こいて錬金釜から作った霊薬を媒体(インク)にして、屋上の壁に紋章を描くことで作った。

だがやっぱりあんまりなデキだったらしい。別にどうでもいいけどね。

 

「それで話って?」

 

「ぼくはこの『戦争』…なるべくパパっと決着を付けたい。それは管理者(セカンドオーナー)である君らもだろ?お互い協力し合わないか?」

 

「…『戦争』とはなんの事かしら?」

 

「今さらゴマかさなくてもいい…別に多くの事も話さなくてもいいし…ぼくは最初から『聖杯』なんて欲しいわけではなかったんだからな…ライダーの願いもささやかなものだ」

 

それにライダーの願いも『受肉』な訳だから、聖杯の『容量』を考えると、カスみたいなもんだろう。

この世界をひっくり返すような、よっぽどスゴイ願いじゃあない限り、マジでギリギリ三人分くらいは叶えられる筈だ。…たぶん。

 

「あっそ、それで『見返り』は?」

 

「ぼくの目的は聞かないのかい?」

 

「どうでもいいもの…それに、『聖杯』が完成しなかったらアンタの英霊(サーヴァント)ブッ倒すだけだし」

 

『なんだこいつ偉そうによォ〜〜ヤツにクソくらえって言ってやりなシンジ』

 

君が自分で言えよ。

 

『くそくらえッ!バーーーカ!』

 

霊体化して言っても意味ないだろ。

 

「具体的にどう協力するのかしら」

 

つまんなそうな態度の割に、一応こっちの言い分を聞いてくれるらしい。そろそろ日が沈む。あんまり長引かせると、夜の町で他の『参加者』がドンパチやりはじめるだろう。

 

「『最後の2騎になるまで停戦』『ヤバいヤツがいたら情報を共有した後そいつを袋にする』…この二つだ。」

 

「…………思ったよりマトモな提案で安心したわ…いいわよ」

 

しばらく顎に手を当てて長考した後、余計なひと言を入れながらぶっきらぼうに了承した。

なんとか納得してくれたらしい。無茶苦茶気に食わないけど。

 

「早速なんか情報はあるか?」

 

「そうね……最近『柳洞寺』の方で妙な魔力の流れを感じたから、もしかしたら外様の魔術師が根城にしているかもね……今はまだそれくらいかしら」

 

流石管理者(セカンドオーナー)って所か。もう既に何かしらの情報を握っている。

 

「へ〜〜〜おっと、ちなみにぼくは特にないぜ、残念だったな」

 

「別に。期待してなかったし」

 

フンッ……マジむかつくぜこの(アマ)ァ…

念の為に持って来た『武器』に思わず手をかけそうになったが、いざそうしてしまえば、すぐさま返り討ちだろう…

よくよく考えれば、いくらここが学校の屋上とはいえ、結構な綱渡りをしている。

『魔術師』とはそーいうヤツらだ。

それが必要であれば他人をブッ殺すことに抵抗がない。その精神性はほぼギャングみたいなもんだ。

これを抜いちまえばそれが『合図』になる。

落ち着け……冷静になろう……

 

「んじゃ、話は終わり。帰るわ」

 

「またね間桐クン」

 

終始養鶏場のチキンでもみるような目つきだったが、それだけナメられてるお陰で交渉は成立した。やることやったし収穫もあったので、今日のところはまっすぐ家に帰ろう………

()()()()()()()()()()()遠坂を尻目に、ぼくはその場を後にした。

車椅子をキコキコ回す帰り道、霊体化しているライダーは遠坂にボロクソ文句付けてた。

たぶん死ぬほど相性悪いだろう、あの二人。




間桐慎二
身長:167cm
体重:37kg
特技:名推理、探し物、乗馬(現在はできない)
好きな物:馬、イギリス
好きな映画:「時計じかけのオレンジ」
好きな音楽:「オアシス」
苦手な物:なまいきなヤツ、行列に並ぶこと
天敵:間桐臓硯
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