Fate/STEEL BALL RUN【完結】   作:石田たつを

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読者よ、わたしに感想をください。
わたしに誤字脱字や設定ミス、解釈違いがあったとしてもお赦しください。
わたしが原作をプレイし、原作を読み込むように、あなたがたもまた、原作を購入しなさい。
(作者から読者への手紙第1章1〜3節)


#50 ザ・スミス その①

静かに、速やかに意識を束ね、身体に異なる神経を作り上げる。

たった数日の間にずいぶん容易くなった擬似神経の作成。

その背中に走る光の線を完成させる。

 

少女の声が聴こえる。

それはボヤけていて、輪郭がない。

 

頭の中はクリーンだ。

何もない。空っぽだ。

ただ真っ直ぐに迸る『黄金の軌跡』だけが見える。

それは俺の身体の芯にあって、ピカピカと輝いていて、どこか温かい。

 

それにしても、ここはあまりにも空っぽだ。

だから心の中に風景を描く。

そうするべきだし、そうしなきゃいけない。

心象風景。

何を描こうか。

黄金の軌跡を見たんだ。

金色は使いたいな。

何処に使おうか…?

黄金に輝く『満月』なんてどうだろう。

この荒野はずいぶん殺風景だ。

何か足したくなる。

『十字架』なんてどうかな。

『剣』もいい。

両方ブッ刺しちまおう。

うーん、まるで墓標みたいだ。

だが悪くない。

おっと……めちゃくちゃ暗いな。

暗すぎるって。

星でも浮かばせようか。

まぁまぁまぁ…………こんなもんかな。

結構いいんじゃあないか?

かなり出来がイイ……初めてだけども。

 

なるほどカンペキだ。

これが俺の中の心象風景か。

 

あれ…?

俺、どうしてここにいるんだっけか。

おっとっと、危ない危ない。

忘れる所だった。

『左腕』から何か引き出すんだっけか。

経験とか知識とか………そういうのを。

だったら……とりあえず、この『剣』とか……

う〜む、カッコいい『剣』だ。

俺だって男だ。剣はカッコいいって思う。

どうやって『造られた』のだろう…?

 

創造理念は?

基本骨子は?

構成材質は?

 

素材の鋼材はなんだ?

玉鋼?炭素鋼?合金鋼?

それとも複数の鋼の組み合わせ?

炉は何度だ?1300℃とか?

鍛接は?何回打った?何回鍛えた?

不純物はあるか?

鋼は均質化できているのか?

 

全体の長さは110.0cm

刃渡りは85.02cm

幅は5.07cm

厚みは5.0mm

重量は1.5147kg

 

鎬や切っ先は整っているな。

形状はロングソード。

西ヨーロッパの刀剣の一種。

ローマ帝国滅亡後の民族移動時代にノルマン人やヴァイキングが用いた剣が原型とされ、11世紀から16世紀に掛けて使用された。

ロングソードという名称を当てられてはいるが、これは脇差に対して打刀を『大刀』と呼ぶのと同じく、ショートソードやダガーなどとの対比で長いとされているだけであって、特別に長い剣を指しているわけでは無く、ほかの剣との差別化のための便宜上の名称である。

へぇ〜そうだったのか。

そんな事より刃金と地金はなんだ?

荒研ぎはどうした?

本研ぎで使ったのはどんな砥石だ?

鞘はないのか。ただ一振りの剣のみ。

銘切りはない。ただ一振りの剣のみ。

それは『無銘の剣』だった。

 

情報が頭に流れ込んでくる。

どれも勉強になる。

刀剣の知識なんて、フツー日常生活で身につくワケないもんなぁ。

 

俺の魔術って『投影魔術』なんだっけ?

つまり『剣』を再現するってわけだ。

だったら『リアリティ』が必要だな。

イメージから『実物』を投影する。

投影されたものは『実体』となる。

もしこのイメージがグチャグチャだったら、必然的に投影物もグチャグチャだ。

だからリアリティが必要だ。

よっ………と。

こうして持って見ると、剣って結構重いな。

1.5kgとは思えん。

あー………重心の問題かな?

そうか、構えとか握り方とかもあるもんな。

グリップはこんな感じか?

なんか金属バットみたいだ。

刀身は冷たい。ヒンヤリと冷たい。

刃が爪にかかる。よく研がれている。

とても無骨で装飾はない。

軽く振ってみる。

剣が虚空を切る。

その音はヒュンッヒュンッだ。

シュッシュッとも思ったが。

もう一度振ってみる。

やはりヒュンッヒュンッだ。

もっと『リアリティ』がいるな。

どうしようか。

そうだ………味もみておこう。

鉄の味だ。

血の味に似ている。

 

 

 

 

人を裁くな。裁かれないためである。

あなたがたは、自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量られる。

兄弟の目にあるオガ屑は見えるのに、なぜ自分の目にある梁に気付かないのか。

兄弟に向かって『あなたの目からオガ屑を取らせてください』と、どうして言えようか。

自分の目に梁があるではないか。

偽善者よ、まず自分の目から梁を取り除け。

そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からオガ屑を取り除くことができる。

聖なるものを犬に与えてはならない。

また、豚の前に真珠を投げてはならない。

豚はそれを足で踏みつけ、犬は向き直って、あなたがたを引き裂くであろう*1

 

 

 

 

……………………………と。

お?…………?………おお。

大丈夫だ。

意外と大丈夫だ。

痛みはない。

違和感もない。

視界がボヤけてるとか、耳が聴こえないとか、そういった不調もない。

目の前は道場。変わりはない。

時間はまだ九時過ぎ。

そして振り返ればイリヤの顔。

吐息がギリギリかかって、少しくすぐったい。

 

「あれ………遠坂は……?」

 

「シロウ………それ………」

 

イリヤの声が聴こえる。

ちゃんと聴こえる。

よかった………どうやら……俺に異常は………

 

メギャンッ!!

 

………………………………………………えっ。

え!………えっ?………………えぇ?

 

「ロ、ロボット………の腕……?」

 

!?

 

なんだ…この『腕』……!

籠手………?

義手………?

いや、この場合『義腕』か……?

落ち着け………冷静に『観察』しよう……

 

まずこの『左腕』は、何かに覆われている。

それは籠手といえばいいのか……

それとも義腕といえばいいのか……?

()()()()()()()()()()()()

色は例えるならば『赤錆』そのもの。

肩と肘にあたる部分には灰色の『プレート』のようなものがあって、それをネジとかボルトみたいなパーツによって腕に『接合』されている。

所々にまるでバイクのヘッドランプみたいな装飾もあるし、手の甲には錆びた『歯車』の意匠がある。

 

そして紋様に見えた『それ』は、まじまじとよーく見てみると………

ビッシリと『全体』に小さな『Smith』という文字が、刻み込まれていた。

『Smith』『Smith』『Smith』『Smith』

あまりにも小さくそう刻まれていたから、一見するとそれは奇妙な紋様にしか見えなかった。

 

なぜ英語なんだ。

なぜ『Smith』なんだ。

なぜこんなに小さく細かく刻まれてるんだ。

 

わからない事だらけだ。

だが『確かな事』はある。

それは………………

 

『スタンド能力』

 

遠坂の予想は的中した。

ライダーから借りた『右眼』とは違った『能力』

この『義腕』から感じられる『(パワー)』は………魔力にとてもよく似ているが、しかし魔力とは思えない。

純粋なエネルギーの塊。

或いは『力の集合体』だろうか…?

うまく表現できないが、それでもこれは『魔術』によく似た『何か』だと断言できる。

 

それにしても不思議だ。

とりあえず触ってみよう。

 

「シロウ!?」

 

「大丈夫だ……これは『悪いモノ』じゃあない」

 

わからない事の方が多いが、少なくともそれだけは断言できる。

触感は……ザラザラしている。

例えるなら錆びた包丁とか工具とか………

なんとなくそういう感じ。

一旦右手に握ってたなんかをほっぽって、右中指の第二関節を立てて、コツコツとノックするみたいに叩いてみる。

ッ!……………ちょいとした異常あり。

まるで直接触られたような感覚だ。

より厳密に言うと、カサブタ触ってる時の感覚。

これって………俺と『直結』しているのか…?

じゃあなんだ?これって俺の……………

『左腕そのもの』って事なのか?

 

あぁ……クソッ!

わけわからんぞ!

あぁ……その前に何をほっぽったんだっけ?

拾わなくっちゃあな。

 

カラン…ッ……

 

「え!……剣か、これ……?」

 

剣がある。

西洋の剣だ。

ゲームの『ドラゴンクエスト』とか、映画の『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』とかでよく見る剣だ。

全体の長さは110.0cm

刃渡りは85.02cm

幅は5.07cm

厚みは5.0mm

重量は1.5147kg

ロングソードと言われる剣だ。

あれ?………なんか、詳しいな俺。

知ってる剣じゃない。

ウチにあったヤツじゃあない。

なのに全長とか刃渡りの長さとかを知っている。

 

「おめでとうシロウ……()()()()()のね……」

 

「これって………つまり………『アレ』か……?」

 

「『魔術』と『スタンド能力』の融合」

 

この『義腕』自体に魔力は感じない。

だが、結果として俺は『投影』に『成功』した。

投影の成功に『義腕』が無関係とは思えない。

 

「動かないで…今からできる限り『リーディング』するから……」グイッ

 

うおおッ!?近ッ!!

イリヤッ!近い近い近いッ!!

 

「悪いわね、ちょっと野暮用で外しちゃ…えぇ?」

 

「と、遠坂ッ!いや!違っ!これは…その……」

 

「………………情報量が多過ぎて一周回ったわ」

 

状況が混乱してきたぞ。

どうしよう………

なんか俺、動いちゃダメらしいし。

今日の昼メシの献立でも考えるか……………

 

 

 

 

【ザ・スミス】

漢字表記は『無銘』

『左腕』に装着する珍しいタイプのスタンド。

厳密に言うと…このスタンドは『魔術』と融合した結果の産物である為、本体である衛宮士郎の投影を『バックアップ』する役割を大幅に担っている。

その為『無銘(ザ・スミス)』はスタンド使いじゃなくても触れるし視認できる。

衛宮士郎の『本来のスタンド』は、『観測者(ザ・ウォッチャー)』なのだが、アーチャーの左腕を移植した事で、衛宮士郎の『魂の核』部分に濁りが生じ、それを『遺体の左腕』が修復する過程で、彼の『能力』に大きな変化を生じさせたのだろう。

衛宮士郎の中には『アーチャー』という『濁り』が混ざっている。

それ故に、衛宮士郎は『変質』した。

イタリアでマフィアのボスをやっていた二重人格の男のように、一人の人間が『複数の』スタンドを持っているケースは度々あるのだが、当たり前だが、皆マトモな精神構造はしていない。

 

【投影の原理】

まず投影する際に以下のことを解析する。

『創造理念』

『基本骨子』

『構成材質』

『製作技術』

『憑依経験』

『蓄積年月』

具体的に言えば、創造の理念を鑑定、基本となる骨子を想定、構成された材質を複製、製作に及ぶ技術を模倣、成長に至る経験に共感、蓄積された年月を再現することで真に迫った物を投影する。

この『成長に至る経験』を解析した結果、扱い方の知識を得る。

 

本来であればこの『術式(ソースコード)』は人体では到底扱いきれず『処理落ち』してしまう。

 

だが、衛宮士郎は『無銘(ザ・スミス)』という法則すら変える程に莫大な『神秘』を宿した『処理装置(プロセッサー)』によって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そのため『アーチャー』の投影魔術を使用しても『払うべき代償(コスト)を勝手に肩代わり』してくれるので、使用者の人格が崩壊したり、記憶を喪失したりするデメリットがない。

 

【分かりやすく例えると】

衛宮士郎を新人プログラマーとした場合………

この能力は超オーバースペックのPCであり、無料のウイルスバスターもあり、なおかつ自動でコード生成してくれるハイスペックAIというオマケ付きの『超安心サポート機能』である。

また、困った時には『頼れる大先輩』が覗きにくるかもしれない………

 

【ステータス】

破壊力 - E〜A

スピード - E〜A

射程距離 - E〜A

持続力 - A

精密動作性 - A

成長性 - E

 

スタンド名の由来はイギリスのロックバンド。

『ザ・スミス』

 

スミスは古英語で『職人』を意味し……

鍛冶師(blacksmith)金細工師(goldsmith)……

銀細工師(silversmith)スズ細工師(tinsmith)ブリキ職人(whitesmith)等………

特に金属加工の職人を示す。

スミス姓の由来は、上記にあるように『職業』から来ている。

 

【余談】

ジョン・スミス。

英語圏においては『ジョン』『スミス』共にありふれた名前である(と思われている)ため、日本語での山田太郎やドイツ語でのハンス・シュミット (Hans Schmidt) のように、一般的な男性の人名として認識されている。

そのため、偽名・仮名の代名詞としても用いられており、小説などの創作作品において登場人物がジョン・スミスと名乗る場合、それが暗に偽名であることを示していることもある。

*1
マタイによる福音書7章1〜6節

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