Fate/STEEL BALL RUN【完結】 作:石田たつを
贖いはここに。
己を裏切り、多くの命を犠牲にした。
譲れないモノは変わらず。
その為に在り続ける。
左手の甲の『歯車』に触れる。
生きるか死ぬか。
立ち向かうための深呼吸。
たったの一度だけ。
もう時間がない。
『覚悟』を決めろ。
『歯車』を回す。
更に回す。
もっと、もっと、もっと。
俺は『歯車』を回した。
「────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────、あ」
風が吹いている。
秒速百メートルを優に超える超風。
人が立つ事はおろか、生命の存在そのものを許さぬ暴風が叩きつけられる。
既に風などではない。
吹き付けるソレは鋼そのもの。
風圧で肉体が圧し潰される。
「が」
眼球が潰れる。
背中が壁にめり込む。
手を上げるどころか指さえ動かない。
逆流する血液。
漂白されていく精神。
痛みなどない。
とける。
対抗する苦悶さえあげられない。
何もない。
抗う術などない。
白くとける。
身体も意識も無感動に崩れていく。
なんのためにここにいるのか。
なんのためにこうなったのか。
なんのためにたたかうのか。
─────────────消える。
身体が消える。
心も消えそうだ。
保た、ない
どんなに力をいれても動けない。
自分の全存在を賭けて右手を握り締める。
もう、とっくに、そんなものはないのに。
それでも、握り締めるフリだけでもいい。
実際に出来ていなくてもいい。
そう思うだけでいい。
左眼が潰れた。
風鳴りが鼓膜を破る。
薄れていく意識と視界。
その、中で、
ありえない、幻を見た。
立っている。
この風の中であいつは立っている。
立って、向こう側に行こうとしている。
────当然のように。
赤い外套をはためかせ、前へ。
顎に力が入った。
ギリギリと歯を鳴らした。
右手は、とっくに握り拳になっていた。
赤い騎士は俺など眼中にない。
俺に何の関心もない。
だというのに、ヤツの背中は。
蔑むように、信じるように。
俺の到達を待っていた。
視界が燃える。
風が吹いている。
けれど、俺は飛ばされない。
押し戻されない。
この暴風には流されない。
なぜなら、俺は『十字架』を背負っているから。
重くて、大きな『十字架』を。
かつて、全ての罪を背負った男のように。
あの
何も感じなかった体にありったけの熱を注ぎ込む。
手足は、大剣を振るうかの如く風を切る。
ついて来れるか、じゃねぇ。
「てめぇの方こそ、ついてきやがれェーーッ!」
渾身の力を篭めて、赤い背中を突破した。
「▇▇▇▆▆▆▅▂」
地上に踏み上がる。
風は途絶えた。
黒い巨人まで、距離にして三十メートル。
ヤツなら三秒とかからず詰める。
──────故に。
勝敗は、この三秒で決せられる。
思考は冴えている。
自身の戦力は把握している。
創造理念、基本骨子、構成材質、制作技術、憑依経験、蓄積年月の再現による物質投影、魔術理論・世界卵による心象世界の具現、魂に刻まれた『世界図』をめくり返す固有結界。
アーチャーが蓄えてきた戦闘技術、経験、肉体強度の継承。訂正、肉体強度の読み込みは失敗。斬られれば殺されるのは以前のまま。
固有結界『
アーチャーの世界と俺の世界は異なっている。
再現はできない。
複製できるものは衛宮士郎が直接学んだものか、ヤツが記録した宝具のみ。
左腕から宝具を引き出す場合、使用目的に最も適した宝具を『無限の剣製』から検索し複製する。
一部訂正、『
ただし、『
術者の心象風景を現実に具現化する結界。
それは俺の世界。
俺だけの『
俺だけの『
『
それさえ
「─────────────────────」
呼吸を止め、全魔力を左腕に叩き込む。
把握するのは使える武装だけでいい。
もっと前へ。
あの風を超えて、俺は、俺自身を打倒する。
「──────
凝視する。
ヤツの斧剣を寸分違わず透視する。
桁外れの巨重。
衛宮士郎では扱えない。
だが……この左腕ならば。
敵の怪力ごと確実に複製しよう。
「──────────────、ぁ」
パシ、という音。
壊れそうだ。
もうすぐ。
いずれ。
かならず。
壊れるだろう。
「──────『覚悟』はいいか?俺はできてる」
心配など無用。
壊れるのは今じゃない。
今じゃないなら、それでいい。
我が専心はヤツの絶殺のみ向けられる。
「▇▇▇▆▆▆▅▂▇▆▆▆▅▂!」
気付かれた。
収束する殺意。
黒い巨人の眼が動く。
黒い、凶つ星のようだ。
──────狂戦士。
憤怒のまま、巨人は変わっていなかった。
アレは、未だセイバーとの戦いの中にいる。
目は見えず、正気を失い、二度の死を迎え全身を腐敗させながら、尚、イリヤを守ろうと戦っている。
走りくる巨人は一撃では止まらない。
───────故に。
「──────
…………………ダメだ。
足りない。
そんなもんじゃねぇだろ……!
自分の限界如きで、目の前の怪物を倒せるか…!
そんなもんじゃない。
自分の限界。
その先へ。
「───────
脳裏に九つ。
体内に眠る二十七の魔術回路。
その全てを動員する。
直列接続。
例えるなら『タンデム・システム』
複数のコンピュータを直列に接続して機能を分担し、処理能力を高める。
『タンデムシステム』は1台でも『
けれど、それでいい。
冗長性なんて、いらない。
或いは『エフェクターボード』
アンプという名の肉体。
ギターという名の行動。
その間に『エフェクター』をセットする。
左腕からの余計な情報を制限する『
肉体の駆動を超過させる『
この二つのスイッチを踏み込む。
『
まぁ……そんなことは、どうでもいい事だ。
「
振り下ろされる音速を、神速で以って凌駕する…!
「───────────────は、あ」
目前に迫る。振り上げられる斧剣。
激流と渦巻く気勢。
踏み込まれる一足。
上腕。
鎖骨。
喉笛。
脳天。
鳩尾。
肋骨。
睾丸。
大腿。
「▇▇▇▆▆▆▅▂▇▆…▆▅▂──、……!」
倒れない。
全身を撃ち抜かれて尚、未だ健在。
身体の八割はこちらが持っていった。
なのに。
まだ蠢いている。
反則級の特権を全開投入して、なお生きている。
『対応』される。
二度は通じない。
この狂戦士は『それ』を許すほど甘くはない。
『対応』された。
もう二度とは通じない。
それが直感的本能で理解できた。
ならば。
使うしかあるまい。
『歯車』が回る。
俺だけの『世界』が構築されている。
一度で、一振りで、一足で砕けない。
ならば、百度、百振り、百足だ。
攻撃を飽和させろ。
剣の山を築け。
反撃はない。
ここしかない。
『
基本骨子、解明。
『
構成材質、補強。
『
製作技術、検索。
『
憑依経験、完了。
『
蓄積年月、完了。
『
戦闘情報、検索。
『
戦闘経験、該当。
『
『
『
俺だけの『世界』
星と満月。
剣と十字架。
荒野。
それだけでいい。
『投影』するのは『無銘の剣』
ただし、それは『テクスチャ』だけ。
ガワは何でもいい。
所詮は『うわっ面』
大切なのは中身。
『ポリゴン』の方だ。
凡ゆる剣。
常世全ての剣。
そのどれかに該当する情報。
それを詰められるだけ詰める。
ありったけの情報。特徴。長所。
零れ落ちてもいい。
完全再現なんて目指さなくてもいい。
ただ、そのどれかに近づいているのなら。
それは、それでいい。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
『投影』する。
全て『無銘の剣』
その剣に『
『神話』はない。
『逸話』はない。
『伝説』はない。
『伝承』はない。
『想い』もない。
『怒り』もない。
『嘆き』もない。
『呪い』もない。
『祝福』もない。
全て『無銘の剣』
だからこそ、俺は『投影』ができる。
この無数の剣。
何万、何億、何兆あるのか…?
俺には到底数えることもできない。
だが、それでいい。
これが『俺の世界』
俺だけの『世界』
◆
──────戦いは一瞬。
本当に一息の間に、決着はつけられた。
少女が地上に出たのは、少年を止める為だ。
離れていく背中を、どう止めるべきか迷って、言葉など思いつかず、耐え切れなくなって外に出た。
それは時間にして、十秒もなかったと思う。
だが、そのわずかな躊躇いが明暗を分けてしまった。
「シロ───────」
少年の後を追うように地上に出る。
戦いは終わっていた。
広場には風が吹き込む。
少女の視界には、その背中だけが残された。
「─────────」
戦いは終わった。
少年は自らの力で、自らの死と戦い、打ち勝った。
聖骸布を解放し、巨人を倒した少年の姿は雄雄しかった。
もう迷いは見られない。
彼はあらゆる煩悶を落とした。
灰色のプレートが弾け飛ぶ。
左腕。
肘と肩にあたる部分。
灰色のプレートの下から『歯車』が現れる。
それは『回転』している。
「───────────シロウ」
その背中を、少女は悲しげに見守る。
別人のような姿、別のものになってしまった体。
彼は、『ナニか』を背負った。
それを一生『背負う』事を選んだ。
愚かで尊い、ある一つの結末。
少女の脳裏に『彼とよく似た誰か』が現れる。
「────────────イ、イエ」
言えなかった。
少女には言えなかった。
ただ、あまりにも似ている。
外見ではない。
その魂が似ている。
彼は決して『
寧ろ、その逆。
多くを見捨て、僅かな人間を救う。
『正義の味方』とは真逆の在り方。
なのに、どうして………………
『十字架』を背負っているように、見えるのか。
これから『感想』を書いてほしいんだが
それってどの辺に停めているのかな?(錯乱)
作中の小ネタやサブタイトルの元ネタについて解説は必要?
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どちらも必要。
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小ネタだけ必要。
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サブタイトルのみ必要。
-
どちらも必要なし。