Fate/STEEL BALL RUN【完結】   作:石田たつを

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#62 最後の晩餐

想像していたより早く森の出口に辿り着いた。

森の主であるイリヤの案内があったからだろう。

俺たちは街に向かって公道を歩き始め、通りかかった車を止めて乗せてもらった。

森を走って泥だらけ傷だらけの俺とイリヤの組み合わせは、見るからに怪しい。

怪しいので、通りかかった車の前に出て無理やり止まってもらって、びっくりしている運転手さんにイリヤが暗示をかけ、これまた強引に乗せてもらったのだ。

 

「もたもたしないでッ!こっちは必死なのッ!絶対走ってもらうんだからッ!!」ボゴオ

 

イリヤが運転手さんに怒鳴る。

車のダッシュボードもブン殴ってる。

既に暗示はかかっているというのに。

 

いや、まさか…………

こんな強盗みたいなヒッチハイクをするとは。

 

……………………これは、叱るべきなのか?

 

わからん。

すまない、運転手さん。

俺にはどうする事もできない。

 

「シロウ、帰ってきたよ、早くあがろ」

 

「ああ、そうだな」

 

あっという間に屋敷に帰ってきた。

日は沈みかけている。

森から戻ってくるまで、少しうたた寝をしていた。

だから、チョッピリ首が痛い。

寝違えたみたいだ。

だからどうというワケじゃあないが。

 

「まずは栄養とらなくっちゃあな」

 

意外にも、身体はピンピンしている。

いや……………ほんのチョッピリだけウソだ。

全身の疲れがヤバい。

身体は鉛みたいになっている。

だけど『激痛』だとか『吐き気』だとか………

『記憶』とか『感覚』が消えるだとか…………

そういう物凄くヤバい『危険信号』はない。

正直、意外だ。

 

使(・)っ(・)て(・)は(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)モ(・)ノ(・)を(・)使(・)っ(・)た(・)。

 

それだけは断言できる。

そういう感じがする。

だけど『致命的』な何かを失った感覚はない。

気づいてないだけかもしれないが………

 

ちょっと寛いでからなら、晩飯は作れるかも。

 

居間にあがって、テレビをつける。

畳の上で横になる。

座布団を重ねて枕の代わりにする。

イリヤには風呂入らせておこう。

泥だらけ傷だらけだからな。

ちょっと傷に沁みるかもだけど。

 

「イリヤ、先に風呂入っといてくれ」

 

「うん…………ねぇ、シロウ」

 

「ん?」

 

首だけそっちに向ける。

流石に立ち上がれない。

身体が重すぎるからだ。

 

「………………………ありがと」

 

「……………どういたしまして」

 

何だそりゃ。

『どういたしまして』はナイだろ。

もっと気の利いた事、言えればよかった。

 

「おいおい、オレならもっとレディをトキメかせるセリフを言えたぜ?」

 

「そりゃアンタみたいな色男なら……」

 

えっ。

 

!?

 

ラ、ライダー!?

 

「 YES I AM!」ニョホホ

 

ビッッッッッッックリしたァ………!

いつの間に…!?

 

「ハッ………………アサシンは…?」

 

「逃(・)げ(・)ら(・)れ(・)た(・)……ヤツは下痢したニワトリみたいにサッサとどっかに行っちまった……」

 

そうか。

逃げられた…………

あのアサシンは、かなりのや(・)り(・)手(・)だ。

ライダーとの真っ向勝負には敵わない、と判断したのだろう。

ライダーはあの森の中、アサシンの攻撃を躱しながら、俺たちの為に殿を担当してくれた。

バーサーカーを多少食い止めてもくれただろう。

出来ればアサシンを『再起不能』とかにして貰いたかったが……

流石に求め過ぎだな。

寧ろ、よく生還してくれた。

それだけで充分すぎる。

今、ライダーまで失うワケにはいかない。

現在の、俺たちの仲間の中で唯一の『英霊(サーヴァント)』

例えるなら、将棋の『飛車』レベルの戦力。

攻撃の要を担う重要な役割。

チェスで例えるならば『女王(クイーン)』と言った所か。

…………………いや、『女王(クイーン)』なら遠坂か?

ならば『騎士(ナイト)』かな。

駒のデザインも大体『馬』だし。

うん。

なんか、そっちの方がしっくり来る。

 

「それより、今日の晩メシはどうする?今日はオレが作ってやろうか」

 

「え?………そんなの悪いって………」

 

「…………おまえさん、作れんのか?」

 

うっ。

そう言われると弱い。

無理すれば晩メシくらい作れるけど。

そうするとイリヤが何て言うか。

今度は俺が叱られてしまう。

 

「…………………………すまん、頼めるか」

 

そう言うとライダーは「ニョホニョホ」笑いながら台所に向かった。

包丁の音。

トントントントン。

それがやけに耳心地がいい。

眠くなってきた。

少し寝てしまおうか?

いや……折角晩メシ作ってくれてるんだ。

 

リモコンで適当なチャンネルをつける。

『キャプテン翼』か…………

俺、あんまりサッカー知らないからな。

別のチャンネル。

おっ『北斗の拳』だ。

慎二が好きなアニメだったな、これ。

でも食事前に観るもんじゃあないよなぁ。

グロいし。

ニュースにするか。

たぶん暗いニュースばかりだけど。

 

………………………ダメだ、頭に入ってこない。

 

いや、ヤバいな。

流石に眠くなってきた……………………

 

 

◆

 

 

不貞寝してしまった。

 

ションベンしに部屋を出る。

廊下がキシキシいってる。

イヤな音だ。

ぼくはこーいう音が嫌いだ。

けど、液体関係の音よりマシ。

『ピチャピチャ』とか『ズルズル』とか。

そーいう音の方が嫌いだ。

 

下半身不随になってから、しばらくの間は、一人でションベンもできなかった。

だから『お手伝いさん(ヘルパー)』が…………

いや、思い出すだけで赤っ恥のコキッ恥。

サイアクな記憶の一つ。

 

けれど、慣れてしまったら、意外と一人でもションベンできる。

たまに飛び散ってしまうが………

流石に衛宮ん家では、ちゃんとやるぜ?

人ん家なワケだからな。

間桐の屋敷ならば自分で拭き取りもせんがね。

どうせ『お手伝いさん』が拭くから。

 

下半身不随でも『尿意』は感じる。

膀胱の感覚はあるから。

だが『勃起』はしない。

ションベンの時の『排出』される感じとか……

そーいう感覚がない。

相変わらず難儀な身体だ。

この身体と付き合ってきて、もう何年だ?

蟲を入れずに、ちゃんとリハビリしてたら………

ぼくは今頃『歩けていた』のだろうか………

 

そういえば、最近体重を量ってないな。

今、何kgになっているだろう…?

せめて40kgは欲しい。

前に量った時は『37kg』だった。

スゴくヤバい。

このままじゃあ餓死しちまうよ。

 

そう思うと途端に腹が減ってきた。

なんとなく居間に向かう。

すると、やけに美味そうな匂いがした。

 

「…………あら、シンジ……ごきげんよう」

 

「どうもクソガキごきげんよう」

 

「はぁ?」

 

居間には先客がいた。

衛宮とガキ(イリヤスフィール)。

衛宮は畳の上でうたた寝中。

ガキは風呂上がりなのか、お肌ツルツル。

テレビを観ながらお茶を湯呑みで飲んでる。

相変わらずナマイキそうな顔してやがる。

ションベンでも入れてやろうか。(※要修正)

 

………………………………衛宮にブッ殺されるな。

 

そんな事より台所から物音がする。

ライダーだろうか……?

それとも遠坂か。

 

ニョホホホホホ

 

このアホみたいな笑い方はライダーだ。

なんだその笑い方。

未だに慣れねーわ。

 

まぁいいや。

『iPod』を起動してイヤホンをつける。

何を聴こうか……?

 

『ザ・スミス』でも聴こうかな。

 

ロックといえば『UK(イギリス)』だよなぁ。

『US(アメリカ)』はダメ。

特に『スタジアム・ロック』と『LAメタル』

色々と商業的すぎる。

音楽はちょっとアンダーグラウンドな方がいい。

『労働者階級(ワーキング・クラス)』の連中の曲なら尚サイコー。

 

後、『グランジ』は論外だね。

『根暗』な作風が多いから。

『死』とか『ヤク(ドラッグ)』とか。

破滅願望みたいな曲ばっかりでウンザリだ。

そんなに死にたきゃ勝手に死ねばいい。

ぼくには到底、理解ができない。

できる事なら一生…生きていたいんだ、ぼくは。

本当に……できるのなら、永遠に生きたい。

本当に、そう思うのだ。

 

「はいよ、お待ちどうさん」

 

4曲目あたりで、食卓に料理が並んだ。

 

【本日のメニュー】

主食:鮑(あわび)のリゾット*1

主菜:溺れダコの煮込み(ポルポ・アフォガート)*2

副菜:カプレーゼ*3

飲み物:水(コントレックス)*4

 

「食後には『イタリアン・コーヒー』もあるぜ……お嬢ちゃんの為に『カプチーノ』も用意してある」

 

オイオイオイ。

至れり尽くせりだな。

これが外食なら3500円以上は払えるね。

 

「おー……流石だな、ライダー」

 

「わーい♪」

 

ノンキしてるヤツしかいねぇのか?

 

ガラララッ………

 

「やはりイタリア料理ね……それ私の分もある?」

 

ゲッ!

 

「と、遠坂……ッ!」

 

「なによ、そんなに私が生きてるのが不思議?……私からしたらね、士郎も慎二も、どっちもピンピンして晩御飯食べようとしてる方が不思議でしょうがないわよ」

 

なんだコイツ。

バケモンみたいな回復力だ。

ぼくのカスみたいな『処置』でこれか?

マジで無敵か?

本職の処置なら『6秒』くらいで復活しそうだ。

 

「『おかわり』の分もあるからヨユーだぜ」

 

「貴方、有能ね……どう?『鞍替え』しない?」

 

おい。

どさくさに紛れて『引き抜き』しようとすんな。

『読売ジャイアンツ』かテメーはよォ…!?

 

「悪りぃな、オレこの『鞍』気に入ってんだ」

 

「冗談よ!ちょっとした冗談…………なに?」

 

クソッ!

一ペンくらいギャフンと痛い目見ねぇかなコイツ。

 

 

◆

 

 

『コポポポポポポポッ』とかいう音。

これは液体関係の音だが、結構好きな音だ。

コーヒーを淹れる時の音。

これは好きな音だ。

 

なんだか久々に『飯』を食った気がする。

一口目の時はビックリした。

塩味と旨味で舌がブルッちまった。

ダイエットした後に、リバウンドしてしまう女の子の気持ちがわかった気がする。

この『刺激』は確かに凄まじい。

 

飯食ってる時に、ガキ(イリヤスフィール)がゴチャゴチャなんか言っていた。

『聖杯戦争』の『仕組み(メカニズム)』がどーとか。

『聖杯』の『中身』がどーとか。

『アンリマユ』とかいうワケわかんねぇヤツとか。

 

なんかゴチャゴチャ言ってた。

折角ウマイ飯食ってるのに。

 

どれもこれも『どうでもいい』事だ。

瑣末な事。

ホントはイヤホンつけたかった。

話の途中からテレビ観てたもんね、殆ど。

 

遠坂は『第三魔法』があーだこーだ。

魔術の『物知り博士さん』か?

テメーの知識自慢をいちいち聞いてられるか。

頭魔術師はこれだから………

 

そして衛宮は何故か無駄に『アンリマユ』について詳しかった。

おまえの引き出しは、一体どうなってんだ?

一人だけ違う教科書でも読んでたのかよ。

そんな知識を頭に入れるより『三角関数』とか覚えといた方がいいぜ。

 

そんなこんながあってから……………

クソどうでもいい解説がひと段落した。

ガキと遠坂はカプチーノ。

ぼく、衛宮、ライダーはコーヒーを飲む。

やはりライダーのコーヒーは絶品だ。

大地の恵みを感じる。

カプチーノも気になるがね。

 

それにしてもマジ無駄な時間だった。

学校の朝のHR(ホームルーム)の百倍くらい無駄な時間。

 

さて、これから衛宮たちは土蔵に行って『切り札』を投影するらしい。

そして、もしそれが『成功』したのなら。

それを持って『決着』をつけに行く。

おそらく今日。

どれくらい時間がかかるかわからんが、時間帯的に『明日』になった『直後』とか、かもしれんがね。

そういう『計画(プラン)』だ。

 

おっと、そういえば………………

 

「ライダー」

 

「ン?」

 

「メシ、美味かったぜ」

 

おい。

なんだァ?その顔は。

ゴキブリ見た時みたいな顔しやがって。

 

「チッ…………そんだけだよ」キコキコキコ…

 

じゃあ、ぼくも『最期の準備』をしよう。

*1:
もともとイタリアで食べられてきた麦類の料理に、中東から伝播した米が融合した料理。薄切りの鮑と細かく刻まれた冬瓜、とろろ芋を具材に使用した。ちなみにイタリアでリゾットは主食ではなく野菜料理に分類されるので、本来はリゾットを食べながらパンを食するのが普通なのだが、今回はパンがなかったのでリゾットだけである。

*2:
マダコのトマトソース煮。トマトソースは、イタリア語ではサルサ・ディ・ポモドーロといい、イタリア料理には欠かせない基本中の基本。

*3:
いつもの超定番サラダ。今回はバジルも付いている。

*4:
フランスのヴォージュ県コントレクセヴィルで採れるミネラルウォーター。硬度が1リットル当たり1,468mg と極めて高いことが特徴の硬水。




それは『感想』だよ、読者君!
最も大切なのは『感想』なんだ。
それに比べたら『作者』なんて、このクラッカーの歯クソほどの事もないんだ…(?)

作中の小ネタやサブタイトルの元ネタについて解説は必要?

  • どちらも必要。
  • 小ネタだけ必要。
  • サブタイトルのみ必要。
  • どちらも必要なし。
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