Fate/STEEL BALL RUN【完結】   作:石田たつを

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『ノーマル』エンドも書く。
『トゥルー』エンドも書く。
両方書かなくっちゃあならないのが、作者の辛い所だな……

(完結させる)覚悟はいいか?オレはできてる……


サイドA:レッド・アルバム
#65 スパークスライナーハイ その①


全ての針が頂点を指す。

午前零時、約束の時間になった。

 

「シンジ、もう皆……準備ができたって」

 

銀髪のガキ(イリヤスフィール)が声をかけてくる。

コイツは、ここに残る。

クソ爺がコイツを狙っている、という事もあるが、これはほぼ衛宮のワガママみたいなもんだ。

 

車椅子を漕ぐ。

いつものように、頭が痛い。

ガキは風呂上がりだからか、シャンプーの匂い。

さっき飲んでいたコーヒーの味。

秒針が刻む音色。

 

全て削ぎ落とした筈の生物としての機能。

 

それを……いつの間にか取り戻していた。

 

()()()()()()()()………あなたはマキリだけど、帰ってこれたら特別に仲良くしてあげるわ」

 

「フンッ…………クソガキッ!バーーーカッ!」

 

「はァ!?なによッ!?あなたの方がまるで子どもみたいじゃないッ!!」

 

ギャーギャーうるさい声を背に、部屋を出る。

ガキは、しおらしい顔をしていた。

それが逆にムカついた。

ガキはナマイキな方が()()()もんだ。

だから煽った。

『紳士』のやる事ではないがな。

 

 

 

 

月明かりだけを頼りに山中へ。

木々をかきわけ、夜の山を往く。

戦力は四人。

衛宮、遠坂、ぼく、ライダー。

ぼくだけ『格下』すぎるって…?

その通り。

ぐうの音もでない。

マジの直前まで引き留められていた。

特に、遠坂が『足手纏いすぎる』とか言ってきて、正論オブ正論で詰められた。

でも同行する。

何故なら、こんなぼくにも『切り札』があるから。

 

衛宮と遠坂がゴチャゴチャ言っている。

すまん、ガキが言ってた事、殆どシカトしてた。

だからお前らが言ってる事、全然わからん。

 

「これ、結界の一種でしょうね……先、行くわよ」

 

あぁ、終わりました?

長かったねぇ。

衛宮、お前もボケッとしてんなよ。

 

洞窟の入り口。

その中へ進んでいく。

こんな所、車椅子で行く場所ではない。

それでも往く。

一寸先は闇。

だから遠坂が明かりを灯す。

水が滴る音が反響(エコー)している。

 

イヤな音だぜ。

 

「士郎、今のうちにハッキリ言っておく」

 

………なんだァ?唐突に。

 

「わたしはこの先でアンタが行方不明になったり、負傷しても()()()()()()()()()()……慎二、アンタもよ」

 

「……………………………………」

 

「冷酷な発想だけどね、わたしは桜を倒すつもりでここに来た………アンタたちの方も、もしわたしがやられたり、はぐれたりしても……助けないという事を約束して……ひとりを助けようとして全滅するのだけは、避けなきゃいけない」

 

正論だ。

基本的に、遠坂凛という女は正論しか言わない。

ムカつく奴だ。

可愛げというものがない。

だけれども、スゴく癪に障るが…………

()()()()()()だとは、思ってしまう。

ほんのチョッピリだけ、だがね。

 

「……でも、もし全員で生きて出てこれたら、皆で豪勢な晩飯を食べよう」

 

オイ、よせッ!

おまえ、それッ!

『死亡フラグ』じゃあねぇかッ!

やめとけやめとけ!

そーいうセリフ言ったヤツって大体死ぬんだよッ

ボケがァ〜〜〜〜〜……!

そしてこーいう『あるある』が通じるヤツが、ここに一人もいねぇじゃあねぇかッ!!

 

「……………………ぉ…ぇ…ッ」

 

─────吐き気がした。

アホな事を考えていた思考が、止まる。

通路には生命力が満ち溢れている。

それが、あまりにも生々しい。

視覚化できるほど垂れ流されている魔力。

 

「………………………………」

 

かける言葉などない。

ここはもう、既に『死地』だ。

冗談を言おうとしていた。

けれど、それを呑み込む。

 

闇が見える。

 

それを踏破する。

 

通路を抜けた先、大きく開けた空洞。

横幅は学校のグラウンドほど。

天井は十メートルくらいだろうか…?

 

そこに、絶対の殺気を纏う者───────

『セイバー』が、静かに来訪者を待っていた。

 

『セイバー』

黒き剣士。

光なき黄金の瞳。

衛宮の『元サーヴァント』

しかし、その姿は以前とは違う。

その『右腕』が違う。

()()()()()

セイバーは再生能力が高いという。

普段であれば、数分とかで回復して、ピッコロ大魔王みたいにニョキニョキ生えてくるのかもしれない。

なのに、右腕がない。

生え始めては、きている。

だけども…………………

 

ギャルギャルギャルギャルッ…!

 

腕が伸びる前に『回転』によって、捩じ切れて、消し飛ばされていった。

 

話に聞いていた、ライダーの『宝具』の効果。

無限の回転は、未だ止まらず。

静かにセイバーを蝕んでいた。

 

「最初に宣告しておきます、まず凛………私は貴方と争うと、桜の命令に背いてしまう…通りなさい」

 

「…………そう……本気なんだ、桜」

 

短い呟き。

遠坂はセイバーの横を通り過ぎていく。

 

「じゃ、お先…………モタモタしないでよね」

 

それだけ言って、振り返らずに、奥に消えていく。

とんでもねぇ要望だ。

この『セイバー』にモタモタすんなって……?

 

だが、それが逆に気に入った。

 

やってやろうじゃあないか。

 

「衛宮、『プランA』でいくぞ」

 

「あぁ、わかった………!」

 

『セイバー』は、まだ動かない。

だけど『殺気』だけは、どんどん膨れ上がっていく。

遠坂が奥に進み、残されたのは二人だけ。

ぼく、衛宮だけ。

 

おいおい、これは間違いじゃあないぜ?

 

確かに、まだライダーはここにいる。

 

だけど………………

 

「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

衛宮が吠える。

獰猛な獣のように。

左腕に例の『無銘(ザ・スミス)』が顕現する。

 

そして……………………

 

「セイバァァァァァァァァーーーーーッ!!」

 

『無銘の双剣』を構え、突進すると同時に、ライダーが『(ヴァルキリー)』に騎乗して、セイバーの横を通り過ぎて行った。

 

「な……ッ!?」

 

これには流石のセイバーも目を疑っている。

当然だろう。

英霊(サーヴァント)戦において、自らの『英霊』をブツけない、というのは『自殺行為』に等しい。

いくらセイバーが弱体化しているとしても。

だが、これは事前に、ぼくと衛宮の二人で打ち合わせしていたのだ。

 

『もし、分断されたのならば、必ずツーマンセル』

 

集団戦において、真っ先に避けなければならないのは、相手に『各個撃破』される事。

 

ぼくたちには『数の強み』がある。

 

それを活かさなければ、ならない。

 

さっき、遠坂は『はぐれてもうんぬんかん』言ってたワケだけど………

誰がテメーの指図を受けるかッてんだ。

それに衛宮は死亡フラグ建ててたけど。

『あぁ、わかったぜ遠坂』なんて一言も言ってなかったんだぜ?

マジぼくらをナメるなよ。

 

「正気ですかシロウッ!?」

 

「あぁ!俺には『慎二』がいるッ!!」

 

期待が重いぜ。

だけど、悪くない。

今に見てろよセイバー。

万全なら『100%』勝てないが…………

おまえが『手負い』なら話は別だ。

ぼくの『切り札』を見せてやるぜ。

 

ま、今じゃあないんだけど…………………

 

 

 

 

俺の『歯車』は既に、静かに回転している。

意識に亀裂が入る。

手足の感覚が薄れていく。

それでも俺は、この風の中で立つ。

 

作り上げた武器。

 

それは『無銘の双剣』

されど、それは『無銘』に非ず。

 

確かに『テクスチャ』は無銘の剣。

なんの、変哲もない見た目。

けれど、この剣には『中身』がある………この場合は『マテリアル』と言うべきか…?

 

陰剣莫耶、陽剣干将。

 

この『無銘の双剣』には『中身』がある。

そして『とある性質』がある。

必要なのは、この『性質』と『耐久性』のみ。

それ以外の情報は全て、俺の『濾波器』がカットしてくれた。

 

大切なのは、その中身。

『見てくれ』が何であろうと、関係ない。

 

────────踏み込んだ。

セイバーの真正面。

俺の数メートル後ろには、慎二がいる。

もし、俺が斃れたら、攻撃は慎二に向かう。

 

それだけは、避けなくてはならない。

 

慎二には『切り札』がある。

出発前に教えてもらった。

 

俺の『役割』は、隙を作る事。

ひとりで打ち勝つ必要はない。

 

遠坂にはライダー。

俺には慎二。

互いに頼もしい味方がいる。

 

それだけで、勇気が湧いてくる。

 

────────一手目の選択。

意識の全てを左腕に注ぎ込み、渾身の一撃。

打ち下ろすのは『左の剣』

 

弾かれる。

 

かまわず『右の剣』で薙ぎ払う。

 

それも不発。

 

────────だがどうでもいい。

 

炸裂する閃光。

1秒毎に生まれ変わる衝撃。

超人的に翻る身体。

稲妻となって迸る刃。

 

「は──────」

 

防戦一方。

攻めて 手が許されたのは初撃のみ。

後はひたすら防ぐだけ。

 

だけど、持ち堪えられている。

 

無銘(ザ・スミス)』は濾波器だ。

 

余計な情報をカットしてくれている。

けれど、それは『オート』じゃあない。

半分くらいは『マニュアル』だ。

 

俺が『選択』する必要がある。

『必死』の選択以外であれば、俺は選択できる。

 

俺が引き出したのは剣の『性質(マテリアル)

そしてアーチャーの『双剣を操る技量(テクニック)

この二つ。

 

『完全再現』じゃないが、今の俺は…アーチャーのソレに近い。

 

だからこそ持ち堪えられる。

 

思考が削れていく。

肉体が歪んでいく。

『歯車』が金切り声を奏でる。

それは、悲鳴に似ている。

 

それが、どうした?

 

セイバーの一撃毎に激痛。

三十手先には自分の死。

 

それが、一体どうしたというんだ?

 

恐怖はない。

あるのは、ただ………………

 

「は、は───ハァ、ハァ、はは、ははは…!」

 

ついていける、という悦びだけ。

戦える。

俺は戦えている。

全て『借り物』だ。

『借り物の力』だ。

それでも構わない。

俺はあのセイバーと、マトモに打ち合えている…!

 

勝機は必ず俺が作り出す。

セイバーは聖剣を使わない。

この洞窟という『場所(フィールド)』のせいか…?

それともライダーの『宝具』による負傷のせいか。

 

どうでもいい事だ。

俺はまだ耐えられる。

聖剣を使わないなら、必ず隙が生まれる…!

 

「は─────は、あ────はははッ!」

 

スピードを上げる。

トップギア。アクセルを踏み砕く。

『左腕』がもどかしい。

無銘(ザ・スミス)』が恨めしい。

 

───────弾き出せ。

 

より深遠により広大により限界へ。

 

超えて行け(go・beyond)

 

そうすれば、もっと長く、もっと強く、このままセイバーと戦っていられるんだから………!

 

「くッ……………!」

 

「うおおおおおおぁオラぁあああああッ!」

 

後退する身体。

セイバーの一撃で大きく弾かれる。

 

その勢いを殺さずに背後に跳ぶ。

 

すぐ側には慎二。

戦局を冷静に観察している。

 

「ハァーッ………ハァーッ………」

 

呼吸を整える。

全身の筋肉が燃えている。

毛穴から熱気が溢れる。

 

『偽・干将莫耶』とも言うべき『無銘の双剣』を握りながら、セイバーを見据える。

離した間合いは十メートル。

 

一度、身体を見る。

 

()()()()()()()

 

『歯車』が回っている。

火花を散らして回っている。

 

運動精度は低下していない。

ナニかがヒビ割れていく感覚もない。

 

「慎二、次の『投影』で勝負を決める」

 

OK(オーケー)牧場」

 

何だそりゃ。

ギャグのつもりか?

だとするならヒドイな。

ライダーの方が、よっぽどオモロい。

 

「その体でよく戦える…………」

 

()()()()

判っている。

如何に『無銘』があっても…………

俺の身体は崩壊し始めている。

今すぐに死ぬ、とかではないだろう。

けれど、確実に壊れ始めている。

けれど、それでいい。

 

寧ろ、ありがたいくらいだ。

 

俺は『余力』を残す事ができる。

 

ならば限界ギリギリまで戦い続ける。

 

それが俺の『役割』だ。

 

それが俺たちの『戦い方』だ。

 

「かかってきなさい、シロウ」

 

「言われなくてもッ……!!」

 

『覚悟』が入った。

なんとなく、自分の限界が判る。

 

残り投影回数──────『2回』

 

それが限度。

3回目以降は、無い。

 

『無銘』のありがたみが身に沁みる。

 

もし、俺に『無銘』がなければ…………

アーチャーの『左腕』だけ、だったのなら。

俺は今頃……いや、とっくの昔に死んでいた。

 

「───────投影(トレース)開始(オン)

 

目を閉じて『投影』する。

俺の中にある『設計図』を読み込む(リード)

 

左腕から流れ込んでくる余計な情報。

それら全てをカットしていた。

けれど、それだけじゃあ勝てない。

拮抗は出来る。

けれど、勝てない。

 

ならば、ほんのチョッピリだけ。

俺は、その先へ『超えて行く(ゴー・ビヨンド)

 

接続する。

 

検索する。

 

模索する。

 

把握する。

 

理解する。

 

その代償に、ナニかを失う。

 

それでも先へ。

 

それでも超えて行く。

 

「っ」

 

名前を忘れた。

色々なものの名称を忘れた。

誰かの名前を忘れた。

関わりの薄い人物から、順番に。

俺が好きな花の名前も忘れた。

靴ヒモの結び方とかも忘れた。

 

全部、どうでもいい事だ。

寧ろ、ありがたい。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ありがたい。

心の底から感謝しよう。

ありがとう。

それしか言う言葉が見つからない。

 

お陰で、もっと奥に行ける。

探す。

探す。

探す。

必ずある。

俺では思いつかない手段。戦法。構え。戦術。

 

肘にあった『歯車』が弾け飛ぶ。

とうとう、耐えきれなかったのか。

 

だけど、まだ『二つ』ある。

手の甲と肩に、一つずつ。

 

まだ『回せる』

まだ『回せる』

まだまだまだ。

まだ『超えて行ける』

 

経験のイドから水を汲む。

二つの曲線。

引かれあう陰と陽。

連続投影。

剣術自体は基本を守る。

 

即ち────────────

 

鶴翼不欠落

 

心技至泰山

 

心技渡黄河

 

唯名納別天

 

両雄倶別命

 

───────────届いた。

 

干将莫耶の真意に届いた。

 

今から行うのは、もう小細工じゃあない。

わざわざ『テクスチャ』を弄る必要もない。

肉体の負担は、もう考えるな。

 

大丈夫。

きっと、大丈夫。

 

俺はただ、この一手さえ、届かせればいい。

 

後は『()()()』が……………………

 

「───────ッ」

 

そうだ、()()()がやってくれる。

 

元より、俺はひとりじゃあない。

それを違えるな。

そこを間違えるな。

 

この一撃。

この必殺の技。

それで目の前の『敵』を崩す。

 

必ず当てる。

 

そうすれば、必ず────────

 

『俺たちは勝てる』

 

それは夢物語じゃない。

紛れもない事実。

決して揺るがない真実。

そう確信した。

作中の小ネタやサブタイトルの元ネタについて解説は必要?

  • どちらも必要。
  • 小ネタだけ必要。
  • サブタイトルのみ必要。
  • どちらも必要なし。
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