Fate/STEEL BALL RUN【完結】 作:石田たつを
『トゥルー』エンドも書く。
両方書かなくっちゃあならないのが、作者の辛い所だな……
(完結させる)覚悟はいいか?オレはできてる……
#65 スパークスライナーハイ その①
全ての針が頂点を指す。
午前零時、約束の時間になった。
「シンジ、もう皆……準備ができたって」
コイツは、ここに残る。
クソ爺がコイツを狙っている、という事もあるが、これはほぼ衛宮のワガママみたいなもんだ。
車椅子を漕ぐ。
いつものように、頭が痛い。
ガキは風呂上がりだからか、シャンプーの匂い。
さっき飲んでいたコーヒーの味。
秒針が刻む音色。
全て削ぎ落とした筈の生物としての機能。
それを……いつの間にか取り戻していた。
「
「フンッ…………クソガキッ!バーーーカッ!」
「はァ!?なによッ!?あなたの方がまるで子どもみたいじゃないッ!!」
ギャーギャーうるさい声を背に、部屋を出る。
ガキは、しおらしい顔をしていた。
それが逆にムカついた。
ガキはナマイキな方が
だから煽った。
『紳士』のやる事ではないがな。
◆
月明かりだけを頼りに山中へ。
木々をかきわけ、夜の山を往く。
戦力は四人。
衛宮、遠坂、ぼく、ライダー。
ぼくだけ『格下』すぎるって…?
その通り。
ぐうの音もでない。
マジの直前まで引き留められていた。
特に、遠坂が『足手纏いすぎる』とか言ってきて、正論オブ正論で詰められた。
でも同行する。
何故なら、こんなぼくにも『切り札』があるから。
衛宮と遠坂がゴチャゴチャ言っている。
すまん、ガキが言ってた事、殆どシカトしてた。
だからお前らが言ってる事、全然わからん。
「これ、結界の一種でしょうね……先、行くわよ」
あぁ、終わりました?
長かったねぇ。
衛宮、お前もボケッとしてんなよ。
洞窟の入り口。
その中へ進んでいく。
こんな所、車椅子で行く場所ではない。
それでも往く。
一寸先は闇。
だから遠坂が明かりを灯す。
水が滴る音が
イヤな音だぜ。
「士郎、今のうちにハッキリ言っておく」
………なんだァ?唐突に。
「わたしはこの先でアンタが行方不明になったり、負傷しても
「……………………………………」
「冷酷な発想だけどね、わたしは桜を倒すつもりでここに来た………アンタたちの方も、もしわたしがやられたり、はぐれたりしても……助けないという事を約束して……ひとりを助けようとして全滅するのだけは、避けなきゃいけない」
正論だ。
基本的に、遠坂凛という女は正論しか言わない。
ムカつく奴だ。
可愛げというものがない。
だけれども、スゴく癪に障るが…………
ほんのチョッピリだけ、だがね。
「……でも、もし全員で生きて出てこれたら、皆で豪勢な晩飯を食べよう」
オイ、よせッ!
おまえ、それッ!
『死亡フラグ』じゃあねぇかッ!
やめとけやめとけ!
そーいうセリフ言ったヤツって大体死ぬんだよッ
ボケがァ〜〜〜〜〜……!
そしてこーいう『あるある』が通じるヤツが、ここに一人もいねぇじゃあねぇかッ!!
「……………………ぉ…ぇ…ッ」
─────吐き気がした。
アホな事を考えていた思考が、止まる。
通路には生命力が満ち溢れている。
それが、あまりにも生々しい。
視覚化できるほど垂れ流されている魔力。
「………………………………」
かける言葉などない。
ここはもう、既に『死地』だ。
冗談を言おうとしていた。
けれど、それを呑み込む。
闇が見える。
それを踏破する。
通路を抜けた先、大きく開けた空洞。
横幅は学校のグラウンドほど。
天井は十メートルくらいだろうか…?
そこに、絶対の殺気を纏う者───────
『セイバー』が、静かに来訪者を待っていた。
『セイバー』
黒き剣士。
光なき黄金の瞳。
衛宮の『元サーヴァント』
しかし、その姿は以前とは違う。
その『右腕』が違う。
セイバーは再生能力が高いという。
普段であれば、数分とかで回復して、ピッコロ大魔王みたいにニョキニョキ生えてくるのかもしれない。
なのに、右腕がない。
生え始めては、きている。
だけども…………………
ギャルギャルギャルギャルッ…!
腕が伸びる前に『回転』によって、捩じ切れて、消し飛ばされていった。
話に聞いていた、ライダーの『宝具』の効果。
無限の回転は、未だ止まらず。
静かにセイバーを蝕んでいた。
「最初に宣告しておきます、まず凛………私は貴方と争うと、桜の命令に背いてしまう…通りなさい」
「…………そう……本気なんだ、桜」
短い呟き。
遠坂はセイバーの横を通り過ぎていく。
「じゃ、お先…………モタモタしないでよね」
それだけ言って、振り返らずに、奥に消えていく。
とんでもねぇ要望だ。
この『セイバー』にモタモタすんなって……?
だが、それが逆に気に入った。
やってやろうじゃあないか。
「衛宮、『プランA』でいくぞ」
「あぁ、わかった………!」
『セイバー』は、まだ動かない。
だけど『殺気』だけは、どんどん膨れ上がっていく。
遠坂が奥に進み、残されたのは二人だけ。
ぼく、衛宮だけ。
おいおい、これは間違いじゃあないぜ?
確かに、まだライダーはここにいる。
だけど………………
「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」
衛宮が吠える。
獰猛な獣のように。
左腕に例の『
そして……………………
「セイバァァァァァァァァーーーーーッ!!」
『無銘の双剣』を構え、突進すると同時に、ライダーが『
「な……ッ!?」
これには流石のセイバーも目を疑っている。
当然だろう。
対
いくらセイバーが弱体化しているとしても。
だが、これは事前に、ぼくと衛宮の二人で打ち合わせしていたのだ。
『もし、分断されたのならば、必ずツーマンセル』
集団戦において、真っ先に避けなければならないのは、相手に『各個撃破』される事。
ぼくたちには『数の強み』がある。
それを活かさなければ、ならない。
さっき、遠坂は『はぐれてもうんぬんかん』言ってたワケだけど………
誰がテメーの指図を受けるかッてんだ。
それに衛宮は死亡フラグ建ててたけど。
『あぁ、わかったぜ遠坂』なんて一言も言ってなかったんだぜ?
マジぼくらをナメるなよ。
「正気ですかシロウッ!?」
「あぁ!俺には『慎二』がいるッ!!」
期待が重いぜ。
だけど、悪くない。
今に見てろよセイバー。
万全なら『100%』勝てないが…………
おまえが『手負い』なら話は別だ。
ぼくの『切り札』を見せてやるぜ。
ま、今じゃあないんだけど…………………
◆
俺の『歯車』は既に、静かに回転している。
意識に亀裂が入る。
手足の感覚が薄れていく。
それでも俺は、この風の中で立つ。
作り上げた武器。
それは『無銘の双剣』
されど、それは『無銘』に非ず。
確かに『テクスチャ』は無銘の剣。
なんの、変哲もない見た目。
けれど、この剣には『中身』がある………この場合は『マテリアル』と言うべきか…?
陰剣莫耶、陽剣干将。
この『無銘の双剣』には『中身』がある。
そして『とある性質』がある。
必要なのは、この『性質』と『耐久性』のみ。
それ以外の情報は全て、俺の『濾波器』がカットしてくれた。
大切なのは、その中身。
『見てくれ』が何であろうと、関係ない。
────────踏み込んだ。
セイバーの真正面。
俺の数メートル後ろには、慎二がいる。
もし、俺が斃れたら、攻撃は慎二に向かう。
それだけは、避けなくてはならない。
慎二には『切り札』がある。
出発前に教えてもらった。
俺の『役割』は、隙を作る事。
ひとりで打ち勝つ必要はない。
遠坂にはライダー。
俺には慎二。
互いに頼もしい味方がいる。
それだけで、勇気が湧いてくる。
────────一手目の選択。
意識の全てを左腕に注ぎ込み、渾身の一撃。
打ち下ろすのは『左の剣』
弾かれる。
かまわず『右の剣』で薙ぎ払う。
それも不発。
────────だがどうでもいい。
炸裂する閃光。
1秒毎に生まれ変わる衝撃。
超人的に翻る身体。
稲妻となって迸る刃。
「は──────」
防戦一方。
攻めて 手が許されたのは初撃のみ。
後はひたすら防ぐだけ。
だけど、持ち堪えられている。
『
余計な情報をカットしてくれている。
けれど、それは『オート』じゃあない。
半分くらいは『マニュアル』だ。
俺が『選択』する必要がある。
『必死』の選択以外であれば、俺は選択できる。
俺が引き出したのは剣の『
そしてアーチャーの『双剣を操る
この二つ。
『完全再現』じゃないが、今の俺は…アーチャーのソレに近い。
だからこそ持ち堪えられる。
思考が削れていく。
肉体が歪んでいく。
『歯車』が金切り声を奏でる。
それは、悲鳴に似ている。
それが、どうした?
セイバーの一撃毎に激痛。
三十手先には自分の死。
それが、一体どうしたというんだ?
恐怖はない。
あるのは、ただ………………
「は、は───ハァ、ハァ、はは、ははは…!」
ついていける、という悦びだけ。
戦える。
俺は戦えている。
全て『借り物』だ。
『借り物の力』だ。
それでも構わない。
俺はあのセイバーと、マトモに打ち合えている…!
勝機は必ず俺が作り出す。
セイバーは聖剣を使わない。
この洞窟という『
それともライダーの『宝具』による負傷のせいか。
どうでもいい事だ。
俺はまだ耐えられる。
聖剣を使わないなら、必ず隙が生まれる…!
「は─────は、あ────はははッ!」
スピードを上げる。
トップギア。アクセルを踏み砕く。
『左腕』がもどかしい。
『
───────弾き出せ。
より深遠により広大により限界へ。
『
そうすれば、もっと長く、もっと強く、このままセイバーと戦っていられるんだから………!
「くッ……………!」
「うおおおおおおぁオラぁあああああッ!」
後退する身体。
セイバーの一撃で大きく弾かれる。
その勢いを殺さずに背後に跳ぶ。
すぐ側には慎二。
戦局を冷静に観察している。
「ハァーッ………ハァーッ………」
呼吸を整える。
全身の筋肉が燃えている。
毛穴から熱気が溢れる。
『偽・干将莫耶』とも言うべき『無銘の双剣』を握りながら、セイバーを見据える。
離した間合いは十メートル。
一度、身体を見る。
『歯車』が回っている。
火花を散らして回っている。
運動精度は低下していない。
ナニかがヒビ割れていく感覚もない。
「慎二、次の『投影』で勝負を決める」
「
何だそりゃ。
ギャグのつもりか?
だとするならヒドイな。
ライダーの方が、よっぽどオモロい。
「その体でよく戦える…………」
判っている。
如何に『無銘』があっても…………
俺の身体は崩壊し始めている。
今すぐに死ぬ、とかではないだろう。
けれど、確実に壊れ始めている。
けれど、それでいい。
寧ろ、ありがたいくらいだ。
俺は『余力』を残す事ができる。
ならば限界ギリギリまで戦い続ける。
それが俺の『役割』だ。
それが俺たちの『戦い方』だ。
「かかってきなさい、シロウ」
「言われなくてもッ……!!」
『覚悟』が入った。
なんとなく、自分の限界が判る。
残り投影回数──────『2回』
それが限度。
3回目以降は、無い。
『無銘』のありがたみが身に沁みる。
もし、俺に『無銘』がなければ…………
アーチャーの『左腕』だけ、だったのなら。
俺は今頃……いや、とっくの昔に死んでいた。
「───────
目を閉じて『投影』する。
俺の中にある『設計図』を
左腕から流れ込んでくる余計な情報。
それら全てをカットしていた。
けれど、それだけじゃあ勝てない。
拮抗は出来る。
けれど、勝てない。
ならば、ほんのチョッピリだけ。
俺は、その先へ『
接続する。
検索する。
模索する。
把握する。
理解する。
その代償に、ナニかを失う。
それでも先へ。
それでも超えて行く。
「っ」
名前を忘れた。
色々なものの名称を忘れた。
誰かの名前を忘れた。
関わりの薄い人物から、順番に。
俺が好きな花の名前も忘れた。
靴ヒモの結び方とかも忘れた。
全部、どうでもいい事だ。
寧ろ、ありがたい。
ありがたい。
心の底から感謝しよう。
ありがとう。
それしか言う言葉が見つからない。
お陰で、もっと奥に行ける。
探す。
探す。
探す。
必ずある。
俺では思いつかない手段。戦法。構え。戦術。
肘にあった『歯車』が弾け飛ぶ。
とうとう、耐えきれなかったのか。
だけど、まだ『二つ』ある。
手の甲と肩に、一つずつ。
まだ『回せる』
まだ『回せる』
まだまだまだ。
まだ『超えて行ける』
経験のイドから水を汲む。
二つの曲線。
引かれあう陰と陽。
連続投影。
剣術自体は基本を守る。
即ち────────────
───────────届いた。
干将莫耶の真意に届いた。
今から行うのは、もう小細工じゃあない。
わざわざ『テクスチャ』を弄る必要もない。
肉体の負担は、もう考えるな。
大丈夫。
きっと、大丈夫。
俺はただ、この一手さえ、届かせればいい。
後は『
「───────ッ」
そうだ、
元より、俺はひとりじゃあない。
それを違えるな。
そこを間違えるな。
この一撃。
この必殺の技。
それで目の前の『敵』を崩す。
必ず当てる。
そうすれば、必ず────────
『俺たちは勝てる』
それは夢物語じゃない。
紛れもない事実。
決して揺るがない真実。
そう確信した。
作中の小ネタやサブタイトルの元ネタについて解説は必要?
-
どちらも必要。
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小ネタだけ必要。
-
サブタイトルのみ必要。
-
どちらも必要なし。