Fate/STEEL BALL RUN【完結】 作:石田たつを
武の頂。
それは神域と呼ぶべきか。
人の手では届かぬ領域。
俺は、そこに足を踏み入れた。
肉体が
魂が捩れていく。
回転する『歯車』を、一つ落っことした。
筋肉が燃えている。
肺が焼けている。
魂が燃えている。
精神が焼けていく。
それでも、俺は戦う。
それが俺の『使命』だから。
それが俺の『宿命』だから。
それが俺の『覚悟』だから。
だから、だから、だから………!
「─────
あの『敵』を、俺は『
投げる。
左右から同時に、それぞれの最大の魔力を篭めて一投する。
狙いは敵の首。
弧を描く二つの刃は、敵上で交差するように飛翔する。
鶴翼は美しい十字を象る。
それを、当然のように敵は防いだ。
あまりにも容易く防いだ。
──────破られた。
防がれようと弧を描いて戻ってくるハズの双剣は、起動を狂わされて敵の背後へと飛んでいく。
これで無刀。
敵が間合いを詰めてくる。
それに自分から突進する。
「──────
「同じ武器………!?」
敵の剣を受け止める双剣。
投影は既に済んでいる。
予め準備しておいた。
「無駄な事を……!」
振るわれる必殺の一撃。
右腕を失って尚、キレのある一太刀。
その直前…………………
「─────
有り得ない方角から奇襲があった。
「なっ………!?」
未来予知じみた勘の良さで、敵は背後から飛翔した干将を躱した。
その絶対の隙をつき、莫耶を叩きつけ────
「っ、は────────!」
敵の剣の前に砕かれた。
背後からの奇襲と、正面から渾身の一撃を、同時に防がれた。
加えて、莫耶を打ち砕くという極悪さ。
バケモノじみた強さ。
だが。
「─────
バケモノでなれけば、布石を打った意味がない。
「もう一つ……!?」
二度背後から飛来する莫耶。
それは投擲した一度目の双剣。
干将莫耶は夫婦剣。
その性質は磁石のように互いを引き寄せる。
つまり………この手に干将がある限り、莫耶は自動的に俺の手元へと戻ってくる………!
「くっ……!」
神業めいた反応速度で、背後からの奇襲を避ける。
その、これ以上はない無防備な胸元へ、残った干将を叩きつけ────
最後の一撃さえ、この敵は打ち砕いた。
「─────────────」
二つの干将莫耶、四つの刃による前後からの同時攻撃すらも、セイバーの手によって防がれた。
されど…この手には、その先が用意されている。
「─────
三度目を超えて、その先へ。
カラの両手に、再び双剣を作り上げる。
「─────
そして、その無防備な胸元へ、左右から双剣を振り抜いた。
「くッ!?……ぉおおおおおッ」
手応えは完璧だった。
干将と莫耶は容赦なく、胴を薙いだ。
爆撃めいた一撃。
俺は、セイバーから、確かに一本取ったのだ。
なのに残念だ。
身体が自動的に『
膝をつき、大地に寝そべる。
心臓は動いている。
死神の鎌は見えない。
俺は、これで『終わり』じゃあない。
ちょっとすれば、俺はまた動ける。
まだ、俺たちは戦える。
『アイツ』がいるから。
あぁ、どうして一瞬だけでも忘れてしまったのか。
『忘れてはならない人たち』がいる。
他に忘れていいものは、沢山ある。
料理のレシピ。
調味料の場所。
冷蔵庫の中身。
最近観た映画。
面白かったテレビ番組。
弓道の射法。
ストーブの修理方法。
バイト先の住所。
学校の知り合いの名前。
好きな花の名前。
靴ヒモの結び方。
走り高跳びのコツ。
色々なものを忘れた。
でも『アイツ』の名前は忘れちゃいけないよなぁ。
だって、どうでもよくないんだから。
俺の背中を任せられる男なのだから。
俺に『兄貴』としての生き方を教えてくれた。
俺を助け、信じてくれた。
だから、後は任せたぜ…………………
「
「ガッテン承知だ、アホ衛宮」
◆
左右から繰り出される双剣。
それを予知していながら、彼女は防ぐ事ができなかった。
肉体が思考に追いつかない。
敵が放った二度もの奇襲を防いだ彼女であっても。
この徹底的なまでの、偏執的なまでの『格上殺し』の技に、終ぞ対応できなかった。
「っ、ぁ───────…………!」
背中から倒れこむ。
……………今の一撃は、致命傷ではない。
けれど、痛恨の一撃ではある。
「は、あ、ぐっ…………!」
激痛に苦悶を漏らす。
彼女には自然治癒の力が備わっている。
強力な再生機能と、無限大の魔力供給。
かつて、ライダーから食らった『宝具』がなければ、今頃には半分以上は『回復』していただろう。
あの森の中。
ライダーが放った『宝具』は、未だに彼女の右腕を蝕んでいる。
無限の回転。
爆発的エネルギーの螺旋。
再生を促す度に、その勢いが増す。
少し、野暮な事を言うが………………
衛宮士郎は、本来なら敗北していた。
『
つまり、『本来』よりも凡ゆる力が『
その為、さっき衛宮士郎が放った『鶴翼三連』は、実は『不完全』だったのだ。
だが──────幾つもの『奇跡』が重なった。
一つ、ライダーによる『負傷』
二つ、慎二がいた事による『
三つ、『
衛宮士郎は死んでいない。
つまり、これは『相打ち』ではない。
「最期に言い残す事はあるかい…?」
セイバーは『深手』だ。
致命傷ではない。
しかし、身体は動かない。
目の前には間桐慎二。
ライダーの
衛宮士郎の仲間。
いや…………衛宮士郎の『友人』がいる。
「では……『強くなりましたね、シロウ』と」
彼女は目前の、少年の『親友』に声をかける。
「…………いえ、それは違いましたね……
苦しげな呼吸のまま、彼女は独白する。
勝敗は、既に決した。
衛宮士郎の『勝利』で、戦いは決着した。
「さぁ、決着をつけてください」
「悪いが『手加減』できないぜ?」
「構いません」
彼女はハッキリと応える。
敗者は敗者らしく、己の死を受け入れる。
それが、誇りある生き様だから。
それが、騎士としての在り方だから。
彼女は最期まで『気高く』あろうとした。
例え、どうしようもなく『変貌』しても。
─────────────故に。
「ぼくもマジでやらなくっちゃあなッ!」
間桐慎二は『
ギャルギャルギャルギャルッ!!!
『回転』している。
間桐慎二が懐から取り出したモノ。
それは『鉄球』だった。
無骨なデザインの鉄球。
色は藍色で、ライダーのとは違う色。
されど、その『回転』に違いは非ず。
その『回転』は無限の螺旋を描く。
そして彼は、その『鉄球』を─────────
ガシイィンッ!ビッ…ギシギシギシ……ギュッギュッギュッ…ブワッ!ブワアアァ
自らの身体にメリ込ませた。
「人体の70%は『水』なんだぜ………そして、我がクソッタレ間桐の『魔術属性』も『水』なんだ」
鉄球が回転する。
その度に、皮膚が捩れていく。
まるで『ねじれの発作』と言うべきか…?
慎二の肉体が回転によって『絞られていく』
まるで水に浸した雑巾を絞るように…………
肉体から大量の『水』が滲み出てくる。
「…………なるほど、それが貴方の『切り札』」
セイバーは、それを静かに見守る。
受けた傷は、まだ深い。
まだ動けない。
それでも、ゆっくりと『再生』し始めている。
ゆっくりと、ゆっくりと、傷が癒えていく。
それでも、セイバーは静かに見守る。
「ぼくが必ず殺してやるからよォォォォ………」
『水』が溢れる。
それは『体液』なのか……?
汗とか、涙とか、唾とか、小便とか。
そういう『体液』のどれにも該当しない『水』
身体から絞り出され、清流のように透き通っている水。
間桐慎二の体重は、僅か『37kg』しかない。
しかし、絞り出された水の量──────
その重量は『7,421.3グラム』
7,400グラムは慎二の体重の20%の水分。
では残りの21.3グラムは一体……?
その答えは誰にもわからないが…………
もしかしたら『魂の質量』なのかもしれない。
「人間は『20%以上』水分を失うと死んじまうらしいがよォォォォッ!!テメーをブッ殺すには!まだまだ心許ねェーくらいだぜェェェーーーッ!!」
水が滴っていく。
それが水溜まりを形成していく。
水が滴っていく。
その水溜まりが蠢き始める。
水が滴っていく。
水溜まりが、光を帯びる。
やがて、水溜まりが『人型』になる。
透き通る人型の『ビジョン』になっていく。
それは痩せ細った聖者のような身体に、機械仕掛けの蟲の頭部という、グロテスクな外見をしていた。
だがそれは、人体の『水』と輝く『エネルギー』によって構成されている為、そのビジョンは清流の様に透き通っており、黄金の光を帯びて、薄く発光していた。
間桐家の魔術属性は『水』
生命と変化の象徴とされ、何かを『変質』させる魔術と相性がいい。
そして間桐家の魔術特性は『吸収』
成果が必ず自分の体に返る。
なので呪詛には適さない。
間桐慎二は自らの体液という『水』を以って、黄金に輝く『回転エネルギー』を『吸収』させた。
これは厳密には
あくまで
しかし、それにはスタンド並みの『
「うおおおおおおおおおあああああああッ!!」
吠える。
喉が張り裂ける程に。
叫ぶ。
消えゆく命に、最期の『火』を灯す。
燃やす。
燃え盛る『生命』の火に、ガソリンをブッかける。
『オラオラオラオラオラオラオラ』
ラッシュ。
怒涛の拳撃。
ガムシャラに、デタラメに、ヤケクソに。
拳が振るわれる。
その一撃一撃が、岩をも砕ける威力。
衛宮士郎が放つ『剣撃』とは真逆。
下品で、野蛮で、荒々しい。
技術も、技量も、型もない。
ケンカ殺法。
我流のパンチ。
チンピラが出鱈目に繰り出す『ブン殴り』
けれども、その威力は─────────
「お見事です、シンジ」
『最強』の英霊にさえ、届きうる力だった。
◆
【ロング・ジョン】
別名:『
慎二が鉄球の『回転』によって自身の身体のうち20%の『水分』を絞り出した事で発現した、人型のビジョン。
身長が『ジョン・レノン』と同じくらい高い。
つまり、大体180cmくらい。
これは厳密には
あくまで
鉄球の『回転エネルギー』と『間桐の魔術』の融合体なので、スタンド使い以外の人間であっても触れるし視認できる。
その重量は『7421.3グラム』
7400グラムは慎二の体重の20%の水分。
残りの21.3グラムは『魂の質量』である。
痩せ細った聖者の身体に、機械仕掛けの甲虫の頭部という、グロテスクな外見をしている。
だが人体の『水』と黄金に輝く『エネルギー』によって構成されている為、そのビジョンは清流の様に透き通っている。
間桐家の魔術属性は『水』
生命と変化の象徴とされ、何かを『変質』させる魔術と相性がいい。
魔術特性は『吸収』
成果が必ず自分の体に返る。
なので呪詛には適さない。
人間は体内の水分の『20%』以上を失うと必ず死亡する為、このビジョンは『
【ステータス】
破壊力 - B
スピード - A
射程距離 - E
持続力 - E
精密動作性 - C
成長性 - E
名前の由来は『ザ・ビートルズ』の旧名。
「ロング・ジョン&シルヴァー・ビートルズ」
ラッシュ時の掛け声は『オラオラオラオラ』
◆
目が覚めた。
ほんのチョッピリだけ、寝ていた。
………なぜ、ここで寝ていたのだろう?
頭が痛い。
身体中が痛い。
全身に剣が刺さっているみたいだ。
「はッ……そうだ、慎二ッ!」
痛みで逆に頭が冴えてきた。
状況を確認しなければならない。
洞窟の先。
闇の奥。
『ドカーン』とか『ドゴーン』とか。
とんでもない音が聞こえる。
おそらく『遠坂』と……えっ、と………
!
そうだ、『ライダー』が、いる。
『遠坂とライダー』が戦っている。
戦っている……?
一体『誰』と……?
「っ…ぐ……、お……思い出せ…バカヤロウ…ッ」
バカヤロウ。
俺は、一体、何のために、ここに来た…?
忘れるな。
決して、忘れるな。
あの日の『誓い』を忘れるな。
あの日の『覚悟』を忘れるな。
………あれ、俺はまず、『誰』を最初に……?
「…ッ!そうだ、慎二ッ!何処だッ!?」
ノイズがうるさい。
頭の中に『砂嵐』がある。
『ザーザー』『ピーピー』うるさくって仕方ない。
視界が割れている。
一瞬でも気を抜けば、視界が割れて前が見えない。
嗅覚がない。
なんの臭いも感じない。
鼻で呼吸しているのに、鼻の感覚がない。
壊れている。
俺の身体は『
それでも、俺は生きている。
生きているのならば『使命』を果たせ。
「何処だァーーッ!!返事をしろォーーッ!!!」
急に叫んだから、喉が痛い。
やっぱり痛い。
全身が痛い。
けれども、歩ける。
俺には脚がある。
歩く事ができる。
まだ、戦える。
……………?
一体、誰と………?
「慎二ィーーーッ!ど…………ハッ!?」
見えた。
斃れ伏す人影。
気づかなかった。
結構、近くにいたのに。
俺は、マヌケな事に、ずっと遠くを見ていた。
こんなにも、近くにいたのに。
「慎二」
斃れ伏すのは、慎二だ。
思い出した。
俺の仲間。
俺の友達。
俺の親友。
俺の大切な人の『兄貴』だ。
斃れている。
流血はない。
外傷もない。
骨折とかアザとかもない。
けれど、斃れている。
なぜなら───────
「ぇ………み…や………か……?……」
「ああ、俺だよ……ここにいる」
声をかける。
けれど、もう聴こえていないようだ。
眼は虚ろ。
光がない。
肌は枯れ木のように。
髪に光沢はない。
目は窪み、頬は痩せ、肌に生気もない。
「……ゃ……さ、…と……ぃ………け…………」
慎二は死ぬ。
もうすぐ死ぬ。
助からない。
もう絶対に助からない。
治療はできない。
俺には見える。
黒いチリの様な『ナニか』が、漏れている。
きっと、それは『生命力』なのだろう。
もうすぐ、慎二は死ぬ。
志半ばで。
もう手遅れだ。
だったら………………
「桜は必ず助ける」
たったの、それだけ。
本当は、もっと、言いたい事があった。
けれど、時間がない。
ならば、せめて『安心』できるように。
「…………………………ぃ……………け………」
慎二が振り絞った最期の願い。
俺は、それを叶えるべく、歩き出す。
振り返らない。
でも、必ず連れて帰る。
『桜』と一緒に連れて帰る。
そうだ。
俺は『桜』の為に、ここまで来た。
忘れかけていた、俺の『使命』
それを、思い出させてくれた。
ありがとう。
本当に、それしか言葉が見つからない。
必ず、俺はお前の願いを叶える。
お前が、安心して眠れるように。
だから、ここで待っていてくれ。
◆
スタンド名──『
名前─────『間桐慎二』(
作中の小ネタやサブタイトルの元ネタについて解説は必要?
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どちらも必要。
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小ネタだけ必要。
-
サブタイトルのみ必要。
-
どちらも必要なし。