Fate/STEEL BALL RUN【完結】   作:石田たつを

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#68 リヴ・フォーエバー:OUTRO

意識が点滅する。

 

関節が硬い。

 

手足を曲げると痛い。

 

酸素が薄い。

 

呼吸が苦しい。

 

失っていく。

 

行こう。

 

それでも行こう。

 

『歯車』を回す。

 

最後の投影。

 

俺が知り得る中で最強の剣。

 

それは絶対の終わり。

 

俺は。

 

使えば、絶対に戻れない。

 

『歯車』が弾け飛ぶ。

 

そうなると、どうなる?

 

きっと、死ぬ。

 

もう、誰も守ってくれない。

 

代償を、払わなくてはならない。

 

だが、他に方法がない。

 

桜。

 

慎二。

 

俺は。

 

おまえとの、約束を。

 

おまえとの、約束も。

 

必ず、守るよ。

 

だから、手に剣を。

 

 

  は、  もしない  

             身体

 

最後

       と、   

               影   

 

 

「ううん、シロウは死なないよ」

 

「─────────────」

 

それは。

 

誰かの声。

 

いや、誰かじゃあない。

 

俺の、大切な、家族の声。

 

「ね、シロウは、生きたい?まだ生きていたい?」

 

よせ。

 

やめろ。

 

わかる。

 

判ってしまった。

 

生きたい。

 

心の底から生きたい。

 

でも、俺が、生きていられるのなら。

 

それは。

 

誰かが、代償を支払うということだ。

 

「わたしは、シロウにこれからを生きてほしい」

 

何を言ってるんだ、ばか。

 

いいから戻れ。

 

帰ってこれなくなる。

 

「じゃあ、奇跡を見せてあげるね」

 

いい。

 

そんなの見なくていい。

 

そんなのは、奇跡なんかじゃない。

 

おまえがいなくちゃ。

 

みんなが、いなくちゃ。

 

「じゃあね、シロウと兄妹で、よかった」

 

イリヤ。

 

行くな。

 

犠牲にできない。

 

一緒に暮らすんだ。

 

「言ったよね、兄貴は妹を守るもんなんだって……ええ、わたしはお姉ちゃんだもん、なら、弟を守らなくっちゃあね」

 

イリヤ。

 

イリヤスフィール。

 

それが、名前。

 

俺の、妹。

 

行かないでくれ。

 

その門を、閉めないでくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空が、見える。

ほんの少し、腕を伸ばすだけで、空へ抜ける。

けど、何も残っていない。

この身体には、もう何も。

沈んでいく。

救ってくれた命が。

 

悔しい。

冷たい。

それでも、手を伸ばす。

 

突然、光が差す。

遠くから、一筋の光が。

 

『だいじょうぶ、神サマって、きっといるんだよ』

 

あぁ。

そうか。

そうかもな。

 

誰かが、俺に手を差し伸べている。

一体、誰なのか……?

わからない。

掌の真ん中に、ポッカリと穴が開いている。

 

けれど、その手は力強く、俺を引っ張る。

柔らかい大気は肌に、温かい陽が。

 

この手には、果てのない青空が。

 

今にも落ちてきそうな、青空が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、目が覚める。

窓からは、朝の陽射し。

布団の誘惑を断ち切り、もそもそと這い出る。

 

居間に行くと、コーヒーの匂いがした。

 

サイフォンの音。

コポポポッて、音。

それが、やけに耳心地が良い。

 

ここで欠伸を一つ。

身体が勝手にブルブルッと。

 

「おはようございます、先輩」

 

「あァおはァアア〜よォ……………桜」

 

「……………ぷっ……っはは…なんですか、それ」

 

あぁ、俺もそう思う。

なんだ今のは。

俺って、こんなにマヌケな声出せたのか。

知りたくなかったぜ。

 

「今日はお休みですよね?」

 

「うん……そうだな、どっか出かけるか」

 

俺は今、『消防士(ファイアファイター)』として働いている。

高校を出て、消防学校を卒業してから、一年。

まだピッカピカの新米消防士。

 

未だ慣れない事も多く、しんどい時もある。

けれど、この仕事は好きだ。

 

ずっと『進路』で迷っていた。

自衛官、警官、消防士の三つ。

だから、桜に決めてもらう事にした。

 

俺が『どれがいいかな?』って聞くと………

桜は『消防士がいい』って言った。

 

『誰かと戦うよりも、誰かを救う方がいい』

 

たしかに。

消防士は火事とか災害と戦うけど。

その本質は、誰かを救う為の行動。

自衛官とか警官だって、誰かを救ってるけど。

直接的に命を助けるのは『医者と消防士』くらい、なんじゃないかな。

 

でも、今日は休みだ。

非番じゃあない。

完全なる休み。

 

だから、今日は桜と出かけよう。

 

「………あれ?」

 

テーブルの上に、コーヒーを置いてもらった。

だから、フーフーしながら飲んでいたのだが………

テーブルの端っこに、何やら見慣れない物がある。

 

「…………一眼レフカメラ?」

 

「はい!間桐の屋敷を売り払う時に倉庫の中から出土したんですけど、ほぼ新品同然だったみたいで」

 

ほぉ。

そうだったのか。

それにしても立派なカメラだ。

10万くらいはしそうだ。

 

「だから、買っちゃいました」

 

「え?」

 

『どジャアァぁぁぁ〜〜〜ン』と、桜が言いながら、何かを取り出す。

なんだそりゃ?ヘンな効果音。

 

「……おぉ、アルバムか」

 

そう、取り出したのは『アルバム』だった。

色は『赤色』で、質感は高級感がある。

そして結構な大きさだ。

レコード盤よりも少しデカいくらいだ。

 

「これから、出かけた場所で写真を撮ります」

 

「全部、思い出にする為に」

 

えっへん、と胸を張る桜。

写真か。

いいね。

いっぱい撮ろう。

これから、色んな景色を撮ろう。

 

 

 

 

深夜。

布団の中。

桜を抱きしめてウトウトしていると、ふと、小さく啜り泣く声が、胸元から聞こえてきた。

 

「大丈夫か」

 

声をかけると、目尻に涙を溜めた桜が、俺を見上げる。

 

「『夢』を見てました……夢を……兄さんがいて、セイバーさんがいて、ライダーさんがいて、イリヤちゃんがいて……」

 

「…………………………………」

 

「そして『倫敦(ロンドン)』から帰ってきた姉さんを、みんなで歓迎会するんです……でも、途中からお酒を持った藤村先生が乱入して、姉さんが急に猫被って、それを見た兄さんが『オゲゲッ』って顔をして、イリヤちゃんはニヤニヤしながら先輩とセイバーさんをからかって、ライダーさんはマイペースに一発ギャグとかやってて、セイバーさんはちゃっかり一番ご飯を食べてて………」

 

桜が語る夢の内容。

それは『理想郷』だ。

そう、理想………………

 

俺は、自分の選択に『後悔』はない。

けれど、

 

「あっ」

 

抱きしめる。

目一杯、力強く、抱きしめる。

 

俺は『後悔』していない。

本当だ。

これからも、俺は桜を守り続ける。

この世のあらゆる残酷さ』から。

 

けれど。

そう、なんだけど───────

 

もし。

 

桜が語った『理想郷』が、もし、叶うのならば──

 

ほんの一瞬だけ、そう思ってしまった。

 

 

 

 

世界は無数に存在する。

鏡写しの万華鏡。

それに終わりはない。

大地には果てがある。

海には果てがある。

空には果てがある。

 

では、宇宙に果てはあるのか…?

 

『大統領』が言った。

『此処』が『基本』の世界だと。

確かに、そうかもしれない。

隣の世界。

その隣の世界。

その隣、その隣、その隣、その隣。

隣り合う数万の世界、数億の世界。

そこに『遺体』は存在しない。

けれど、数兆なら、数京なら…?

 

あるのかもしれない。

 

神は『(ダイス)』を振る。

 

その『出目』は、常に変わりゆく。

 

多面体は、数を増やすと『球体』に近くなる。

 

ならば『真球』に近い『(ダイス)』は…………

 

どんな『出目』を出すのだろう…?

 

さぁ、『賽』は投げられた。

 

人は『旅』をする生き物だ。

 

その『旅路』に果てはない。

 

その『黄金の旅路』に終わりはない。

 

To Be continued




『ノーマル』エンド、完結しました。
しかし、ここで終わりではありません。
『トゥルー』エンドがあります。

けれど、作者は『ノーマル』エンドとはいえ………
最後まで、書きました。

すごい、頑張りました。たっぷり。

作中の小ネタやサブタイトルの元ネタについて解説は必要?

  • どちらも必要。
  • 小ネタだけ必要。
  • サブタイトルのみ必要。
  • どちらも必要なし。
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