Fate/STEEL BALL RUN【完結】 作:石田たつを
旋風じみた一閃。
音速を超越する大剣。
灰色の異形の荒れ狂う獣の様な一撃。
繰り出される剣戟の衝撃で大地が震える。
その余波はまるで荒野の
いや、それ以上は確実………その何百倍だ……
とっくに切り捨てたと思っていた生存本能が、今すぐにでも『ここから離れろ』と何度も何度も頭の中で警鐘を鳴らしている…!
「あは、やっぱり二匹潰せるみたいね」
それなのに一体なんだってんだ……あのガキ…ッ…
扇風機浴びてるみてーに涼しそうな顔しやがって…
クソォ……『異常』だ…ッ!
今もあの鎧の少女とライダーの2人がかりで、前衛と後衛に分かれて戦っているが……
イヤでも
オイオイオイオイオイ……ッ!!
かなり……かなりまずいぞ…ッ
「▇▇▇▇▆▆▆▅▂ーーーー!!」
咆哮……それは轟音。
ただ
「Vier Stil Erschiesung……!」
あれは魔力によって構成された弾丸!
おそらく遠坂の魔術だ……
ぼくなんかよりよっぽど洗練されている……
だがあれ…これっぽっちも効いてないみたいだ…
ハッ!そうだ……このままブルッちまいながら何も出来ずに死ぬなんてまっぴらごめんだッ!
把握しなくては……自分の今の状況を……!
喉がヒリつく。声が震える。泣きそうだ。
そんなことなど気にしていられない。
「協約その②……『ヤバイ奴は袋叩き』だッ」
「手短に言うわよ」
遠坂はこんな状況下でも冷静に対応してくる。
曰く…あの騎士の少女は『セイバー』。
その
ここまでの事実だけでも既におったまげだ。
そしてあの
その
『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』
アインツベルン……クソジジイから聞いたことあるぜ、確かこの『冬木』の地で聖杯戦争の儀式を完成させる一端を担った『魔術師』の家系…
そして、この戦争の最初期から懲りずに聖杯を狙ってる古株!
だからなんだって話ではあるんだがな……
それにしても…依然変わりなく不利な状況だ…
遠坂の攻撃魔術も、残り2発の蟲の弾丸も、クソガキにもデカブツにも届きやしない。
きっと『無駄撃ち』になる。
隣で瞳孔をかっ開いて固まっちまっている衛宮なんかも期待できやしない……
今も刻一刻とセイバーは追い詰められているし…
馬に被害が及ばないように真っ先に霊体化させてしまったライダーは、ただでさえ普通にダメージを与えられなくて決め手になれないのに、更に機動力まで失ってしまっている。
今もチマチマえげつない速度の鉄球で攻撃しているが、岩塊みてーな大剣で弾かれるか、ほんのちょっぴりだけ怯ませるくらいの効果しかない。
それだけでもかなりスゴイと思うけどね。
クソのデタラメ野郎が。
どうする…?
一体どうすればいい…?
このままじゃあ、ジワジワと嬲り殺しにされるぞ!
交わる剣戟が加速していく……ただでさえ見えないその剣先が描く『線』が、光を放ちながら空間すら斬り刻んでいく…ッ!
刹那。
鮮血が舞った。
目にかかりそうだったので、手で防いだ。
血だ。新鮮で真っ赤だ。
誰の血?
どうしてか…呼吸が荒くなる。
『ハァーー』『ハァーー』『ハァーー』
マヌケな音だ。排水溝みたいで。
嫌な予感がする。
それでも確かめなければならない。
!!?
「………なんで?」
真っ二つになった少年。見知った顔だ。
不思議と震えが止まった。
あまりの
一瞬の静寂。
理解してしまった。
うおあああああああああああああああ!!!!!!
「おまえ何やってるんだ衛宮士郎ォォォーーッ!」
なぜ!?なぜ!?なぜなんだ!?
理解不能だッ!!
ワケが分からないぞッ!?
分からない……本当に……
「……もういい。こんなの、つまんない」
身体中を突き刺すような死の気配が…突如霧散する。
あの暴力の化身が消えた。
あのガキが、バーサーカーを呼び戻したのか……
そして能面のような顔で、踵を返す。
きっと、ぼくは冷静だ。
頭の中はクリアだし……
今もこうして『思考』を放棄していない。
しかしなぜだろうか?
勝手に口が開いてしまう…
「待ちやがれェェ〜〜!きさまァァァァ〜〜!」
無駄だ。
こんな事を叫んだって無駄だ。
「復讐してやるぅうう〜〜〜ッ!許さねぇぇぇ!」
無駄だ。
こんな宣言…意味が無い。
「こっち来いよォオオ!?ブッ殺してやるッ!!」
無駄だ。
万が一ヤる気になったらぼくが犬死にするだけだ。
そう、無駄なんだ……
死んでしまった者は……二度と元には戻らない。
足音が遠ざかって行く。眼中にないみたいだ。
血溜まりが目に映る。
甲高い声が聴こえる…遠坂なのか…?
今はなにをする気にもなれない…
辺りを見回すことだって……
「おい……ちょっと待てッ!」
……?
なんだ…?ライダーが叫んでいる…
今更なんだってんだろうか……………
衛宮士郎は
「コイツ……
…………………………………………はァ?
◆
聖堂教会。
それはカトリックの裏組織。
キリスト教の狂信者達が教義に反する異端を認めないだけでなく排そうとして立ち上げた集団で、全ての異端を消し去り、人の手に余る神秘を正しく管理することを職務とする。
組織規模はかなり大きく…
主の御名の下、魔術を許さず、異端を許さず、神秘を独占する。
人類という種の知識の全てを管理しようと躍起になった者たち。
『ディエゴ・スティール』は…
聖堂教会の
ここで彼の『過去』について話しておこう……
生まれはイギリスの片田舎『ウインドナイツ』
名前の由来はサンティアゴ…聖ヤコブにちなむ名。
赤ん坊の頃に謎の事故で両親を失い…神父に名付けられ、孤児院で育った。
両親の唯一の『遺品』である『ハンカチ』には、母親の名前と思われる…『ルーシー・スティール』と刺繍がされていた。
13歳から既に牧童として働き始めた彼はある日、夜の牧場で残業をしている最中…『死徒』と呼ばれる存在と遭遇する事になる。
彼が遭遇したのは
意思はあるものの、明確な思考はできない、生前の姿を擬態している死者。
夜の牧場に何処からか迷い込んだ『世界の異物』。
獰猛に生者に襲いかかる悪鬼から、機転を効かして命からがら逃げ仰た彼は、偶然近隣を調査していた
彼は確信していた……
『謎の事故』はあまりにも不可解な所があった。
『死徒』が両親を殺した原因と直感的に理解した。
そしてディエゴは成長すると共に
こう自分に誓いを立てた。
『両親を殺した死徒に復讐してやると!』
そして未だに世界の何処かで何の罪もない人間の血を啜っている吸血鬼ども!
ヤツらは死後の尊厳と安寧さえも踏み躙る悪鬼だ!
『どいつもこいつも!有罪だ!』
その後、自らを救助した『アントニオ』という代行者に師事し、血の滲むような研鑽を積み重ね、数多の銀の黒鍵を投げ、とうとうその『死徒』の居場所を突き止めた。
Ⅳ階梯。夜属。
その名は『ストレイツォ』。
大勢の無辜の民を血祭りにあげ、迫り来る代行者たちを返り討ちにし、いよいよのっぴきならない状況になれば即アメリカに逃亡する狡猾さ……
ディエゴは長年の調査と執念によって、彼を打ち倒し、悲願を果たした。
その数年後………
トップクラスの代行者として頭角を現していた彼に
本部から直々にとある『任務』が与えられる。
ニューヨーク市マンハッタン区…トリニティ教会。
そこに派遣された彼は、とある『聖遺物』を管理することになった。