Fate/STEEL BALL RUN【完結】 作:石田たつを
その銀の少女は刮目する。
光の中で。
どこまでも眩しい光の中で。
そこは、海だった。
どこまでも透き通るような海。
そして眩しい陽の光。
その銀の少女は水面に立っていた。
『とある男』の目の前に立っていた。
それは、『もう二度とはない』邂逅。
「そこで、私は言っておく」
「求めなさい。そうすれば、与えられる」
「探しなさい。そうすれば、見つかる。」
「門を叩きなさい。そうすれば、開かれる。」
「誰でも求める者は受け、探す者は見つけ、叩く者には開かれる」
その語りは、まさに聖言。
けれど銀の少女は、少し俯く。
そして独り言のように呟いた。
「よろしいのでしょうか?」
それは、赦しを乞う問いではない。
ただ、彼女は数多の悲劇を知っている。
数多の惨劇を知っている。
どれだけ祈っても尚、死んだ者。
傷ついた者。
救われなかった者。
星の数ほど、救われなかった人々がいる。
砂漠の砂粒よりも、死んでいった人々がいる。
銀の少女は、泣いていた。
それでも自分
『奇跡』を賜っていいのか、と。
『目の前の男』は、少し考え込んだ。
そうして、少ししてから、こう言った。
「私が、全てを背負おう」
「……………………え?」
「報われぬ者たちがいた、救えぬ者もいた、主が罰した者もいた、されど、それがあなたが救われるべきではない、という理由にはならない」
「……………いいのですか」
「全て真実なこと、全て尊いこと、全て正しいこと、全て清いこと、全て愛すべきこと、また、徳や称賛に値することがあれば、それを心に留めなさい、そうするのなら、私はあなたの全てを許そう」
その言葉には、どこまでも慈愛が籠っていた。
「わたしは、シロウと一緒でも、いいの…?」
銀の少女は泣いている。
もう繕う事すらできない。
それが『不敬』であるとわかっているのに。
彼女の涙は止まらない。
「兄妹愛をもって互いに愛し合いなさい」
それでも、『男』は微笑んで、少女の頭を撫でた。
「さぁ、あなたが次に『
「シロウと共に、家に帰ります」
もう少女は泣いていない。
ただ、真っ直ぐと前を向く。
その目を見て、『男』は眩しそうに目を細めた。
「よろしい」
どこまでも透き通る綺麗な海だ。
『男』はボロ布を脱ぎ、海に潜った。
途端、眩しい光が少女の目の前を覆った。
◆
空が、見える。
ほんの少し、腕を伸ばすだけで、空へ抜ける。
けど、何も残っていない。
この身体には、もう何も。
沈んでいく。
救ってくれた命が。
悔しい。
冷たい。
それでも、手を伸ばす。
突然、光が差す。
遠くから、一筋の光が。
『さぁ、手を』
目の前には『男』が、手を差し伸べている。
その微笑みには、どこまでも慈愛が。
一体、誰なのか……?
わからない。
掌の真ん中には、ポッカリと穴が開いている。
けれど、その手は力強く、俺を引っ張る。
柔らかい大気は肌に、温かい陽が。
この手には、果てのない青空が。
今にも落ちてきそうな、青空が。
『汝に光あれ』
最後に、そんな言葉が聴こえた。
◆
『お花見』の準備は意外と大変だった。
バスケットにローストビーフサンドイッチを詰め、スーパーで買ってきた『グラッパ』も用意する。
未成年が酒呑んでいいのかって……?
まぁ、いいんじゃない?
たまにはサ。
それに今日は『お客さん』も来る。
遥々『
大変ご苦労さんだ。
本当なら藤村も来る予定だったが、なんかダメだったらしい。
まぁ、ある意味ラッキーだ。
藤村の前じゃあ酒呑めねーからね。
お花見の場所は未遠川の近くでやるらしい。
すぐに人がごった返すから、先に衛宮たちには場所取りしてもらっている。
さて、そろそろ時間だ。
玄関に置いてあった『杖』を持ち、
ここも、じきに売り払う予定だ。
正直ぼくと桜にはデカすぎるし、魔術道具やら海外とかに持っているクソいらねえ土地も、ぼくらには過ぎたモノだ。
ただ、倉庫にあった『一眼レフカメラ』は貰っていくぜ。
誰のかは知らんが。
クソ親父でもクソ爺の趣味ではなさそうだ。
もしかしたら、ぼくの『叔父』のモノかも…?
今となっては、真実は闇の中だ。
ぼくには決して到達する事はできない。
朝から深山町を歩くのは久々だ。
いつもは昼まで寝てパソコンをいじってるから。
でも、たまにはこーいうのも悪くはない。
河川敷に着いた。
遠くにはレジャーシート。
そして衛宮と桜が座っている。
『お客さん』はまだみたいだ。
「サンドイッチのデリバリーだ」
「あっ!兄さんッ」
それにしても、いい天気だ。
青空。
春のそよ風。
陽の光は眩しくて…………
桜の
「そうだ、慎二、カメラ持ってきたか?」
「……………持ってきたけど、なに?」
「これ」
衛宮が懐から何かを取り出す。
それは……『青色』のアルバムだった。
それも無駄にデカいアルバム。
レコード盤よりも大きい。
「これから『思い出』を写真に撮ろうって」
はぁ。そっすか。
まぁ、いいんじゃない?
◆
宴もたけなわ。
途中から『お客さん』こと遠坂。
そして衛宮の『妹兼姉』とかいう…倒錯的関係性の少女、『イリヤスフィール』も合流。
みんなで色々な話をした。
これからの進路とか。
間桐邸どうすんの?とか。
イリヤの身体は大丈夫っすか?(なんか、よくわからんけど大丈夫らしい)とか。
夏休みには『ジワタネホ』行こう、とか。
色々な話をした。
だが、もう夜だ。
衛宮は顔を真っ赤にしてグロッキー。
遠坂は笑い上戸だったんで、暴れまくり。
チッ……ノリで酒持ってくんじゃあなかった。
けど桜は意外と酒に強かった。
あとイリヤも強かった。←コイツはマジで何で?
マジすごいぜ。
アメリカ人かと思った。
夜風に当たりながら、酔いを醒ます。
それにしても、はしゃぎすぎた。
ぼくらしくない。
いや、どうなんだろう。
これもまた、ぼくなのかな。
夜空に満月が。
大きな満月がある。
だからふと、あの『旅』を思い出した。
◆
これは『再生の物語』だ。
文字通り
その、いきさつ……………
そして思い返せば、あの『
バーサーカーと『戦い』
ランサーと『戦い』
キャスターと『戦い』
桜と『戦い』
自分自身と『戦った』
この『戦い』のくり返しだった。
そして、僕たちはその全てに『打ち勝った』のだ。
この聖杯戦争による被害者は膨大だ。
新都だけでなく深山町にも被害者が多数。
人的被害もあるし、経済的ダメージも。
その経済的ダメージも含めると、一体何人の人間が傷ついたのだろうか…?
僕には想像もできない。
そして、冬木教会の『言峰綺礼』の死亡が……公に発表された時……
意外にも多くの人々が葬儀に参列した。
あんなでも町の人たちからは慕われていたらしい。
後釜の神父は、なんだか人が良さそうなおっさん。
雰囲気からして温厚そうだった。
まぁ、だからと言ってどうという事はないがね。
脳裏には、数々の思い出が。
鮮明に焼きついている。
けれど、それもいつか忘れてしまうのだろうか…?
だとするなら、それはとても悲しい事だ。
だから、ここから先の思い出は………
全て『写真』に撮っておこう。
あの『青いアルバム』にしまって。
いつのまにか、僕の手には『鉄球』が。
ああ、悔しい。
僕は、泣くのなんて、イヤだ。
カッコ悪いから。
けれど、どうしても…………………
「う、うう……」
だが、それも今日で終わりにしよう。
僕たちは、勝ったんだ。
あの戦いに勝ったんだ。
脳裏に浮かぶは、ぼくの相棒。
そして、衛宮の………………
だから、まぁ、一応『ご報告』しようかな────
『ライダー!セイバー!終わったよ………』
◆
◆
人々は『風船』と同じだ。
出会う『風』次第で、行き先はクルクル変わる。
もし、あなたが自分を『この世のカス』だと思っているのなら。
それは、まだ『風』に出会えていないだけ…………
なのかもしれない。
完結ゥゥーーーーッ!!
あとがき書くのでよかったら見てね。
元ネタ解説とか小ネタは感想欄で質問してくれたら答えます。
ホントはヒドゥン・トラックに書こうと思ったけど、悪りい、やっぱつれーわ。
それ以外に質問があったら答えるので、気長に待っててね。