Fate/STEEL BALL RUN【完結】 作:石田たつを
ニューヨーク市マンハッタン区トリニティ教会。
その裏門、墓地裏から地下に進む。
その先にあるのは分厚い鋼鉄の『シェルター』
一体どんな『
あまりにも頑丈なそれは、単純な鋼鉄の檻ではなく、幾重にも重ねられた『魔術的』な
そこに一人の男が佇んでいる。
『ディエゴ・スティール』……
聖堂教会から『派遣』されたディエゴはまず、この教会に所属しているあらゆる教会員・信徒との接触を禁じられた。
その指示は些か不可解であったが、仕方ないので近くでアパートを借りて、表向きは考古学者として、恐竜博物館で働いて身銭を稼ぐことにした。
派遣されてから数日後、手紙が投函されていた。
『指令』は『手紙』に書かれていた。
その内容は…『
そして地下への行き方、読んだ後はこの手紙を燃やすようにと書かれていた。
ディエゴはトリニティ教会に教会籍を移していないため、此処で
毎週…誰にもバレないように、地下に入ることなど容易いことであった。
『死徒』の抹殺を生き甲斐とするこの男にとってこの任務は、まさに『
これは『第八秘蹟会』の管轄なのでは…?
常にそう思っていたし、埋葬機関にまでは及ばないにしても、代行者の中でも上位に位置するほどの実力があると自負していた彼にとって、ただ地下で『祈る』(尤も…これは方便だろうが)だけというのは、まるで自らの『復讐の誓い』を侮辱されたような気分であった。
だからといって任務は放棄できない。
任務は『絶対』だ。そこに私情は不必要である。
ある日……
いつものように地下に行くと……
それは異常である。
あのシェルターは少なくとも自分ではどう足掻いても、どれだけ攻撃したとしても決して破壊など出来ないし、それはおそらく埋葬機関の者でも不可能であろう…そう確信できるほどの頑丈さだった……
(彼は埋葬機関の誰とも会ったことはなかったが)
誰かが鍵とかで『
しかし、地下に来た時から何度も確認していたが、そもそも鍵穴らしき箇所などなかった。
不思議と
恐る恐る開いたシェルターを覗くと……
そこにはミイラの様な『
両足首には『穴』が空いている。
頭部には枯れた『
なぜか冷や汗が止まらない。
呼吸は不規則に荒くなっていく。
喉が渇く。頭痛がする。吐き気もだ。
これは…ッ…!
とても口には出せない…偉大なる御方の…!
彼は震えた。
産まれたての子鹿のように。
目の前の『聖遺物』は……
決してみだりに見てはならない。
決してみだりに口にしてはならない。
そう、直感的に理解してしまった。
『聖遺物』とは…
カトリック教会において、イエス・キリストや聖母マリアの遺品、キリストの受難にかかわるもの、また諸聖人の遺骸や遺品をいう。
聖堂教会が擁する『第八秘蹟会』は、それらの発見と回収・管理を目的としている。
聖遺物には
例えば『聖マルティヌスの聖骸布』は、ほぼ全ての魔術を無効化・封印することができる。
(ただし
ディエゴの戦闘スタイルは
徹底した『遠距離攻撃』だ。
主な装備は…
コルト・シングルアクション・アーミー
(通称:ピースメーカー)
これに、『
彼はあまり『概念武装』に頓着がない。
それが利用できる価値があるのであれば、徹底的に使い潰すし、戦いの最中で破損しても仕方のないことだと思っている。
故に彼は、『聖遺物』をどこか『道具』のように思っていた。
自分たちにない『
しかし目の前の
見惚れてしまう……偉大さを感じる……
聖なる光すら幻視してしまう程だ。
しばらくして…震えが収まる頃…
彼は気づいてしまった。
胸から沸き上がるのは、憤怒。
憎しみといってもいい。
ぐちゃぐちゃにミキサーされた感情によって、今すぐにでも叫び出してしまいたくなった。
ディエゴ・スティールの任務…いや、『使命』は…
『
そして今!その一部を何者かが持ち去ったのだ…
この失態がバレてしまえば、おそらく自分は聖堂教会によって処刑され『磔刑』になる。
そうなれば二度と『死徒』を殺せない。
例えそうならなかったとしても、それはそれとして、こんな不敬は絶対に許してはならない。
今やらなければならない事は、1秒でも早く遺体を奪い返すこと。
そしてその『原因』を突き止め、聖堂教会に報告し、『事後承諾』してもらうことだ。
彼はシェルターの扉を閉め、立ち去った。
そう誓って……………
◆
遺体は『
この事実を知っている者は少ない。
若き代行者は勘違いしていた。
そのシェルターは
それが魔のモノであれば特に。
そういう風に作られている。
製造から80年後………
発見した聖堂教会によって改修されたからだ。
これは『奇跡』による現象だ。
奇跡とは、人間の力だとか自然の法則だとか、そんなものを超越するから奇跡なのである。
千年王国さえも約束する力。
1891年から111年間封印されていた力。
常世全ての魔を退ける力。
かの二七祖にすら届きうる力。
それは遺体の存在を知る…聖堂教会のごく一部の人間でさえも知らない。