CLANNAD ~IF~   作:皆笠

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01 渚編

渚~坂の下の別れ~をお供にどうぞ

 

 

「渚ぁっ」

 

いつだって温かい渚の手は信じられないくらいに冷えきっていて、俺を驚かせた。同時にそれは嫌な予感へと変わって、その予感はすぐに的中した。

赤子の産声が聞こえる様な気がするが、あまり気にならなかった。

ただ、俺は高校時代に失い、取り戻した色がまた失われていくのを感じていた。

 

ーあの日、渚は死んだー

 

ーその代わりに、汐が産まれたー

 

ー汐はとにかく渚に似ていてー

 

ー必然的に渚のことを思い出させたー

 

ー分かってるー

 

ー分かってるさー

 

ー俺は後悔なんてしちゃいけないのをー

 

ー分かってるんだー

 

ーでもー

 

ーソイツは俺を苦しめ続けたー

 

ー俺の中の時間を止め続けたー

 

ー俺の時間はあの日に終わりー

 

ー今あるのはただの蛇足だー

 

ー渚のいない世界ー

 

ーそんなものに意味はないー

 

俺はただ生活費を稼ぐために、以前やっていた電気工の仕事を再開した。全てを忘れたくて休みの日も仕事を大量に受けた。他の人の仕事だって代わりにやった。心配されようがお構い無しでただただ働き続けた。風邪でも俺は働いた、働き、働きまくった。

 

一年に何回か春原は俺のところに来る。

渚が亡くなってから、アイツは俺を悲しい目で見る様になっていた

だが、前来た時、ついに俺はアイツに殴られた。

「渚ちゃんがいなくなって寂しいのは分かるよ。でもさ、もっと自分を大事にしろよっ汐ちゃんはどうなるのさっいつまでそうやってるつもりなんだよっ」

俺には、殴り返す気力さえ無かった。

「ぐっ」

春原は殴るのを止め、俺を睨み付けた。

「岡崎、どうしてやり返してこないんだよっ」

春原はその苛立ちを床を殴ることによって解消しようとする。

俺は、それを呆然と見ていることしかしなかった。

 

智代や藤林姉妹、有紀寧、ことみが訪ねてきたこともあった。

アイツらも、俺を悲しそうな目で見た。

だが、構わなかった。

 

おっさんや早苗さんはよく訪ねてきた。

二人は、その二人は俺を悲しそうな目では見なかった。俺はそれが逆に辛かった。

たまに汐を連れてきたこともあったが、俺は汐をあまり見ないようにしていた。

 

俺はどうしようもなく、ただただ絶望してしていた。

 

ーそんなとき、俺は夢を見たー

 

闇の中で俺は一人うずくまっていた。

そんな中に一筋の光が差す。

俺がどうにかその光を元を見ると、そこには渚が微笑んでいた。

「渚ぁっ」

俺はただ叫んだ、ただただ叫んだ。

渚は微笑みを崩さず、俺に声をかけた。

「朋也君がなかなか行かせてくれないから来ちゃいました」

 

懐かしい、素直にそう感じた。

 

「朋也君は私が亡くなっちゃったことを後悔してますね」

「あ、ああっ」

「それは嬉しいです。とっても、とっても嬉しいです。でも、だからって汐ちゃんを遠ざけないであげて下さい」

「え?」

「汐ちゃんは私たちの子供なんです。だから遠ざけちゃ、ダメです」

「……」

 

俺は、何も言えなかった。

 

「今までずっと私のことを思ってくれて、ありがとうございました」

 

いつの間にか、俺の両頬には一筋の涙が伝っていた。

 

「私なんかのために、ありがとうございました。私はもういいです。もう十分です。私は幸せでした。だから、今度はそれを汐ちゃんにもあげてください」

 

「渚…」

 

……正直に言うと、すごく悲しかった。

夢だとは分かってはいたけれど、それでも、渚からそんなことを言われるのは辛かった。

でも、俺はそう考えちゃいけないんだよな。思っちゃ、いけないんだよな。

 

「分かったよ、ようやく心の整理がつけた」

 

俺は流れ続ける涙を必死に止めようとして顔をゴシゴシと拭いながら、どうにか言葉にした。

 

「だけどな……」

 

だけど…

だけど俺は…

 

「渚、愛してる。今までも、これからも。隣にいなくたって構わない。それでも、好きだ」

 

俺は、結局涙を止めれなかったが笑顔をどうにか浮かべた。

そこでようやく渚は笑顔を崩した。

渚の頬に一筋の涙が走る。

 

「さよならですね、朋也君」

「ああ」

「あ、最後にひとつ、お願いしても良いですか?」

「ああ」

「私のことは気にせず、新しい恋とかしても良いですよ?杏ちゃんとかなら大歓迎です」

「ぶはっ」

 

なんちゅうことを言い出すんだよ。

 

「さようなら、朋也君」

「ああ、さよなら」

 

昔と同じような、渚が微笑みを浮かべ、俺が苦笑を浮かべていた。それが、とても懐かしく感じた。

さっきの妙な会話で一度止まった涙が出そうになる。……でも、必死に堪えた。

最後くらい、笑顔でいたい。

 

ー周りが白い光に包まれるー

 

ー夢の終わりってわけかー

 

ーなあ、もう良いよな?ー

 

ーもう、泣いても良いよな?ー

 

ーはぁ……ー

 

「うぅ」

日の光が俺の顔を差した。

夢をみてる間、現実でも泣いてたのか頬が濡れていた。

体を起こし、周りを見回してみた。

 

ーその朝、俺の世界に色が戻ったー

久々に朝飯を作っていると、ガチャ、と鍵が開く音がして、どかどかと誰かが入ってくる。

「よぉ、まだ死んでんのか?」

「駄目ですよ、秋男さん。そんなこと言ったら」

おっさんと早苗さんだった。

「久し振り、でもないか」

「おう、二日振りくれえだろ。ってか何で泣いてんだ?」

「ああ、ちょっと泣ける夢でも見たんだよ。渚と話してきた」

「はっはっはっはっはっ、馬鹿かテメエは」

おっさんは遠慮なしに堂々と笑いやがった。

「マジだよ、だから泣いてんだよ」

そこへ、

「朋也さん、もう、大丈夫なんですか?」

と、早苗さんが心配するように聞いてきた。

「ええ、もう大丈夫です」

俺はしっかりとした口調で言った。

「良かった……」

「ま、普通になったのは良いことか」

おっさんと早苗さんが納得した。

 

それから、俺は作った朝飯を食べつつ二人と久々にちゃんとした会話をした。

今までのこと(俺にあまり記憶が残ってないからだ)、俺の観たさっきの夢のこと、そして、汐のこと。

 

おっさんは窓の外が明るくなったことを確認した後、壁掛け式のアナログ時計を見てから、

「んじゃ、そろそろ帰るわ」

と、話した。

「お邪魔しました」

「いつでも来てください、大歓迎ですよ」

俺は二人を見送った。

「ふぅ」

扉が閉まるのを確認し、俺は一息吐く。

ようやく、一人になれた。

俺は色々と頭を回す。

明日からどうしようかな?

 

今まで無理やらせてきたせいか体が重い。

俺はとりあえず睡眠を取ることにした。

 




感想などを頂けたら幸いです。

実はしっかりやったのは数年前だからキャラぶれも激しいかもしれないです。
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