CLANNAD ~IF~   作:皆笠

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時系列メチャクチャかも……
汐誕生は渚卒業一年後、という設定でお願いします


04 智代編

彼女の本気、をお供にどうぞ

 

 

「ん?岡崎じゃないか、おーーい!!」

 

それは渚の夢を見た日から数週間が経過したある日のことだった。凄まじい過労により見てるこっちが不安になるという理由で強制的に停止させられていた(らしい、と言うのも芳野さんに教えてもらったことだからだ)電気工の仕事にも復帰し、前の様に芳野さんに叩かれつつ、日の光を浴びながら仕事をしていると、懐かしい声を聞いた。

 

「久しぶりだな、智代」

俺は軽く下を向いて手を振る。

「余所見するな馬鹿」

直後、芳野さんに叩かれる。むしろ叩かれた衝撃で落ちそうなんすけど、と心の中だけで言う。本当に言ったらもう一発くらうのが見えてるからな。

「まあ、仕方ないか。岡崎、ここは俺に任せて挨拶でもしてこい」

「え?良いんすか?」

「ああ、どうせすぐ終わる」

「すみません」

俺は軽快なリズムで梯子をタタンタタンと降りる。

 

「よお、久しぶりだな、智代」

あえてもう一度挨拶をする。

「岡崎、もう大丈夫なのか?」

「ああ、もう大丈夫だ」

手を開いてアピールまでしてみる。

そして、智代の頭に手を乗せ、撫でてやろうとしたが、それは避けられてしまった。残念だ。

「それより智代、こんなところに何か用でもあったのか?」

「ああ、少し旅に出ていた、さっき帰ってきたばかりなんだ。最初に会った知り合いが岡崎とはな」

気付かなかったが、智代の足元にはそれほど大きくは無いキャリーバッグがひとつ。

「荷物はそれだけか?あと、どのくらい旅に出てたんだよ」

「ああ、必要最低限のものしか持ち歩かないからな。ええと、二年くらいか」

……二年。

「大学出たてでか?」

「ああ、そうだ。よく分かったな」

「そんな難しい計算じゃねえよ。それに四年制の大学に行った、っていうのも単なる予想だしな」

「結果、何も見出だせなかった。確かに旅は新たな発見があるから楽しかった。だが、旅の本来の目的である自分探しは失敗したみたいだ」

智代は肩をすくめる。

 

 

「にしてもよく金がもったな」

「ああ、基本徒歩だから交通面ではお金がかからないが、どうも宿泊費でな……途中で小さい子に貰ったみかんはとても美味しかったことを私は忘れない」

「もういい」

苦労したんだな、智代も。

「それはそれとして、岡崎はたくましくなったんじゃないか?」

「そうか?」

確かに、まさしく無我夢中で仕事ばかりをしていたからな、体力や筋力が付くのも無理はない、かな。

「ああ、そう思う」

そう言いつつ智代は俺の体をペタペタと触ってきた。

「腕も胸も前よりも筋肉がある」

「や、止めろっ」

俺が制止を望むと同時、

「何イチャついてんだ馬鹿。嫁が亡くなったからと言って、そんなにすぐ新しい女を作るのは問題じゃないのか。お前には愛ってやつが無いのか?」

と、スコーンと頭をヘルメットで叩かれつつ芳野さんに言われた。

しみじみと思う、滅茶苦茶痛い、と。それと、既に五年が経過してるので時効なんじゃないですかね。あと、愛が深いからこそ最近まで俺が絶望してたのを芳野さんは知ってるでしょうが。まあ、これも言うのは心の中だけだが。

 

「今日の仕事はこれで以上だ。岡崎、その子、確か智代さん、だったかを送って帰れ」

芳野さんは話を切り替えて俺に命じた。

「はい?でももう一件あったような気がするんすけど」

思わず俺は聞き返す。

「そっちは俺一人でも十分だ。そもそもお前も一人で色々出来るようにはなってるだろうが。ベテランは二人も要らん。それよりも久々の再会だろ、積もる話でもあるんじゃないか?丁度昼だ、奢ってやれ」

「ええ!?」

いや、奢ることは別に苦ではない、むしろ望んでやりたいくらいだ。俺が言ったのは、話の流れの唐突さ加減についてだ。あと、俺はベテランのつもりとか無いんすけど。

「その服は今日、洗濯してこい。汚れが染み付いてるぞ」

「なっ」

俺は焦りつつ自分の服装を見る。……確かに、結構汚いな。

「はあ、分かりましたよ。それじゃあ、お勤めご苦労様でした、お先に失礼します」

ヘルメットや工具などを軽トラックに乗せ、財布を取り出す。

「おう、また明日な」

芳野さんはそう言って車に乗り、去っていった。

 

「なあ、岡崎。どうしてお前は一緒には帰らなかったんだ?」

芳野さんを見送った後、智代は俺にそう聞いてきた。

「智代を送ってけ、だとさ。ほら、昼飯時だし、腹も減ったろ?奢るぞ。ファミレスでも行こうぜ」

俺は智代の荷物の入ったキャリーバッグを代わりに持とうとして、寸前で智代に回収され、男としての見せどころを見事に失敗させた。……流石智代だな。

「岡崎、このくらいのものならば任せるまでもなく自分で持てる」

少しあきれ顔を向けられたので、こっちもあきれ顔を返した。

「んなこと分かってるよ。つーか、俺に持てて智代に持てねえもんなんてねえだろ」

「いや、そうとは限らないよ」

「例えば?」

「……」

智代はサッと虚空を向いた。

「ほらな」

やっぱりねえじゃねえか。

「い、いや、新幹線とか」

あからさまに無理なことを。

「俺は肩に星のマークのある超人かっ!!」

「すまない」

「申し訳なさそうに言うなよ、逆に悲しくなる」

儚き時間が漂うのに耐えかね、俺は一度息を吐いて、それから

「……さ、行くか」

と提案した。

 

俺はハンバーグ定食を注文し、智代は日替わりランチを注文し、料理が来るのを待った。

「なあ、岡崎」

無駄話から本題に入るためだろうか、仕切り直す様に智代は俺の名前を呼んだ。

「どうひた?」

そこで丁度注文した料理が到着し、俺はハンバーグを食いつつ答える。

ん、これは中々旨い。

「いや、とりあえず話をするときは口に物を入れるな」

やや呆れ気味に智代に指摘されちまった、こりゃ失礼。

「んで?」

「ああ、その、岡崎の今後のことだ」

「俺の?」

「そうだ。岡崎、お前はこれからどうするんだ?」

「どうする、とは」

焦れったいのか、智代は頭を大きく掻いた。

「汐ちゃんのことやお前自身のこれからの生活のことだ」

「そうだな……」

すっかり考えてなかった……

そういや、汐とは会ってねえな。

おっさんや早苗さんに預けたまんまだ。

それを言うと、智代はやっぱりあきれた顔で

「岡崎は肝心なところで抜けてるな。そういうところは変わってないみたいだ」

と、懐かしみつつ言った。

いや、俺ってそんなに抜けてたか?

「とりあえず、汐には会っておかねえとな。渚と約束したし」

「渚と約束した?岡崎、何を言ってるんだ。渚さんは亡くなっただろう」

智代は怪訝とした視線を送ってくる。

当然なのは分かるが、あからさま過ぎんのも少し困るな。

「夢で会ったんだよ、そこで色々話した。だからこそ俺は立ち直れたんだ」

「ははっ、おかしな話だな」

「分かってるよ、だけど本当の話だ」

「それこそ分かってる、疑ってる訳ではない」

智代にも飯が届き、いただきます、をしてから食べ始めた。

それが合図となり、この会話はしばしの休息を得ることとなった。

 

「ご馳走さま」

「お粗末様でした」

「確かに岡崎の奢りだが、作ったのは岡崎ではないだろう」

「ま、良いじゃねえか。とりあえず、店出ようぜ」

智代はコクンと頷いた。

 

「そうだ岡崎」

店を出てからすぐ、智代は言った。

何がそうだ、なのかは分からないが、智代のことだ。言い出したら止まんないだろう。

「どうしたんだ?」

「明日、汐ちゃんに会いに行こう」

「は?」

「明日は日曜だ。休みじゃないのか?」

「うちは日曜も仕事あるっちゃあるが……そうだな、ちょっと待っててくれ」

俺は智代から少し離れて未だ操作に慣れない携帯電話を取り出した。

そのまま職場の所長さんに電話を掛ける。

トゥルルル、と言う馴染みある通信音が聞こえた後、ガチャッと鳴った。

『はい、こちら』

「岡崎です、明日って仕事ありましたっけ?」

『ああ、岡崎くんか。えーと……無いね。急遽入ったりしなければ無い予定だよ』

「そうですか、わかりました」

『うん』

通話が終わり、またガチャッと鳴った。

俺は携帯電話を閉じ、智代の元へと戻る。

「今のところは大丈夫らしい」

「そうか、では明日迎えに行こう」

「ああ、わかった」

しっかり忘れないようにしとかないとな。

「それはそれとして岡崎、この後は予定がないんだよな」

「ん?まあな」

「では、私の思い出の場所にでも行かないか?」

あまりの遠出は避けたいところだな。

少し悩んでいると、智代はそれを察したのか、言葉を付け加えた。

「大丈夫だ、徒歩でも行ける」

「……分かった」

 

智代に連れられた先は俺もよく知る桜並木だった。

「ここなのか?」

「ああ。私が転校し、生徒会長となった最大の理由」

「そうか……」

そりゃそうだよな。

俺は確かに智代を生徒会長にする手伝いをしたが、それもそもそもとして智代に目的があったからだろう。

生徒会長になるだけならば、転校する必要なんか無かったのだから。

「……ああ」

あえて深く聞かず、俺たちはしばらく桜を眺めていた。

 

日も暮れてきた頃、俺は智代を送り届け、そのまま寄り道せずに家に帰った。




智代のキャリーの強度は世界一ィィィィ!!

………すみません、深く考えてなかったんですけど、二年も肩身離さず持ち歩いたら普通壊れますよね?
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