シャーロット・ソーヤーは、変人だ。義体を本当の家族のように扱い、時には身を呈してかばったりもする。
「話、聞いてますか?」
まるでプラスチック爆弾のような女だ。舐めると甘いが、有毒である。普段は大人しい癖にスイッチが入ると大爆発する。
「聞いてる聞いてる。」
こいつの仕事は、担当官であると共に義体たちの話を聞くことだ。目的は義体にかかるストレスの軽減や円滑な運用のサポートだ。
「それで、俺にネックレスを買ってこいってのか?」
「はい、聖夜に二人っきりのプレゼント交換。最高の思い出になるでしょう?」
エルザ・デ・シーカ。俺の担当する義体だ。余計なお世話だと突き放してもいいが、既にプレゼントが購入済みとなれば断りにくい。
「それで、どうしてネックレスなんだ。別にイヤリングでもピアスでもいいだろう。」
「イヤリングは、外れやすくて危険です。それにピアスは格闘戦の時に相手に捕まれると怪我をします。」
エルザに贈り物など、したこともない。そもそも、しようと思ったことすらない。
「しかし、贈り物か。」
「…義体との関係は担当官に一任される。そう説明されていますから、私も提案するところまでです。」
エルザはモノだ。自分で考えることもできない人形だ。そうでなければならない。
「どうせ、忘れちまうんだろう?」
義体の死は脳死だ。条件付けや薬剤による負荷が徐々に脳を蝕み、記憶障害や味覚障害を引き起こし、最期はそうやって死んでいく。
「…どうでしょうか。忘れてしまうのか、覚えていてくれるのか。そんなこと、誰にもわからないと思います。」
「希望的観測か。」
義体たちは、担当官を盲愛する。そのように条件付けされている。まるで腹を押すと喋る人形のようだ。
「そうでもなきゃ、やってられませんよ。」
少し疲れた表情で溢すシャーロット。
「それで、俺はどんなのを彼女に渡せばいい。」
「何でもいいんですよ。大事なのは、値段じゃないんですから。」
そう言って微笑む彼女を見て、俺は思うのだ。“あぁ、こいつも歪んでやがる”と。
「少し、用事ができた。」
ティーカップに残った紅茶を流し込み、立ち上がる。シャーロットは、悪いやつではない。いいやつだが、変人なのだ。
「いい紅茶だった。ありがとうな。」
スリッパから靴に履き変える。
「…あぁ、緊張した。」
エルザはラウーロを愛している。ただ、その愛は一方通行だ。ラウーロは、エルザに対して無関心。好きも嫌いも抱いていない状態に思える。それどころか、向き合おうともしない。
腹芸なんて上等なものじゃない。単純な根回しだ。“クリスマスプレゼントの交換”文字に起こせば、単純な文章。それでも、何かのきっかけになってくれればいい。