『…使えない奴。』
聞かせるつもりもなかったんだろう。聞かれているつもりもなかったんだろう。でも、それは裏返せば本心で。
銃のセーフティを解除し忘れた私が悪い。いつも通りにできなかった私が悪い。…怖い。怖い。捨てられてしまうかもしれない。
ずっと一緒にいたい。たくさんお話ししたい。もっと仲良くなりたい。どうしたらいいのだろう。ラウーロさんのそばにいたい。でも、どうしたらいいのだろう。誰も教えてはくれない。
シャーリーとグレーテルみたいにヘンリエッタとジョゼさんのように。どうしたら、なれるだろう。どうして、なれないんだろう。私の残り時間は少なくて、ラウーロさんより早く終わる。ラウーロさんは私を忘れて生きていくのだろうか。
…嫌。
それだけは、それだけは嫌だ。私は、ラウーロさんのために生き、そして死ぬ。それなのに。それなのに振り向いてすらもらえないとすれば。私が、生きる意味なんてなくなってしまう。
黒光りする拳銃が目に入る。
呼吸が苦しくなる。
もし、もしも私が死んでしまったら。ラウーロさんは泣いてくれるだろうか。哀れんでくれるだろうか?それとも、忘れられてしまうのか。
ラウーロさんがくれた銃。黒い穴を覗き込む。
『エルザのやつ、様子が変でさ。ちょっと見てきてくれないか?』
…なんだ、少しは意識してるじゃないか。プレゼント大作戦の経過は順調なのかもしれない。
彼女もまた義体であるし、少女だ。傷つきやすいし、すれ違いやすい。視線の高さも聞こえる音も。見えるものも違うのだから当たり前。
「今、実家なので…。ここからだと、どう頑張っても夜になっちゃいますけどいいですか?」
『あぁ、ちょっと気になっただけだからな。別に急ぎじゃない。事故ったりするなよ?』
「了解です。」
電話を切る。
「ごめん、ご指名入っちゃったから。」
「人気者なのね、シャーリー。」
茶化すように言う母。父は友人と狩猟に出たので夜まで帰らない。姉も仕事のようだ。会えないのは寂しいが、これも運がなかっただけのこと。次からは、ちゃんとアポをとってから帰るとしよう。
「昨日までおままごとをしていたと思ったのに。まったく、年を取るわけだわ。」
「それじゃあ、いってくるわ。」
ハイタッチをして家を出る。
そして現実を思い出す。この家にいる間は、担当官でも職員でもない。ただのシャーロット・ソーヤー。普通に国営の福祉施設で働く末っ子だ。
「気を付けるのよ。私はいつでも待ってるからね。」
「はいはーい。」
私はあの娘の家族になれているのだろうか。