「なぁ、エルザ。お前って何が好きなんだ?」
贈り物。あるいはプレゼント。言葉にすれば、それだけだ。だが、これを送るには、相手のことを考えるという行為が必要になる。
「えっ、あ、はい!私は、ラウーロさんが好きです。」
一番簡単に済ませるのは、相手に聞いてしまうことだろう。…義体を相手にアクセサリー選びなんて俺もジョゼのことを笑えなくなりそうだ。
「じゃあ、もらって嬉しかったものは?」
「名前です。ラウーロさんにもらった私だけの名前。あの公園でもらった名前。」
…名前。そうか、名前か。私物の類いは必要以上に買い与えてはいないし、本人も要求することがなかった。それで、名前か。
「そうか。」
俺は彼女の顔を直視できなかった。
雪が舞う。
きっと今ごろ街は電飾と音楽で彩られて華やいでいることだろう。ついでに、公社じゃあシャーリーがバカみたいに大きなケーキを作って食堂で盛大なパーティーを開催しているに違いない。
そんな中でジョゼは、ヘンリエッタを連れてドライブに出掛け、ヒルシャーは熊のぬいぐるみをプレゼントするのだろう。
電灯はまばらで日中の活気も消え失せた静かな公園。
「本当にこんな公園でよかったのか?」
…せっかくのクリスマスなのだからもっと華やかな場所を選べばいいのにと思った。だが、ここはエルザに名前を与えた公園。彼女にとってのスタート地点。始まりの場所。
「こんな公園だからいいんです。覚えていますか、ラウーロさんはここで私に名前をくださりました。」
「あぁ、覚えているよ。」
“エルザ・デ・シーカ”
この名前に決めたことに深い思い入れはない。初めからそういう風に割りきってきた。彼女とまっすぐ向き合うことに耐えられそうになかったからだ。
「大切なことです。大切なものです。忘れたりなんてしません。」
「あぁ、そうだな。」
半歩遅れて歩く彼女の頭を軽く撫でる。少しばかり歩幅に気を付けて歩く。
特に急ぐ用事もない。それに珍しく彼女が俺に望んだことだ。ただ、隣を歩くだけでこんなにも幸せそうな顔をするエルザ…。
今でも、俺にとってエルザは道具だ。金のためにコネで就いた仕事だ。…だが、プライベートと仕事は分けるべきだ。そんな言い訳をしながら、少しずつ向き合っていこうと思う。
「あのっ、ラウーロさん!渡したいものがあるんです。」
コートのポケットから小さな箱を取り出す。
「ありがとうな。これは、俺からだ。」
俺の用意したプレゼントはドッグタグを模したネックレス。刻む名前はElsa de Sica。
「メリークリスマス、エルザ。」