グレーテルと私   作:バイオレンスチビ

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調査する者

寂しい部屋がそこにあった。部屋の主は窓の修繕が終わるまで友達の部屋で過ごすらしい。

「何もない…。」

割れたガラスは片付けられ、空っぽの部屋がそこにあった。生活感の感じられない部屋。古い木製の椅子と備え付けのベッド。窓際に飾られたシンプルな写真立て。

「だから言ったでしょう、何もない部屋だって。」

義体棟を案内するリコは言う。

 

「それにしたって…。ねぇ、他の娘の部屋もそうなの?」

ガブリエリは問う。俺たち作戦一課は義体を知らない。紙面上で資料として渡される文字を介しての情報しか知らないのだ。

「トリエラやヘンリエッタは、物を増やします。担当官からもらったものを大事にしています。」

「この部屋の主、エルザを知るやつはいるか?」

エルザ・デ・シーカ。疑われている義体。ただし、彼女とは既に担当官であるラウーロを同席させた上で一緒に話している。“微睡んでいたところにガラスが割れる音がして飛び起きた。”シャーロットが部屋にいたのは“エルザの様子を見てきてくれないか”とラウーロが電話で頼んだから。

「トリエラなら部屋にいると思います。」

 

 

どこか機械的な話し方をするリコに比べてトリエラは少し大人びただけで普通の少女のような話し方をする義体だった。

「それで、エルザについて?」

「ああ、どんな娘だった?」

部屋には本とぬいぐるみがあり、姪の部屋と同じだ。年頃の少女の部屋だ。

「完全にラウーロに惚れていたわ。ここの娘は大体そうよ。」

「君もそうなのか?」

条件付け。義体を縛ると同時に担当官に対する忠実化の結果、愛情めいた感情が芽生えることがあるという。

「バカ言わないで。…ある種の愛情はあるけどね。条件付けと愛情は似ているの。私にもどこまでが自分の感情なのかわからないわ。」

「…条件付けの影響、か。」

エルザもまた例外ではないということだ。先程、中庭でジャンに向かって後ろから硬貨を投げた時、リコは硬貨を叩き落として銃を抜いた。プロ顔負けの早業だった。

“フェルミ。好奇心は結構だが、お前が公社の人間でなかったら今ごろ死んでいる。”

ジャンはそう警告した。

「何か、変わったことはなかったか?シャーロットとエルザ。その両方に。」

「エルザは基本的に一人で過ごすことの多い娘だったわ。だから、シャーリーは、他の義体に比べてよく気にかけていたみたい。」

「二人の間にトラブルとかはなかったのか?」

転んで窓を左腕が突き抜けることがあるだろうか。小柄な彼女。少し高めの窓。転ぶような障害物のない室内。

「特に聞かないわね。それに私たちは条件付けで職員を攻撃したりできないようになっているのよ?」

…条件付け。超人的な力を発揮できる彼女たちを縛るための枷。“公社の人間でなかったら今ごろ死んでいる”その言葉が脳裏をよぎる。

「なるほど。ありがとう、君と話せてよかった。」

小さなレディに連絡先を渡し、部屋をあとにする。

「今度来るときは花束くらい用意してね。」

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