「…シャーロット、言いたいことはわかるな?」
手渡される写真。真っ赤に染め上げられた室内。五共和国派との抗争を装ったはずだが…。
「すみません、やり過ぎました。」
必要以上の残酷さは求められていないのだ。あくまでも、五共和国派のテロリストと外部のテロリストの関係にヒビを入れるパフォーマンスが求められており、死体の芸術性など求められちゃいないのだ。
「まぁ、今回の件は目的を達成している。凄惨な殺人現場を作り上げ、見せしめにする。だが、ここまでする必要はなかった。」
条件付けによって殺人への抵抗が消え去っている。だから、粘土遊びをするように死体を弄り、虫を殺すように人を殺すことだってできる。グレーテルは無邪気な子供なのだ。…彼女の手綱を握るのは私の義務だ。
「はい、私のミスです。」
条件付けの強化に至るほどの過失ではないが、後でよく話し合わねばならない。
「…わかっているならいい。だが、過ぎたるは及ばざるが如し。よく覚えておくことだ。」
あの幼い少女を殺戮マシーンに仕立てて、暗部に対する剣にした。そんなつもりはなかったが、結果としてそうなってしまった。地方警察で密猟者に撃たれてから、二度と握るまいと誓った銃を未だに手放せずにいる。情けない限りだ。そもそも、私なんかが彼女の姉でいいのだろうか。立派な姉でいられているだろうか。彼女とは、素体の頃からの仲だ。
再就職先の孤児院で出会ったグレーテル。少しばかり精神を病んでいた私には、とても素敵な出会いであった。利口で活発で可愛らしい彼女に慕われた。まるで天使のようだとさえ思った。
もし、あの日。あの日に休暇など取らなければ、彼女は浚われたりしなかったんだ。
忌々しい変態どもが、彼女を壊してしまった。私が奴等のアジトを探り当てて突入した時には、彼女の手足は床に転がっていた。
…身体中をボロボロにされて、息をすることしかできなくなった彼女。蝶を追いかけることも、本を読むこともできなくされた少女。
公社は言う。“17枚の書類で彼女は自由を取り戻す”ってね。院長はサインした。施設では彼女を助けきれない。そう、判断したからだ。
あの事件の後、数ヵ月は何も手につかなかった。彼女に誉められた楽器も絵も。
“シャーロット・ソーヤー、公社で働かないか?”
真実を知り、それでも私は彼女と一緒にいたかった。
「本当に、バカな女。」
だから今日も骨董品の拳銃を彼女に握らせている。
お腹に大きく“ぱいなぽぅ!”と書かれたTシャツのまま歩く。桃の缶詰と書かれたTシャツは洗濯機に放り込んできた。
「失礼しまーす。」
私の条件付けは、甘く設定されているらしい。残念ながら私は一人なので複数人の私と比較できないから実感もわかない。でも、条件付けがなくたってシャーロットさんは素敵なお姉さま。きっと好きになったに違いないわ!
「寝てる。うんうん、よく寝てる!」
私は姉様の剣。私は姉様の盾。姉様は寝付くと動かない。だから、私は潜り込んで眠ることだってできる。姉様は別に怒ったりしない。
他のフラテッロ達と違って私たちは兄妹でなく姉妹。だから、一緒にお風呂だって入れるし眠ることだってできる。何だか少し得した気分。
「おやすみなさい。」