初めて使ったソレは狙った通りに男の顔を撃ち抜いた。ライノと呼ばれる拳銃で女性や子供の手に収まる小さなリボルバーだ。
「…行かなきゃ。」
丈の短い悪趣味なワンピースの上からコートを羽織る。本当なら一人で死ぬつもりだったけれど、あれだけのことをされて許せるほど私は聖人君子ではない。
私の手は汚れてしまったけれど、きっと天国にはいけないだろうけど。…お前たちを道連れにできれば十分だ。
騙された私が悪いと男たちは笑った。それでも私は構わなかった。
イタリアへの出稼ぎだと聞いて私は張り切って応募した。不発弾と死体爆弾に怯えながら死体を漁る生活から抜け出せると思ったから。妹の足では杖なしで歩けない。爆弾で吹き飛んで折れて曲がってしまった。私には金がなくて。彼女を助けることができなくて。“痛くないよ”そう言って涙をこらえる彼女をどうしても助けたかった。“痛い”と泣くことすらさせてやれない自分が憎くて憎くてしかたがなかった。
ボスの愛玩人形となって、死体漁りは過去のことになった。飢餓に苦しむことも銃声に目を覚ますこともなくなった。妹はイタリアの病院で療養していると伝えられ、まだバカな子供であった私はそれを信じた。
私の稼ぎが彼女の治療費になると聞かされて。寝る間もなく時間を売り続けた。
あれから10年近く会えていなかった。それでも、よかった。こんな薄汚れた私を見られたくなかった。
…そんな彼女に再会した。
彼女は画面の中で逃げ惑っていた。ゴム弾を叩き付けられて。必死に命乞いをして。
成長はしていた。しかし、彼女は変わっていなかった。彼女は泣かない。泣いても誰も助けには来ないと知っているから。
『ジャクリーン、どうしたんだ?お前、ボスのところに呼ばれてるんだろう。俺は見ての通り仕事中なんだ。編集作業ってやつよ。』
『あの、廊下まで悲鳴が聞こえたので…。』
この服も昨日食べたパスタも靴も下着も靴下も…。誰かの不幸の上に成り立っている?それじゃあ、私は何のために…?
吐き気がした。冷たい海に飛び込んで海底まで沈んでしまいたくなった。だって、これじゃあ自分の妹を食べているようなものじゃないか。バカな私が騙されるならいい。それだけならよかった。妹まで巻き添えにするなんて屑だ。私は生きていちゃいけない類いの人間なんだ。
…だけど、私は許さない。
手紙を出した。遠いローマへ向けて手紙を出した。宛先は警察。地元警察は信用できない。
…お腹に巻く爆弾は持ってないけれど、お前たちを殺す爆弾になってやる。