グレーテルと私   作:バイオレンスチビ

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敵地を踏む

太陽の高い時間から音楽は鳴り響く。

「まったく、数が多い!」

こうなる前に逃げ出したかったが、こうなってしまえば仕方がない。耳が悪くなりそうな戦争協奏曲の中を走り抜けるしかない。

「姉様、まだ大丈夫ですか?」

神経が研ぎ澄まされて己の心臓が拍動する音すらうるさく聞こえる。だが、まだ止まってしまうほどじゃない。

「まだいけるから大丈夫。」

お医者様からは嫌な顔をされること間違いなしだけどね。最悪、グレーテルに担がれることになるかもだけど、まだ大丈夫。

「…壁から20から30㎝くらいは離れてください。こういう場所だと跳ね返った弾丸が壁に沿って飛んできたりしますよ。」

無言で頷くジャクリーン。しかし、初めてにしては上手に歩けていると思う。パニックになったり、悲鳴をあげて逃げ惑ったり、踞って動けなくなったりしてもおかしくはない。それこそ、気が触れてしまうかもしれないような状況だ。しかし彼女は青い顔をしながらも頭を低くして私の後ろを歩いてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちら、リコ。目標の制圧が完了しました。』

 

どうやら敵の城は落ちたらしい。まだ夏は先だというのに汗が滴り落ちる。

「…気を付けてください。本部から派遣された兵隊は本物です。そこらのマフィアやテロリストよりも戦いを知っている。」

M2重機関銃を搭載したピックアップトラック。一般にテクニカルと呼ばれる戦闘車両を沈黙させた。紙一重だった。12.7㎜弾を使用するM2重機関銃は、航空機銃から車載機関銃まで幅広く使われるロングセラー商品である。飛行機を撃ち落とすような機関銃。当たっていたら間違いなく死んでいた。

「今ので実感したよ。」

建物からの狙撃と車両による制圧射撃。二つを組み合わせることで、私たちの足止めを狙ったのだろう。無線による連携だろうか。…やつらの誤算はグレーテルが投げる手榴弾が自分に届くと知らなかったことだ。

スナイパーに関しては、爆発に動揺している隙を付く形でグレーテルの機関銃を借りて射殺した。

 

「急ぎましょう!ちょっと騒ぎすぎました。」

…あまり頭のいい作戦ではなかった。スナイパーから身を隠すための煙幕手榴弾と攻撃用の手榴弾の併用は騒がしすぎたかもしれない。

「すみません、カーレンさん。案内お願いします。」

相手が集まってくる前に逃げる。そうでなきゃ、あっという間に袋叩きにされる。

「任されました。」

カーレンさんの返事を確認しつつ、ストックを装着したブルームハンドルを構え直す。

…ここは敵地。気を抜くことは許されない。

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