グレーテルと私   作:バイオレンスチビ

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終幕

大通り。エンジン音が響く。近づいてくる。

「見つけた。」

…ブローニングM2重機関銃。先に撃破したグレイハウンドの車体上部に取り付けられていた機関銃。重さは40kg弱。反動と重量から、とても手持ちで扱えるものじゃないらしい。だけど、それは私が普通だったらの話。

「悪い魔女はパン釜に押し込んでしまわないと。」

あなたたちは姉様に怪我をさせた。私たちを殺そうとした。…魔女だ。人語を解せぬ狼だ。退治しないといけない。じゃないと、私たちは笑って明日を迎えられない。

「バイバイ、魔女さん。」

私は姉様の剣。私が構えて姉様が撃つ。

…私たちのために散れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてだ、どうしてこんなことになった。車長であるイタリア人は死んだ。あれほど頭を出すなといったのに狙撃されたらしい。

 

数の有利があったはずだ。地形は頭に叩き込んだはずだ。…だが、追っていた我々は追われている。

 

イタリア人の死体を押し退けて席に着く。こういう場所での対人の場合は、砲撃よりも機関銃の方が効果的だったりするのだ。でも、絶対に頭は出せない。出した途端に狙撃されるのがオチだ。こめかみを撃ち抜かれた哀れなイタリア男のようになりたくなければ、亀のように首を引っ込めているしかない。

 

「ダメだ、応答がない。やっぱりやられたみたいだ。」

 

奴等は死神だ。きっとルーマニアから私たちを追って来たんだ。

 

「気をしっかり持て!」

 

無線機を握る手が震える。呼吸が早くなる。

 

 

 

少女がいる。

 

 

 

目があった気がした。少女は微笑む。可愛らしい洋服を着た少女は、黒い鉄の塊を持っている。

 

 

 

…少女は構えた。

 

 

 

どこで間違えたんだろう。どうして失敗してしまったんだろう。悪いことならたくさんやった。薬に殺しに人拐い。まともな死に方はできないだろうと思っていた。でも、そうやるしかなかった。そうするしか生きていけなかった。

殺して傷つけて壊して叫んだ。

そうして、いつの間にか人を殺して何も感じられなくなったことに気づいた。誰かを傷つけても笑顔でいられるようになった。…鏡にはそんな化け物が写っていた。ドラキュラ。人の血を啜って生きる化け物が。

 

私は、安心していた。通訳として売られたから。通訳以外の仕事もたくさんさせられた。それでも、誰かを殺すようなことはしなくてよかった。

 

…神様は許さないだろう。

 

私は国のために作り上げられた人間だった。残念ながら優秀ではなかったけど、必死に知識を身に付けた。でも、革命が起こって野に放たれた私たちに浴びせられたのは罵声と石ころだった。

 

醜いものを見てきた。隣のベッドで寝ていた少女が野良犬の餌になった。太った小男は豚のように私を嗤った。可愛がっていた少年は私を殺そうとしていただけだった。冷たいコンクリートの牢獄で何人も死んだ。私はそれを見捨てた。

 

…それでも、死を告げる天使は美しかった。

 

蛇行する車両。ゆっくりに感じる世界。迫る壁。終わりなのだ。皆に平等に与えられる終わり。

 

 

 

 

 

 

 

グレーテルによる二階からの射撃。装甲の薄い上面を狙ったそれは一切の反撃を許すことはなく、敵は沈黙した。

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