グレーテルと私   作:バイオレンスチビ

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弾痕とリンゴのシール

オリガさんの車が犯人の進路を塞ぐために前方へと躍り出る。その影から飛び出すように角を曲がり、犯人の追跡を開始する。オリガさんのお陰で人気のない小道に潜り込んでくれた。

「グレーテル、準備できてる?」

ここまで来れば、もういいだろう。本当ならやりたくないが、四の五の言っているうちに大ケガしたら笑えない。さっさと片付けてしまおう。

 

ジョゼさんとアイコンタクト。

 

 

 

「やっちゃいなさい!」

待ってました! そんな彼女の返答と同時に聞き慣れてしまった発砲音が背後から響く。

狙いは左右の窓から身を乗り出してサブマシンガンを構える男たち。しかし、あれは弾数で勝負するタイプ。近距離で弾丸を撒き散らすものだ。走行中の車両からバイクを狙うのは素人さんには厳しいだろう。

『先回りして罠を張った。』

…なるほど、ヒルシャーさんも良い仕事をしてくれる。この速度から脇道にそれることは考えにくい。前回のような戦車擬きなら障害物なんて気にしないかもしれないが、奴はバン。ただ大きいだけの自動車だ。

 

「…っぶない!」

助手席から転がり落ちる死体。とっさに避けられたのは、日頃の行いがよかったからだろう。一気に距離を離された。近づけそうにないけれど、それはそれでいい。拳銃の命中率は距離と共に失われていく。

「いいから撃ち続けて!」

死体を避けるためにジョゼさんはバイクを止めた。私も一気に減速してしまった。ここから追い付くのは難しいだろう。しかし、ここからでも弾丸は届く。動揺を誘ってヒルシャーさんの罠による事故を誘発させる。

ブルームハンドルにはライフルのように50から1000メートルまで狙える照準器がついている。騎兵銃の代用として使われるのも納得の長射程。もう威嚇射撃でも何でもいいからバンバン撃ち込んじゃってほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦は成功した。我ながら勲章ものだと思うわ。牧羊犬のように走り回り、マンホールを使った罠に追い込んだ。そして車輪が穴に落ちて動けないところを追い討ちした。お姉さまにも私にも怪我はない。完全勝利ね。

「…次は命懸けじゃないツーリングがしたいわ。」

疲れた顔で言う姉様。お仕事じゃないお出掛けの方が楽しいに決まっているものね。

「よし、こんなものかな。穴も塞がったし、そろそろレストランに行こうか!」

リンゴのシールをバイクに貼って弾痕を隠す。…どうしてだろう。どこか既視感を覚える。

「ほら、乗った乗った!きっと今月は危険手当てが付いて給金アップだからね。ちょっといいものを食べに行こう!」

「私、パスタがいいな!」

…何でだろう、思い出せなかった。

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