塔の上から射撃場を見下ろせば、小さな人影が目に入る。リコにアンジェリカ。少し離れたところに監督役としてジャンがいる。
「アンジェリカは良くここまで回復したな。」
隣にいるマルコーは、アンジェリカと共に明日からミラノだという。
「…仕事で使えるかはまだわからん。何せ、退院したのも最近のことだからな。」
そういう、自分もトリエラと共にモンタルチーノまでいく。
「明日からミラノだって聞いたが、気を付けろよ。ミラノは五共和国派の大きな拠点だ。」
シャーリーのように戦車砲で吹っ飛ばされることはないだろうが、義体だって絶対じゃない。
「あぁ、わかっているさ。そっちこそ、今回は一課の使い走りなんだろう?あいつらは、何かにつけて突っ掛かる。二課に下手を打たせて影で嗤うつもりかもしれない。」
…公安の人間が失踪した。その足跡を追いかけるのが今回の仕事だ。一課と二課には埋めがたい溝があり、お互いあまり好ましく思っていない節がある。そんな一課から回された仕事となれば、身構えるのも当然というものだ。
「あぁ、こっちも気を付けるよ。」
今、公安はピノッキオという殺し屋を血眼になって探している。失踪した職員も例外ではなく、その殺し屋を探っていたらしい。…少し、嫌な予感がした。
「へぇ、モンタルチーノまでいくんだ。良いなぁ。私も姉様と一緒に遠出したいなぁ。」
この同僚、呑気過ぎやしないだろうか。
「あのねぇ、グレーテル。私はお仕事でいくのよ。別に観光って訳じゃないんだからいつも通りよ。」
それに貴女は愛しのお姉さまに四六時中ベッタリじゃないの。
「…そっか、それもそうだね。」
私たちの外出にフラテッロ以外にも人員がつくことは良くあることだ。それが、どういう意味を持つのかわからないほど、彼女も私も能天気ではない。
「それに最近ナポリにいったばかりでしょうに。」
私は仕事で出向いただけだからあまり観光なんかはできなかったが、そこはとても美しい街だった。
「でも、次は万全の状態のお姉さまと歩きたいわ。」
「まったく、欲張りさんね。」
グレーテルとシャーリーは完全に復活した。アンジェリカも退院したから近日中に仕事に復帰するだろう。
「…トリエラ、そろそろ時間じゃないの?」
クラエスに声をかけられて時計を確認する。真面目なヒルシャーさんのことだ、集合時間の少し前に来る。
「ありがとう、クラエス。」
そろそろ、駐車場に向かった方がいいだろう。ホルスターを吊るしてジャケットを羽織る。
「それじゃあ、いってくる。お茶、美味しかったわ。」