「…ストラックアウト?随分と懐かしいものを引っ張り出してきたな。ボールを投げて数字の書いてあるパネルを倒すゲームだろう?」
せっかく買ってきたのだから使わなくちゃ損だ。それにこれをマルコーさんに提案するのにも意味がある。
「そうです。ストラックアウトです。アンジェリカと一緒にやりませんか?」
投げるという動作は全身を使う。そして狙いをつけて投げるとならば、意外と高度な操作を要求されるのだ。カラーボールを使えばより安全だし、これで後ろにネットでも張っておけば紛失球も防げるだろう。アンジェリカが狙って投げる動作に親しんできた人種には見えない。つまり、遊びながらマルコーさんは彼女に教えてあげなきゃならない。これが一番の狙い。
「残念だが、俺達はこれから仕事がある。ヒルシャーたちも仕事だと聞いたから、非番のヘンリエッタ達を誘えば良いんじゃないか?」
…あれ?
「よし、センスが良いなヘンリエッタ。」
幸いにもジョゼさんは今日は非番だったらしく、良い返事をくれた。ただ、今日は男友達とディナーにいくらしい。お相手は軍警察時代の同期だとか。
「姉様、頑張って!」
それにしてもジョゼさんは凄いな。遠目に見る限り完璧な兄妹だ。
「ヤバい、ジョゼさんが想像以上に強い!」
野球経験とかあるのだろうか。それとも単純に私の運動神経の悪さが力量の差を際立たせているのだろうか。
「クラエス、肩に力が入ってるよ。そんなに力まなくたってボールは飛んでいくから。」
花壇の世話をしに出てきたクラエスを勢いで巻き込む。いつのまにかチーム戦のことなんて忘れてグダグダになって…。なんだか、前の職場を思い出す。
前の職場にも古いストラックアウトがあった。グレーテルと一緒に遊んだこともある。上達してくるとバウンドさせてから当ててみたり、二つのパネルを一度に落とそうとしてみたりと新しいことにチャレンジするのだ。
「やった、お姉さま!やりました!」
そう言って腕の中に文字通り飛び込んでくる彼女を抱き締めて頭を撫でる。
「よかったね、グレーテル。」
「優勝したジョゼさんチームには、オリーブの冠にならって花の冠が送られます。」
結局、勝者であるジョゼさんチームに花の冠を渡す。順番待ちの間に手慰みがてら作っていた作品だが無駄にクオリティが高いところがポイントだ。
「えっと、ありがとう?」
「お揃いですね、ジョゼさん!」
そう言いながらカメラを構えるのはヘンリエッタ。たまにはこんな休日があっても悪くないだろう。