児戯のような抵抗の末に死体だらけになった場所。私は意識して優しく甘い声を出す。そして粗末な椅子に拘束された男に向かって言葉を投げるのだ。
「ねぇ、お兄さん。普通に答えてくれたらそれでいいんだ。わかるでしょう?」
五共和国派の嫌なところは社会の奥深くまで浸透していることだと思う。国のために働く軍や警察といった公的機関にすら混入するのだから質が悪い。
「その爆弾は誰からもらったの?」
暗い室内を照らすために持ち込まれたランプ。その光を受けてギラギラと反射する銃剣を喉元に突きつける。脅しに使うなら銃よりも刃物の方が優秀だ。人の恐怖を煽るのに適している。
「…早く言わないと大変なことになるよ?」
先日発生した爆弾テロの犯人を逮捕したジャンさん。そこから爆弾の入手経路についての情報を入手。どうやら軍の爆薬を横流ししている不届きものがいるらしい。その不届きものの尻尾を掴むため、私たちは役目を終えて久しい下水処理施設を探検することになったのである。
「そう、こたえないのね。」
隣の部屋からはリコが人を殴打する音が微かに聞こえてくる。ジャンさんの命令によるものだろう。二部屋に別れて“質問”をするのは嘘をつけないようにするためだ。
「答えないなら、仕方ないわ。それなら私にも考えがある。」
…まったく、こんなお仕事をすることになるとは思わなかった。休日返上で鉄砲を担いでの洞窟探検。その上で汚い怪物相手に“質問大会”までしなくちゃいけない。やはりテロリストは害獣だ。私はグレーテルに汚いものを見せたくないのに。
「グレーテル、紙袋を用意してくれる?」
…さっさと終わらせてしまおう。
その作業は思ったよりも簡単に進んだ。紙袋を頭に被せて“質問”すれば、泣きながらも真摯にお答えくださいました。…あとは回収されて丈夫なお部屋で“素敵なお話”を詳しく聞くことになるだろう。もっとも、この後の彼の扱いについては私の知るところではないのだが。
「これが録音したものです。」
穴蔵に住み着いていた怪物の汚い悲鳴と重要な証言の入ったレコーダーをジャンさんに提出する。
「…随分と酷い顔だな。もう少し体力をつけた方がいい。あと、義体をもっと効率良く使え。」
ジャンさんは頭も良いし仕事もできる人なのだが…。やりすぎじゃないかと思ってしまうこともある。
「はい、頑張ってみます。」
でも、これが私のお仕事なのだ。第二第三のグレーテルを出さないためにも頑張らなくちゃいけないのだ。