グレーテルと私   作:バイオレンスチビ

7 / 39
ナターレ前の一幕

「そんなに酷いの?」

顔色も悪いし、全身から“調子悪いです!”ってオーラが吹き出している。

「うん、すごく辛い…。」

残念ながら私の身体には残っていない機能なので羨ましくもある。

「あと一人で全員揃うね!」

熊のぬいぐるみを数えていたヘンリエッタは、今日も元気。異常なし。

「いいなぁ、私もほしいなぁ。」

「そんなにいいものでもないわよ。毎回、同じものばっかり。」

口ではそんなことを言うけれど、一人一人に白雪姫に登場する小人の名前をつけて可愛がっている。

「いや、本当に大丈夫?長距離を全力疾走したあとの姉様と同じくらい顔色悪いんだけど…。」

姉様は長時間の激しい運動に対して、ドクターストップをもらっている。それを無視して無茶な運動を続けると、酷く苦しむことになるみたいだった。

「市販の薬ってダメなんだよね。」

そう。お医者さんの許可が必要なのだ。それがなければ、風邪薬だって飲めない。

「二人とも、心配してくれてありがとう。でも、これも生きてる証だからね。…頑張って耐えるよ。」

 

 

 

「あ、こんな時間だ。そろそろ出掛けなきゃ。」

今回の任務は狙撃。そう聞いている。前回の“見せしめ作戦”よりも手間がかからないし、安全な任務だ。ドイツから来た“ちょび髭ファンクラブ”の“プレミアム会員”さんを撃ち殺すこと。つまりは、狙撃による暗殺。ここで頑張ったらクリスマスがもっと豪華になるかもしれない。

「それじゃあ、二人ともまたね!」

私は姉様の剣。姉様の盾。さっさと済ませて少し早いクリスマスデートといきましょう。姉様は根っからのインドアだから少しは外に出た方がいいわ。

「あ、そっか。これからお仕事なのね。頑張ってね、グレーテル。」

「気を付けてね!」

 

 

 

 

元気に手を振るグレーテルを見送る。

…条件付けと愛情は似ている。どこまでが本物の自分の感情なのか。ヒルシャーさんが私に何を求めているのか。私にはわからない。どうせなら、条件付けで決めてくれれば悩まなくていいのに。

グレーテルはシャーリーの妹。ヘンリエッタはジョゼさんの妹。リコはジャンさんの仕事道具。…じゃあ、ヒルシャーさんは、私に何を演じてほしいのだろう。

ノックの音がした。

「どうしたの?わすれもの?」

そういいながらドアを開けるのはヘンリエッタ。

「ううん、トリエラに伝言があってきたの。」

扉の先にいたのはリコ。片手にはウェットティッシュの入ったケースを持っている。側面には、極太の油性ペンでシャーロットさんの名前が書いてある。

「どうしたのそれ?」

ヘンリエッタが訪ねる。

「さっき、ジャンさんに叱られて少し血が出たの。別に痛くもないし、気にしてなかったんだけど。廊下ですれ違ったシャーリーが気づいて箱ごと渡されたんだ。」

…あの人の鞄。本当に何でも入っているのね。

「そうなんだ。」

時折、整理整頓と称した大粛清を行っているらしいが、気がつけば元通りになっているらしい。

 

「そういえば、伝言は?」

「ヒルシャーさんが呼んでたよ。」

私は、重い腰をあげた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。