「ああっ!やっっと、終わったぁぁ!」
俺は目の前の文字が埋め尽くされたレポート課題を見て、両手を上げながらかなりの音量で叫んだ。
終わった、というのは正確ではない。実際にはまだまだ全ては終わってはいないし、明日提出すべきものに全く手をつけていないという点を鑑みてみればむしろ始まったばかりと言うべきだろう。
にも関わらずなぜ俺がこんなにもはしゃいでいるのかと言うと、
「な、長かったッ!こんなにも時間がかかるなんてッ!本っ当に疲れたぁ」
目の前のレポートがやたら難しい科目の上に、さらに解くべき課題の量が多いからだった。
因みにだが俺は自分で言うのもなんだがこれといって特徴のない人間だ。短い黒髪に、高くも低くもない平均的な身長。鍛えていると言うには肉付きがあり、太っていると言うには肉がついていないというどっちつかずの体型。さらには、目が悪い上に以前中学生の頃に黒板を書き写している際に隣の子から「え?君、なんでそんなに不機嫌なの?」と真剣な顔で聞かれるほど、目つきが悪い。(完璧に余談だが、高校に上がる頃には眼鏡を購入し目つきの悪さは改善された)
ついでに言うと性格もおっとりしている上に友達も両親に心配されるレベルで少ない。
そんな自分でも言ってると悲しくなるほど群衆に紛れれば一瞬で見失いそうなほど凡庸さを持った俺だが今回ばかりは諸手を挙げて喜んだ。実際に、この課題を終えるのに約1日と半日はかかったのだ。この苦痛を理解できる人がいるのならば俺のはしゃぎようも理解できるだろう。
それから、十分ほどはしゃいでいると。
「ちょっと!うるさいんだけど!何かあったの!?」
「うおお!って、なんだよ、ビックリさせんなよお前かよー」
妹が半ギレ状態で俺の部屋に突入してきた。
「「お前かよー」じゃないって!!本気でうるさいよ!!はしゃぐんだったら、もう少し声を落としてよ!」
「いやぁ、ごめんごめん」
「本当に反省してんの?」
「してるってーの」
実際、妹が怒るのも無理はない俺自身も「流石に声をだしすぎたなぁー」と思うほどには大きな声をあげたからだ。
「それはそうとさぁ、お兄ちゃん早く寝ないの?もうすぐ十二時だよ?」
「明日提出しなきゃいけない課題があるから今日は徹夜するよ」
「ふーん、まぁどうでもいいけどさぁ、早く終わらせなよ。徹夜が理由で授業中寝てしまいました、なんて笑えないからさ」
「ういうい、わかってますよ」
俺がそう答えると妹は「もう、うるさくすんなよー」と言いながら自分の部屋へと帰っていった。
「さぁーて、妹が帰ったし続きをしますかねえ」
俺はそう言うと再び机の前に向かい課題に取り組んだ。
◇
俺は平成日本生まれのゆとり教育世代出身である。
俺の人生は十八年、その全てを語り尽くすにはそれこそ十八年の時間を必要とする。
それらを割愛し、俺の現在の立場を簡単に説明するのならば『なりたてホヤホヤの大学生』となる。
より詳細に説明すると『大学受験を舐めまくってセンターと第一次を盛大に失敗し、自信喪失や半泣きの状態で第二次を受けて何とか希望した大学に受かった大学生』という俺は初めてやることにどこか少し楽観視してしまうような人間だ。
中学生の頃は、小学生の頃に作った友達と明るく仲良く楽しく過ごして、
高校の頃には中学や小学生の頃に作った友達がいなくなり初対面の相手になんで話せばいいのか分からず少し孤立気味になり、
それでもいいか、と自分に言い聞かせながら日がな学校がない日は一日、本や漫画、ゲームを貪る毎日。
そして、先程のとおり大学受験を失敗しかけ何とか成功させ、今ではーー、
「課題に追われる毎日かぁ。ふふ、あの頃に戻りたい(泣)。本当に今更だけどやっぱり高校の時にいくつか免許でも取っとくべきだったなぁ」
俺は、何度目かも知らない涙目でため息をつきながら自分に対しての愚痴を零した。
そんな、くだらないことを考えながら机に向かうこと早一時間。
「うっし、終わったぁ!」
俺は残りの課題を全て終わらせたことに声を落としながらはしゃいだ。
「んー、もう一時かぁ。はは、明日は学校で寝ないといいなー。まぁ、そんなこと明日の自分に任せればいいか」
限りなく他力本願なことを口走りながら目の冴えている俺はベッドに横になった。すると、
「痛、んだこれ?」
枕元に無地の表紙。厚手の造り。辞典ほどの大きさで、持ち運ぶのにやや難儀しそうな重量感の黒塗りの本が置かれていた。
「こんな本買ったっけか?」
確認のため中身を見る。しかし、そこには何も書かれてはいなかった。俺はこの本をみてふと思った。
「何つーか、リゼロの福音みたいだな」
そう、リゼロの福音書に驚くほど似ていたのだ。俺はこの本を見たとき少し驚かされた。しかし、
「まぁ、なんかの勘違いだろ」
俺は、眠気に負けて思考を放棄して寝る準備に移行した。少しだけ、先ほどまであれ程目が冴えていたのにいきなり眠くなるのは妙だと思いながらも俺は微睡の中へと意識も沈めた。
次の瞬間、身体中に激痛が走った。
はい、読んでくれて有難うございました。
あまり、原作を知らないので時系列など教えていただければ幸いです。